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日本産ジャガイモ青枯病菌の遺伝的および生理的特性

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植 物 防 疫 第 66 巻 第 5 号 (2012 年)
日本産ジャガイモ青枯病菌の遺伝的および生理的特性
(独)農業環境技術研究所
堀 田 光 生
長崎県農林技術開発センター
菅 康 弘
沖縄県農業研究センター
九州大学大学院農学研究院
大 城 篤 土 屋 健 一
ス 3,biovar N2)が主な原因であると確認された。近年,
は じ め に
上記以外の地域にも同青枯病の発生が拡大し,今後も警
植物病原細菌 Ralstonia solanacearum に起因する青枯
戒が必要となってきている。
病は,国内,海外のジャガイモ栽培地域で発生し,同作
今回,我々は国内におけるジャガイモ青枯病の防除に
物の安定生産にとって最も大きな阻害要因の一つとなっ
資するため,同病害の国内での発生状況や分離菌株の遺
ている。青枯病菌はこれまで病原性の違いにより五つの
伝的,生理的特性の解析により,その現状を明らかにす
レースに分類され,生理的性質の違いによりさらに六つ
ることを試み,いくつかの知見が得られたので報告する
の biovar に分けられている。これらの中で,レース 1(ナ
ス科ほか多種を侵す)biovar 1,3,4 およびレース 3(主
にジャガイモを犯す)biovar 2,N2 に属する株がジャガ
イ モ 栽 培 に 影 響 を 与 え て き た(DENNY and HAYWARD,
。
(HORITA et al., 2010)
I 国内産ジャガイモ青枯病菌の phylotype,biovar と
その分布
我々は 1962 ∼ 2005 年に日本各地(7 道県,18 市町村,
2001)
。
青枯病は,病原細菌が土壌中で長期間生存後,定植さ
35 地区)からジャガイモ青枯病菌 188 菌株を分離・収
れた宿主の根部や傷口から感染・侵入し,萎凋症状を引
集し,それらの分布地域,phylotype,biovar について
き起こす典型的な土壌伝染性病害であるが,ジャガイモ
調査を行った。その結果,同細菌は北海道から沖縄まで
では地下塊茎に本細菌が感染し,保菌した塊茎が種イモ
日本各地に分布し,近年は特に西南暖地(九州,沖縄)
植物防疫
として利用されることで本病の発生を広範囲に拡大させ
。片山・木村
で多数の菌株が分離・収集された(表―1)
(1986)は 1981 ∼ 83 年に長崎県内のジャガイモ栽培圃
る(片山,1991)
。
近年,DNA を用いた遺伝子解析が進められた結果,
場の発病調査を行い,同細菌を多数分離している。我々
青枯病菌は,それぞれ地理的な由来の異なる四つの系統
が 1993 ∼ 99 年に九州 3 県(長崎,佐賀,鹿児島県)で
(phylotype I,アジア由来;II,アメリカ由来;III,アフ
行った圃場調査でも,25 地区で 100 検体以上の罹病植
リカ由来;IV,アジアの一部地域由来)に類別された
物から同細菌が分離され,ジャガイモ青枯病が西南暖地
(FEGAN and PRIOR, 2005)。Phylotype とレース,biovar に
明確な関係はみられていないが,過去 20 年間に西ヨー
ロッパ,北アメリカ,アジア,アフリカの各地域で突発
的に多発したジャガイモ青枯病は,南アメリカ由来の系
表− 1 日本産ジャガイモ青枯病菌 phylotype,biovar,DNA フィ
ンガープリントタイプの地理的分布(HORITA et al., 2010 改変)
phylotype
統 phylotype II が,潜在感染した種イモや切り花の国際
的な流通を介して伝播したことが原因であると明らかに
分離地域
された(ELPHINSTONE, 2005;築尾,2008)。
I
biovar N2
日 本 国 内 で は 戦 後 1950 年 前 後 に 北 海 道 で, ま た
1960 年代以降より主に長崎県など西南暖地においてジ
ャガイモ青枯病が多発し(成田,1958;片山・木村,
1986)
,これらは二つの系統(レース 1,biovar 4 とレー
Genetic and Biological Characters of Potato Isolates of Ralstonia
solanacearum in Japan. By Mitsuo H ORITA , Yasuhiro S UGA ,
Atsushi OOSHIRO and Kenichi TSUCHIYA
(キーワード:青枯病菌,ジャガイモ,biovar,phylotype)
IV
北海道
静岡
奈良
佐賀
鹿児島
長崎
沖縄
合計
a
a
2(1)
1(1)
0
0
5(1)
36(1,2)
30(1)
74
biovar 3
biovar 4
0
0
0
0
0
15(3―7)
1(10)
0
1(9)
2(9)
1(10)
46(9―13,15)
29(3,4,8)
44
19(9,10,14,16)
70
菌株数(DNA フィンガープリントタイプ)
.
― 28 ―
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