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ハディーサ虐殺 / マージョリー・コーン
The Haditha Massacre: No Justice for Iraqis / Marjorie Cohn
http://zcommunications.org/the-haditha-massacre-no-justice-foriraqis-by-marjorie-cohn
kmasuoka 2012-03-20 08:33:18
2012年1月31日(火)
小さな赤ん坊から成人男女まで。
もう、決して頭から離れないだろう。今でも血の匂いがする。
頭と心に染み付いて、離れない。
ローエル・ライアン・ブライオンズ伍長
先週、「ハディーサ虐殺」として知られる暴力事件を率いたフランク・ウートリッチ二等軍曹が
降格ただし禁固はなしとの判決を受けた。故殺罪7件で告発するたウートリッチは、職務怠慢の
罪を認めた。他の6人の海兵隊員は告発が却下され、もう一人は虐殺に関与した件について無罪
となった。
ここでハディーサ虐殺を思い起こしておこう。2005年11月19日、第1海兵師団第3大隊キ
ロ中隊の海兵隊員が、イラクのハディーサで、3から5件の家を襲撃し、処刑形式で、武器を持
たない民間人24人を虐殺した事件である。犠牲者の一人は76歳で、足を切断していたため車
椅子に座ってコーランを手にしていた。祈りを捧げているように体を折り曲げた母と子どもも、
犠牲となった。「まるで蛇口から水がでるように血を噴出している兄の体が私の上に倒れてきた
とき、私は死んだふりをしたのです」。死んだふりをして虐殺を生き延びた13歳のサファ・ユ
ーニス・サリムはこう語る。1歳から14歳の子ども6人も殺された。ワシントン・ポスト紙は
、ハディーサ病院の医師の言葉を引いて次のように報じている。「銃弾のほとんどは・・・至近
距離から撃たれたため、家族の体を貫通して壁や床にのめり込んだ」。
米軍海兵隊が武器を持たない24人の市民を処刑したのは、どうやら、その日、海兵隊の小車列
で路肩爆弾が爆発し、ミゲル・テラサス伍長が死亡したことへの報復だったようである。翌日、
米海兵隊の報道官が発表した声明は、次のように主張していた。「昨日、ハディーサで、路肩爆
弾の爆発により米海兵隊員1名と民間人15名が殺された。爆発の直後、米軍の車列が小型銃器
による攻撃を受けた。イラク軍兵士と海兵隊員が応戦し、ゲリラ8名を殺害、1名に負傷を負わ
せた」。その後、米海兵隊は、この虐殺について、犠牲者は、ゲリラとの銃撃戦の中で不注意に
より殺されたとしている。
この説明はどちらも嘘で、海兵隊はそのことを十分知っていた。「副次的被害」と称して虐殺を
隠蔽するための厚かましい嘘だった。マイケル・ハギー海兵隊総司令官からハディーサ事件調査
のブリーフィングを受けたジョン・マーサ下院議員は、次のように語った。「トップレベルから
得た報告によると、銃撃戦はまったくなかった。何の交戦もなかった。この事件では軍事行動は
まったくなかった。爆弾の爆発で、海兵隊員1名が死亡した事件だった。次に起きたことは、人
々を一方的に射殺することだった」。海兵隊士官は、マーサに、兵士達は、慈悲を求めて子ども
をかばい子どもの上に屈み込んだ女性を「冷酷に」射殺したと伝えた。殺された女性たちと子ど
もたちは寝間着姿だった。
2006年3月、『タイム』誌が報ずるまで、ハディーサ虐殺が米国内で報じられることはなか
った。『タイム』誌は、ビデオテープも含め、調査結果を1月、米軍に提供した。米軍が調査を
開始したのはようやくそのときである。ある高官は、ロサンゼルス・タイムズ紙に対し、この海
兵隊員たちは「道徳も指揮も完全に崩壊し、悲劇的な結果を引き起こした」と語った。
マーサは、「米軍兵士はプレッシャーが故に過剰反応し、罪のない文民を冷酷に殺してしまった
」と話す。米軍兵士の多くが心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っている。キロ中隊の海兵
隊員ローエル・ライアン・ブライオンズは、ハディーサ虐殺には関わらなかった。T・J・テラサ
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スは彼の親友だった。当時20歳だったブライオンズは、殺されたテラサスの姿を見ている。「
