光反射シート「メガルクス」 (PDF形式、420kバイト)

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Shin-Kobe Electric Machinery Co.,Ltd.
新神戸テクニカルレポートNo.20(2010-2)
光反射シート「メガルクス®」
Light Reflector for Illuminators "MEGALX®"
熊谷 誠*
Makoto Kumagai
田坂隆幸*
Takayuki Tasaka
服部 勇**
Isamu Hattori
近年の発光ダイオード(LED)技術の飛躍的な進化に伴い,従来
型の照明器具から,最近型LED(表面実装型)への代替が急速に進
んでいる。これら照明器具は,それらをバックアップする光反射シ
ートとの併用によって一層効果的に使用電力の削減ができる。従来,
光反射シートとしては,金属(アルミニウム板)や,熱可塑性発泡
樹脂シートなどが採用されている。しかし,それらには光反射特性
や異型加工性などの改善すべき課題がある。
そこで,本研究では電飾看板用途として光源の光を効率良く反射
させる光反射シートの開発を進め,さらにLED照明や液晶パネルバ
ックライトへも展開できる光反射シート「メガルクス®」を開発した。
その要素技術としては,熱可塑性樹脂と充填するフィラーや他添加
系を検討した。また,液晶パネルバックライト用に適合させるため,
コストを見据え,均一反射やシート厚みを極薄化する技術を確立し,
光反射シートの用途拡大を進める。
Because of recent drastic progresse of LED technology, substitution of the
updated LEDs for conventional light sources advances rapidly in all kinds of
lighting equipments. They need light reflectors to take advantage of the
highly intensitive illumination efficiently. Conventional light reflectors were
made of metal and foamed thermoplastic resin sheet. However, they have
some problems such as light reflection, and workability.
We have developed a light reflection sheet for LED lightings named
MEGALX ®, which solved the problems mentioned above by utilizing
thermoplastic resin superior in fabrication and filler fitting to it. This is used
for the light reflectors of signboard lightings: moreover, it can also be
developed into other applications such as liquid crystal display backlight
reflectors.
ー消費量の改善が努力目標として打ち出された)などの
追風から,オフィス,植物工場,大規模商用施設などの
照明用途への展開がなされている2)。
〔1〕緒 言
近年の低炭素社会指向が重要視される状況において,
省エネルギー化の推進が,急速に高まっている。実例と
して,発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)電飾
これらLED照明機器は意匠性も相まって,省エネ製品
として,今後世界的に飛躍的な市場拡大が見込まれる。
また,これらの照明器具には,光源をバックアップする
光反射シートの設置により,一層効果的な使用電力削減
が繋がるため,光反射シートの需要拡大が期待される。
従来品より異型加工性,耐光性などを向上させた光反射
シート「メガルクス®」を開発したので報告する。
看板や,図1に示すように液晶テレビなどが有望と考え
られている 1)。さらに,LEDは表1に示すように白熱電
球,蛍光灯といった従来の光源と比較して,低消費電力,
長寿命といった有効な機能が長所として認知され,環境
産業としても,省エネ法の改正(企業単位でのエネルギ
ー使用量の報告が義務付けられ,年1%以上のエネルギ
*
彦根事業所 **樹脂事業本部
37
新神戸テクニカルレポートNo.20(2010-2)
