.29 TECHNICAL REPORT, UNIVERSITY OF TSUKUBA 2009 8 http://www.tech.tsukuba.ac.jp/2008/ 『筑波大学技術報告』No. 29 の発刊によせて 筑波大学では、技術職員の業績を広く学内外に紹介すること等を目的として、 『筑波大学技術報告』を長年継続して発刊してきており、本年度は No. 29 が発刊さ れるはこびとなりました。 今回の報告書は、 「第 8 回筑波大学技術職員技術発表会」 ( 平成 21 年 3 月 9 日開催) における発表論文により構成されております。これは、教育・研究支援活動により 多忙な日常業務の中で、本学の技術職員が創意工夫をこらした、長期間にわたる研 鑽や努力の成果を報告するものです。本発表会は、法人化後、技術職員が各部局に 分属されることになったにもかかわらず、全学的な活動として継続的に充実発展し てきております。技術発表会への積極的な参加・発表の奨励・啓発や学外者の参加 を呼びかける広報活動など、今後のあり方の議論も含めて、技術発表会の開催や運 営に関して大きな努力が払われてきています。 技術職員の職務は、実験科学等の教育・研究の支援活動に限られたものではなく、 教材の作成、教育・研究機器の設置・維持調整、資料の整理、その他教育・研究活 動の広い範囲に亘っています。特に最近では IT 技術の発達に伴うネットワークの利 用等において、技術職員の協力は、一層重要な役割を果たしています。その一方で 人件費抑制等の影響を受けて職場環境が厳しくなりつつある中、多くの技術職員が これらの役割を果たすべく頑張って頂いております。 このような運営費交付金削減などの厳しい状況の中で、技術職員の職務、職場環 境の今日的課題の解決と将来設計を図るべく、筑波大学では平成 20 年 7 月 1 日、各 部局やセンターに対応する技術室を設置しました。全学的には、「技術職員の業務、 配置、育成等に係る共通的な課題および将来的な在り方の検討並びに本部と技術職 員組織の意思疎通の強化」を目的として全学技術委員会を設置し、研究担当副学長 が委員長、総務担当副学長及び情報環境機構長が副委員長をそれぞれ務めることと しました。平成 20 年 7 月 30 日の第 1 回全学技術委員会での提案の一部は早速実現 の方向でタスクフォースを設置し、平成 20 年 11 月 21 日の第 2 回全学技術委員会で はタスクフォースの報告を受け具体的な実施に向けた検討が開始されるなど、本年 度は新たな出発の年になりました。 本報告書の刊行により、本学技術職員の業績を広く学内外に紹介し、各方面より 忌憚のないご意見や、ご指導、ご助言、激励等を頂くことが出来ればと願っており ます。技術職員の育成と技術力の一層の向上のために、各方面のご支援をよろしく お願いいたします。 2009 年 3 月 筑波大学副学長(研究) i 水林 博 目次 『筑波大学技術報告』No. 29 の発刊によせて 水林 博 筑波大学副学長(研究)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⅰ 技 術 発 表 会 報 告 集 加速器質量分析法でのデータ収集統合システム(AMS_DAC)の開発 大和 良広 研究基盤総合センター技術室(応用加速器部門) ・・・・・・・・・・・・・・・ 1 ホームページを CMS でリニューアル 木村 博美 研究基盤総合センター技術室(応用加速器部門) ・・・・・・・・・・・・・・・ 7 都市計画関連実習室の整備 -計画から Podcast による報告まで- 北原 その美 システム情報工学等技術室(情報アプリケーション班) ・・・・・・・・・・ 11 学生実験における酵母の胞子形成条件の検討 木澤 祥恵 生命環境科学等技術室(応用生物化学系) ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 担持貴金属触媒の低温(180 K)からの昇温還元法(TPR) 伊藤 伸一 数理物質科学等技術室(物性・分子工学専攻) ・・・・・・・・・・・・・・・ 20 二成分系ゲルマニウム酸塩ガラスの作製とラマン散乱 間宮 精一 数理物質科学等技術室(物性・分子工学専攻) ・・・・・・・・・・・・・・・ 24 附属坂戸高等学校学務処理システムの構築 加島 倫 附属学校教育局 学校支援課 附属坂戸高等学校係学務システム WG ・・・・・・・・ 28 ブラックジャックゲームの設計 中山 勝 システム情報工学等技術室(装置開発班) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 ヘリウム液化機と運転制御システム 宮内 幹雄、近藤 裕、敦賀 将太 研究基盤総合センター技術室(低温部門) 池田 博 数理物質科学研究科物性・分子工学専攻(低温部門) ・・・・・・・・・・・・・・ 42 伊豆半島南部の 2 地点における海底水温長期モニタリングの技法 土屋 泰孝、佐藤 壽彦、品川 秀夫 生命環境科学等技術室(下田臨海実験センター)・・・ 47 生物材料加工学実習における加工技術 田所 千明 生命環境科学等技術室(農林工学系) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 「夏休み自由研究お助け隊2008」 :医学系からテーマを提供して 伊藤 清子、菅江 則子、佐藤 晶子、梶原 典子、文随 和美、櫻井 秀子、 福井 智津子、加藤 奈津子、樺山 綾子、大野 良樹 医学系技術室 ・・・・・・・・ 55 光ビート法により発生した高周波信号の参照信号強度依存性 松山 英治 数理物質科学等技術室(物性・分子工学専攻) ・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 ii フライス盤作業の効率化 石川 健司 研究基盤総合センター(工作部門)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67 技 術 報 告 石英ガラス製円筒炉心管内のテーパー管溶着加工 明都 茂、門脇 英樹 研究基盤総合センター(工作部門) ・・・・・・・・・・・・・・・ 71 筑波大学プラズマ研究センター防災訓練実施記録2 平田 久子 数理物質科学等技術室(物理学専攻) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 iii 第8回筑波大学技術職員 技術発表会報告集 開催日:2009 年 3 月 9 日 会場:筑波大学総合研究棟 B 公開講義室 筑波大学技術職員技術発表会の公式ウエブサイト http://www.tech.tsukuba.ac.jp/2008/ 加速器質量分析法でのデータ収集統合システム(AMS_DAC)の開発 大和 良広 筑波大学研究基盤総合センター技術室(応用加速器部門) 〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1 概要 2.