くまもとDIニュース №263(2002.7) 2002.7 No.263 〒860-0003 熊本市古城町1-2 (社) 熊本県薬剤師会 医薬情報センター TEL. 096 (351) 5333 FAX. 096 (351) 5357 http://www.kumayaku.or.jp/ ユーザー名:kpa パスワード:kumayaku 薬 事 情 報 お 知 ら せ ○正誤表(今回:第3回更新分) 品 名 メーカー名 誤 正 外用薬 アクリノール01 . %液「ヨシダ」 吉田製薬 後発品 空欄 外用薬 アクリノール02 . %液「ヨシダ」 吉田製薬 後発品 空欄 外用薬 アクリノール液「ヨシダ」 吉田製薬 後発品 空欄 −1− くまもとDIニュース №263(2002.7) いわゆる「マジックマッシュルーム」の麻薬原科植物としての指定について 麻薬成分であるサイロシビン、サイロシンを含有する幻覚性を有するきのこ類(いわゆる マジックマッシュルーム)については、一部の繁華街での街頭販売やインターネット、雑誌 の通信販売などで比較的廉価に入手できることもあって、特に青少年の間でのその乱用が近 年大きな問題となっていました。このため、本年4月2 6日の閣議において、 「麻薬、向精神薬 原料を指定する政令」の一部改正が決定され、マジックマッシュルームを「麻薬及び向精神 薬取締法」に規定する麻薬原料物質として指定し、その規制を行うこととされました。 なお、これに先立って、厚生労働省が、マジックマッシュルームを麻薬原料物質として指 定することについて、本年3月7日から4月3日まで同省のホームページ等を通じて広く意 見(パブリック・コメント)を募集したところ、述べ2 7 0件の意見、要望(うち1件について は31 1件の署名)が寄せられています。 麻薬原料物質とは、麻薬成分を製造(抽出)する際の原料となり得る植物として「麻薬及 び向精神薬取締法」の別表第2に掲げられているもので、今回の改正では、同表第4号の規 定に基づき、次の植物が、麻薬原料物質として指定されました。 (なお、今回の指定に伴ない、 政令の名称が「麻薬、麻薬原料物質、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」に改 められました。 ①3― [(2―ジメチルアミノ)エチル] ―インドール―4―イルリン酸エステル(別名 サ イロシビン)及びその塩類を含有するきのこ類(厚生労働大臣が指定するものを除く) ②3―[ (2―ジメチルアミノ)エチル] ―インドール―4―オール(別名 サイロシン)及 びその塩類を含有するきのこ類(厚生労働大臣が指定するものを除く。 ) 今回の改正法令は本年5月7日に公布され、6月6日から施行されますが、マジックマッ シュルームが麻薬原料物質として指定されたことにより、 「麻薬及び向清新薬取締法」に基づ きその栽培が禁止されるほか、麻薬として、輸出入、製造、譲渡・授受、所持、使用、広告 が禁止され、これらを不正に行った者に対しては、懲役刑を含む罰則が適用されることとな るため、乱用防止に大いに効果を発揮することが期待されます。 参考:薬物乱用防止「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ(http://www.dapc.or.jp/data/other/index.htm) ※日本国内で自生するものは以下のとおりです。 ヒトヨタケ科:センボンサイギョウガサ、ワライタケ、ヒカゲタケ モエギタケ科:ヒカゲシビレタケ、オオシビレタケ、アイセンボンタケ −2− くまもとDIニュース №263(2002.7) 医薬品・医療用具等安全性情報177号 ※この情報は厚生労働省医薬品情報提供ホームページで閲覧できます。 http://www.pharmasys.gr.jp/iyaku_anzen/anzen_index.html 緊 :緊急安全性情報の配布 ○ 使 :使用上の注意の改訂 ○ 症 :症例の紹介) 情報の概要(○ No. 医薬品等 対策 情報の概要 重篤な皮膚障害 医薬品の副作用としてスティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘 膜眼症候群),中毒性表皮壊死症等の重篤な皮膚障害がある。これらの 副作用の発生頻度は極めて低いものの,発症すると予後不良となる場 合があり,皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器官などに障害を残すこ とがある。 