2.2
〔2〕使用材料の検討
表2に市場で要求される光反射シートの特性を示す。
各用途において共通の項目としては,主に次の6点が挙
げられる。
(1)高い光拡散反射率を有すること
(2)帯電防止性能を有すること(ホコリ等の付着防止)
(3)耐光性に優れること(紫外線劣化の変色防止)
(4)真空成形が可能であること(3次元形状の付与)
(5)耐熱性に優れること(熱による変形が小さいこと)
(6)シート形状(薄肉化が可能,反りが小さいこと)
これらの要求特性を満足する光反射シートを,熱可塑
性樹脂と充填フィラーを調整し,押出成形により作製す
る。
2.1 光反射シートの現状と問題点
現在,看板用照明の光源は,蛍光灯,冷陰極管および
LEDを使用している。それら光源から発せられる光を広
い面全体に拡散させるため,光反射シートを背面に設け
ることが有効である。その材質は,白色塗装鋼板および
アルミニウム板などの鏡面反射板が採用されている。ま
た,液晶パネルバックライト用には,熱可塑性樹脂発泡
シートなども使用されている。
しかし,金属系反射板は,拡散反射率が10%以下であ
り,光源からの光は特定方向への反射となり効果的では
ない。よって,光源からの光を収束させるためには有効
であるが,面全体へ効率良く光を反射させ,面全体で均
一な照度を得ることは困難である。また,可視光の長波
光(赤色光)を吸収しやすいため,発色性が悪く,反射
光は元の色と異なり,青色が強くなる傾向がある。
一方,熱可塑性発泡樹脂シートは,軽量で良好な拡散
反射率を示し,切削加工性も容易であるため,施工性に
優れる利点がある。しかし,発泡構造の影響により,真
空成形時の伸張性が悪く,絞りの深い形状への展開が困
難である。また,樹脂の耐光性劣化により黄変し,拡散
反射率が低下する欠点がある。
2.3 材料選択と課題の対応
2.3.1 ベース材料の選択
光反射シートの使用方法には,平板状で使用される場
合と,真空成形等により形状を付与して使用される場合
の両方がある。また,最終製品となる看板照明は軽量で
あることが求められる。これらのことから,採用できる
樹脂系としては,押出成形に実績があり,比較的低比重
で,真空成形性良好なオレフィン系樹脂を選択した。選
択したオレフィン系樹脂は,PP(ポリプロピレン樹脂,
融解温度約170℃)と,PE(ポリエチレン樹脂,融解温
度約130℃)の2種である。PPを主剤とした押出成形シ
ートを真空成形用途に供すると,真空成形の加熱時にシ
ートが熱で軟化して,垂れ下がってしまうドローダウン
が大きく発生してしまい,成形型への追従性が困難な場
合がある。このドローダウンを抑制するため,PPにPEを
所定量配合しベース材料とした。
世界需要台数(万台)
18000
15000
12000
9000
2.3.2
6000
拡散反射率
図2に示すように,光は物体の表面形状により反射特
性が異なる。光反射シートは,光源からの光を広い面全
3000
0
光反射シートへの要求特性と課題
2005年
2007年
2009年
2011年
体に効率良く反射させる必要があるため,図3のように,
光の拡散反射を起こすシート構造を設ける必要がある。
従来の熱可塑性発泡樹脂シートは,シート内部の発泡構
造により光を拡散反射させるのに対し,開発品は押出成
2013年
図1 液晶テレビ需要台数推移
Fig.1 Change of the demand number in the liquid crystal television.
表1 LED照明と既存照明の比較
Table 1 Comparison of LED lighting and existing lighting.
項目
消費電力
寿命
LED 電球
白熱電球
蛍光灯
60W
40W
22W
1,000 時間
6,000 時間
40,000 時間
表2 光反射板の要求特性
Table 2 Characteristic of light reflector.
要求性能
電飾看板用
照明用
液晶パネルバックライト用
96%以上
◎
◎
◎
表面抵抗値 1011Ω以下
○
○
○
光による変色が小さいこと
○
○
○
展開倍率 約 2.5倍
○
○
△
60℃以上
○
○
○
シート厚み(薄肉化)
0.3mm以下
×
×
◎
シート反り
3mm以下
△
△
○
要求特性
拡散反射率
帯電防止性能
耐光性
真空成形性
耐熱性
◎:必要性大,○:必要性あり,△:場合により必要,×:必要性なし 38
Shin-Kobe Technical Report No.20(2010-2)
図2 光の反射特
正反射
性3)
拡散反射
Fig.2
光
光
Reflection
characteristic of the
light.