筑波大学 AMS システム 筑波大学研究基盤総合センター応用加速器部門で は、大型タンデム静電加速器による加速器質量分析 (Accelerator Mass Spectrometry 以下、AMS)を行っ ている。この AMS システムのうち、実験における 様々な操作を統括的に行うソフトウェアを開発し、 AMS Data Acquisition Conductor (以下、AMS_DAC) と命名した。同システムは、良好に稼働しており AMS 実験の効率的な遂行に貢献している。 筑波大学研究基盤総合センター応用加速器部門の AMS システムは、日本最大の質量分析装置であり、 極微量放射性核種 26Al, 36Cl, 129I の超高感度分析(同 位体比 ~10-14)が可能である。目的元素をイオン化 し加速器と粒子識別技術を駆使して、元素1個1個 を測定でき、筑波大学独自の“マルチ分子パイロッ トビーム法”により実現されている。 存在量が極めて少ない長寿命放射性同位元素の測 定を最も得意としており、14C, 26Al, 36Cl, 129I 等の測 定が可能である。特に、36Cl 測定では、大型タンデ ム静電加速器の性能を生かし 36S との分離識別がで き、繰り返し測定精度±3%、検出限界として 36Cl/Cl= ~10-15 を得ており、世界最高レベルの測定性能を達 成している。[1] [2] [3] [4] [5] 図 2 にイオン源から検出器までの全体図を示す。 このシステムを用いて、 • 長寿命放射性同位元素をトレーサーとした地球 環境科学研究 • 南極氷床コア中の長寿命放射性同位元素分析に よる地球環境変動研究 • 中性子生成核種分析による原子力施設環境モニ タリングや被ばく線量計測 等、多くの環境・エネルギー問題に対応した研究が 行われている。図 3 に測定対象試料例を示す。 キーワード: AMS、電流積分計、自動化、C# 1.はじめに AMS は、目的元素を1個単位で直接計数する超高 感度測定手法である(36Cl/Cl 比で~10-14)。また、 少ない試料(~2 mg)で比較的短時間(数分から数 十分程度)に計測できる特徴がある。 この AMS システムのうち、同位元素比を正確に 知るための2系統の電流積分計とリアルタイム電流 表示、トレンドグラフ、測定の開始/終了のための イオンビームの ON/OFF 制御、データ収集システム の遠隔制御、収集データの Excel とのリアルタイム 連動、タイマーによる自動終了、開始/終了の音声 アナウンス、逐次データの csv ファイル保存などの 統括的な動作を行うソフトウェアを開発し、AMS Data Acquisition Conductor (AMS_DAC)と命名し た。図 1 に AMS_DAC の稼動画面を示す。 図 1. AMS_DAC 使用中の表示 1 Sputtering Ion Source [Original] (25 samples) 15 kV AMS-IS 35 EL ES FC EQ 120°− magnet FC FC ES 37Cl- Inflection magnet ME/q2=30 100 kV ES EQ Cl36Cl-, 12C 3 12UD Pelletron tandem accelerator 1st Stripper foil Slit current feedback controller Terminal voltage Vt ≤ 11 MV GVM TPS EL : Einzel lens ES : Electrostatic steerer EQ : Electrostatic quadrupole (triplet) FC : Faraday cup GVM : Generating volt meter QM: Quadrupole magnet (doublet) ST : Magnetic steerer SW : Switching magnet TPS : Terminal potential stabilizer QM Object slit ST FC-5 ST Analyzer magnet ME/q2=200 Image slit QM 2nd stripper foil SW QM AMS-beam line ST 36Cl9+, 12C3+ ST 8°-electrostatic deflector 図 2. 筑波大学 AMS システム全体図 図 3. AMS 測定対象試料の例 2 36Cl14+ 45°-magnet TOF E-ΔE chamber detector chamber 3.電流積分計 36 Cl と 35Cl の比を正確に求めるためには高精度・ 高分解能なイオン電流の計測が必要である。図 2 の 左上に示すように 35Cl,37Cl の電流計測はファラデ ーカップ(以下、FC)により行っている。また、 35 Cl,37Cl の FC は図 2 左上の AMS-IS(AMS イオン 源)の 100 kV 高電圧架台上に設置されている。 35 Cl 用の旧電流積分計(Current Integrator)は図 4 の様な装置で1秒間に電荷が貯まった分を機械的に 計数器がカウントアップするものであった。部品の 劣化や温度変化による変動等で積分値の信頼性が低 下していたため新しい物への置き換えが検討された。 まず、本部門で一般的に使われているハードウェ ア の 電 流 積 分 計 ( ORTEC 社 439 Digital Current Integrator、以下 ORTEC439)を設置してテストした ところ、前段加速電圧、引き出しレンズ等が何らか の理由で放電し、そのショックで故障や動作不良が 起こってしまった。そのため、図 5 左下の様なエレ クトロメータ(以下、ピコアンメータ)を利用して、 このアナログ電圧出力を E/O,O/E 変換の後、BNC ケ ーブルで 9 階イオン源室から 2 階制御室まで持って 行き、2 階制御室に設置した ORTEC439 に入力しカ ウンターとペアにして 35Cl の電流積分計として利用 してきた。しかし、ピコアンメータのアナログ電圧 出力の精度の問題、アナログ信号の長距離配線によ るノイズの問題などがあった。また、ORTEC439 の 積分値の記録、カウンターリセットやスタート/ス トップは人間がやらなければならず全系統のスター ト/ストップの同期、自動記録による省力化が望ま れた。 そこで、図 5 中央のピコアンメータ ADVANTEST R8340A が 35Cl を、図 5 左下のピコアンメータ ADVANTEST R8240 が 37Cl の電流計測をするように アサインし直し 100 kV 高電圧架台上でデジタル変 換して 2 階制御室で利用できるような方法を検討し た。