第25回メディアとことば研究会 是永 論 第25回メディアとことば研究会 於東洋大 2009/6/20 是永 論(立教大学) http://www.rikkyo.ne.jp/web/ronkore How to do things with ”絵図” マンガを中心とした画像表現における相互行為 の理解について 是永 論 2009 「画像をめぐる相互行為の理解につい て:マンガにおける日常的光景の理解可能性を中心に」、 『応用社会学研究』51号より 論文サイトhttp://www.rikkyo.ac.jp/shakai/memorys.html マンガを理解すること 例:「マンガはわかりやすい、小説は難しい」 ※「マンガ」という表現上の特徴と理解の仕方 ?「視覚的」であること? ?「視界」を共有すること? →「相互行為の表現とその理解について ※画像(= 絵図 )として表現されたもの 2.相互行為の表現と理解 2.1 「人物」どうしの関係の理解 • 「成員カテゴリー化装置」(MCD,Sacks) 例:「親子」というカテゴリー 特定のことばを使って記述すること =特定のカテゴリー集合を適用すること (適用規則の実践) 「こども」:「人生の段階」/「親に対する子」‥ →「親子」という「概念」を示すこと 2009/6/20 1.目的 ①エスノメソドロジーの立場から、マンガを中心 とした画像上に見られる相互行為を分析的に 記述すること ②日常的な相互行為を理解ないし達成する際 に、行為者が用いている「概念」の結びつき (酒井ほか[2009])を明らかにすること ↓ ③マンガあるいは画像を用いた表現とその理 解の分析に向けて 2.相互行為の表現と理解 ①(絵図上にある)「人物」どうしの関係の理解 ②場面として展開している行為内容の理解 What’s going on here?” (Goffman[1974]) ※理解における相互参照 「二つの顔」として見ること (是永[2009]) 2.1 「人物」どうしの関係の理解 • 「親子」という概念として理解/記述すること 「親子」であるから行なえること・行なうべきこ と(category boundな行為,Sacks)の指示 →「概念」として理解するための手続き ①ことばの使用 ②グラフィカルなディスプレイ 1 第25回メディアとことば研究会 是永 論 2009/6/20 2.1 「人物」どうしの関係の理解 2.1 「人物」どうしの関係の理解 ①ことばの使用による「概念」理解の手続き ・カテゴリカルな記述としての「名指し、呼びかけ」 ②グラフィカルなディスプレイによる手続き ・相対サイズ( Relative Size ,Goffman[1979];是永 [2006]) ※「高さ における相互行為 ※「高さ」における相互行為 「赤ちゃんが泣いていた.お母さんがだっこし た ( k [1974]) た.」(Sacks [ ]) ・「役割語」(金水 [2003]) ※近代の「老人語」の規格化 ◎「概念(集合の適用規則)」としての理解 →「(実在の)人物」以外にも適用可能 2.2 場面として展開している行為内容の理解 2.2 場面として展開している行為内容の理解 ◎社会的状況に参与するための手続きとして =「一目でわかるもの」としてあること/いること →Sudnowによる対象化(Macbeth[1999]) ・‘make out at a glance’による社会的な状況 (経験)の構成(Sudnow[1972]) ‘civil inattention’ ( 儀礼的無関心 ,Goffman[1967=2002]) ‘doing “being ordinary”’ (Sacks[1974]) ・相互行為上の焦点=「志向」の表示と理解 ①発話の順番取り(turn taking)システム 「会話」という概念による表示 「会話」の構成手段⇔相互行為上の志向表示 ②視線、体の向き 「志向空間」(西阪[2001])の形成 2.3 メディアにおける相互行為の表現 ・「相互行為の呈示」としての画像表現 志向=そこで「見るべきもの」についての理解 最適なタイミングの問題(Sudnow[1972]) 広告での相対サイズの遵守 ×上野[2009]などによる「差別表現」としての 指摘(是永[2007]) ※メディアによる「演出」 「見るべきもの」をめぐる交渉/争点化 参与者および参与者以外の志向を呈示(ディ スプレイ)→ focused interaction’へ 3.マンガにおける相互行為の表現 ①「コマ展開」によるturn takingの表示 ①´ 会話以外の行為への志向 ・turn takingが概念的に示す「会話」の成立 =「会話以外」の行為を「同時に行なう」こと 2 第25回メディアとことば研究会 是永 論 2009/6/20 ②会話の構成による志向の配置 ②会話の構成による志向の配置 ・「質問−答」の順番取りシステムに即して 例:’troubles talk’(Jefferson)による埋め込み • 「記号」としての「ばんそうこう」 →相互行為上の志向にしたがった表現 =「何をどのように見るべきか」という理解として ③相互行為上の動作による志向の配置 ジェスチャー:視線とゆびさし(pointing) 場面において登場人物が志向するもの =「その場で見るべきもの」 4.マンガにおける「わかりやすさ」とは? ◎ 「見るべきこと」の相互行為的な構成 ×「視覚的」であること ×「視界」を共有すること • 相互行為の構成において使用される「概念」 をそのまま(場面の記述に)利用していること →ある概念に則った上でのさらなる概念の表示 例:「会話」における成員カテゴリー化装置の指示 +視線(「沈黙」の概念)によるハイライト 文献 ※エスノメソドロジーについては下記を是非ご覧ください。 前田泰樹ほか編 2007 『ワードマップ エスノメソドロジー:人々 の実践から学ぶ』 新曜社 Goffman,E. 1963 Behavior in public places : Notes on the Social 1963 Behavior in public places : Notes on the Social Organization of Gatherings, Free Press= 1980 『集まりの構造』 丸木恵祐子・本名信行訳,誠信書房 Goffman, E. 1967 Interaction Ritual:Essays in Face‐to‐Face Behaviour , Pantheon Books=2002(浅野敏夫訳)『儀礼として の相互行為――対面行動の社会学』,法政大学出版局 Goffman,E. 1974 Frame Analysis :An Essay on the Organization of Experience, Northeastern University Press Goffman,E. 1979 Gender Advertisement, Harper and Row 5.考察 ①言語としての 絵図 単なる「像」ではなく、行為実践の意味において ②物語を語ること 相互行為「の中で/として」語ること 行為の時間的な省略 「会話文」としての語り ‥語り方の「粒度」(Scheglof[2000]) 金水 敏 2003 『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』, 岩波書店 是永 論 2009 「画像を見ることをめぐって:エスノメソドロジーと いう方法」、高校生のための社会学編集委員会編『 高校生の ための社会学:未知なる日常への冒険』、ハーベスト社、353‐ 362 西阪 仰 2001 『心と行為: エスノメソドロジーの視点』 岩波書店 Sacks H 1974 'On Sacks, H. 1974 On the Analyzability of Stories by Children, the Analyzability of Stories by Children ' in R. in R Turner (ed.) Ethnomethodology, Harmondsworth: Penguin 上野千鶴子 2009 『セクシィ・ギャルの大研究』 岩波現代文庫 酒井泰斗ほか 2009 『概念分析の社会学:社会的経験と人間の 科学』 ナカニシヤ出版 ‥ほかは原著論文を参照 3 第 25 回メディアとことば研究会 資料 図1 図2 図4 図3 手塚治虫 『ブラックジャック』第8巻より 是永 論 1 第 25 回メディアとことば研究会 資料 図5 図6 小畑・大場[2005]より 谷川[2007]より 是永 論 2
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