鏡面
項目
凹凸面
開発品
熱可塑性樹脂発泡シート
単一構造
発泡構造
表面粗さ(Rz)=150.8μm
表面粗さ(Rz)=69.1μm
シート表面の凹凸形状
シート内部の発泡構造
断面形状
表面形状
拡散反射発現機構
図3 拡散反射の発現機構
Fig.3 Mechanism of the diffuse reflection.
2.3.4 帯電防止性能付与
光反射板に空気中の埃やゴミが付着すると,明度の低
下が発生し,拡散反射率が低下する原因となる。通常の
オレフィン系樹脂は,表面抵抗値が1014∼1015Ωのレベル
にあり,強く帯電する傾向にあるためゴミや塵が付着し
やすい性質がある。埃やゴミの付着を防止するため,親
水性基を有する帯電防止成分をベース樹脂に添加し,帯
電性について改善を図った。帯電防止成分中に含まれる
親水性基は,空気中の水分を分子間力により樹脂表面へ
取り込み導電回路を形成し,静電気を逃がす働きをする
ものである。帯電防止作用を持つ成分としては,高分子
量型のものと低分子量型のものがある。高分子量型は,
ベース樹脂と相溶化した筋状の導電回路を形成し,成形
した直後から優れた帯電防止性が発揮され,効果が長期
間継続する。
一方,低分子量型は,成形後に帯電防止成分がシート
表面にブリードアウトすることで,導電回路を形成する
ため,効果の発現が遅く,湿度の影響を受けやすい。ま
た,拭取りや水洗いで脱落しやすいなどの問題点がある。
これらの点を考慮し,今回は高分子量型の帯電防止剤の
添加により,帯電防止性能の向上を図った4)。
形する際に,ロール面を溶融樹脂に転写させ,エンボス
加工を施し,シート表面に凹凸形状を付与することで,
拡散反射を起こす構造とした。また,光反射シートは光
透過を防ぐため,ベース樹脂の隠蔽性を高めると同時に,
明度の高い白色系の色調であることが望ましい。そのた
め,混合するフィラーは,優れた白色度と高い隠蔽力,
及び着色力を持ち合わせることが必要である。
フィラーとしては,酸化チタン(平均粒子径約0.25
μm)と,マイカ(平均粒子径約0.27μm)の2種を検討
した。各フィラーのベース樹脂の混練性は,何れも良好
であったが,酸化チタンを用いた場合の方が,約5%強
の高い拡散反射率が得られたため,これをフィラーとし
て選定した。
2.3.3 耐光性付与
樹脂製光反射シートは,光源から発せられる光に含ま
れる紫外線により黄変,ひび割れ等を起こす場合がある。
このような現象は,拡散反射率低下の要因となる。これ
を防止するため,ベース樹脂には,紫外線吸収成分を添
加することで,樹脂層の紫外線による変色および劣化の
防止を図った。
39
新神戸テクニカルレポートNo.20(2010-2)
3.2 耐光性
耐光性促進試験機を使用し,開発品の耐光性を評価し
た。使用した耐光性促進試験機は,サンシャインウェザ
ーメーター(光源:カーボンアーク灯,スガ試験機㈱製)
とスーパーUVテスター(光源:メタルハライドランプ,
〔3〕シート押出機による光反射シートの開発品評価
光反射シートの開発試作品評価作製工法としては,押
出成形法を採用した。図4に押出成形機の概略を示す。
〔2〕項に示したベース樹脂(PP/PE配合品,ペレット状)
と各充填剤のマスターバッチ(粉末品をPEに高濃度で添
加したもの,ペレット状)をシリンダ内で溶融および混
練する。その後,Tダイで幅方向に溶融樹脂を広げ押し
出す。押し出された溶融樹脂は,冷却ロールで挟んで引
き取り,厚みを調整する。冷却ロールにはエンボス加工
が施されているものを使用し,エンボスを転写させ,評
価用開発品を作製した。〔2〕項で示した光反射シートに
要求される特性について,評価した結果を以下に示す。
拡散反射率(%)
100
3.1 拡散反射率
今回開発した光反射板シートは,「メガルクス®」(以下
80
熱可塑性樹脂発泡シート
60
40
開発品
20
0
370
開発品)と命名した。開発品の拡散反射率を図5に示す
拡散反射率は,自己分光光度計(㈱島津製作所製)によ
り測定した。図5から,開発品は可視光領域において,
ほぼ均一に光を反射させ,波長550nmで96%という高い
拡散反射率を示していることが分かる。熱可塑性発泡樹
脂シートに比べ,開発品は波長370∼400nm付近で拡散反
射率の低下が見られる。これは,ベース樹脂の光劣化が
この波長領域の光で起こるため,光劣化を防止するため
に添加した紫外線吸収成分の影響である。
看板照明には,使用環境により様々な光源が用いられ
470
570
波長(nm)
Fig.5 Diffuse degree of reflection of the light reflector.
