72 - 長岡工業高等専門学校

ICTを用いた授業手法支援ツールの充実化と全国展開に向けて
(豊田工業高等専門学校)○松本嘉孝,小関修,(広島商船高等専門学校)上杉鉛一
(阿南工業高等専門学校)坪井泰士,(一関工業高等専門学校)貝原巳樹雄
1.はじめに
2.支援ツールの充実化
我々は平成 19 年度より,優れた授業手法を持つ
教員のスキルを蓄積し,そのスキルを共有するプ
ラットフォーム(授業手法支援ツール)の作成を
目的として活動をおこなっている 1),2)。その活動
背景としては,平成 19 年度からの助教制度導入に
もかかわらず,若手教員への教育支援が不十分で
あることや,授業現場での経験が反映された授業
手法の共有化がほとんどなされていないことが挙
げられる。その支援ツールを作成するにあたって
は,① 個別に常時対処できる,②具体性が高く,
すぐに授業で実践できる内容を含む,③誰もが使
いやすく,容易に内容を理解できる機能を備えて
いることをコンセプトとしている。具体的には,
優れた授業手法を持つ教員にインタビューし,そ
の様子をビデオカメラで撮影,編集し,その動画
をインターネット上で公開するものである。
これまでの活動としては,豊田高専における授
業手法情報をテキストもしくは動画にて収集(5
名の教員),情報(主にビデオ撮影データ)の編集,
「教師と学生」3)をもとにした授業手法の分類化,
Web ページのデザインと公開,そしてツールに対す
るアンケートの実施である。
そのアンケート結果から得られたツールの改善
点としては,①支援ツールのテクニカル課題の克
服(インタビュー動画を再生する際のダウンロー
ド時間を短縮する),②コンテンツの拡充(教員の
追加,授業風景)が挙げられた。
そこで,課題に挙がった 2 点について,以下の
改善活動を行った。支援ツールのテクニカル課題
の克服については,動画の再生方法に問題があっ
たため,ストレス無く再生する方法を考え対応し
た。コンテンツの拡充については,インタビュー
での授業手法がどのように授業内で使用されてい
るのかを提示するため,授業風景の撮影を行い,
それを編集後ツール内に導入した。加えて,支援
ツールの情報をさらに拡充するため,優れた授業
手法の収集を全国に展開し始めた現在の状況につ
いて報告する。
2.1 テクニカル課題の克服
これまでの支援ツールで動画を再生する場合は,
動画ファイルを全てダウンロードしてからしか再
生することが不可能であった。動画ファイルは 1
~3 分程度と短いため大きな容量ではないが,ダウ
ンロードには数 10 秒の時間を要していた。そのた
め,支援ツールを使用した教員から,
「動画再生に
時間がかかる」,「動画内容をテキスト形式で提示
して欲しい」との意見があがり,動画の再生に問
題があることが明らかになった。そこで,ファイ
ルのダウンロードを行いながら動画の再生を行え
る仕様とすると共に,動画の概要をテキスト形式
で提示することで,必要な情報をより短時間で取
得できる Web デザインに変更した。
2.2 授業風景コンテンツの追加
授業風景の撮影は,授業手法をインタビューし
た教員 2 名に行うこととした。授業風景は撮影後,
映像を編集し支援ツールへ導入した。その手順,
方法について以下に記す。
授業風景は教室の前と後ろに設置した 2 台のビ
デオカメラで撮影した(図 1)。教室の後ろに設置
C
C
図 1 授業風景の撮影方法
1
徴的な授業手法が収集できたことに加え,これま
で収集した授業手法との共通点も多く見られた。
このことから,多数の現場での経験を踏まえた,
優れた授業手法の整理と提案を行うことができれ
ば,より効果的に授業手法の提供ができると考え
ている。さらに,各地区に担当教員を配置し,そ
れぞれの教員に授業手法を収集していただき,そ
れを編集した上で,高専機構が運用している KOALA
上で公開する(図 3)ことができれば,全国の高専
教員に対し汎用性の高いツールの提供へと成長す
ることが期待できる。
したカメラは教員用カメラとし,撮影者が常に操
作を行い授業で動き回る教員を追いかける撮影法
とした。一方,教室の前に設置したカメラは学生
用カメラとし,授業中の学生の反応を固定して撮
影した。
撮影した動画は,教員の授業手法に対する学生
の反応を確認するため,教員用カメラで撮影した
動画を上部に,学生用カメラで撮影した動画を下
部に設置し両者が同時に見られるようにパソコン
上で編集を行った(図 2)。
関東・東海・
北陸
地区担当
近畿・四国
地区担当
坪井教員
小関教員
Web編集,
公開担当
松本教員
北海道・東北
地区担当
中国・九州
地区担当
貝原教員
上杉教員
高専機構運用KOALAにて
Webの公開
図 3 支援ツール全国展開の体制
図 2 撮影動画の編集
(上部:教員用カメラで撮影)
(下部:学生用カメラで撮影)
4.おわりに
編集した授業風景は,支援ツール内に導入した。
その際,各授業手法について,インタビュー動画
と授業風景とをセットとなるようにデザインした。
これにより,授業手法が導入された経緯,ポイン
トと実際の授業風景の情報が同時に入手できるこ
とが可能になった。
3.支援ツールの全国展開
3.1 全国展開の体制
これまで授業手法支援ツールは豊田高専内での
展開にとどまっていたが,昨年度よりその活動に
賛同する教員が集まり,共に授業手法支援ツール
のコンテンツの拡充と全国展開をおこなう活動が
開始された。
これまで作成した授業支援ツールの中に,更な
る利便性の向上と内容の充実化を目的として,動
画再生方法の仕様変更と授業風景の撮影とその導
入を行った。これにより,優れた教員の授業手法
のノウハウが現場情報を含めて提供できることに
なり,ツールの完成型を確立することができた。
加えて,このツールの全国展開を開始し,今後新
たな賛同者が増え共に活動を行っていただけるこ
とを期待している。
参考文献
1) 松本嘉孝,小関修:
「若手教員に対する授業手
法の支援について」,平成 20 年度高専教育講
演論文集,pp.197-200(2008)
2) 松本嘉孝,小関修:「ICT を活用した授業手法
支援ツールの開発とその評価」,高専教育,第
33 号,pp.395-400(2010)
3) 民主教育協会:
「教師と学生(付:講義(Lecture)
の方法)」,IDE 教育資料第 44 集(1971)
3.2 現在の活動実績とこれからの活動予定
これまでの活動実績としては,昨年度の 3 月に
豊田高専に集まり,それぞれの教員の授業手法の
収集を行った。豊田高専のみではえられない,特
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