オノマトペ;ヨイショ、ワンワン、ニャー 中野有朋(音の話 4

オノマトペ;ヨイショ、
ワンワン、
ニャー
中野有朋
(音の話 4- 2015/3)
ある朝のこと、「歳をとったためなのかしらね?」、突然、女房がきりだした。
「何が?」と聴き返すと、
「このごろ、よく、ヨイショとかドッコイショとかなんとか、よく
言うわね、前はそんなこと言わなかったのに」と。
食卓におかれた、ご飯が盛られた茶碗を持ち上げるとき、つい、ヨイショとかけ声をかけ
てしまったのである。
歳をとったからではない。以前からこのようなことをよくやっていたのである。
物を持ち上げたり、動かしたりするときはヨイショ、びんの蓋があかない時にはギュー、
閉めるときにはガチッとかピチッ、庭木にホースで水をかけるときや、容器に水をそそぐ
ときなどはザーとかジャー、食器棚の戸を閉めるときにはスーなど、また愛犬ムンクを呼
ぶときにはワンワンなどと声を出しながらやっていたのである。人前ではちょっと、自分
ひとりのときだけである。
それなりに意味があるのである
ヨイショとかギュー、ガチッ、ピチッ、というと、何か力が入るよう、ザーというと水が
広く散らばるよう、スーといいながら閉めるとバタンと閉まらず小言をいわれないですむ。
またワンワンと呼ぶと愛犬ムンクはワンと返事して尻尾を振る。最初は黙って尻尾を振っ
たが、ワンワンと呼んでいるうちに、呼ばれたらワンとでも言え、と言われたのかと思っ
たのか、このときにはワンと一度吠えて尻尾を振るのである。
先日、テレビでやっていたが、
「ニャー」と声を出しながら前屈すると、一瞬で体が柔らか
くなるという。本当らしい。
このような声をだすことで、大脳の邪念などが抑えられ、体のリズムを一致させることが
でき、人体筋肉のリミッタを外すことができるためではないかといわれている。
このような言葉はオノマトペといわれている。
オノマトペ(onomatopee)とは、擬声語を意味するフランス語である。
そして擬声語とは、擬音語と擬態語の総称のことである。
擬音語とは「ドカーン」「サラサラ」「ワンワン」など物が発する音や声を真似て字句で描写し
た語句のことであり、擬態語とは「ツンツン」「デレデレ」「ニヤニヤ」など状態や心情など、
音のしないものを音によって表す言葉である。
これらの言葉は物事の声や音・様子・動作・感情などを簡略的に表し、情景をより感情的
に表現させることの出来る手段として用いられており、我々の生活においては、様々に活
用されているのである。
長時間パソコンに向かっていてくたびれた時など、時々、立ち上がって腕を伸ばしたり、
体を前後に曲げたりするが、この時、ニャーといいながらやると体が柔らかくなるという
ので、ひとりのときは、ニャーニャーと声をはり上げながらやっている。
もし、女房がこんなところをみたら、こんどは、きっと「少しおかしくなったのかしら?」
と思うに違いない。