ピコアンメータは、共に分解能は 5 桁(20μA レンジで 1nA)で R8340A が 100 サンプル/秒、R8240 が 25 サンプル/秒の違いがある。 この2台のピコアンメータにはGP-IB I/Fが付いて おり、これをLANから読み出す安価な方法として図 6 の右端のCONTEC社 GPIB通信メディアコンバー タ RP-GPIB(FIT)GY 1 を使用してEthernetに変換する ことにした。さらにイオン源の高電圧絶縁のため劣 悪環境での信頼性が高い SIXNET社 工業用スイッ チングハブ・メディアコンバータ ET-GT-9ES-2SC 2 を使用してEthernet - 光 - Ethernet変換してLAN接続 している。 LAN に 接 続 し た PC の ソ フ ト ウ ェ ア に よ り 35 Cl,37Cl のリアルタイム電流計測を行い、平均電流 値を1秒ごとに加算しソフトウェア電流積分計とし た。 図 4. 旧電流積分計 図 5. 電流積分のためのピコアンメータ 図 6. GP-IB/Ethernet/光/Ethernet 変換 1 2 http://www.contec.co.jp/product/device/fit/page12.htm http://mtlkk.com/sixnet1.htm 3 また、1 秒毎の 35Cl,37Cl の瞬時値、積分値も 1RUN ずつ csv ファイル 1 ファイルに別途保存している。 [RUN] 時、[STOP] 時に美しいサウンドを発声し、 自動停止 5 秒前から日本語音声でカウントダウンを 読み上げる機能も本システムの特徴である。 4.ソフトウェア開発 AMS システム全体の指揮者のようなソフトウェ ア と な っ た の で AMS data acquisition conductor (AMS_DAC)と命名した。 4.1 開発環境 • [PC] Dell PC ワークステーション Precision 390 (Intel Core 2 Duo E6700 2.66GHz、3GB メモリ、 250GB SATA RAID1、NVIDIA Quadro FX 3450) • [OS] Microsoft Windows XP Professional Service Pack 3 • [開発言語] Microsoft Visual C# (Microsoft Visual Studio 2005 Service Pack 1) • [メータ・トレンドグラフ・スイッチ類の GUI] National Instruments Measurement Studio 8.1.2 for Visual Studio 2005 を用いて開発した。筆者はこれまで Win32API を使 用したプログラムを C 言語で作成した際には GUI の作成に苦労してきたが、この環境では非常に簡単 に GUI の作成ができ効率良く開発が進められた。ま た、ハイスペックなハードウェアのおかげでプログ ラムのビルド速度も速く、出来上がったソフトウェ アの実行速度もリアルタイム OS を用いないでも問 題なく実利用可能であった。 図 7. AMS_DAC を使用した実験風景 4.3 画面設計 4.2 AMS_DAC の概要 ダブルクリックによる起動と同時に図 1 左側の様 な 3 枚 の Window を 表 示 し 、 図 1 右 側 の 様 に Excel2007 をデータ挿入用テンプレートファイル (Template_of_AMS_DAC.xlt)を読み込んだ状態で 起動する。実際の画面は、図 7 左側の様に液晶モニ タ2枚で運用しており、19 インチ横置きにコントロ ール部を 19 インチワイド縦置きの方に Excel2007 を 表示させている。 35 Cl と 37Cl の電流平均値はピコアンメータの GP-IB I/F より RP-GPIB(FIT)GY を介して、PC に読 み込んでいる。電流値の読み込みに関しては、.NET Framework 2.0 以降に実装された BackgroundWorker コンポーネントを用いた別スレッドで実行している。 これは [RUN] [STOP] スイッチなどユーザーイン タフェースのレスポンスを上げるためである。 読み込んだ電流値をアナログメータとデジタルメ ータに 100 ms毎に表示し、トレンドグラフに変動を 1 s毎にプロットする。Visual Studio 2005 のTimerコ ンポーネントの精度は 55 ms 3 であるが、必要な時間 精度が 1 s以内程度なので本ソフトウェアではTimer コンポーネントを多用している。 [RUN] スイッチを押すことにより、データ収集シ ステムのスタート、FC-5(図 2 下部)を OPEN し、 ビームを測定室に出し、35Cl,37Cl の電流積分の開始 を同時に行う。その後は計測を続け減算タイマーと プログレスバーを表示して、設定時間になると自動 停止する。 データは Excel2007 とリアルタイムに連動し、 [RUN] [STOP] スイッチによってセルに自動挿入さ れる。 3 http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/xy0zeach(VS.80).aspx 4 図 1 左側の様に極力シンプルなデザインで必要最 小限の表示を心掛けて設計した。Measurement Studio のおかげで非常に簡単にアナログメータやトレンド グラフの実装ができた。トグルスイッチに影まで付 いている点にユーザーが感心していた。 4.4 ピコアンメータのデータ取得 「3.電流積分計」で示したようにピコアンメー タの電流値は CONTEC 社の RP-GPIB(FIT)GY を用い て LAN 経由で PC に取り込んでいる。しかし、 RP-GPIB(FIT)用ドライバは、API-RPGPIB(W32)とい う API 関数ライブラリから利用するが、C#用のサン プルファイル等が提供されておらず、アンマネージ DLL(rpgpib1.DLL)のインポート等のための.cs は自 作した。RP-GPIB(FIT)GY の C#からの利用に苦労し たが、試行錯誤で R8340A , R8240 からのデータ取 得に成功した。 テストを開始すると、単に電流を読み取り表示し ているだけで 30 分くらいたつとフリーズするとい う現象が出た。これは CONTEC 社により 2008 年 8 月 19 日付けでリリースされた RP-GPIB(FIT)GY の Firmware Ver.1.11 で修正されるまでの不具合「受信 コマンドでタイムアウト発生すると、初期化を行う まで正常受信できなくなる問題」のせいだった様で あるが当時は Firmware のバグを知らなかったため 応答が無くなったら強制的に初期化する様にして実 運用した。 