田園からの 産業革命 [図表 2]資源エネルギー庁が示す再生可能エネルギー支援の方針 固定価格買取制度の安定的かつ適切な運用 風力・地熱の導入拡大に向けた規制改革の推進 ◎導入拡大による量産効果でコストを低減 ◎国有林、 保安林、 農地、 電気保安規制、 河川法等の規制の合理化 ◎法の規定に沿ってコストを厳密に検証、 毎年度新規参入社向け ◎環境アセスメントの迅速化 調達価格を適切に見直し特に太陽光は、適切に引き下げ 2014年に注目すべきトピック 太陽光から風力・地熱重視への転換 5 第 回 風力を受け入れるための送電網の整備と系統運用の最適化 山 養世[くにうみアセットマネジメント] その他 ◎送電網の整備 (地域内送電網の整備、広域連携の促進) ◎浮体式洋上風力発電など、 再生可能エネルギーのフロンティアの拡大 ◎電力会社側での大型蓄電池の設置 ◎低コスト化、 多様化に資する研究開発等の促進 ◎送電系統、 配電系統の最適化・効率化 出所:経済産業省 資源エネルギー庁 「再生可能エネルギーを巡る課題と対応の方向性について」 [図表1]再生可能エネルギー発電設備の導入状況 太陽光重視からいよいよ ◎風力・地熱発電 られています。現在は日本全国で大小 20 か のバランスとはなにかという部分にまで考 事業困難な要因を国主導で取り除く 所の開発が進んでいますが、地熱も風力同 えを巡らせる必要も出てくるでしょう。 様に適地が北海道と東北、そして九州に集 太陽経済の会やくにうみアセットマネジメ 風力発電は大規模開発を行った場合のコ 中しています。 ントは、太陽光発電に限定した事業を展開し ストは火力・水力 などと比 べて遜色 ない 水 地熱発電の普及を妨げているのは、何よ ているわけではありません。地熱発電促進 準にまで低下しており、太陽光 の 次に今後 りも開発期間とコストが膨大にかかる点で のための 政策提言論文を共同執筆したり、 促進されていく発電方式です。風力発電に す。発電出力を 30MW とする場合、開発期 バイオマス発電促進 のためのイベントに協 適した地域は北海道・東北です。事業採算 間 は 約 10∼15 年、約 260 億円 もの 費用 が 力したりという実績も既にあります。 性 が 確実に見込 める 6.5m/秒を超える地 一般に必要とされています。発電可能かを 特に送電網の強化については発電方式を 働発電所の問題です。資源エネルギー庁の 域 の 45 % は 北海道、21 % が 東北に集中し 調べる初期調査にも億円単位のコストがか 問わず喫緊の課題です。前回提案した送電 固定価格買取制度導入前 ◀ ▶ 固定価格買取制度導入後 平成 24 年 7 月∼平成 25 年 7 月 風力・地熱にシフトする 2014 年 平成 25 年度 2012 年 6 月末までの 平成 24 年度 に認定を受けた設備 (7 ∼ 3 月)の導入量 (4 ∼ 7 月)の導入量 累積導入量 (未稼働分も含む) 太陽光(住宅) 約 470 万 kW 96.9 万 kW 55.2 万 kW 175.1 万 kW 今回は新年号ということで「2014 年に注 太陽光(非住宅) 目すべきトピック」というテーマでお話した その他(風力・中小水力・ バイオマス・地熱) いと思います。 2014 年以降、いよいよ再生可能 エネル ギーによる発電が「普及・定着」のフェーズ 合計 約 90 万 kW 70.4 万 kW 169.1 万 kW 約 1,500 万 kW 9.6 万 kW 7.4 万 kW 2,031.7 万 kW 153.9 万 kW 約 2,060 万 kW 176.9 万 kW 231.7 万 kW 2,360.7 万 kW 出所:経済産業省 資源エネルギー庁 「再生可能エネルギーを巡る課題と対応の方向性について」 原文は http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/10 th/10 th- 6.pdf で閲覧可能 なお 「太陽光 (非住宅)」のうち、メガソーラーの平成 24 年 7 月∼平成 25 年 7 月の導入量は 60.9 万 kW、 認定を受けた設備は 1,345.4 万 kW から「整理・統合・淘汰」へのフェーズへと 移行していきます。例えば読者のみなさん イオマス発電は他と比べると発電可能な電 が注目している太陽光発電は、巷で「2015 力量がどうしても少 ない。ですから比較的 発表によると、FIT 開始以降に設備認定を受 ているのです。また、福島沖や 銚子沖 など かるうえ、その 時点では設備認定申請を受 線を高速道路の地中に敷設するというアイ 年問題」と言われている通り、売電価格の大 開発期間が短くて容易な太陽光が “最初 の けたメガソーラー発電所(データはいずれも 全国 4 か所で洋上風力発電の実証実験もス けられないので売電価格も決まらないとい デアのような、国家戦略的な提言を今後も 行っていきたいと考えています。 幅引き下げが見込まれるなど大きな転換点 ブースター” として注目されたわけです。 13 年 7 月末時点)が 2,846 件、発電出力にし タートしています。 う面もあります。また開発に成功しても、他 を迎えるのです。その方針が決まるのが今 14 年以降は、いよいよ風力・地熱の推進 て約 1.34GW にも上りますが、実際に稼働 風力発電の普及を妨げているのは、第一 の事業者による二重開発、地熱エネルギー 年です。そのため政策面は特に注視してい に政策がシフトしていきます。