テーマ 靴 がいしゆつ かなら くつ は くつ にちじよう 外 出 のときには、 必 ず 靴 を履く。 靴 は、日 常 せいかつ ね どう ぐ どう じ 生 活 に根づいた 道 具であると 同 時に、スポーツや し ごと テキスト版 はつめいひん く つ にんげん くつ かんが すごい 発 明 品 ともいえる 靴 について 考 えよう。 執筆/柳田理科雄 1 か 仕 事 やオシャレにも欠かせないアイテムだ。人 間 の 制作/空想科学研究所 提供/栄光ゼミナール は なぜ靴を履くんだろう? みな くつ は ひと くつ 皆さんのなかに、靴を履いたことのない人はいないだろう。靴は、 なん は 何のために履くのだろうか。 くつ は あし まも じ めん うえ ふ 靴を履くのは、足を守るためだ。地面の上には、はだしで踏むと もの お しよくぶつ は ケガをする物が落ちていたり、トゲのある 植 物が生えていたりす あし まも くつ あつ そこ る。これらから足を守るため、靴には厚い「底」がついている。 あし ゆび こう おお ぶ ぶん よ By Tobiasgp なに ふせ さむ や 布でできた 靴のように曲がらな を落としたり、 何かにぶつけたりしたときにケガをするのを防ぎ、 寒 あめ ゆき あし まも さや雨や雪から足を守っている。 のこ ふる くつ き げんぜん かわ ヨーロッパには木 靴があった。革 また、足の指や甲を覆う部分は「アッパー」と呼ばれる。これは、物 お き ぐつ もの ぬの くつ ま ある いから、 ちょっと歩きにくそうだね ねん いま残っているなかでいちばん古い靴は、紀元前3500年にヨ つく げんざい かわ かわ くつ かんたん つく ーロッパで作られたものだ。現在の靴よりずっと簡単な作りだった どうぶつ じよう ぶ あし かたち あ が、動物の革でできていた。革は、とても 丈 夫で、足の 形 に合わ き ぬ あ くつ そ ざい せて切ったり、縫い合わせたりすることができるので、靴の素材に みぎらん しやしん き ピッタリだった。また、ヨーロッパには右欄の写真のように、木で くつ できた靴もあった。 くつ ほか うご 靴は他にも、オシャレのためや、スポーツでいい動きをするため は にんげん じ めん うえ く かぎ くつ は だいいち にも履く。それでも、人間が地面の上で暮らす限り、靴を履く第一 もくてき あし まも か の目的が、足を守ることにあるのは変わらない。 今日の1日1科学 くつ は あし まも 靴を履くのは、足を守るため くつ 2 なに 靴は、何でできている? は くつ そ ざい つく いつも履いている靴は、どんな素材で作られているのだろう? しようがくせい は うんどうぐつ そこ やわ 小 学生がよく履いている運動靴やスニーカーは、 底がゴムや柔ら ぬの か がくせん い かいプラスチックで、アッパーが布や化学繊維でできている。これ かる かたち つく いろ じ ゆう り てん らは軽く、いろんな 形 に作れて、色も自由につけられるという利点があ ね だん やす てん あし おお せいちよう しようがくせい る。 値段が安い点も、 どんどん足が大きく成 長 する 小 学生にピッタリだ。 1 くつ ほか ざいりよう つか ひもぐつ とお 靴には他の材 料 も使われている。たとえば紐靴なら、ひもを通す あな きんぞく つか 穴に、金属やプラスチックが使われていることがある。また、アッ も よう とお ほ きよう あな ぶ ぶん か がくせん い パーの模様や、ひもを通す穴を補 強 する部分には、化学繊維にプラ じんぞう ひ かく つか うわ ば スチックをしみこませた「人造皮革」も使われている。上履きなど はい かんさつ くつ には、ゴムの入ったテープもついている。よく観察すると、靴には ざいりよう つか いろんな材 料 が使われていることがわかる。 そこ くう き はい くつ くう き の By ちぢ また、底に空気が入っている靴もある。空気は、伸び縮みするの かる てん ほか ざいりよう あつとうてき すぐ でクッションになるし、 軽さの点では他の材 料 より圧倒的に優れて くつ そこ くう き い く ふう ねんだい いる。靴の底に空気を入れる工夫は、1960年代にフィンランド かいしや かんが ねんだい せんしゆ の会社が 考 え、 80年代にアメリカのプロバスケットボール選手が つか せ かいじゆう ひろ くう き くつ NYR-NYG-NYY そこ くう バスケットシューズの 底 には 空 き はい かる 気が 入 っているものがある。 