でんせつ - 相模原市の図書館

発見!!
さがみはら
つた
でんせつ
みんわ
まき
相模原に伝わる伝説・民話の巻
その2
●はじめに
だい
ごう
ひ
つづ
さが み はら し
つた
みん わ
でんせつ
しょう かい
第10号に引き続き、相模原市に伝わる民話・伝説を 紹 介し
こんかい
き ゅ う つ く い よんちょう
つた
みん わ
でんせつ
なか
ます。今回は旧津久井 四 町 に伝わる民話・伝説の中から、
しょうかい
いくつかを紹 介 します。
おおかみの恩返し
さ の が わ むら
げんさく
りょうし
ひ
むかし佐野川村に、源作といううでのいい猟師がいました。ある日源作
りょう
ちゃ
の
そと
ごえ
み
が猟 からもどってお茶を飲んでいると、外でみょうなうなり声がします。見
ほね
くる
てみると、おおかみが、のどに骨がささって苦しんでいるのでした。源作
くち
なか
て
い
ほね
はおおかみの口の中に手を入れて、骨をとってやりました。
つぎ
ひ
いえ
いりぐち
おお
お
にょうぼう
次の日、源作の家の入口に大きなうさぎが置かれていました。源作と女房
まえ
ひ
れい
も
き
よろこ
はな
は、きっと前の日のお礼におおかみが持って来たにちがいないと、喜 んで話
したということです。
すずめの孝行
し ま い
みやこ
や し き
ほうこう
むかし、ツバメとスズメは姉妹で、都 のお屋敷に奉公にあがっていまし
ひ
き と く
き
し
た。ある日、この姉妹のおかあさんが危篤だから、すぐに来てほしいと知ら
き
み
き
せがありました。スズメは着の身着のままですぐにかけつけ、おかあさん
いき
ま
あ
い
が息をひきとるのに間に合いましたが、ツバメはおしろいをぬったり、衣し
えら
ょうを選んだりしていたので、すっかりおそくなってからやってきました。
かみ
おやこうこう
それをごらんになった神さまが、スズメには、親孝行だからごほうびに、
こめ
こくもつ
た
お や ふ こ う
むし
た
これからはお米や穀物を食べるように、そして親不孝のツバメには、虫を食
い
べるように言ったということです。
犬と五徳
いぬ
あし
ご と く
むかし、犬には足が3本しかなくて、五徳には足が4本ありました。犬
ある
ふ べ ん
かみ
は歩くのに不便だし、五徳は足が1本じゃまでした。そこで神さまは五徳
の足を1本とって、犬につけてやりました。おかげで五徳はすわりがよく
なり、犬は歩きよくなりました。犬は、ありがたがって、それからという
かみ
かたあし
ものは、神さまからいただいた足をよごさないようにと、片足をあげて、
しょうべん
小便をするようになったということです。
わらびの恩
はる
ひ
の は ら
ひ る ね
むかし、ある春のぽかぽかした日、へびが野原で昼寝をしていました。
した
ちがや
め
だ
つち
かた
すると、へびの下になっていた茅 が芽を出してきましたが、土が固かった
む
り
い
ちから
ちがや
め
さき
ので無理やり 力 を入れて芽を出しました。 茅 の芽の先 はとがっているの
なんほん
ちがや
め
くる
で、へびのからだには何本も、茅 の芽がささってしまいました。へびが苦し
ちがや
ね も と
んでいると、茅 の根元でちぢこまっているわらびが、ぐんぐん芽をのばし、
も
あ
ちがや
め
よろこ
へびのからだを持ち上げて、茅 の芽からぬいてやりました。へびは喜 び、
おんがえ
おも
とき
どく
わらびに恩返しをしようと思いました。それからマムシにかまれた時、毒を
け
な
む
じゃだいごんげん
おん
わす
消すおまじないに「南無、蛇大権現。いつぞやのわらびの恩を忘れたか。」
い
ととなえるようになったと言われています。
天狗沢
あお の は ら
し ば い
だ い す
す み や
むかし、青野原に芝居の大好きな炭焼きのじいさまがいました。
ひ
やま
すみ
や
ま
て ん ぐ
ある日、じいさまが山で炭が焼けるのを待っていると、天狗があらわれ、
え
ど
か
ぶ
き
み
い
こえ
じいさまに、
「江戸の歌舞伎を見に行こう」と声をかけました。じいさまは
わす
て ん ぐ
い
め
こわいのも忘れ、天狗に言われるままに目をつぶって天狗のせなかにのり、
そら
ま
空を舞っていきました。
か
ぶ
き
ぶ た い
み
つ
く
しばらくすると、歌舞伎の舞台がよく見えるところに着き、じいさまは食
か
ぶ
き
けんぶつ
いつくように歌舞伎を見物しました。
か
ぶ
き
お
むら
かえ
つ
さて、歌舞伎が終わって、村へ帰ろうとしましたが、連れてきてくれた天
し か た
ある
狗がいません。仕方なくじいさまは、村まで歩いて帰ることにしました。
きゅう
おお
にち
青野原の村でも、じいさまが急 にいなくなったので大さわぎ。いく日もさが
とお
つか
よ う す
しているところへ、遠くからじいさまが疲れた様子で帰ってきました。
あ
て ん ぐ ざ わ
それから、じいさまが天狗と会ったところを天狗沢とよぶようになりまし
た。
飢饉を救った権現さま
しろやまちょう ふ も ん じ
ごんげん
え
ど てんぽう
じ だ い
たいへん
城山町普門寺には、ありがたい権現さまがいます。江戸天保の時代は大変
き き ん
つづ
ひとびと
う
くる
ひと
な飢饉が続き、人々は飢えに苦しみました。そのころ、ある人がその権現
しょうがつ
た
ひ っ し
いの
さまに「正月に、もちだけでも食べられますように」と必死にお祈りをし
とし
あき
た
こめ
みの
ひと
たところ、その年の秋、ほとんどの田には米が実らなかったのに、その人の
た
こめ
田だけは、どうにかもちをつくだけの米ができたそうです。
ひとびと
はなし
き
り や く
人々は、この話 を聞いて、そのありがたい権現さまのご利益にすがろう
れつ
まい
と、列をなして、普門寺にお参りしたそうです。
<参考にした本>
・ K0-38・J918/むかし話『神奈川のむかし話』
・ K0-38・J918/むかし話『神奈川県の民話』
日本標準
偕成社
・ K0-38『神奈川県の民話と伝説 上巻・下巻』
荻坂 昇/著
有峰書店新社
(日本の民話19)
・ K0-38『神奈川の民話』
・ K0-38『かながわのむかしばなし50選』
未来社
神奈川合同出版
・ K9-29『八王子・津久井』(タウンガイドブックス)
だい
ごう
第14号
平成 21 年
発行:相模原市立橋本図書館
9月
042-770-6600
京王出版