編集状態のカーソル時)自動測定が終了してもデー タが自動挿入できないという現象である。セル内編 集していない時は、Form1.ActiveForm.Activate(); 等 により Excel へデータ出力時に AMS_DAC Form1 へ強制フォーカスすることが出来たが、セル内編集 中だと未だにエラーになりこの点は解決できていな い。現状、ユーザーに「終了間際には、セル内編集 をしない」という嬉しくない制限付きでの運用をお 願いしている。 4.5 FC のリレー制御 FC-5(図 2 下部)の開閉によって測定室へのビー ムの ON/OFF を行っている。[RUN]スイッチによっ て FC-5 が OPEN しビームが測定室に出る。設定収 集 時 間に なっ て 自動 終了 し た時 、ま た は手 動で [STOP]スイッチを押した時には、FC-5 が CLOSE し ビームが停止する。 この制御には、Interface社のDIO4/4 点メカニカル リレー(1c接点)/独立絶縁 12V-24V Low Profile PCIボ ード LPC-251100 4 を使用した。こちらは、C#から の利用もすぐにできるようにドライバやサンプルが 揃っていた。 安全のため接点を二重化し、緊急遮断スイッチも シリーズに設置した。 4.8 raw データの csv ファイル保存 ユーザーから 1 秒毎の raw データも保存して欲し いとのリクエストで追加した。後で詳細解析する時 にビーム変動等による統計誤差を正確に知る事が出 来る様にである。 1RUN 1 ファイル作成し、データの中身は「日に ち,時刻, 35Cl 電流値, 35Cl 積分値, 37Cl 電流値, 37Cl 積分 値」を 1 秒毎に追記して、1RUN 終了時に閉じてい る。(例:20081212_173015(35,37Cl_rd).csv) 記録するデータ量が少ない上、バッファもあり、 HDD も高速なため書き込み遅延等による問題は全 く起きていない。 4.6 データ収集システムの遠隔制御 BASS データ収集システム 5 、新データ収集システ ム(UTTAC- DAQ) 6 の遠隔制御は、UDPパケット を送る事で実現している。データ収集システムの [RUN] [STOP] [SAVE] [CLEAR] に対応するコマン ド文字列をAMS_DACの対応ボタンを押すことで送 信され、全システムと同期している。 4.9 音声によるユーザー支援 4.7 Excel への自動データ入力 著作権フリーの wav ファイルを使用し、実験開始 時にベル音、終了5秒前から「ご、よん、さん、に、 いち」と女声アナウンスがありゼロ時に終了サウン ドを流すようにした。これは、実験グループが開始 時、終了時以外に効率的に他の仕事が出来るように との配慮と夜中に眠気を多少でも払拭できればとの 配慮からの機能である。 最終的に人が Excel にデータ入力してデータ処理 をするのであれば最初から Excel にリアルタイムで データを入力してしまった方が単純な計算等もすぐ に出来るし手っ取り早いであろうという発想から Excel をコントロールする仕様にした。 Visual StudioからExcelを制御するには、[Microsoft Excel Object Library]への参照を追加 7 する必要があ る。これを行った後、usingディレクティブに 4.10 フリーソフトウェアによる高速化 using System.Reflection; using Excel = Microsoft.Office.Interop.Excel; // Excel コントロール 以下の2種類のフリーソフトウェアを用いて起動 の高速化と定常動作の安定化に役立てた。 を追加して Excel を自在にコントロールできる。 AMS_DAC では、データ挿入用テンプレートファ イル(Template_of_AMS_DAC.xlt)を読み込んだ状 態で Excel2007 を起動し、シートの作成日時を B1 セルに挿入する。[RUN]スイッチによって記録 No.、 開始時刻を各セルに挿入する。設定収集時間になっ て自動終了した時、または手動で[STOP]スイッチを 押した時に、終了時刻、計測時間、35Cl 積分値、37Cl 積分値、35Cl 瞬時値、37Cl 瞬時値が各セルに自動挿 入され、あらかじめ 35Cl/37Cl 等の計算式が入力され たセルにも結果が瞬時に表示される。領域を指定し グラフを表示しておけば比の変動もリアルタイムに 確認できる。 ユーザーの利用時に起きた問題がある。 AMS_DAC によりコントロールされている Excel の ブックに RUN No.やターゲット No.、コメント等を ユーザーが手入力している時に(すなわちセル内で 4 http://www.interface.co.jp/catalog/prdc.asp?name=lpc-251100 5 http://www.tac.tsukuba.ac.jp/~hiromi/index.php?BASS http://web.tac.tsukuba.ac.jp/~hiromi/index.php?UTTAC http://support.microsoft.com/kb/302084/ja 6 7 • .NET R-Tune 8 .NET Framework対応アプリケーションの起動を 高速化する。 • PriorityShortcut 9 プロセス優先度を設定しプログラムを実行する ショートカットを作成する。Administratorアカウ ントであれば「リアルタイム」プロセスにも設定 できる。 8 9 5 http://software.hi-gain.org/software/netrtune/index.html http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se411836.html 5.まとめ 謝辞 AMS_DAC が稼働するまでは、測定時に多くの人 手が必要で長時間の実験での負担が大きかった。人 手による操作は、それぞれの機器の測定開始動作を かけ声で始め、タイマーアラームの終了合図ととも に停止、カメラによる現場計器の数値読み取り、デ ータの記録などを行っていた。このため、時間的な 誤差や入力ミスなどのヒューマンエラーもあったと 思われる。さらに、旧型の電流積分計の動作不良な どがあり、信頼できる電流積分値の収集が望まれて いた。これらを全て解決し、全測定系の指揮者的存 在となるソフトウェア AMS_DAC を開発し良好に稼 働している。 AMS_DAC 導入により、なしえた事や従前の実験 手法からの改良・改善点を以下に列記する。 報告書執筆に当たりご助言、ご協力を頂きました 数理物質科学研究科 物理学専攻 笹公和 講師、デー タ収集システムを遠隔制御対応にしてくださった応 用加速器部門技術専門職員 木村博美氏に感謝いた します。 