軽 い ひざ いた すく し、膝を傷めることも少ない。す く ふう ごい工夫だね ざいりよう 使ったことから、世界 中 に広まった。空気が靴の材 料 になるなん むかし ひと き て、 昔 の人が聞いたらビックリするだろう。 今日の1日1科学 くう き くつ そ ざい 空気も靴の素材になる つか 3 くつ くつ スポーツに使う靴は、どんな靴? や きゆう せんしゆ ふ つう うんどうぐつ ちが とくしゆ サッカーや野 球 の選手は、普通の運動靴とは違う、特殊なシュー は ズを履いている。なぜだろうか? は くつ うご く ふう スポーツで履く靴には、いい動きをするために、たくさんの工夫 ほどこ くつ そこ ちゆうもく が 施 されている。ここでは、靴の底に 注 目してみよう。 そこ たいせつ すべ あし ふ たん スポーツシューズの底で大切なのは、滑らないことと、足に負担 をかけないことだ。 や きゆう りくじようきよう ぎ つち し ばふ うえ きよう ぎ サッカーや、野 球 や、陸 上 競 技など、土や芝生の上でやる 競 技 くつ で ぱ さんかつけい きんぞく いた きんぞく の靴には、出っ張りや、三角形の金属の板や、金属のトゲがついて じ めん く こ すべ いる。これらは、地面に食い込ませて滑らないようにするためのも よ するど あい て せんしゆ きび に向けてはいけないなど、 厳 しい しつないきよう ぎ きゆう き はし バスケットボールなどの室内 競 技や、テニスでは、 急 に走った む くつ クがついている。これを相手選 手 む ので、 「スパイク」と呼ばれる。 と や きゆうせんしゆ 野 球 選 手 の 靴 には 鋭 いスパイ か おお 決まりがある くつぞこ り、止まったり、向きを変えたりするプレーが多い。このため、靴底 とくしゆ ゆか すべ そ ざい は、ゴムや特殊なプラスチックなど、床やコートで滑りにくい素材 でできている。 くつ ぶ ぶん あつ かた マラソンの靴は、かかとの部分が厚くなっている。マラソンは硬 ちやく ち しようげき あし まも いアスファルトに、かかとから 着 地する。その 衝 撃から、足を守 く ふう るための工夫だ。 今日の1日1科学 すべ く ふう スパイクは、滑らないための工夫 2 しよう ぼ う し くつ 消防士さんの靴 4 あし まも てつ くつ き けん ば しよ はたら ひと 足を守ることに徹した靴がある。危険な場所で 働 く人のための あんぜんぐつ 「安全靴」だ。 みぎらん しやしん しようぼう し くつ おも もの お とが 右欄の写真は、消 防士さんたちの靴だ。重い物が落ちてきたり、尖 ふ さき くつぞこ ったものを踏んだりしたときにケガをしないように、つま先と靴底 てつぱん はい くつ あんぜんぐつ おも ざいりよう に、鉄板が入っている。このような靴を安全靴といい、重い材 料 や どう ぐ つか こうじよう こう じ げん ば つか くつ ねつ あし あしもと まも ねつ つよ そ ざい か じ げん 消 防士さんたちの足 元。火事の現 ば 道具を使う工 場 や、工事現場でも使われる。 しようぼう し しようぼう し き けん お 場にはどんな危険なものが落ちて てつていてき とくに 消 防士さんの靴は、熱から足を守るために、熱に強い素材 いるかわからないから、徹 底 的に つく 足を守る必 要がある あしくび おお で作られ、足首までを覆うブーツになっている。 でん し き き こうじよう も あつか こうじよう はたら あし まも ひつよう ひと また、電子機器工 場 や、燃えるものを 扱 う工 場 では、 働 く人 からだ はつせい せいでん き ぶ ひん いた か じ お の 体 で発生した静電気が、部品を傷めたり、火事を起こしたりする せいでん き ゆか に せいでんぐつ つか あし ことのないように、静電気を床に逃がす「静電靴」が使われる。足 うら くつぞこ でん き とお とくべつ ぬの の裏と靴底が、 電気を通しやすい特別な布でつながっているものだ。 し ごと くつ つか 仕事によって、いろんな靴が使われている。 今日の1日1科学 せいでん き に くつ 静電気を逃がす靴もある むかし 5 に ほん じん なに は 昔の日本人は何を履いていた? に ほんじん むかし は げ た ぞう り みぎらん しやしん 日本人が 昔 から履いていたのは、下駄や草履(右欄の写真①と②) はな お だ。どちらも鼻緒がついているけれど、いったいなぜだろうか? はな お はきもの とうなん あつ くに つた 鼻緒のついた履物は、東南アジアなど暑い国から伝わってきた。 