これらの重篤な皮膚障害については, 2000年(平成12年) 11 月発行の「医薬品・医療用具等安全性情報 No.163」において紹介し たところであるが,今般,スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚 粘膜眼症候群),中毒性表皮壊死症等について改めて注意を喚起するた め,厚生労働省への副作用症例報告等をまとめて紹介する。 2 アジスロマイシン水和物 使 ○ 症 ○ アジスロマイシン水和物は,2000年(平成12年)3月に承認された マクロライド系抗生物質である。 本剤によるスティーブンス・ジョン ソン症候群(皮膚粘膜眼症候群),中毒性表皮壊死症及びショックにつ いては,海外での市販後の成績に基づき,2000年(平成12年)6月の 発売時より「重大な副作用」として使用上の注意に記載し,注意を喚 起してきた。 発売以降,本剤との因果関係を否定できないスティーブ ンス・ジョンソン症候群21例,中毒性表皮壊死症1例,ショック(ア ナフィラキシー様症状を含む。)25例が報告されたことから,「重要な 基本的注意」の項に本剤投与時の患者への説明等を追記するなど使用 上の注意を改訂し,より一層の注意喚起を行うこととした。 3 サラゾスルファピリジン他(3 件) 使 ○ 症 ○ 前々号(医薬品・医療用具等安全性情報No.175)以降に改訂を指導 した医薬品の使用上の注意のうち重要な副作用等について,改訂内容, 参考文献等とともに改訂の根拠となった症例の概要に関する情報を紹 介する。 1 1.サニルブジン 2.フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル, フェノバルビタールナト リ ウ ム,塩 酸 ク ロ ル プ ロ マ ジ ン・塩 酸 プ ロ メ タ ジ ン・フェノバルビタール, 臭 化 メ ペ ン ゾ ラ ー ト・ フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル,プ ロ キ シ フ ィ リ ン・塩 酸 エ フ ェ ド リ ン・フ ェ ノ バ ル ビタール 3.ゾニサミド 4.カルバマゼピン 4 5.プレドニゾロン(経口剤), コハク酸プレドニゾロン ナ ト リ ウ ム,リ ン 酸 プ レ ドニゾロンナトリウム 6.グリメピリド 7.シクロスポリン 8.テ ガ フ ー ル・ギ メ ラ シ ル・オテラシルカリウム 9.メルカプトプリン 10.クエン酸トレミフェン 11.塩酸クリンダマイシン 12.リン酸クリンダマイシン 13.芍薬甘草湯 14.メキタジン含有製剤 使用上の注意の改訂について(その135) −3− 薬価基準追補収載医薬品 品目名(会社名) 成分名 内2160 レルパックス錠200mg 劇○ 指○ 要 (ファイザー製薬) ○ 臭化水素酸エレト リプタン アセチルシステイン内用 76 . %「センジュ」 内3929 液1 アセチルシステイン (千寿製薬- 武田薬品) 薬効分類 規制区分 平成14年6月7日官報告示 20mg1錠 176 . %1mL 規 格 識別コード 10 , 253 .0 Pfizer REP20 1124 . 0 なし 薬 価 備 考 国内3番目のトリプタン系片頭痛治療薬。セロトニン受容体(5-HT 1B/1D)に選択的に作用して頭蓋血管を収縮させることにより、片 頭痛発作やそれに伴う嘔気などの随伴症状を改善する。平成14年7月 5日発売予定。 【効能・効果】片頭痛 【用法・用量】通常、成人にはエレトリプタンとして、1回20mgを片 頭痛の頭痛発現時に経口投与する。なお、効果が不十分な場合には、 追加投与をすることができるが、前回の投与から2時間以上あけるこ と。また、20mgの経口投与で効果が不十分であった場合には、次回片 頭痛発現時から、40mgを経口投与することができる。 ただし、1日の総投与量を40mg以内とする。 【薬価基準収載医薬品コード】2160005F1021 【包装】20mg10錠 グルタチオンの前駆物質であり、アセトアミノフェン過量摂取時の解 毒を効能・効果とする新投与経路医薬品。発売日未定。 【効能・効果】アセトアミノフェン過量摂取時の解毒 【用法・用量】通常、本剤または本剤を希釈した液を、初回にアセチ ルシステインとして140mg/kg、次いでその4時間後から7 0mg/kgを4 時間毎に17回、計18回経口投与する。