以下では個別 しているのはそのうち 345 件・約 609MW に適地である北海道・東北の送電網整備が の横取りを阻止する開発権のようなものが く必要があります。 の方向性をみていきましょう。 不十分で、発電量の増加に対して送電でき 法律で定められていない点も問題ですね。 る量が追いついていない点、第 2 に太陽光 ただし、地熱についても調査の支援や開 発地域の雇用を促進するような関連事業展 実はすでに、今後の政策方向性が詳細に (約 0.6GW )しかありません。 未稼働施設のなかには「開発コストの低 記載されている資料が公表されているので ◎太陽光発電 減を狙って意図的に着工を遅らせている悪 発電以外の方式は開発前に環境アセスメン す。13 年 11 月 18 日、資源エネルギー庁総 未稼働案件が大手事業者に集約か 質事例もある」として、経済産業省が昨年 9 トの 実施が義務付けられているため、開発 開といった 支援策 が 既に提案 されており、 月、買取価格 が 最 も 高 い 12 年度に設備認 期間が長期(風力は約 3∼5 年)にわたってし 推進されていくことは間違いありません。 合資源 エネルギー 調査会基本政策分科会 第10回で提出された「再生可能エネルギー 同資料では、2014年度以降の買取価格を 定 を 受 けた、400kW 以上 の 出力 の 発電所 まうという点です。また、風力発電はかたち を巡る課題と対応 の 方向性について」(以 「2014 年 度 に 34 円 /kWh、2015 年 度 に を対象に実態調査に乗り出しました。回答 のない「風」を利用するという性質上、発電 他の発電方式を含め しない 事業者には罰則を設け、また場合に 量にばらつきが出てしまうため蓄電池 の 設 政策に沿ったビジネス展開が必須に 下、同資料)がそれです。今回はこの資料を 30円/kWh、その後は30円/kWhで固定」 山﨑養世 (やまざき・やすよ) 東京大学経済学部卒。カリフォルニア大学ロサンゼル ス校で MBA( 経営学修士 ) 取得。 1982 年に大和証券 に入社。日本初の証券化公募ファンド「FNMA ファン ド」 を担当し、MBS、ABS を有価証券として初 の 認 定を受ける。 1994 年に米ゴールドマン・サックスに入 社。日本での資産運用業務の立ち上げを担当した後、 1998 年から 2002 年までゴールドマン・サックス投信 (当時) の 代表取締役社長及 び 本社 パートナーを 務 私の目線から読み解いていきます。 と仮定しています。仮定とはいえ国 の 資料 よっては認定取り消しもあり得るとして、厳 置が必須となりますが、このためのコスト負 FIT(フィード・イン・タリフ。再生可能エネル なのですから、今後も高 い 確率で下がると しい態度で臨んでいます。 担、ないし補助も促進のためには必要です。 「普及・定着」のフェーズから「整理・統 ギーの固定価格買取制度)によって推進させ 認識すべきです。 確かに上記のような悪質事例も存在する のよ これらの問題点については[図表 2 ] 合・淘汰」へのフェーズへと移行 するにあ ていく発電方式は、太陽光・水力・風力・地 「30 円/kWh」という買取価格 をどう捉 でしょうが、何かしらの開発が進まない理由 うに国の予算による支援プランの内容が具 たって、最も大事なことは、政策の方向性を 熱、これにバイオマス発電を加 えた 5 つで えるかですが、 「それほど労せず誰もが儲け があるケースが大半だと思 います。おそら 体的に打ち出されています。 きちんと読 み 取ったうえでビジネスを展開 す。ちなみに FIT 開始以降、設備認定 され られる」という価格ではありません。しかし、 く一番の要因は、認定取得後の資金調達が また地熱発電では、日本は世界第 3 位の できるかです。大規模なプロジェクトを志向 た発電所のおよそ 9 割が太陽光です。 諸外国と比較すればまだまだ高いと言えま 難航しているということです。こうした宙吊 地 熱 資 源 量(約 2,340 万 kW=約 2.34GW ) すればするほど、その重要性は高まります。 など多数。 これはなぜか。風力・地熱は多くのエネ す。そう考えると、今後は外資による参入も り案件がより実行力の高い事業者に集約し を有しており、稼働さえしてしまえば発電コ 全体 の 方向性を理解し、発電を行う地域に くにうみアセットマネジメント ルギーを供給できるようになる一方、稼働 十分あり得るでしょう。 ていく動きが加速するでしょう。 ストも相対的低く、発電量が安定しているこ どのようなメリットを提供 できるか、もっと までに長い開発期間とコストを要します。バ 太陽光関連のもう一つのトピックは、未稼 とからベース電源として大きな期待が寄 せ 言えばその 地域にとってベストな発電方式 める。現在は一般社団法人 太陽経済の会 代表理事、 40 PROPERTY MANAGEMENT 2014 Jan. 成長戦略総合研究所 代表取締社長として金融・財政・ 国際経済問題などに関する調査・研究および提言を行 うとともに、くにうみアセットマネジメント 代表取締役 として 再生可能エネルギー 関連事業を中心に業務を 展開している。著書は「「日本復活」の最終シナリオ「太 、「ジャパン・ 陽経済」 を主導せよ!」(朝日新聞出版) ショック̶国債暴落から始まる世界恐慌」 ( 祥伝社) http://www.kuniumi-am.co.jp 一般社団法人 太陽経済の会 http://www.taiyo-keizai.com 41
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