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くまもとDIニュース №250(2001.6)
2001.6
No.250
〒860-0003 熊本市古城町1-2 (社)
熊本県薬剤師会 医薬情報センター
TEL.
096
(351)
5333 FAX.
096
(351)
5357
http://www.kumayaku.or.jp/ ユーザー名:kpa パスワード:kumayaku
薬 事 情 報
お 知 ら せ 効能追加・新効能 ◎必ず添付文書で用法用量を確認して下さい。
製品名(メーカー)
追加・新効能
承認
オパルモン錠
(小野薬品)
後天性の腰部脊柱管狭窄
症(SLR試験正常で、両
側性の間欠跛行を呈する
患者)に伴う自覚症状(下
肢疼痛、下肢しびれ)お
よび歩行能力の改善
プロレナール錠
(大日本製薬)
用法・用量
リマプロストは低下した馬尾神経の栄養血管
の血流量を増加させることにより神経機能障
害を改善し、下肢の疼痛、下肢のしびれおよ
び歩行能力(間欠跛行)を改善する薬剤で、
腰部脊柱管狭窄症に伴う諸症状を緩解する。
【用法・用量】
後天性の腰部脊柱管狭窄症(SLR試験正常で、
両側性の間欠跛行を呈する患者)に伴う自覚
症状(下肢疼痛、下肢しびれ)および歩行能
2001/4
力の改善には、通常成人に、リマプロストと
して1日15μgを3回に分けて経口投与する。
【重要な基本的注意】 1)腰部脊柱管狭窄症に対しては、症状の経
過観察を行い、漫然と継続投与しないこ
と。 2)腰部脊柱管狭窄症において、手術適応と
なるような重症例での有効性は確率して
いない。
−1−
くまもとDIニュース №250(2001.6)
−2−
くまもとDIニュース №250(2001.6)
D I 実 例
Q.1
フェナセチンの腎毒性について
一般消費者
●医療用フェナセチン含有医薬品の供給停止
平成1
3年4月19日付、厚生労働省は医療用フェナセチン含有医薬品の供給停止について発表し
た(くまもとDIニュース24
9号参照)
。マスコミがこのニュースを報道比較的大きく取り扱ったた
め、医療関係者だけでなく消費者からの問い合わせも少なくなかった。
厚生労働省が供給停止の要請に踏み切った背景には、昭和52年の使用上の注意改訂(長期連用
しない旨等の記載)
、昭和5
7年1
1月の厚生省医薬品情報「フェナセチンの腎毒性と発癌性について」
等で医療関係者に対して注意喚起を行ってきたにもかかわらず、濫用の実態が広がっている蓋然
性が極めて高いと判断されたからである。これは、医療用フェナセチン含有医薬品の総出荷量が、
最近10年間で約14
. 倍に増加していることからも容易に推測できる。
一般用フェナセチン含有医薬品については、長期連用の危険性があることから、昭和57年以降
認められておらず、現在は市販されていない。
●フェナセチンとは?