経口投与が困難な場合には、胃 管又は十二指腸管により投与する。投与後1時間以内に嘔吐した場合 は、再度同量を投与する。 【薬価基準収載医薬品コード】3929006S1022 【包装】20mL×1 0 ※内容についての詳細な情報又は正確な情報は、添付文書等をご参照下さい。薬価については官報をご確認下さい。 ※会社名中、2社をハイフンで結んだものは、前者が製造元、後者が販売元であることを示し、=印で結んだものは、前者が製造、両者で販売する品目であることを示す。 くまもとDIニュース №263(2002.7) −4− 品目名(会社名) 内6241 ガチフロ錠1 00mg 指○ 要 ○ (杏林製薬=大日本製薬) 薬効分類 規制区分 ガチフロキサシン 成分名 100mg1錠 規 格 識別コード 備 考 日本で初めてキノロン骨格の8位にメトキシ基を導入した Eight Methoxy Quinolone(EMQ)である。従来のニューキノロン(NQ)系 抗菌剤の課題であった肺炎球菌をはじめとするグラム陽性菌に加え て、クラミジア・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマやペニシリン耐 性肺炎球菌(PRSP)等の多剤耐性菌にも強い抗菌力を示す。安全性 の面では、NQ剤特有の光線過敏症の軽減化が期待される。平成1 4年 6月11日発売。 【効能・効果】ブドウ球菌属、レンサ球菌属、腸球菌、肺炎球菌、淋 菌、モラクセラ(ブランハメラ) ・カタラーリス、大腸菌、シトロバ クター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロ テウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌、イ ンフルエンザ菌、バーグホルデリア・セパシア、ステノトロホモナス (キサントモナス)・マルトフィリア、アシネトバクター属、ペプト ストレプトコッカス属、バクテロイデス属、アクネ菌、クラミジア・ トラコマティス、クラミジア・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマの うち本剤感性菌による下記感染症 (薬 物 本 体) 〇表在性皮膚感染症(急性表在性毛包炎)、深在性皮膚感染症(蜂巣 1502 .0 ガチフロ100 炎、丹毒、リンパ管(節)炎、せつ、せつ腫症、よう、化膿性爪囲炎、 ひょう疽)、慢性膿皮症(感染性粉瘤、化膿性汗腺炎、皮下膿瘍) 〇乳腺炎、肛門周囲膿瘍、外傷・手術創等の表在性二次感染 〇急性上気道感染症群(扁桃炎、咽喉頭炎、急性気管支炎等) 、慢性 呼吸器疾患の二次感染(慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎、気管 支拡張症、肺気腫、肺線維症、気管支喘息等)、肺炎 〇腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、淋菌性尿道炎、非淋菌性尿道炎 〇バルトリン腺炎、子宮頸管炎、子宮内感染、子宮付属器炎 〇涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎 〇外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎 〇歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎 【用法・用量】通常、成人にはガチフロキサシンとして、1回2 00mg を1日2回経口投与する。なお、疾患・症状により適宜減量する。 【薬価基準収載医薬品コード】6241014F1029 【包装】PTP包装:1 00錠(10錠×1 0) 500錠(10錠×5 0)1000錠(10錠× 100) バラ包装:500錠 薬 価 くまもとDIニュース №263(2002.7) −5− オフサグリーン静注用25mg (参天製薬) 品目名(会社名) 注3999 注射用エラスポール100 指○ 要 ○ (小野薬品工業) 注7290 薬効分類 規制区分 シベレスタットナ トリウム水和物 インドシアニング リーン 成分名 100mg1瓶 25mg1瓶 (溶解液つき) 規 格 備 考 急性肺障害の発症に深く関与している好中球から放出されるエラスターゼを 選択的に阻害し、低下した呼吸機能を改善することで人工呼吸器の装着期間 を短縮させるので、患者の人工呼吸器の装着による強いストレスや呼吸器感 染症の併発を減少させることが可能。