参考文献・参考 Web site [1] 高橋努, 塩素 36-AMS システムの改良 "硫黄 36 妨害粒 子の除去について", 第2回技術発表会報告集 (2007) 74-79. [2] 笹公和, 加速器質量分析法(AMS)による元素分析, 文部科学省-筑波大学先端研究施設共用イノベーシ ョン創出事業【産業戦略利用】セミナー講演資料 (2008). http://web2.tac.tsukuba.ac.jp/innovation/files/05p.pdf [3] 笹公和ほか, 筑波大学 AMS システムの現状と利用研 究 (2007 年度), 第 10 回 AMS シンポジウム - AMS 次の 10 年- プロシーディングス, 東京大学, (2008) 21. [4] 笹公和, 加速器を利用した学際研究の展開, 筑波フォーラム 第 79 号 http://www.tsukuba.ac.jp/public/booklets/forum/forum79/f orum79.html [5] 長島泰夫, 関李紀, 笹公和, 高橋努, 大型タンデム静電加速器による加速器質量分析, 真空, 50 (2007) 475 . http://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj/50/7/50_475/_articl e/-char/ja • 時間を区切って測定できる機能により、同位体希 釈法(量が既知の 35Cl をエンリッチしたものをわ ざとキャリアーとして試料に加えて、35C/37Cl 比か ら元の塩素濃度を出す手法)による試料の天然 Cl 濃度定量が可能となった。 • サンプルの状態が悪かった場合でも、すべて連動 している為、途中停止が可能。 • 人手が少なくて済み、ヒューマンエラーが軽減。 • 電流積分値が電子情報として自動記録できる。 • トレンドグラフによるビームカレントログ機能 によりこれまでペンレコーダーで記録していた ものが不要となった。 • ソフトウェアスイッチで全計測システムが動作 する為、誤差が少なくなった。 • 測定データの信頼性が向上した。 • 効率化による総実験時間の短縮。 Development of AMS Data Acquisition Conductor Yoshihiro Yamato Tandem Accelerator Complex, Research Facility Center for Science and Technology, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8577 Japan Software called the “Accelerator Mass Spectrometry Data Acquisition Conductor (AMS_DAC)” was developed. This resulted in the following improvements: reduction in necessary manpower, reduction of human error, improved reliability of measurement data and reduction in total experiment time due to increased efficiency. Experiments have progressed smoothly using this system. Keywords: AMS; automatic control; current integrator; C# 6 ホームページを CMS でリニューアル 木村 博美 筑波大学研究基盤総合センター技術室(応用加速器部門) 〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1 必要に応じて独自のコンテンツタイプを定義するこ とができる。今回は CCK モジュールを用いていく つかのコンテンツタイプを定義した。 コンテンツを作成・管理するには Drupal にログイ ンする必要がある。アカウントはデータベースに登 録する以外にも LDAP や OpenID 等を使用すること ができるが、今回はデータベースを使用した。 概要 研究基盤総合センター応用加速器部門の前身であ る加速器センターのホームページは 1994 年に開設 され、以来HTMLファイルを配置する古典的方法で 管理されてきた。ホームページは公式ページと個人 ページから成っているが、公式ページ 1 を 2008 年に Content Management System (CMS) に移行した。 3.ホームページの機能と仕組み キーワード:ホームページ、CMS、Drupal 3.1 画面デザイン 1.はじめに 他の CMS 同様、Drupal も「テーマ」の設定で画 面のデザインを変更することができる。以前のホー ムページと同様に画面左にメニューを配置し、画面 全体の幅を固定しないデザインとした。CMS のデザ イナーと使用者は西洋人が多いせいか色調が淡いも のが多いが、日本人には却って見にくいので少し文 字を強調するようにしてある。 作業は主に CSS (Cascading Style Sheet) ファイル の編集だが、Firebug という Firefox のアドオンを使 用することで容易にできた。 近年、公式ホームページの重要度が増し、情報の 迅速な公開が要求されるようになってきた。しかし、 パソコンで HTML ファイルの編集作業をし、Web サーバーにアップロードするという方法では、限界 が見えてきた。そこで、サーバー上で直接コンテン ツを作成・管理する CMS に移行することにした。 2004 年から、当時の主なオープンソースのCMS を調査・テストし、2005 年にDrupal 2(ドゥルーパル) を採用することにした。手始めに、2005 年 11 月に AMSシンポジウム用のホームページ 3 をDrupalで新 規作成した。更に、2006 年 2 月にはタンデム加速器 研究会のホームページ 4 もDrupalで作成した。それ らの経験を生かし、加速器部門ホームページの移行 作業を 2006 年から始めた。データを移行する作業の 大半はブラウザ画面上でのコピー・ペーストで行い、 残りはDrupalの拡張モジュールを使ってファイルか ら取り込んだ。 3.2 検索ボックス 図 1 の A で示す部分が検索ボックスである。以前 は検索エンジンに Numazu を使用し必要に応じて検 索データを更新する必要があったが、Drupal では、 主なコンテンツはデータベースに入っているので手 2.DRUPAL について Drupal はオープンソースで開発されている CMS の一つであり、使用言語は PHP である。