反射板あり 照度4,000lx
反射板なし 照度2,200lx
■評価方法■
照度計
アクリル拡散板
50mm
反射板
蛍光灯(10W)
50mm
260mm
図6 蛍光灯による照度確認結果
Fig.6 Illumination measurement result with fluorescent lamp.
図4 シート押出
固体ペレット
機の概略
Extruding
Machine for Sheet.
770
図5 拡散反射率
る可能性がある。そこで,図6∼8に示すように,光源
に蛍光灯,LED,冷陰極管を使用した装置を作製し,そ
の内部に開発品を設置することで照度向上の効果を確認
した。この結果,開発品を設置することにより,設置な
しの場合に比べて蛍光灯では182%,LEDでは123%,冷
陰極管では151%の照度向上が確認された。光源による照
度向上率の差は,各光源からの光の指向性によるもので
ある。蛍光灯や冷陰極管からの光は指向性がほとんどな
い(全方向に光が進む)のに対し,LEDからの光は指向
性が強い(一方向に光が進む)ため,開発品による反射
効果が小さかったと思われる。従って,LEDを光源に用
いる場合には,光反射シートの設置形状を光学的に設計
する必要がある。
Fig.4
670
樹脂シート
エンボス加工
冷却ロール(上)100℃
冷却ロール(中)95℃
冷却ロール(下)40℃
Tダイ
シリンダ
スクリュ
平面図
200∼225℃
40
195∼220℃
130∼190℃
Shin-Kobe Technical Report No.20(2010-2)
ダイプラ・ウィンテス㈱製)の2種である。この耐光性
促進試験機による紫外線照射後,色差の変化を測定した。
色差とは基準色と試料の色調の差を示すもので,その値
が大きいほど試料の変色が大きいことを表す。色差の測
定には,色差計(日本電飾工業㈱製)を使用した。結果
を図9に示す。図9から,開発品は紫外線の影響による
変色が小さく,熱可塑性発泡樹脂シートよりも,耐光性
に優れた材料であると言える。
次に,サンシャインウェザーメーターでの耐光性試験
後における拡散反射率の変化を図10に示す。図10から,
光反射シートあり
光反射シートなし
光反射シートあり
光反射シートなし
照度6,500lx
照度5,300lx
照度5,900lx
照度3,900lx
LED
冷陰極管
ステンレス鏡面枠
ステンレス鏡面枠
アクリル拡散板
アクリル拡散板
25mm
25mm
φ90
φ90
図7 LEDによる照度確認結果
図8 冷陰極管による照度確認
Fig.7 Illumination measurement result with light emitting diode.
Fig.8 Illumination measurement result with cold cathode fluorescent lamp.
図9 耐光性評価結
4.0
1.70
2.0
色素(ΔE)
色素(ΔE)
熱可塑性樹脂発泡シート
1.0
開発品
0.24
200
400
試験時間(h)
600
reflector.