又、人工呼吸器の早期離脱により集中 61 , 67 治療室(ICU)からの退出を早めることで、医療コストの削減効果も期待され る。平成14年6月17日発売。 【効能・効果】全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害の改善 【薬価基準収載医薬品コード】3999422D1020 第一製薬株式会社が肝機能検査および循環機能検査用薬として製造・販売し ているインドシアニングリーンを眼科用に応用した蛍光眼底造影剤。本剤は これまでの眼底造影剤では不十分であった網膜色素上皮下や出血下の網脈絡 膜疾患の診断が可能な唯一の検査薬。欧米において中途失明原因の第一位を 17 , 66 占め、また我が国においても急速に患者数が増加している、滲出型加齢黄斑 変性を始め、各種の眼底疾患の診断に使用される。発売未定。 【効能・効果】網脈絡膜血管の造影 【薬価基準収載医薬品コード】7290412F10 21 【包装】未定 薬 価 くまもとDIニュース №263(2002.7) −6− 品目名(会社名) セレベント25ロタディスク 外2259 セレベント50ロタディスク 指○ 要 ○ (グラクソ・スミスクライン) キュバール5 0エアゾール 外2259 キュバール 1 00エアゾール 指○ 要 ○ (シェリング・プラウ) 薬効分類 規制区分 キシナホ酸サルメ テロール プロピオン酸ベク ロメタゾン 成分名 25μg1ブリスター 50μg1ブリスター 7mg87 . g1瓶 15mg87 . g1瓶 規 格 備 考 長時間作動型吸入気管支拡張剤。ドライパウダー剤の気管支拡張薬(吸入β2 刺激薬)であり、1回の吸入でその作用が約12時間にわたり持続し、症状を 緩和し、さらに喘息発作の発現を予防する。本剤は、発作治療薬として使用 する短時間作動型吸入β2刺激薬とは使用方法が異なり、1日2回、定期的に 吸入し、コントローラー(長期管理薬)として使用する国内初の長時間作動 型吸入β2刺激薬である。また、同じコントローラーである「フルタイド」の ような吸入ステロイド薬(抗炎症薬)と併用させることにより、気道の炎症 と収縮による症状の管理という両側面から喘息をコントロールすることがで 513 .0 きる。 699 .0 【効能・効果】下記疾患の気道閉塞性障に基づく諸症状の緩解 気管支喘 息、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫) 【用法・用量】成人にはサルメテロールとして1回50μgを1日2回朝および 就寝前に吸入投与する。小児にはサルメテロールとして1回25μgを1日2回 朝および就寝前に吸入投与する。なお、症状に応じて1回50μg1日2回まで 増量できる。 【薬価基準収載医薬品コード】2 5ロタディスク:2 2 59 70 8G1022、5 0ロタディ スク:2259708G2029 【包装】(4ブリスター×14)×2 喘息の維持療法に広く用いられているプロピオン酸ベクロメタゾンを主薬と する定量噴霧式吸入剤。本剤は、噴射剤としてオゾン層を破壊しない代替フ ロン「HFA-134a」が使用されている。また、薬物送達性の改善により、既存 のプロピオン酸ベクロメタゾン定量噴霧式吸入剤の半量で同等の効果が期待 33 , 274 . 0 される製剤。1容器の噴霧回数100回。平成14年8月5日発売予定。 44 , 088 . 0 【効能・効果】気管支喘息 【用法・用量】成人には、通常1回100μgを1日2回口腔内に噴霧吸入する。 なお、症状により適宜増減するが、1日の最大投与量は80 0μgを限度とする。 【薬価基準収載医薬品コード】5 0エアゾール:2 259703G9020、1 00エアゾー ル:2259703Y1025 【包装】1缶、10缶 薬 価 くまもとDIニュース №263(2002.7) −7− くまもとDIニュース №263(2002.7) D I 実 例 Q.1 乳幼児の医薬品誤飲事故を防ぐために−チャイルドセーフティキャップ ●減らない医薬品の誤飲事故 厚生労働省が発表した「平成1 2年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告」によると、小 児の家庭用品等の誤飲事故は年間約8 0 0件発生している。