データベー スは MySQL と PostgreSQL から選択できるが、今回 は MySQL を使用した。 プログラムはモジュール構造になっており、シス テムは 30 程のモジュールで構成されている。ユーザ の開発したモジュールを追加して、機能を拡張でき る よ う に な っ て お り 、 2008 年 12 月 の 時 点 で drupal.org には約 2000 個のモジュールが登録されて いる。今回はその中から 20 個のモジュールを追加し た。 Drupal は Web ページ以外にも、ブログやオンライ ンマニュアル等を作成することができる。それらの 内容(コンテンツ)はデータであり、どの様なデー タ構造(例えば、題目と本文で一つのデータとする) かは「コンテンツタイプ」で分類される。管理者は 1 2 3 4 http://www.tac.tsukuba.ac.jp/uttac/ http://drupal.org/ http://web2.tac.tsukuba.ac.jp/ams8/ http://web2.tac.tsukuba.ac.jp/tandem/ 図 1. ホームページの表紙 7 図 3. タンデトロン実験予定の新規作成 図 2. 公開情報の新規作成 題目下の「公開情報」タブで情報の種類を選択する。 間がいらない。また、コンテンツへのアクセス制限 が働くので、学外から検索した時には学内専用コン テンツは検索されない。ただし、PDF ファイル等の データベースに入っていないものは検索の対象外な ので、追加モジュールで対応する必要がある(準備 中)。 3.3 学内専用メニュー 図 1 の B のメニューは学内からアクセスした時だ け表示されるようになっている。仕組みは簡単で、 Drupal ではメニューのブロック毎に表示設定が可能 で、更に PHP コードも追加できるようになっている ので、閲覧者の IP アドレスを判定する PHP コード を埋め込んだだけである。 図 4. タンデトロン予定表 後に重要でなくなった時には、編集で「お知らせ」 に変更することができる。 内容の文章は通常はタグの制限された「Filterd HTML」で記述するが、タグの制限の無い「Full HTML」や更に「PHP code」を選べる(図 2 の下)。 ただし、ユーザによっては安全な Filtered HTML し か選べない。また「WYSIWYG エディタを使用」を クリックすると、HTML タグを直接記述することな く編集ができる。 なお、表紙メニューの「お知らせ・更新情報」で 過去の分も全て閲覧することができる。 3.4 更新日時 図1の C で示す部分にコンテンツの更新日時が表 示されるようになっている。以前は、更新日時はそ の都度手で書き換えていたが、コンテンツがデータ ベースに入っているので、表紙に SQL を発行する PHP コードを埋め込むことで、自動的に更新される ようにした。 3.5 新着情報と重要なお知らせ 3.6 タンデトロン実験予定 コンテンツの作成メニューから公開情報の作成を 選ぶと、図 2 のような編集画面で作成することがで きる。題目の下には情報の種類を選択できるように なっており、「更新情報」、「お知らせ」と「重要 なお知らせ」から選択できる。 「更新情報」と「お知らせ」は表紙の F の部分に 8 件まで表示されるが、「重要なお知らせ」は表紙 の E に強調して表示される。「重要なお知らせ」が タンデトロン加速器の実験予定表を管理するため のコンテンツであり、一つの実験が一つのコンテン ツに対応している。図 3 が一つの予定を入力してい る画面である。開始と終了の日時、題目を入力すれ ば、図 4 のような予定表に組み込まれる。 8 3.7 学内専用コンテンツ コンテンツへのアクセス制限を掛けるために、以 前はディレクトリー毎の .htaccess ファイルを使用 していたが、Drupal ではコンテンツはデータベース に入っているのでその方法は使用できない。そこで contemplate モジュールでコンテンツの雛形にアクセ ス制限用の PHP コードを埋め込み、「学内専用」コ ンテンツタイプを定義した。更に CSS で背景に色を 付け、一目で判別できるようにした。 3.8 内部メモ 作業記録やメモをコンテンツとして残せるように してある。ただし、ログインしないと閲覧できない ように制限している。 3.9 フォーム 以前から加速器の利用申請をオンラインで受け付 けるようにしており、フォーム入力を CGI で処理し ていたが、それを webform モジュールで置き換えた。 フォームの構成に制限はあるが、作成・修正が画面 上で見ながら簡単にできる。更に図 4 のように過去 のデータも保存されるので、大変便利である。 図 5. フォームの受付履歴 ログインせずに送信されたものは、ユーザが Anonymous と表示される。 「表示」をクリック すると、内容が表示される。 3.10 更新履歴 どのコンテンツを何時誰が作成・編集したかを閲 覧できるようにするために recent_changes モジュー ルを使用している(図 6)。また、各コンテンツ自 身も履歴(リビジョン)を残すように設定している ので(図 7)、全ての作業は追跡可能である。ただ し、どちらもログインしないと閲覧できない。 3.11 複製 時々、少しだけ内容の異なるコンテンツを作成す ることがあるので、clone モジュールを使用している。 図 7 の「リビジョン」タブの右に見える「複製」を クリックすると、そのコンテンツをコピーして新し いコンテンツが作られる。 図 6. 更新履歴 3.12 印刷用ページ 表紙以外の全ての画面で、print モジュールを用い て「印刷用ページ」のリンクが表示されるようにな っており、印刷した時にメニュー等の余分な部分が 含まれないようにしている。 3.13 表紙の写真 表紙の写真は度々変更されるが、通常の Drupal の アップロードではファイル名が重複しないように名 前が変更されてしまい、差し替えは面倒なので、 webfm モジュール配下で固定のファイル名を指定し て簡単に差し替えができるようにしている。 3.14 ユーザ管理 図 7. リビジョン このコンテンツは user1 が作成し、user2 が 3 度更新したことが分かる。 他の CMS 同様 Drupal でもユーザをグループで分 類し、権限を制限することができる。初期状態では ログインしない「匿名ユーザ」とログイン後の「登 録ユーザ」という2つのグループが存在する。 9 今回はコンテンツの編集を担当するグループを 「管理者」とし、部門内部の関係者を「内部ユーザ」、 それ以外の実験関係者を「外部ユーザ」とした。現 時点では管理者以外にはアカウントを発行していな いが、掲示板等を運用するための準備である。 コンテンツは履歴が残るようになっているが、コ ンテンツ自身を削除すると、履歴も削除されてしま う。