フェナセチンはパラアミノフェノール系の解熱鎮痛薬である。アスピリンに類似の中枢性の鎮
痛作用と解熱作用を有するが、抗炎症作用は弱い。鎮痛作用の他にも、緊張の緩和、不安除去な
どの中枢神経に対する作用があると考えられている。
経口投与されたフェナセチンは胃腸管からほぼ完全に吸収される。最高血中濃度到達時間は
250mg経口投与で1時間、血漿蛋白結合率は30%とされている。吸収されたフェナセチンは、主
として肝臓で種々の経路により代謝され、代謝物は10種類以上にものぼると言われているが、通
常は75∼80%が酸化的脱エチル化によりアセトアミノフェンになるとされている(図1参照)
。こ
の脱エチル化反応に高い親和性を持つのはCYP1A2である。
排泄部位は腎臓で、投与後7
2時間までの全排泄量は投与量の8
34
. %であり、主として尿中へ排
泄される(721
. %)。糞中への排泄は36
. %、半減期は1時間。投与後2
4時間までの尿中排泄量は投
与量の70%である。
鎮痛効果は、痛覚伝達路の視床における求心性シナプスの感受性を低下させ、疼痛閾値を上昇
させることによる。また、視床下部の体温調節中枢に直接作用して皮膚血管の拡張を促し、熱放
散を増大させ、かつ熱産生を抑制することにより解熱作用を現す。これらの作用は知覚神経末梢
及び中枢神経系においてプロスタグランジンの生合成を阻害することによるとされている。
−3−
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図1:フェナセチン及びアセトアミノフェンの主な代謝経路(参考資料4より)
●腎毒性の作用機序
薬剤の長期連用による腎障害はゆっくりと腎機能が低下して、症状が出ないうちに腎不全が進
行する場合がある。フェナセチンによる腎障害は、慢性間質性腎炎や腎乳頭壊死である。腎障害
の作用機序は不明な点が多いが、やはりプロスタグランジン(PG)合成阻害による腎血流量の低
下が一番の原因と考えられている。
以前から、医療用フェナセチン含有医薬品を長期間連用する事によりフェナセチンの総摂取量
が2∼5年で1∼2kg以上になると、腎障害の発症の危険性が高くなると言われていた。また、
フェナセチンは単独投与時よりもカフェインやサリチル酸系薬剤との併用時の場合がより腎毒性
発症の危険性が高くなるが、市販されていた医療用フェナセチン含有医薬品にはカフェインが配
合されていたのはご存知の通りである。
フェナセチン濫用と泌尿器系腫瘍の関連性も指摘されているが、フェナセチンの発癌性につい
てはよくわかっていない。ただし、フェナセチン濫用者と非濫用者の間では腫瘍発生率の違いに
ついての疫学的なデータはあり、医療用フェナセチン含有医薬品の添付文書にはその旨注意事項
として記載されている(資料1)
。
−4−
くまもとDIニュース №250(2001.6)
資料1)医療用フェナセチン含有医薬品添付文書より
<その他の注意>
腎盂及び膀胱腫瘍の患者を調査したところ,フェナセチン製剤を長期・大量に使用
(例:総服
用量15
. ∼27kg,服用期間4∼3
0年)
していた人が多いとの報告がある。また,フェナセチン
を長期・大量投与した動物試験
(マウス,ラット)
で,腫瘍発生が認められたとの報告がある。
●医療用フェナセチン含有医薬品の依存性
医療用フェナセチン含有医薬品の濫用の背景には、依存性の問題があることを否定できない。
医療用フェナセチン含有医薬品の代表的なものとして名前が挙げられるものに「セデスG(塩野
義)」がある。セデスGには1g中、イソプロピルアンチピリン1
5
0mg、アリルイソプロピルアセチ
ル尿素6
0mg、フェナセチン2
5
0mg、無水カフェイン5
0mgが含まれている。国際疾病分類(ICD9)の薬物依存の項目を見ると、フェナセチン依存症、カフェイン依存症、アリルイソプロピル
アセチル尿素依存症が掲載されている。また、イソプロピルアンチピリンの名前はないが、アン
チピリン依存症は掲載されている。
フェナセチンは、長期連用を避ける等の使用上の注意を遵守して使用する限りにおいては腎障
害等を生じることはない。以前から濫用の危険性は指摘されていたのにもかかわらず、なぜ我々
医療関係者はこれらの不適切な使用、つまり、漫然投与を防げなかったのか?フェナセチン供給
停止にいたらしめたわれわれ医療関係者の責任は大きい。
●今後のフェナセチンの取り扱い
厚生労働省は医療用フェナセチン含有医薬品の取り扱いについて「フェナセチンを含有する医
薬品の取り扱いについて(医薬審発第45