また、日本中毒情報センターの「2 0 0 0年 受信報告」によると、0歳∼5歳までの乳幼児の誤飲事故は約2万9千件となっている。誤飲し た物の中では、 「医薬品」は「たばこ」についで2番目に多く、この傾向は過去1 0年間続いている。 これだけの医薬品誤飲事故が毎年発生しているという事実をどれだけの薬剤師が認識しているの だろうか? 表1:年度別・家庭用品等の小児の誤飲事故のべ報告件数(上位1 0品目) 平成10年度 平成11年度 368 (493 . ) タバコ 平成12年度 1 タバコ 360 (452 . ) タバコ 2 医薬品・医薬部外品 87 (116 . ) 医薬品・医薬部外品 122 (153 . ) 医薬品・医薬部外品 108 (137 . ) 385 (488 . ) 3 金属製品 40 (54 . ) 玩具 56 (70 . ) 玩具 51 (65 . ) 4 プラスチック製品 34 (46 . ) 金属製品 43 (54 . ) 洗剤・洗浄剤 34 (43 . ) 5 玩具 26 (35 . ) プラスチック製品 37 (46 . ) 金属製品 27 (34 . ) 6 化粧品 26 (35 . ) 洗剤・洗浄剤 27 (34 . ) 硬貨 24 (30 . ) 7 洗剤・洗浄剤 25 (33 . ) 電池 24 (30 . ) プラスチック製品 23 (29 . ) 8 硬貨 24 (32 . ) 硬貨 23 (29 . ) 化粧品 23 (29 . ) 9 電池 23 (31 . ) 化粧品 19 (24 . ) 食品類 16 (20 . ) 10 乾燥剤類 15 (20 . ) 食品類 13 (16 . ) 電池 14 (18 . ) 総数 747 (1000 . ) 797 (1000 . ) 789 (1000 . ) *平成10年度、11年度は芳香、消臭、脱臭剤はそれぞれ別個に計上されており、それぞれ合計は20、26。 (平成12年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告より) 驚くことに、乳幼児の誤飲事故の再発率は約1割と言われている。なぜ、繰り返しこのような 事故が起きるのか?これは、医薬品の保管に対する意識の低さの現われではないだろうか?私た ち薬剤師は服薬指導の際に薬効説明はしても、薬の保管方法まで十分に説明しているとは言い難 い。 「薬は子供の手の届かないところに保管してください」という説明だけ果たして十分なのだろ うか? ●日米の意識の違い−チャイルドプルーフ(Child Proof) 米国の薬局の調剤室と日本の調剤室には大きな違いがある。米国の調剤室には錠剤棚がなく、 棚の上に医薬品のボトルが所狭しと並べてある。これらのボトルはカプセルや錠剤のバラ包装で あり、調剤室を見渡してもPTPシート(Unit Dose)を見つけることは難しい。同じ薬局なのにこ の違いは何か? −8− くまもとDIニュース №263(2002.7) アメリカでは処方せん調剤をする場合、右の写真のよう にプラスチックのボトルに錠剤やカプセルをバラで入れて いる。経口避妊薬などシートがカレンダーになっているよ うな特殊な医薬品以外、PTPシートで調剤することはない。 なぜPTPシートを使わないのか? 米国には、調剤する時、全ての薬剤はChild Proof(子供 には開けられない工夫をした容器)の容器に入れて患者に 渡さねばならないという連邦法が存在する。そしてこの法 律ではPTPシートは「完全なChild Proofでない」と定義しているため、PTPシートではなく、バラ のカプセルや錠剤を子供に開けられないキャップ付き瓶に入れて患者に渡すことになる。 日本人的発想では吸湿性や衛生面が気になるところだが、米国ではそれらよりはるかに安全性 が重視されているのである。ただし、ニトログリセリンだけは例外である。なぜなら、発作時に Child Proofキャップを開けられずニトログリセリンの使用ができず、死亡した例が出たためであ る。 ちなみに、病院ではPTPシートがほぼ10 0%使用されている。これは薬剤の管理が院内のナース や薬剤師によって管理されているため、子供達が間違って開ける可能性がないからである。 ●チャイルドセーフティキャップ(Child safety cap) 米国で通常使用されている医薬品の容器には チャイルドセーフティーキャップ(Child safety cap)が取りつけられている。