そこで、nodeaccess モジュールで管理者もコン テンツの削除ができないように設定している。不要 になったコンテンツは、「掲載」オプションをオフ にすることで、隠すことができる。 それ以外にも不用意な操作でホームページがおか しくならないように、アクセス権を細かく制限して いる(図 8)。ただし、例外として Drupal をインス トールしたユーザ(筆者)には全てのアクセスが許 可されるので、特に慎重な操作が要求される。 なお、 ホームページへのアクセスは通常 http だが、 ロ グ イ ン 時 と そ れ 以 降 は https に な る よ う に secure_pages モジュールを使用している。 図 8. グループのアクセス権設定 これは一部だが、管理者にも許可していない権 限がある。 4.運用 5.まとめ サーバーは CPU が Pentium4 2.8 GHz、メモリー2 GB、OS は FreeBSD、データベースの MySQL を同 一ホスト上で動かしている。サーバーは 2 台あり、 1台を本番用、もう 1 台を予備用にしている。ソフ トウェアの更新や新機能のテストは、先ず予備用サ ーバーで確認してから、本番用サーバーに適用する ようにしている。 ハードディスクは健康状態を SMART で監視し、 通信量やメモリー使用量等は Hobbit で集中監視して いる。また、万一の改竄検出のために Tripwire を使 用している。 CMS に移行してからは、ホームページの更新が速 やかに行えるようになった。新しい情報を入力して いけば、後は CMS が整理してくれるので、利便性 も向上した。 Drupal バージョン 4 を使用していた時は、本体や 追加モジュールに不具合があって苦労したが、バー ジョン 5 になってからは安定している。 参考文献 [1] John K. VanDyk, Matt Westgate, Pro Drupal Development, 2007. A case of reconstructing website by using CMS Hiromi Kimura Tandem Accelerator Complex, Technical Service Office of Research Facility Center for Science and Technology, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8577 Japan The website of Tandem Accelerator Center, the predecessor of Tandem Accelerator Complex, Technical Service Office of Research Facility Center for Science and Technology, has been established in 1994. It had been maintained by legacy technique that edits then uploads HTML files. The website consists of official pages and personal pages. In 2008, the official pages were reconstructed by using CMS (Content Management System). Keywords: Home page; CMS; Drupal 10 都市計画関連実習室の整備 - 計画から Podcast による報告まで 北原 その美 筑波大学システム情報工学等技術室(情報アプリケーション班) 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 クショップ実践教育をとりいれた社会工学・都市計 画・まちづくり実習のための拠点整備」の予算措置 に基づくものである。その一部を、平成 19 年 7 月の キックオフから平成 20 年 2 月の関連機器の追加整備 まで、約一年半にわたり実施した。 概要 「デザインワークショップ実践教育をとりいれた 社会工学・都市計画・まちづくり実習のための拠点 整備」の一環として、断続的ではあるが約一年半を かけて都市計画関連実習室の整備を行った。打ち合 わせ段階から実際の物品移動、関連機器整備までの 一連のプロセスを、プロジェクトマネジメント(以 下PM 1 )手法の適応例として報告する。また、プロ ジェクト関係者と実習室利用者への作業終了および 利用開始を目的に行ったPodcastによる報告につい て、その配信方法も併せて紹介する。 2.1 主な設備・機材は以下の通りである。 ・グループ作業台(机) 14 台 ・製図台(平行定規タイプ) 20 台 ・ 〃 (ドラフタタイプ) 40 台 ・PC 4台 ・大型複写機 1台 ・印刷機(リソグラフ) 1台 キーワード:都市計画、プロジェクトマネジメン ト、実習室、Podcast それらを含んだ空間配置は図 1 の通りである。 1.はじめに 都市計画関連実習室とは、社会工学類都市計画主 専攻開設の実習系科目で使用している 3C401-406 の 5 室を指し、実習授業の他、授業時間外の作業や卒 業設計、その他ワークショップなど、年間を通して 有効に利用されている。当実習室に設置されている 製図台を中心とした設備・機材は、20 余年を経て汚 損が激しく、教育効果を考える上でも早急な改善整 備が必要とされていた。技術職員の立場からも、メ ンテナンスに多くの時間が割かれる等、機器の老朽 化には問題を感じていた。 今回、学群教育用設備整備等経費に採択され、そ の改善整備が現実のものとなったが、当初より、実 習を進めながらの空間的制約、購入物品の納期や作 業日の限定等の時間的制約、学類学生を含め多くの 人が係わるという人的制約が懸念されていた。その ため、作業を進めるにあたっては「間違いをせず& 効率よく&円滑に」=「きちんと」を常に意識した が、明文化されたマニュアルや指針となる技法はな く、経験と勘に頼らざるを得なかった。 しかしながら、一連の作業を終え、その都度作成 した備忘メモや作業手順の資料を見直すと、PM の 概念が随所に含まれていることがわかった。PM 手 法と実際に行った作業過程を比較・評価すると同時 に、その観点から技術職員としての業務への取り組 みや組織のあり方についても考えてみた。 図 1. 都市計画主専攻実習室配置図(現状) 2 2.2 上位計画 3 2.2.1 概要(全体像) 地域社会に根ざした先駆的都市計画実習教育の拠 点として、老朽化した社会工学類都市計画主専攻の 実習室(3C401-406:通年使用)の既存設備(木製作 業板、製図台、什器等)を新規購入・改修・ 整備す る。