2012年4月 ~ 派遣と請負の区分基準 非正規職をめぐる雇用労働部と法務部発表資料の解説 ~ 株式会社エル・マール・サービス 株式会社エル・マール・コリア 高山 麻弓 ■非正規職雇用を巡る情勢 最近の労働関連のニュースとして、不法派遣を巡る大法院判決や検察支庁の 無許可派遣会社の検挙が報道され、今後、雇用労働市場(非正規職)の混乱が 予想されると考えられます。 ① 2012年2月23日大法院が現代自動車の社内下請け労働者を不法派遣 と判決 ② 2012年2月27日水原検察支庁は、7 年間無許可派遣を運営していた 「CS グループ」を偽装請負で摘発。CS グループは、グループ会社 20 支社を 韓国の中部地方・京畿道におき、多数の製造会社に偽装請負を行っていた。 ③ 国会議員選挙や大統領選挙を控え、与野党が、選挙公約の 1 つとして「格差 是正」を意識した非正規職政策の打ち出す ≪本稿の趣旨≫ 企業がコンプライアンスの観点で不法派遣の問題に事前に対応するための参 考として雇用労働部と法務部が公示した「勤労社派遣と請負を適正に行うため の判断基準」を解説し、合わせて雇用労働部の点検の基本方針をご紹介いたし ます。 ■勤労者派遣と請負を適正に行うための政府の判断基準 雇用労働部と法務部の共同発表『勤労者派遣の判断基準に関する指針』(2007 年4月19日)の要約及び解説。 【派遣と請負区分の必要性】 非正規職保護法の実施後、社内請負や事実上派遣勤労者ではあるが違法請負 等これと近い勤労形態の増加によって「派遣と請負」を区別する必要性が発生 し、労働部と法務部が共同で「該当事業所の点検方法」「判断基準及び事後管 理」に関する効率的な点検を目指し、前述の『勤労者派遣の判断基準に関する 指針』を2007年4月19日に公示しました。違法性のない一貫性のあるビジネスを 確立することが目的とされます。 ■勤労者派遣と請負の区別 1.勤労者派遣と請負の区別は、表1と表2のように、勤労者に対する指揮・命 令を「誰が」行っているのかにあります。 ・派遣事業主(表1)と請負業者(表2)の実態が認められない場合は、 「直接雇用」の関係と推定 ・表1の派遣事業主の実態が認定されて、使用事業主が派遣勤労者に対 して指揮・命令を行っているならば「勤労者派遣」の関係 ・表2の請負業者の実態が認定されて、発注元が派遣勤労者に対して指揮・ 命令を行っていなければ「請負」の関係 2.雇用労働部の点検に際しての基本原則 ① 表1、表2の関係確認 ② 総合的な現場点検 a.派遣会社、請負会社の存在確認 登記簿謄本、定款、事業免許及び許可書、株主総会議事録 (各種議事録等※株保有比率の確認)、事務室賃貸契約書、設立費用履歴、 税金納付書、四大保険加入証明書、源泉関連資料、会社パンフレット、名刺 等の証拠確認 b.請負(指揮・命令の点検) 作業環境(発注元正社員と請負勤労者の作業スペースの区別)、 作業指示計画書、作業指示書、安全教育台帳、朝礼実行可否等の実態点検 c.その他の資料検証 採用・面接履歴、勤労契約書、勤務日報(タイムカード)、退職届、 解雇予告や処罰関連書類、資材等の調達清算書、配置転換資料、社内資料・ 広報資料各種等の検証 3.雇用労働部の点検順序 予備調査→勤労者へのアンケート→現場点検→総合的な判断 ≪企業の対応策≫ 以上のように派遣と請負の「区分」を明確にし、下記のような取りみも必要 であると考えられます。 1. 人事担当者レベルのコンプライアンスに対する意識の向上 2. 指揮・命令関係を確認し、違法性がないリスクヘッジにおける定期的な 管理体制の確認 3. 外部人材サービスを活用する場合、専門的なパートナーの見極めの重要 性認識 ■非正規職改善に向けての政府の動き (2012年 1 月16日/毎日経済より) ① 「公共機関の非正規職 9 万 7 千人、無期契約職に変わる」 政府は 2 年間勤務した非正規職で 2 年以上続くと予想される業務をしてい る非正規職を無期契約職に転換すると 16 日発表しました。 公共機関非正規職 24 万 1000 人中、40%に該当する 9 万 7000 人。 ② 政府は「公共部門非正規職雇用改善推進指針」を各機関へ伝えました。 この内容は、中央行政機関及び自治体、中央公共機関、地方公企業、教育(行 政)機関等、すべての公共部門全体に適用し、期間制・時間制、無期契約職 など公共機関で働く非正規職に今年から福祉ポイントと賞与を支給と規定。 最初に無期契約職、1 年以上の期間制・時間制勤労者に基本福祉ポイントを 年間 30 万ウォンぐらい(程度)支給される。賞与としては 1 人あたり年間 80 万ウォン~100 万ウォンを支給する。 注)無期契約職:法律上、期間が定めていない契約を結んでいる勤労者。解雇 の条件が正規職と同じで雇用安定効果が期待できる。 ■「公共部門率先」を唱える政府の動きの背景 2012 年 1 月 16 日政府発表「公共部門非正規職雇用改善推進指針」 2011 年 11 月 28 日政府発表の‘公共部門非正規職雇用改善対策’で所得両極 化などを是正して持続可能な共生発展と社会統合の為、非正規職問題への対応 が社会的問題として浮上しました。 公共部門が率先して民間を先導する必要 があり、2011 年 6 月 27 日大統領から“正規職と非正規職の間で理不尽な差別が あってはいけないし、公共部門が率先しなくてはいけない。”との指摘もあり ました。2011 年 9 月 9 日政府発表の‘非正規職総合対策’は、公共部門非正規 職勤労者にも同様に適用されることで低所得非正規職の福祉拡大・差別是正制 度活性化・職業能力開発機会拡大などの内容を載せており、今回は公共部門の 特性をふまえて追加対策を作り、公共部門の非正規職の雇用安定と勤労条件を 改善していく動きが始まりました。 以上
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