例え乳幼児が医薬 品の入った容器を手にしても、容易に開けられ ないような工夫が施してあり、ただ回しただけ ではクルクルと空回りとするだけで開けること はできない。押しながら回さないと蓋が開かな い仕掛けになっている(右写真) 。 我が国での乳幼児の医薬品誤飲事故の多くは、薬がテーブルの上に放置されていたなど医薬品 の保管を適切に行っていなかった時や、薬を飲ませた直後保護者が目を離した隙に発生している。 また、シロップ剤のように子供が飲みやすいように味付けしてある医薬品は、子供がジュースと 混同して、冷蔵庫に保管していても目につけば自ら取り出して飲んでしまうこともある。 小児用シロップ剤の味付けについても、日米の意識の違いが現れている。米国では誤飲事故を 防ぐために小児用シロップ剤の味を敢えてまずくするのに対して、日本ではなるべく飲ませやす いようにシロップ剤の味を子供の味覚に合わせて工夫している。この結果、家族が目を話した隙 にシロップ剤をまるごと飲みほしてしまうという誤飲事故が複数発生している。これらの事例を −9− くまもとDIニュース №263(2002.7) 受けて、一部の小児科医院では既にチャイルドセーフティキャップを用いた投薬瓶を使用してい る。これは、金鵄(きんし)製作所(電話:04 9-26 1-4 0 4 0)が製造販売しているもので、米国の ものと同様に押しながら回さないと蓋が開かないように作られている。このような容器を利用す れば、少なくとも小児用シロップ剤の誤飲事故は確実に減らすことができるだろう。 写真:セーフティーキャップ ●乳幼児が誤飲する可能性があるもの 乳児の誤飲が始まるのは手当たり次第に物を掴むようになる生後5ヵ月からで、伝い歩きがで き始める8∼10ヶ月が一番多い。過去の事例では、誤飲したものが置かれていたのは高さ5 0cm以 下が大半である。日本人の生活様式が畳中心で、家庭内の生活空間が低いことが誤飲事故の誘引 になっている。また3歳未満児は直径3 9mm長さ5 1mm以下のものを飲みこめるとされている。 5 0 0 円玉の直径が約2 6mmということを考えれば、かなりのものを飲みこめることが容易に想像でき る。最近は「誤飲チェッカー」や「誤飲防止ルーラー」という商品も市販されており、これらを 使えば容易に誤飲の危険性があるかどうかを判定できる。 写真と図:誤飲チェッカー(社団法人 日本家族計画協会) −10− くまもとDIニュース №263(2002.7) ●医薬品の保管方法 乳幼児の医薬品誤飲は、大量に誤飲したり、効力の強い薬を誤飲したりしがちで、時に重篤な 障害をもたらす恐れがあるので家庭内での医薬品類の保管・管理には十分な注意が必要である。 誤飲の危険性のあるものは厳重な保管をするように、薬剤師として投薬時に注意喚起を行うこと が必要である。乳幼児の医薬品誤飲事故を防ぐための保管上のポイントは以下のとおりである。 特に①は医薬品に限らず、危険物全てが対象となる。 ①冷蔵庫や引出しも含めて、医薬品を高さ1メートル以下に保管しないこと。どうして も低いところに保管するときは鍵をかけて保管する。 ②乳幼児に投薬する時や家族が服薬する時には、医薬品を座卓の上などに放置しない ③配置薬や一般薬は医薬品の名前がわかるように説明書と共に整理して保管する ④医療用医薬品は薬袋や説明書と共に保管し、残薬は速やかに処分し、大体の残量を把 握する ●医薬品誤飲事故の相談を受けたときの対応 医薬品の誤飲事故について相談を受けたとき、まず確認しなければならないことは以下のとお りである。 患者の年齢、体重、性別 中毒起因物質(正確な商品名、会社名、用途) 中毒事故の発生状況(摂取量、摂取経路、発生時刻) 患者の状態(来院時の症状、現在の症状) 問い合わせまでに行なわれた処置 特に、乳幼児の誤飲事故の場合、医薬品をPTPシートのままで飲みこんだのかどうかで対応が 大きく異なるので、必ずPTPシートの殻が残っていたかどうかを確認する。また、保護者の医薬 品管理状況が悪い場合、残っている医薬品の数からでは誤飲した量がわからないこともある。 4 0年前に実際に起きた事例だが、子供が誤飲した医薬品を母親が「ヘマトンTM錠3錠(硫酸鉄 製剤、現在は製造中止) 」と申告したので、医師は特に処置を行わず経過観察で患児をいったん帰 宅させた。ところが3時間後その患児が再び運ばれ、数時間後治療の甲斐なく死亡した。解剖の 結果、胃からはヘマトンTM錠と思われる錠剤の塊3 6錠が見つかり、胃穿孔も起こしていた。