今回は、長い記事を取り上げました。一読するだけ

解答のヒント
みなさん、こんにちは。
今回は、
長い記事を取り上げました。一読するだけで5~6分かかります(筆者の場合)
。
おまけに、少年法にしても民法にしても、高校の「政治・経済」や「現代社会」でも詳し
く学習しません。飲酒・喫煙についてはまだしも、その他はあまり考えたことのない話題
でしょう。それなのに少年法の記事は長いし、記事全体は自民党の提言についてのもので
大人目線だし、少年少女側の話題はネガティブな感じ……。
そんな、あまりのれない話題にも、突っ込みどころはあるのですよ。元気だしましょう。
記事の背景を「透視」する
「透視」は大げさですが、
「なぜ今このような自民党の提言が出るのか?」という背景が
記事に書かれていないので、それを推定しましょう。これまでの「解答のヒント」で指摘
したように、自分で問いを立てる積極的な姿勢が、小論文の攻略では必須です。その問い
から解答への糸口が見つかるのです。
また、問題作成者も受験生の関心をひきそうな話題を取り上げます。
「政治・経済」関連
の今年の時事問題なら集団的自衛権や安全保障関連法もありますが、これは問題の規模が
大きく、その理解には相応の学習を要します。その点、憲法改正の国民投票の投票権に続
いて 18 歳以上となった選挙権年齢の話題は、今年の出来事の中で大学受験生向きの時事
問題だと言えます。この問題は当然、社会や国が国民を何歳から大人として扱うかという
問題に直結します。ここでは長くなるので説明しませんが、憲法改正の国民投票の投票権
を 18 歳以上とした国民投票法が 2007 年に制定されたとき、すでに世界の国々の大部分と
同じ 18 歳を成人年齢とする方向で国会議員たちの議論が始まっていたのです。この記事
からそこまで「透視」するのは無理でしょうが、18 歳以上となった選挙権年齢と関連する
話題であることは容易に想像できるはずです。そうでしょう?
記事の構成について
記事全体の4分の3近くが少年法の話題です。専門的な事項(ドイツの制度など)があ
るほか、刑事事件は千差万別ですから重大事件に偏った見方では、厳罰化にばかり目が向
いて少年法が重視する更生の側面を見失うおそれがあります。どちらもふだん考える機会
がない(少ない)だろう、書きにくい話題です。
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残り約4分の1は主として飲酒・喫煙の話題ですが、記事の末尾に「民法の成人規定を
利用する法律は約 200 本に上る」とあり、むしろそこに膨大な問題群がありそうだと見る
ことができます。勝手に想像すると、それらの問題はまだ記者さんたちにも把握しきれて
おらず、今後の報道でいろいろ展開されるのでしょう。
以上から、少年法改正についてはある程度の考察が行われていますが、記事全体として
は問題点の指摘にとどまり、読者に考える材料を提供したという形になっています。
解答の焦点を見出す
記事の大部分を占める少年法について多くを語ることのできる受験生は少ないだろうし、
それができたとしても、それは個人的な体験談(当事者が身近にいてうんぬん)を記事と
絡める程度になってしまうのではないでしょうか(そうではない人もいるかもしれません
が)
。それでも答案は書けますが、では記事の残り4分の1についてはどう考えますか?
つまり、記事全体を総合して理解し、その総合的な理解から出てくる考えに焦点を当て
て、解答を組み立てていくのです。この記事の場合、単に少年法の問題にとどまらず、成
人年齢を 20 歳から 18 歳に引き下げることの影響の大きさを示唆していると見ることがで
きます。ただし上記のように、記事に書かれていない問題点がまだまだありそうです。そ
うです。そこが、冒頭に述べた「突っ込みどころ」なのです。
筆者の場合、反抗期に親から言われて今でも覚えている「親権」の話題に気づきました。
「成人までは親の責任」のような言い方です。これが、18 歳で子が親の親権から離脱する
ことになれば、
「高校までは親の責任」になるのです。子の親離れが、少なくとも法的には
2年早くなるわけです。
もう一つの大きな違いは、大学や職場の先輩などに導かれていた大人の基礎知識が、少
なくとも民法などに関係する基本事項では高卒までに身に着けるべきだとなることです。
では、高卒までに導いてくれるのは誰でしょう? この点の「突っ込みどころ」として、
解答例では高校の備えのなさまで指摘することにしました。
これで、解答の基本方針が見えてきました。あとは、解答の導入部と、記事の理解につ
いての展開部の構成を考えます。これらを述べた後に、上記の「突っ込みどころ」につい
て述べれば、この記事に触発された自分の考えの論述として、答案が完成するはずです。
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おわりに
解答例は「大人たちは予測しているのだろうか」などとやや挑発的な言い回しで終えま
したが、大人である筆者自身が考えているうちにようやく見つけた問題点なので、まるで
自分のうかつさを自嘲しているような表現だと思えてきました。よみトク小論文講座を閲
覧している、まだ大人ではない君たちはどう考えますか。異論など聞いてみたい気がして
います。是非それを、句読点とも 1000 字以内に記してみてください。ただしくれぐれも、
自分の考えの前提となったこと(記事の要点など)をきちんと述べることを忘れずに。そ
の前提との対話から、自分のオリジナルな考えが出てくるはずなので。
それではまた次回。おつかれさまでした。
(板原 正幸)
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