4号、医薬案発第77号)」という通知を都道府県に送付し
ている。内容は以下の通りである。
1. フェナセチンについては、平成1
4年3月3
1日をもって、日本薬局方(平成1
3年3月厚生
労働省告示第11
1号)収載品目として取り扱わないこととすること。これに伴い、薬事法第
1
4条第1項の規定に基づき、製造又は輸入の承認を要しない医薬品を指定する件(平成6
年3月厚生省告示第1
0
8号)に該当する医薬品として取り扱わないこととすること。
2. 現に、製造(輸入)承認及び許可を受けているフェナセチンを含有する医薬品について
は、遅くとも平成1
4年3月3
1日までに、昭和4
6年6月2
9日付薬発第5
8
8号「医薬品の製造等
の承認の整理について」に基づき当該品目の承認整理届の提出を行う等必要な措置を講じ
ること。
つまり、医療用フェナセチン含有医薬品は遅くとも平成1
4年3月末をもって薬価削除になると
同時に、フェナセチンは局方品ではなくなるということである。
−5−
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●医療用フェナセチン含有医薬品の代替品
医療用フェナセチン含有医薬品の代替品についてよく質問を受けるが、市販されている医療用
医薬品ではこれといったものはない。フェナセチン単独で考えれば、活性代謝物のアセトアミノ
フェンが一番近いと言えるが、配合剤となると代替品の選択はそれぞれの目的により選ばれるべ
きである。しかし、あえて挙げるとすれば、一般用医薬品の「セデス・ハイ」である。
「セデス・
ハイ」の成分は、成人1回量2錠中、イソプロピルアンチピリン1
5
0mg、アセトアミノフェン2
5
0mg、
アリルイソプロピルアセチル尿素6
0mg、無水カフェイン50mgとなっており、セデスGのフェナセ
チンがアセトアミノフェンに置き換わった内容となっている。ただし、各成分の依存性の可能性
を考慮すると安易に患者に対して薦めるべきではない。
また、片頭痛などの慢性頭痛に対しては、新薬の登場に伴って新しい治療法が確立されつつあ
るので、それらのカルシウム拮抗薬やトリプタン系薬剤などを検討してみることをお薦めする。
参考資料:
1)
高井正秀、土肥和紘:薬物性腎障害 解熱鎮痛剤,医薬ジャーナル,292
, 3
, 71
, 993
2)
上田志朗:腎機能障害を引き起こす薬剤とそのメカニズム,月刊薬事,404
, 5
, 91
, 998
3)
医薬品副作用要覧 厚生省〈医薬品副作用情報〉全収録版,ミクス
4)
DSU解説,日本薬剤師会雑誌,4
81
, 1
,2
51
,9
96
5)
JPDI1
9
9
1日本薬局方医薬品情報,薬業時報社
6)
ICD- 9 Search,http://www.e-mds.com/icd9/
−6−
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定期購読誌から
当センターの定期購読誌から、主な項目をご紹介します。閲覧ご希望の方はお申し出ください。
巻
号
頁
消化管汚染−3− 胃洗浄
タイトル
中毒研究
雑誌名
14
2
133
急性中毒情報ファイルシートNo.133 エフェドリン
中毒研究
14
2
189
特集 腫瘍合併妊娠の取り扱い
産科と婦人科
68
5
各論 1.子宮筋腫
産科と婦人科
68
5
590
各論 4.子宮頸癌
産科と婦人科
68
5
611
天鶴活気の婦人科領域癌治療補助効果に対する検討
産科と婦人科
68
5
672
特集 第十四改正日本薬局方の改正点
薬局
52
5
特集 総合診療医が対応に苦慮する救急のコツ
治療
83
5
[疾患] 薬物中毒(服薬・服毒・アルコール)
治療
83
5
気管支喘息発作時の救急処置
治療
83
5
87
パニック障害
治療
83
5
144
蛇咬症の対応のコツ
治療
83
5
163
アスピリン喘息への対応のコツ
治療
83
5
167
特集 通年性アレルギー性鼻炎への対応
臨床と薬物治療
20
5
[患者ごとの治療法] 減感作療法のスケジュール
臨床と薬物治療
20
5
500
抗アレルギー薬の適用
臨床と薬物治療
20
5
505
今月の薬剤 H2拮抗薬、PPI
臨床と薬物治療
20
5
562
NSAIDsの適正使用−痛風発作に関して
臨床と薬物治療
20
5
536
特集 遺伝子治療
患者のQOL向上と薬剤師の関わり
(12) PARTI.院内製剤
口内炎発症予防を目的としたレバミピド含嗽液の使用経験
Q&A 医療用医薬品と一般用医薬品の薬歴は別か?