死因 は硫酸鉄中毒によるショック死であった。 このように、乳幼児の誤飲事故の場合、情報収集を誤ると不幸な転帰を招くこともあるのでで きるだけ詳細に情報収集を行う。また、当センターでもよく尋ねられることだが、処方された複 −11− くまもとDIニュース №263(2002.7) 数の医療用医薬品を常備薬のように大量に保管していて、それを乳幼児が誤飲してしまうことが ある。この場合、医薬品の種類と量がわからないために対応に苦慮することが多い。患者には常 日頃から、医薬品は必要以上に長期間保管しないこと、必ず薬袋に入れて薬剤情報提供書と共に 保管をすることを指導すべきである。 不幸にも医薬品の誤飲事故が起きたときの問い合わせ先は、日本中毒情報センターが開設して いる24時間対応の「大阪中毒1 1 0番」が最も適しているが、残念ながらめったに電話はつながらな い。 大阪中毒11 0番(3 6 5日 2 4時間対応) 0990−5 0−2 4 9 9 ダイヤルQ2:通話料と情報料(1件3 0 0円)がかかる 06−687 8−1 2 3 2 医療機関専用有料電話:1件20 ,0 0円 やはり、薬剤師は医薬品を扱う立場として、各薬局ごとに中毒関連の資料を常備しておくべき だろう。当センターの参考書籍は以下のとおりである。 第3版急性中毒処置の手引き 監修:鵜飼 卓 編集:日本中毒情報センター 発行:じほう 定価:本体74 , 00円(税別) 薬・毒物中毒救急マニュアル改訂6版 監修:西 勝英 著者:西 玲子・福永栄子・渡辺せい子・守田美和 発行:医薬ジャーナル社 定価:本体49 , 00円(税別) また、薬毒物等の誤飲時の初期治療に使用できる催吐剤としてトコンシロップ(ツムラ:TJN11 9)が承認されているが発売は未定となっている。 参考資料: 1) 社団法人 日本家族計画協会ホームページ http://www.jfpa.or.jp/ 2) 平成1 2年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1227- 2a.html 3) 日本中毒情報センター;2 000年受信報告,中毒研究,1 42 , 1 , 452 , 001 4) たばこ、医薬品…後絶たない乳幼児の誤飲 生後5ヵ月から予防,熊本日日新聞,平成1 1年11月9日朝刊 −12− くまもとDIニュース №263(2002.7) 定期購読誌から 当センターの定期購読誌から、主な項目をご紹介します。閲覧ご希望の方はお申し出ください。 タイトル 特別企画 思春期 ひきこもり 学校精神保健の役割 ステロイド骨粗鬆症 21世紀の大学病院 特集 生殖補助医療をどう考えるか 女性内科シリーズ 潰瘍性大腸炎と妊娠・出産 特集 院内感染の防止−薬剤師が行う感染対策− 服薬指導での職業感染防止 B型・C型肝炎、HIV 院内感染対策マニュアルの作成 アメリカPharm.Dコース合格までの7年 (1) 薬剤師がアメリカで勉強する理由 特集 総合診療医・家庭医のためのリウマチ、膠原病の診かた リウマチ、膠原病患者の妊娠・出産について Q. 膠原病の漢方治療にはどのようなものがありますか? EBMで検証 (1) 慢性心不全に対するβ遮断薬治療は有効か? 特集 知っておきたい拮抗薬、処置薬の使い方 タバコ誤飲・誤食と催吐剤 特集 肥満症とその治療 4.薬物療法1)食欲抑制薬 4.薬物療法2)代謝促進剤 横紋筋融解症に関する副作用情報の評価と活用 臨床現場で要求される薬学的基礎知識8 適正な薬の服薬方法(1)−患者はどのくらいの水の量で内服しているか∼ 薬剤師のための臨床知識(第11回)住まいの健康−シックハウス(1) 調剤室は薬学の宝箱(3) 少量の抗生物質が長期間処方されている患者 −マクロライド薬の新しい作用− セルフケアをサポートする検査薬・検査器具の知識(3) 血糖自己測定器 特集1 新世紀の耐性菌対策−日本薬学会第122年会より キャンディン系抗新菌薬 特集2 マイ・ペイシェント−心に残る患者、私を変えた患者 質疑応答 妊娠中の喘息患者へのステロイド吸入剤の使用 質疑応答 調剤薬局による訪問看護ステーション経営 質疑応答 診療所経営からみた医薬分業のメリットとデメリット 質疑応答 心室性頻拍に対するカルシウム拮抗薬の使用可否 質疑応答 食物アレルギー患者の自己対処法 質疑応答 血圧コントロールにおける脈拍数の考え方 質疑応答 糖価指数(GI)の意義 体重減少性無月経とメラトニン 心肥大の基礎と臨床 気の生物学−Gas biologyと病態 ファーマコゲノミクスとテーラーメイド医療 15.