ITV画像を用いた吹雪時の道路視認性数値化技術の開発

と高周波成分が多くなり、比較的単純な画像の場合には低周
波成分が多くなる。本システムでは、
吹雪や霧が濃くなると高周
波成分が少なくなり、
かつ全体にスペクトルが弱くなることを利用
している。特に、
周波数成分は奥行きの知覚に影響すると考え
られている。高周波成分の欠落は、
遠方情報が少なくなってい
ることを意味する。空間周波数の分布が、視界と連結すること
用いた。加えて、人間が知覚できる空間周波数分布に着目し
た。視覚は、聴覚と同様にある空間周波数バンドしか知覚しな
いことがしられている。本アルゴリズムでは、人間のコントラスト
感度特性を評価するために開発された指標で使われている空
間周波数を用いて、
バンドパスフィルタを作成した。画像の空間
周波数とバンドパスフィルタから、残った周波数のパワースペク
トルを合計し、
視認性レベルとして定義した。
2)視認性レベル判定結果と被験者による視認性レベル評
価結果の比較
過去は、
つくば市にある国土技術政策総合研究所(国土交通
省)
の人工霧発生施設で実施した実験結果を用いて、本シス
テムによる評価結果と被験者による視対象物の見やすさ評価
結果を比較した。正常な視覚を持った8人の若年被験者が、
実験に参加した。視対象物として21種類のランドルト環を用意
し、様々なレベルの霧中でのランドルト環の見やすさ評価を行
なった。被験者によるデジタル画像の見やすさの評価と視認性
レベル判定によるパワースペクトルの合計値の結果を比較した。
その相関は高く、視認性レベル判定システムが、被験者による
見やすさ評価を示すことを検証できた。
3)
中山峠における視程値と画像による視認性レベル評価結
果の比較
2004年12月から2005年2月にかけて、
中山峠にてITVカ
メラの画像とその付近の視程計による視程値を蓄積した。
前途
した視認性レベル判定システムを用いて、
蓄積した画像を処理
し、
パワースペクトル値の合計を計算した。一方、
視程計の測定
データから、視程値(m)
を取り出した。両者の相関は、決定計
数で、
0。
74となり高い数値となった。
また、
散布図を見るとプロッ
トは直線となった。絶対値の比較は困難であるが、視認性レベ
ル判定システムは視界の変動を把握する点において視程計と
ほぼ同等の性能を示す可能性があることが分かった。
ただし、
夜間の画像を用いた場合は、昼間に比べて、見やすさ評価が
かなり低くなる傾向と決定係数の低下が見られた。
ITV画像を用いた吹雪時の
道路視認性数値化技術の開
発
萩原 亨 [北海道大学大学院工学研究科/助教授]
金田 安弘 [㈳北海道開発技術センター/調査部長]
大田 祐司 [㈱ドーコン/交通部次長]
背景・目的
吹雪による視程障害は道路の安全性、
快適性を低下させる
一因であり、冬期の視界情報に対するニーズは高い。北海道
の国道には900を超えるITVカメラが整備されており、一部の
道路画像はインターネットでも提供されている。
ITVカメラから送
られる画像から視界状況を評価できれば、
低コストで多地点の
視程障害状況を把握できる。
しかし、画像情報には、受け取る
ために画像表示装置が必要となる、情報の蓄積が難しいなど
の弱点がある。
そこで、
本研究では、
ITVカメラから送られる道
路画像を読み取り、
その視界状況を数値化する視認性レベル
判定システムを構築し、
その検証を行う。
内容・方法
2004年12月から2月にかけて、
中山峠の国道230号に設
置されている15箇所のITVカメラからの画像を蓄積した。
同時
に、
中山峠山頂にて、
視程値を計測した。最初に視認性レベル
判定システム作成した。視認性判定システムは、
4つのパートか
ら構成される。ITVカメラで撮影した道路画像を入力処理する
画像入力部、
画像入力部から出力されるデジタル画像をFFT
処理するFFT処理部、FFT処理部から出力されるスペクトル
データに対して人間の視覚感度を踏まえた空間周波数の帯域
フィルタを適用するフィルタ処理部、
フィルタ処理部の出力結果
を用いて視界状態の評価を行う判定部である。
次に、
視認性レ
ベル判定システムの結果を2つの方法から検証した。
被験者が
ダイレクトに画像を見たときの視認性レベル判定結果と視認性
レベル判定システムによる数値の一致度を検証した。
さらに、
視
認性レベルは、人の見やすさに基づく指標であり、視程値その
ものではない。
しかし、視程値との関係を見出せる状況は存在
する。ITVカメラに近い個所で計測した視程値と「非常に見や
すい」「見やすい」「見づらい」「非常に見づらい」の4段階の視
認性レベルとの関係を検証した。
今後の展望
結果・成果
1)
視認性レベル判定システム
デジタル画像から視認性に関する情報を取り出すアルゴリズ
ムを開発した。本アルゴリズムでは、人間のコンテスト感度が良
好な空間周波数の範囲を特定し、
その範囲のパワースペクト
ル値の合計を視認性レベル判定として用いた。
デジタル画像の
画素単位毎の明るさの濃度分布を周波数成分に分解し、
そ
の分布によりデジタル画像を特徴付けることができる。
これは、
空間周波数と呼ばれ、画像圧縮技術を筆頭に様々な画像処
理技術に応用されている。例えば、
細かい対象物が写っている
デジタル画像の空間周波数を用いた画像を用いた視認性
レベル判定結果と、被験者がダイレクトにその画像の見やすさ
を評価した結果を関連付けることが可能であることを示すこと
ができた。
また、実際のITV画像に視認性レベル判定システム
に適用し、
その出力値と視程値の相関も検証した。
日中の画像
にといて、高い相関を示した。
しかし、
日中のみの成果を示した
のみであり、夜間画像については今後の課題となった。加えて、
実際の道路監視用カメラ画像を処理することは難しい。様々な
雑音があり、
背景が一定とならない、
雪や雨レンズに付着するな
ど複雑な条件を抱えている。今後、
このような課題をクリアする
ため画像処理アルゴリズムのさらなる開発が必要である。
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