2.71
開発品
1.77
0.36
0
0
4.0
Light stability
characteristic of the light
熱可塑性樹脂発泡シート
6.0
2.0
0.36
Fig.9
7.88
8.0
3.0
0
800
0
100
200
300
試験時間(h)
400
(b)試験機:スーパーUVテスター
光源:メタルハライドランプ
(a)試験機:サンシャインウェザーメーター
光源:カーボンアーク灯
図10
60
耐光性試験前
拡散反射率(%)
80
耐光性試験後
40
の影響
耐光性試験前
Fig.10
耐光性試験後
470
570
波長(nm)
670
770
60
to
470
570
波長(nm)
670
770
(b)開発品
試験機:サンシャインウェザーメーター
試験時間:750h
(a)従来品(熱可塑性樹脂発泡シート)
試験機:サンシャインウェザーメーター
試験時間:750h
41
light
deterioration.
40
0
370
Influence on
diffuse reflectance due
20
20
0
370
80
耐光性劣化
による拡散反射率へ
100
100
拡散反射率(%)
変
色
大
果
10.0
3.55
stability
新神戸テクニカルレポートNo.20(2010-2)
従来品は紫外線照射後において,波長370∼450nmの範囲
で,拡散反射率が低下するのに対し,開発品はその傾向
が殆ど見られないことから,長期使用においても,照度
低下防止効果が見込まれる。
につれて成形型のコーナーRに近づき,加熱時間50秒で
ほぼ成形型を再現していることが分かる。
図13には,開発品の成形品における厚み分布を示して
いる。図13から,同一の凹凸形状箇所において,ほぼ均
一の厚みが保持されていることから,優れた真空成形性
を示していることが分かる。
また,開発品の真空成形後における拡散反射率特性を
3.3 帯電防止性
帯電防止性能の指標となる,表面固有抵抗の測定結果
を図11に示す。測定は絶縁抵抗計(㈱アドバンテスト製)
を使用し,二重リング電極法により行った。表面固有抵
抗が大きいほど,シート表面は帯電し易く,埃やゴミな
どが付着し易くなる。一般に,表面抵抗値1011Ω以下であ
れば,埃やゴミの付着が抑制できると言われている5)。
図11から,開発品の表面抵抗値は,帯電防止成分の添
加により,108∼109Ωレベルまで下げることが可能であ
図14に示す。図14から,真空成形品の拡散反射率は,シ
ート原反と比較して大差が無く,真空成形による拡散反
射率の低下が見られないことを示している。
一方,現在光反射板として市場で使用されている熱可
塑性樹脂発泡シートは,折り曲げ加工や,ごく浅い形状
の真空成形しかできないため,形状の自由度が限定され
ること,および成形品側面の薄肉化による成形品絶対強
度が低下することが問題となるため,真空成形材料とし
ては不向きである。そのため,熱可塑性樹脂発泡シート
は,平板状または簡単な折り曲げ加工で使用される場合
が多く,複雑な形状への加工は大きな工数が掛かってい
ることを確認した。また,その効果は押出加工後も持続
することを確認した。
これにより,長期使用においても,拡散反射率の低下
に繋がる埃やゴミの付着は防止できるものと判断する。
3.4 真空成形性
厚さ1mmの開発品で真空成形をした際の,シート加熱
る。開発品は展開倍率約2.5倍の真空成形も可能であるこ
とから,形状付与の面において,開発品を使用していた
だくユーザーの加工効率向上に繋がることを示している。
時間と成形型再現性の関係を図12に示す。図12から,開
発品の成形品コーナーRは,シート加熱時間が長くなる
3.5 耐熱性
看板照明の内部は,光源からの熱や外気温の影響によ
り,約60℃まで温度が上昇する。そのため,設置された
光反射板が熱で変形を起こすと,照度にムラが出る可能
性があるため,60℃以上の耐熱性が要求される。開発品
の耐熱温度(ビカット軟化温度)は,約130℃を示すこと
から,耐熱性に問題がないことを確認している。
表面固有抵抗(Ω)
1016
4.0×1014
帯電防止成分未添加品
14
10
1012
1.0×1011
ホコリが付着しない表面固有抵抗領域
10
10
9
108
図11
2.3×10
2.2×108
0
3.6 シート形状
液晶テレビの薄型化が進むと同時に,コスト競争が激
化しており,光反射板も薄肉化によるコスト削減が必要
となっている。液晶パネルバックライト用に光反射シー
トが使用される場合は,現状平板状で使用されることが
多いため,光反射シートには平滑性が重要となってくる。
8.2×108
2.1×109
9.5×108
7
14
21
押出成形加工からの経過時間(d)
28
帯電防止性能
Fig.11 Antistatic performance of the light reflector.