消化器・肝疾患とチトクロームP450分子種 −肝硬変とCYP3A4活性の低下、肝癌とCYP2C19遺伝的多型 18.精神疾患におけるテーラーメイド医療の可能性 微小循環 −13− 雑誌名 からだの科学 からだの科学 からだの科学 からだの科学 からだの科学 産科と婦人科 産科と婦人科 薬局 薬局 薬局 巻 号 頁 225 225 46 225 84 225 94 増 69 69 53 53 53 6 6 6 6 6 薬局 53 6 133 治療 治療 治療 治療 臨床と薬物治療 臨床と薬物治療 医薬ジャーナル 医薬ジャーナル 医薬ジャーナル 医薬ジャーナル 84 84 84 84 21 21 38 38 38 38 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 135 156 175 医薬ジャーナル 38 6 147 調剤と情報 8 6 11 調剤と情報 8 6 31 調剤と情報 8 6 43 月刊薬事 月刊薬事 月刊薬事 日本医事新報 日本医事新報 日本医事新報 日本医事新報 日本医事新報 日本医事新報 日本医事新報 日本医事新報 医学のあゆみ 医学のあゆみ 医学のあゆみ 44 44 44 7 7 53 7 4073 96 4073 101 4073 101 4074 86 4074 90 4075 91 4075 98 4076 9 201 7 201 8 201 9 医学のあゆみ 201 医学のあゆみ 医学のあゆみ 201 9 683 201 10 9 783 3 75 583 83 89 99 665 くまもとDIニュース №263(2002.7) 医薬分業推進支援センターの利用のしかた 受付時間:月∼金曜日 8:30∼18:00 土曜日 8:30∼17:00(日曜・祝休日は除く) 熊本県薬剤師会調剤薬局(TEL:096-325-3210 FAX:096-356-0431) 業務内容:調剤業務、備蓄業務、研修業務など E-mail:kpa-rx@aaanet.or.jp 医薬情報センター (TEL:096-351-5333 FAX:096-351-5357) 業務内容:医薬品情報提供 (くまもとDIニュース)、医薬品等に関する質疑 応答、文献検索、消費者くすり相談窓口など E-mail:kpa-di@aaanet.or.jp 〒860-0003 熊本市古城町1-2 (社) 熊本県薬剤師会医薬分業推進支援センター http://www.kumayaku.or.jp/ ユーザー名:kpa パスワード:kumayaku 【 5 月の問い合わせ件数】 分 類 一般消費者 薬 剤 師 件 数 A.デパス錠の無包装状態での安定性試験で 35 薬局 病院 47 13 その他 1 は、温 度 (40度3 ヶ 月) 、 湿度 (25度75% RH3 ヶ月) 、光 (60万lxs・hr) いずれも変 化なしとされているので、特に乾燥剤は 必要ないだろう。参考資料:錠剤・カプ 医師会 9 歯科医師会 0 セル剤の無包装状態での安定性情報,医 薬種商・配置薬 0 薬ジャーナル社 その他医療 0 メーカー 0 卸 5 行政・保健所 4 教育 2 担当者から一言 県外 13 ♪平成9年8月号(204号)から今月号(263 その他 2 号)まで「くまもとDIニュース」に携わっ 131 てきましたが、6月末をもちまして退職 合計 することになりました。この間、ホーム ページを立ち上げたり、備蓄医薬品検索 【その他の質問例】 データベースを立ち上げたりと、医薬品 Q.亜鉛化軟膏の組成が第12改正日本薬局 情報に関わらず様々な業務に関わること 方で精製ラノリンから流動パラフィンに ができたことは、私にとって非常に貴重 変更された理由(薬局) な経験でした。7月からは一会員として A.精製ラノリンは皮膚アレルギーを誘発す 医薬情報センターをサポートしていくつ る可能性があるということで、流動パラ もりです。5年間、ご指導ご支援いただ フィンに変更された。 いた諸先生方に心よりお礼を申し上げま Q.デパス錠半錠を分包したものを旅行に す。ありがとうございました 持っていくとき、乾燥剤を使用すべき (中山麻起子) か?(一般消費者) −14−
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