顎に大きな穴が開いていた。目は頭蓋骨の中に巻き上がっていた」と彼は仲間に話している。「
たくさんの奴が狂ったんだ」とブライオンズは言う。「T・Jの身に起きたことに[ひどい]気分
になった」。
虐殺のあと、ブライオンズは犠牲者の写真を取るよう命令を受け、また、遺体を家から運び出す
のを手伝った。その日自分がしなくてはならなかったことを思い起こし、彼は今も悪夢に付きま
とわれている。ブライオンズは、頭を撃たれた少女を抱えあげた。「こんな風に抱えたんだ」と
彼は腕を広げて話す。「でも、頭ががくがく上下していて、中身が足に落ちてきた」。「
PTSDなんか馬鹿げたありえないことだと思っていた、当たり前の海兵隊員だった」とブライオ
ンズは言う。帰国後、彼はひどい問題を抱えることになった。「でも、頭に貼り付いて離れない
この光景で、めためたにやられてる。今すぐ助けてほしい」。
マーサはABCに、米軍がハディーサ虐殺の「隠蔽」を図ったことに「疑問の余地はない」と述べ
、ハディーサ虐殺は「アブグレイブよりひどい」と言う。トップレベルのブリーフィングから、
隠蔽は「指令系統のトップにまで及んでいる」ことが示唆される、と。
ブッシュ政権が設けた交戦規定は、民間人の意図的な殺害と無差別殺戮を引き起こした。とりわ
け、「無差別砲撃地帯」で行動するイラク駐留米軍兵士は、動くものすべてを撃つ命令を受けて
いる。民間人が暮らす地区への攻撃は大規模な民間人犠牲者を生んだが、ブッシュ政権はそれを
「副次的被害」と呼んだ。
ジュネーブ条約に対するほかの重大な違反と同様、こうした即時処刑や意図的殺害は、米国の戦
争犯罪法で罰しうる犯罪である。指令官は、民間人の無差別被害が発生しないよう、捕虜が略式
処刑されないようにする責任を負っている。交戦規定は指令系統の最上部で決められるため、司
令責任の原則により、刑事責任を負うのは実行犯にとどまらない。ジョージ・W・ブッシュ、デ
ィック・チェニー、そしてドナルド・ラムズフェルドを戦争犯罪で告発すべきである。
ハディーサ虐殺の情報が報じられた数日後、イラクのバラード近く、イシャキで、米軍兵士が
11人の民間人を一部屋に集めて殺害した。手錠をかけて、射殺したのだった。犠牲者の中には
、75歳の女性も、6カ月の子どももいた。3歳の子どもと5歳の子ども、3人の女性がいた。
米軍の報告は、米軍兵士には犯罪行為は見られなかったとしている。
カイム、アブグレイブ、タール・アル・ジャル、ムカラデーブ、マフムディヤ、ハムダニヤー、
サマーラ、サラフディンといったイラクの他の都市からも、米軍兵士が即時処刑を行ったり意図
的な殺害を行ったりしているという情報があがってきている。アフガニスタンからも、同様の告
発がなされている。
ハディーサ虐殺についての法的判断がこのように終わったことに、イラク人の多くが激怒してい
る。また、米国がイラクから「撤退」したあとも1万1000人の米国人が5000人の傭兵に
守られて滞在する、バグダードの世界最大の米国大使館を防衛するためにイラクの人々の頭上を
旋回する無人航空機に、人々は不安を感じている。イラク内務省代理のアドナン・アル=アサデ
ィは、「イラク領空はイラクのものです。米国の領空ではありません」と話す。米軍がイラクを
撤退したのは、ハディーサ虐殺で米軍が犯したと同様の犯罪に対し、イラクが米軍兵士に免責を
認めなかったためである。
ハディーサ虐殺の犠牲者24人は、殉教者墓地と呼ばれる墓地に埋葬されている。殺された家族
の一つが住んでいた、今は空家となった家には、「この地で民主主義が一家族を暗殺した」とグ
ラフィティが書かれている。
マージョリー・コーンはトマス・ジェファーソン法律学校教授で、全米法律家ギルドの元会長。
著書に『Cowboy Republic: Six Ways the Bush Gang Has Defied the Law』、共著書に『Rules of
Disengagement: The Politics and Honor of Military Dissent』がある。最新刊は『The United
States and Torture: Interrogation , Incarceration , and Abuse』。ブログは
http://www.marjoriecohn.com。
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原サイトが基本的に翻訳推奨。