医薬ジャーナル
医薬ジャーナル
37
37
5
5
152
調剤と情報
7
5
44
一般用医薬品の適正使用(5) 浣腸薬
調剤と情報
7
5
67
特集 臨床で重要な薬物相互作用と患者マネジメント
月刊薬事
43
6
医薬品適応外使用情報(14) H2受容体拮抗薬
月刊薬事
43
質疑応答 腎障害を伴う高尿酸血症の治療
日本医事新報
4017 107
質疑応答 頑固な吃逆発作の原因と処置
日本医事新報
4017 110
質疑応答 ベーチェット病に対するサリドマイドの使用
日本医事新報
4017 111
質疑応答 抗精神病薬投与中の慢性閉塞隅角緑内障
ワルファリン内服中に発症した脳出血への対応
−乾燥人血液凝固第IX因子複合体の血腫拡大抑制効果−
質疑応答 下剤の長期連用とメラノーシスの出現
日本医事新報
日本医事新報
4017 113
4018 24
日本医事新報
4019 108
質疑応答 ニコチン置換療法における禁煙補助剤の使用法
日本医事新報
4019 111
質疑応答 ALDH2とCYP2E1の飲酒量への関与
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3.Basedow眼症の病態と治療
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6
474
6.うつ病の認知療法
医学のあゆみ
197
6
479
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6
58
165
4019 115
213
275
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医薬分業推進支援センターの利用のしかた
受付時間:月∼金曜日 8:30∼18:00 土曜日 8:30∼17:00(日曜・祝休日は除く)
熊本県薬剤師会調剤薬局(TEL:096-325-3210 FAX:096-356-0431)
業務内容:調剤業務、備蓄業務、研修業務など
E-mail:kpa-rx@aaanet.or.jp
医薬情報センター
(TEL:096-351-5333 FAX:096-351-5357)
業務内容:医薬品情報提供
(くまもとDIニュース)、医薬品等に関する質疑
応答、文献検索、消費者くすり相談窓口など
E-mail:kpa-di@aaanet.or.jp
〒860-0003 熊本市古城町1-2
(社)
熊本県薬剤師会医薬分業推進支援センター
http://www.kumayaku.or.jp/ ユーザー名:kpa パスワード:kumayaku
【 4 月の問い合わせ件数】
分 類
一般消費者
薬
剤
師
薬局
病院
胎盤は使用可能となっている。
件 数
Q.美容目的で注射されているプラセンタと
28
は何か?(薬局)
52
21
A.最近、雑誌等で美容目的のプラセンタ注
2
射が取り上げられている。一部の皮膚科
医師会
18
や美容形成外科で使用されているのは、
歯科医師会
1
薬種商・配置薬
0
その他医療
1
加水分解物「ラエンネック
(日本生物)
」
メーカー
0
である。筋注なので、注射時の痛みが問
卸
6
題となるようだ。美容効果についての学
行政・保健所
1
教育
0
県外
6
その他
その他
合計
肝機能改善剤として市販されている胎盤
術資料はない。もちろん保険適用外であ
り、自費診療である。
0
136
【その他の質問例】
Q.牛胎盤プラセンタの化粧品への使用禁止
について(診療所)
A.平成12年12月、厚生労働省はウシ伝達性
海綿状脳症(BSE)に関連して、予防
的な安全性確保措置を講じた。その中で、
牛胎盤については原産国を問わず医薬品
担当者から一言
等(化粧品も含む)への使用が禁止され
今年は第十四改正日本薬局方が発売され
た。ただし、健康食品に関しては、BS
ます。ところで、あなたの職場に最新の
Eの感染リスクのある国以外であれば牛
日本薬局方はありますか?
−8−