30
真空成形条件
ヒータ温度:上400℃/下450℃
真空時間:20s
冷却時間:60s
成形展開倍率:2.5倍
コーナーR
(mm)
25
20
コーナーR
10
型R=0.4
0
30
4
0.5
40
0.5
50
60
シート加熱時間(s)
0.5
70
成形品形状
図12
シート加熱時間と型再現性の関係
Fig.12 Vacuum forming characteristic.
42
Shin-Kobe Technical Report No.20(2010-2)
100
厚み保持率(%)
96
A’
180 A
87
85
92
80
60
58
58
40
48
38 39
39 38 36
42
38 40
20
0
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮
成形品厚み測定箇所
(a)真空成形品上面図(単位:mm)
10
A
50
20
①
5
5
50
⑥
②
50
⑩
10
⑭
③⑤
⑦⑨
⑪⑬
④
⑧
⑫
(c)真空成形品厚み分布
A’
真空成形条件
・ヒータ温度:上400℃/下450℃
・真空時間:20s
・冷却時間:60s
・成形展開倍率:2.5倍
厚み保持率
・厚み保持率(%)=100×(成形後厚み)/(成形前厚み)
⑮
(b)真空成形品側面図(単位:mm)
図13
開発品の真空成形品における厚み分布
Fig.13 Thickness distribution of the vacuum forming product.
図15には,図4に示す条件で作製した開発品の反り量を
測定した結果を示す。開発品の厚み0.8mm以上では,目
標の平滑性が得られているが,これより薄い厚みでは目
標に達していない。この原因としては,シート厚みが薄
くなることで,シート幅方向における冷却速度の差が影
響していると思われる。液晶パネルバックライトにおい
ては,厚さ0.3mm以下の光反射シートが要求されている
ため,今後は開発品の薄肉化と反り量の低減を図り,実
用性のある形に仕上げるべく検討を継続する。
100
拡散反射率(%)
真空成形後
80
真空成形前
60
40
20
0
370
図14
470
570
波長(nm)
670
770
〔4〕結 言
拡散反射率
Fig.14
電飾看板用途,LED照明および液晶パネルバックライ
ト用途向けの光反射シートとして,以下の特長をもつ従
来品より異型加工性,耐光性などを向上させた光反射シ
ート「メガルクス®」を開発した。
Diffuse degree of reflection of the light reflector after vacuum
forming.
(1)熱可塑性発泡樹脂シートの欠点である耐光性およ
び真空成形性を改良した光反射シートの材料仕様
を確立した。
(2)開発品を設置することにより,設置がない場合と
比較して,約1.2倍以上に照度が向上できることを
確認した。
シート反り量(mm)
8
6
4
開発目標値:3mm
2
〔参考文献〕………………………………………………………
0
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
シート厚(mm)
図15
1)電子情報技術産業協会:AV主要品目世界需要動向∼2013年ま
での世界需要展望∼(2009).
2)住友信託銀行:“次世代照明∼市場拡大の背景と課題∼”,調
査月報2009年8月号.
3)桑島幹:図解入門 よく分かる最新レンズの基本と仕組み,秀
和システム(2005).
4)薮田尚士:“プラスチック用永久帯電防止剤”,
5)三洋化成ニュース,No.454,p.4(2009)
.
シート反り量測定結果
Fig.15 Quantity of seat curve.
43