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がん治療薬の最前線!阪大薬発のがん分子標的治療創薬への挑戦

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がん治療薬の最前線!阪大薬発のがん分子標的治療創薬への挑戦
薬学研究科
細胞生理学分野
辻
丈
川
和
はじめに
私たちの体は約60兆個の細胞で構成されています.それらの細胞の一つひとつは,核
内に保管された DNA という設計図に刻まれた指令を基に,適切で巧妙な機能を演じて
います.さらに,それらの細胞が協調と統制を取っているからこそ,私たちは健康で幸
せな生活を営むことができているのです.設計図である DNA は,たった4つの塩基と
いう文字で刻まれています.その DNA は父親と母親からそれぞれ1種類ずつ,合計23
本の染色体という形で贈られたもので,合計約60億塩基対の暗号を刻んでいます.よっ
てそれらの暗号を完全に解き明かすことにより細胞の機能を解明でき,病気の治療にも
つながると期待され,
「ヒトゲノム計画」として国際的プロジェクトが進められました.
そのプロジェクトの完了が,1953年ワトソンとクリックによる DNA の二重らせんの発
見から50年後の2003年4月14日に世界同時に人類の成果として発表されました.しかし
この成果は病気の発症機構解明においてスタートを切ったところなのです.まだまだ原
因不明の病気や治療法が確立されていない病気が多く残されています.
悪性新生物「がん」
厚生労働省の人口動態統計(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/
nengai10/index.html)によれば,平成22年のわが国の死亡者数は119万7066人で,前
年に比べ5万5201人増加しています.死因別に見てみると,死亡原因の第1位は悪性新
生物,「がん」であり,第2位は心疾患,第3位は脳血管疾患と続いています.悪性新
生物での死亡者数
35万3318人の全死
亡者数に占める割
合は29.5%,つまり
死亡者のおよそ3
人に1人が悪性新
生物で死亡したこ
とになります.また
この悪性新生物で
の死亡者の年次推
移を見てみると,一
貫して上昇してお
り,昭和56年以降死因順位の第1位を占めています.よって悪性新生物の発生機序の解
明と共に有効な治療創薬が期待されており,それらの研究が「薬学研究」の1つの重要
な使命と考えます.
大阪大学薬学研究科でのがん治療創薬への挑戦
私たちは,がんの新たな治療創薬を展開するためには有望な分子標的の探索が必要と
考えました.まず標的としたがん腫は,前立腺癌です.欧米において男性がん罹患率,
死亡率のトップを占める前立腺癌は,本邦においても食生活の欧米化や高齢化により急
激な患者数の増加を認めています.この前立腺癌の早期癌は手術療法等で根治可能とな
っています.一方,手術療法が難しい高齢者の前立腺癌や進行癌に対してはホルモン療
法がなされています.このホルモン療法は初期にはたいへん奏効しますが,しかしこの
治療中にホルモン療法抵抗性前立腺癌の出現を認めます.そしてこのホルモン療法抵抗
性前立腺癌に対しては,現在有効な治療法が確立されていないという問題点があります.
そこで病理との共同研究により,癌病理組織
を用いた遺伝子発現の網羅的解析を行いまし
た.その結果,前立腺癌部において非癌部と
比べ顕著な発現上昇が認められる遺伝子を発
見し,prostate cancer antigen-1 (PCA-1)を
命名しました.また PCA-1の発現がより高い
と診断された前立腺癌患者さんは,ホルモン
療法抵抗性前立腺癌がたいへん早期に出現す
ることも明らかとしました.さらに前立腺癌
細胞における PCA-1の発現を抑制することに
前立腺癌における PCA-1の高発現
より,前立腺癌細胞の増殖抑制作用や抗腫瘍作用が発現することも分かってきました.
一方,抗 PCA-1抗体を用いた癌病理組織の免疫組織化学的解析により,PCA-1が前
立腺癌とともに膵臓癌においても高発現していることを突き止めました.また PCA-1
の発現レベルと術後の予後不良性が相関することも明らかとなりました.膵臓癌は現在
治療がもっとも困難な癌の一つとされています.膵臓癌において腫瘍切除手術が行われ
ても約9割が再発を来して死亡し,遠隔転移が認められた場合の予後は中央値で4~6ヶ
月といわれています.よって膵臓癌に対する有効な治療薬の早期開発も切望されていま
す.私たちの研究により PCA-1が膵臓癌に対して有望な分子標的となることが明らか
になってきました.現在 PCA-1の機能を解明し,その研究成果に基づき PCA-1を分子
標的とするホルモン療法抵抗性前立腺癌や膵臓癌の新しい分子標的治療薬の創製を展
開しています.
これらの研究は,文部科学省「地域イノベーションクラスタープログラム」,医薬基
盤研究所「保健医療分野における基礎研究推進事業」の支援を受け進められています.
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