エキシマ発光による平板型バックライトの開発

エキシマ発光による平板型バックライトの開発
研究者名 川部 道敬
指導教員 井上 昭浩 堀井 直宏
1.目的
3.実験結果と考察
本研究では、エキシマランプを用いた平板型バックライ
[粉末ガラスと水の混合割合の検討]
トの開発を目的とする。エキシマランプとは、希ガス(キ
放電管作成の際、ガラス同士の接着には粉末ガラス
セノン)に高電圧を印加することで得られるエキシマ発光
(IWF-T029)を使用する。粉末ガラスを扱うときは少量の
という現象を利用したランプである。このランプは水銀が
水を混ぜたほうが使いやすい。そこで、どのくらいの重量
使用されていないため、現行のランプに比べて環境配慮が
比で粉末ガラスと水を混合するのが良いかを確かめるた
なされているといえる。しかし、発光効率は水銀を封入し
めの実験を行った。昨年度までの研究では粉末ガラス
た蛍光電管に比べて 1/3~1/2 程度なので、実用化されて
DT430 を使用しており、粉末ガラス:水=10:1 の混合
いる例は少ない。この発光効率の低下を解決するために、
比が最適であったが、本年度は材料を変えたので再確認し
実験用の装置の試作、放電実験によるデータ採取を中心に
た。
開発を進めていく。
下の写真はそれぞれの重量比での加熱後の結果である。
粉末ガラス:水混合比
2.実験方法
10:5
下図1のような電極を作成し、実際に放電させて電圧の
10:4
10:3
10:2
10:1
データを得る。さらに、最適な発光効率を得るための Xe
(キセノン)や他のエキシマ発光のガスの組み合わせを検
討する。
エキシマ放電の組み合わせの例を表 1 に示す。
表1 エキシマ放電の組合わせ
図2
混合比別の加熱後の写真
水の量が少なくなるにつれてよく接着されているが、粉
封入ガス
Xe*
ArCl*
KrCl*
XeI*
Cl2*
XeCl*
末ガラス:水=10:1 のものは、ほぼ粉末の状態なので細か
λ(nm)
172
175
222
253
258
308
い部分への使用にはあまり適していないといえる。このこ
とから、粉末ガラス:水=10:2 の重量比で混合したものを
主に使用して作業を行うことにした。
[葉書サイズのガラス箱の作成]
以上の結果を元に、葉書大のガラス板を使用したガラス
箱(前年のプレパラートを使用したものに比べ約8.6倍
の面積)を作成。真空排気の際に大気圧に耐え切れなくな
り割れた。
ガラス板表面の面積が大きいため、大気圧により大きな力
図1
放電管の仕組み
図3
真空排気後のガラス箱の様子
がかかってしまう。かかる力をおさえるために葉書大の
TAKASAGO 製
1/2 のサイズにし、さらに内側中心部分に支えをいれた。
バータは TOSHIBA 製
その上で、ガラス同士の接着方法(以下に示す(1)(2))を変
えた2種類の放電管の作成を行った。
TP035-2D、誘電体バリア放電用イン
YMX92V-0 である。
アラルダイトを使用したものは、不純ガスにより粉末ガ
ラスを使用したものに比べ光が暗かった。
[葉書大 1/2 サイズの放電管の試作]
(1)ガラス同士の接着に粉末ガラスを使用した放電管
外枠にガラス板を積層して作った場合、部品が多いため
接着する必要のある部分が多くなってしまう。前年度の放
電管と比べて大きくなっている本年度のものでは、1度の
アラルダイト封着放電管
作業で真空を保つことのできる放電管を作成するのは困
図6
粉末ガラス封着放電管
各放電の様子
難である。そのため、完全に封止できるように2度にわた
って粉末ガラスで外側を覆い、加熱を行っていた。さらに、
[電極を付けた放電管の作成]
排気管と外枠のガラス版との間に少しの段差が生じてい
以上の結果を基に、点電極、平面電極をつけた放電管の
たことが原因となり、全て加熱中に割れた。これを改善す
作成を行った。アルミ蒸着を用いてガラスの表面にアルミ
べく、排気管に使用しているガラス管を外枠にも使用した。
を付着させ、点電極、平面電極とした。
これにより高さも均一になり、部品点数も減少し、一度の
加熱で気密封止できるという結果が得られた。
外枠に使用するためのガラスを切り出す必要もなくな
電源電圧を 10V に設定し、放電。下図右は点電極によ
り、均一な放電をした写真である。封入ガスにはアルゴン
を使用している。
ったので時間の短縮にもつながった。
放電管完成品
図4
放電状態
図 7 完成品と放電の様子
粉末ガラスを使用
4.結論
(2)ガラス同士の接着に2液混合エポキシ接着樹脂(以下ア
ラルダイト)を使用した放電管
接着にアラルダイトを用いて封止した結果、割れること
もなく真空も保たれる放電管が得られた。
・今回ガラス同士の接着方法には 2 種類の方法を用いたが
やはり粉末ガラスが適しているということがわかった。
・排気管を用いて枠部分の高さを均一にして封止した結果、
気密封止が成功した。
・ドット電極により放電が管全体に均一に拡散していると
推定された。
・次ステップとして封入ガスを Xe で評価する。
図5
アラルダイトを使用
参考文献
1)廣瀬信宏
粉末ガラス、アラルダイト共に、試作放電管は真空排気
に成功し、下にアルミ板、上に金網を置き電源電圧 25V
でそれぞれ放電実験を行った。図6はそれぞれ放電中の写
真である。封入ガスはアルゴンを使用した。使用電源は
「バックライト用のエキシマランプの開発」
17 年度卒業研究論文
2)志賀智一「無電極水銀レス平面放電バックライト」
月刊ディスプレイ(2001 11 月号)