に ほん なつ あつ しつ け おお あし おお はきもの む 日本の夏も暑くて湿気が多いので、足が覆われていない履物が向い ①下駄(げた) ていた。 に ほん いえ あ はきもの ぬ しゆうかん ぞう り また、日本には、家に上がるとき、履物を脱ぐ 習 慣がある。草履 げ た はな お はきもの は ぬ はな お や下駄など、鼻緒のついた履物は、履きやすく、脱ぎやすい。鼻緒 はきもの に ほん き こう せいかつしゆうかん あ のついた履物は、日本の気候や生活 習 慣に合っていたのだ。 たび やま ある ぬ だが、旅をしたり、山のなかを歩いたりするときには、脱ぎやす は あし まも たいせつ さや履きやすさよりも、足をしっかり守ることが大切だ。そのよう みぎらん しやしん わらじ は あ ②草履(ぞうり) つく なときは、右欄の写真③のような「草鞋」を履いた。わらを編んで作 だ えんけい そこ ほそ なわ あしくび ま こ てい った楕円形の底に、 細い縄がついていて、 足首に巻いてしっかり固定 するようになっていた。 今日の1日1科学 ぞう り は ぬ 草履は、履きやすく脱ぎやすい ③草鞋(わらじ) 3 は し 6 は や はだしで走るとホントに速い? うんどうかい ちか はし はや い けん くつ 運動会が近づくと「はだしで走るほうが速い」という意見と「靴を は はや せいはんたい い けん と か せい 履いたほうが速い」という正反対の意見が飛び交うよね。 どっちが正 しいのだろうか。 はし り てん あし かる くつ おも はだしで走ることの利点は、 足が軽くなることだ。 「靴の重さなど、 おも はし あし おお たいしたことはない」と思うかもしれないが、走るときは足を大き うご すこ おも おお はし ひと く動かすので、少しの重さが大きく影 響 する。 じ めん こ いし お いた ふ な やわ ちゆう い ふ き けん をする、という危険もあるぞ! ひと あし き 気をつけよう! うら をしたりする。とくに、普段からはだしに慣れていない人は、足の裏 ひ あし いる人に足を踏まれたときにケガ おも だが、地面に小石などが落ちていたら、痛い思いをしたり、ケガ ふ だん はし はだしで走ると、いっしょに走って えいきよう ひつよう の皮膚が柔らかくなっているので、 注 意が必要だ。 てん くつ は はし じ めん なに お き その点、靴を履いて走れば、地面に何が落ちているかなどを気に ちから じ めん け くつ そこ じ めん つた すべ せずに、力 いっぱい地面を蹴ることができる。また、靴の底には滑 く ふう ほどこ あし ちから りにくくする工夫が 施 されているので、足の 力 が地面に伝わりや すい。 くつ あし あ ぎやくこう か ちい さき ただし、靴が足に合っていないと 逆 効果だ。小さすぎると、つま先 いた おお と ちゆう ぬ くつ あし すべ が痛くなるし、大きすぎると、途 中 で脱げたり、靴のなかで足が滑 つか って、ムダなエネルギーを使ったりしてしまう。 くら あし あ かる くつ は こうして比べると、足にピッタリ合った、軽い靴を履けば、はだ はや こ じん ちが しで走るより速いということになりそうだ。でも、個人によって違 ため いがあるから、試してみよう。 今日の1日1科学 はし あし かる はだしで走ると足が軽くなる やなぎ た り か お へんしゆうこう き 柳 田理科雄の編 集 後記 しようがくせい ぼく あし がくねん ほうそく おお 小 学生のとき、僕の足のサイズは「20+学年」㎝という法則で大きくなって ねんせい ねんせい ねんせい いきました。1年生で21㎝、2年生で22㎝……、6年生で26㎝というわ ちゆうがく ねん ちゆう ちゆう くつ けです。そして、中 学1年で27㎝、中 2で28㎝、中 3で29㎝! い く ろう こま こうこう しき て 靴を手 うわ ば に入れるのに苦労したものです。 困ったのは高校のシューズ式の上履きでした。 とくちゆう とど ぼく は よくねん 特 注 するしかなく、届くまで僕だけスリッパを履いていました。翌年、やはり こうはい にゆうがく ぼく れい て はい 29㎝の後輩が 入 学してきましたが、僕の例があったので、すぐ手に入ったそ じ ぶん なに せんじん おも うです。自分が何かの「先人」になるとは思いませんでした。 4
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