その過程の中で、教員と学生によるデザインワ ークショップを開催することにより、デザインの実 地教育を兼ね備えた空間整備を実施する。 2.整備計画の背景 本整備計画は、システム情報工学研究科小場瀬令 二教授、村尾修准教授を中心とした平成 19 年度学群 教育用設備整備等経費に採択された「デザインワー 1 現状(整備前) 2 平成 18 年度「学群教育用設備整備等経費」申請添付資料 [平成 18 年 6 月 8 日付吉田友彦講師作成]より抜粋 3 平成 19 年度「学群教育用設備整備等経費」申請添付資料 [平成 19 年 6 月 8 日付村尾修准教授作成]より引用 Project Management:以下 PM 用語[1, 2]は斜体で表す 11 内容は、タスクリストとフェーズを含んだガントチ ャートといえるのではないだろうか。表 1 の ① 既存机、椅子移動 ② ライナー納入 / チェア納入 ③ ライナー一時移動 ④ 既存製図台移動 / 廃棄 ⑤ 既存製図用椅子移動 ⑥ PC,コピー,机等移動 ⑦ 机納入 / ライナー設置 は各々タスクに相当し、⇔は 5 つのフェーズ構成で あることを示している。また、マイルストンも明ら かに読み取れる。 施設設備の改善を実施する空間は、学生の実習作 業をするための設計・作業室、実習に必要な備品を 管理する準備室、講義および模型・図面等を用いて 実習成果を発表するためのプレゼンテーションルー ム、最新の実習成果を公開するためのギャラリー、 過去 30 年間に蓄積された実習成果および知的財産 を保管・検索・閲覧するための都市計画アーカイブ から構成される。 2.2.2 施設整備内容 具体化した主な施設整備内容は、以下の通りである。 ・既存備品の整理と廃棄(全室) ・塗装工事(全室) ・床工事(全室) ・照明工事(3C403,ギャラリー) ・空調工事(3C402-406) ・各種備品の新規購入(3C402-403,3C405-406) (平行定規収納可能の作業机ほか) ・プレゼンテーション設備(3C403) ・現場デザイン教育も見込んだ学生による既存整備 のリニューアル作業(全室) 表 1. 作業記録(Schedule) 3.計画概要 3.1 実施計画 4.2 ミーティング 全体像は、上位計画を踏襲し、既存設備の廃棄と 新規備品購入および実習作業室、プレゼンテーショ ンルーム、アーカイブルームの空間リニューアルを 基本とする。具体的施設整備内容の段階では、予算 制約と共に今後の全学耐震工事を視野に入れ、上位 計画のうち ・既存備品の整理と廃棄 ・各種備品の新規購入 ・プレゼンテーション設備(一部) ・現場デザイン教育も見込んだ学生による既存整備 のリニューアル作業 に留めた。 平成 19 年 7 月 26 日、初めての会合(参加者は、 プロジェクト決裁者、マネージャ、リーダーおよび 業者)を開き、施設整備内容の確認を行った。併せ てそれらを具現化するための提案を業者に諮った。 正式なプロジェクトの開始宣言即ちキックオフミー ティングにあたる。 その後、必要に応じて幾度かのミーティングを設 けた。 形態は、 同席しての打ち合わせ、E-mail や Skype を利用しての連絡等様々であった。また、目的も、 新規購入物品の仕様を決定するための交渉、作業内 容の指示、進捗状況の報告や計画の修正と多岐にわ たった。その都度、日時、場所、出席者、内容、対 応・継続、資料等の授受を自身の備忘メモとして記 録した(表 2)。簡易な議事録である。 3.2 プロジェクトメンバー ・プロジェクト決裁者:小場瀬教授 ・プロジェクトマネージャ:村尾准教授 ・プロジェクトリーダー:技術職員(北原) ・作業リーダー:平成 19 年度アメニティ創造のまち づくり実習ヘッド TA(Teaching Assistant) ・作業サブリーダー:平成 19 年度アメニティ創造の まちづくり実習 TA ・作業担当者:平成 19 年度アメニティ創造のまちづ くり実習履修者 表 2. 作業記録(LOG) 4.作業経過 4.1 ガントチャートとタスクリスト 工程手順の妥当性や効率化を図るため、日時(い つ)、担当者(誰が)、場所(どこで)、作業内容 (何を)を一覧表にまとめた作業記録の一つが、 「Schedule」(表 1)である。様式こそ異なるものの 12 4.3 プロジェクト計画 メイン作業である物品移動を、施設整備内容(3.1 参照)を細分化したタスク①-⑦(4.1 参照)を単位 として、空間配置図に重ねて表現した全体図が「物 品移動手順」(図 2)である。自身の情報整理のみ ならず、作業担当者との事前ミーティング時の情報 伝達ツール、また実際の作業現場での指示書(掲示) としても活用した。その記載情報は、今回のプロジ ェクト計画を概ね網羅している。 4.4 進行管理(進捗管理)、レビュー 作業を円滑にかつより効率的に進めるためには、 全体を俯瞰し、常に状況を把握することが重要であ る。そして、計画(ここでは「物品移動手順」)に 従うだけでなく、適宜見直し・調整を柔軟に行う、 即ちレビューにより作業の最適化を図ることが、真 の進行管理といえる。 本工程中、作業リーダーよりタスク④(図 3 水色 部分)の前倒しについて提案があった。この変更は、 「履修学生全員が実習時間を使って作業をする」こ とになるため望ましいことではないが、進行工程上、 より適当と判断し、担当教員の合議および履修学生 への周知徹底により実現した。連動して タスク ⑤, ⑥(図 3 薄紫,灰色部分)の一部も同日に終えること ができた。 以上により、メイン作業である物品移動は、机の 納品日時までに問題なくかつ確実に完了した(マイ ルストン達成)。 図 3. 作業記録(Main 作業) 4.5 終結 タスク⑦の机納入と平行定規の設置により、計画 した施設整備内容の全てを終えた。明確な宣言や報 告書にかわり、成果物(ここでは整備後の状態)を 以てプロジェクト終結である。その様子は、MUTOH 製品カタログに導入事例として掲載された(図 4)。 図 4. 図 2. 施設整備計画(物品移動手順) 13 MUTOH 製品カタログ(抜粋) 備の報告である。 が、社会工学類計算機システム 4 の動作確認としても 試用している。Webサーバとしては、小規模なデー タベースとweblogのサービスを提供している。この パソコンコーナーも、整備前(3C402 設置)と比べ、 利用目的・人数・時間共に著しく増大した。 5.1 アーカイブルーム:3C404 5.2 プレゼンテーションルーム:3C402 アーカイブルームは、本来、過去の実習成果およ び知的財産を保管・検索・閲覧する目的のために確 保されたスペースであるが、現段階では、図 2 の通 り、主に実習関連機器の設置場所として利用されて いる。現有機器(什器含む)を、次項に示す。 本計画では、プレゼンテーションルームに関する 実施内容は、椅子の整備に留まり、プロジェクタ等 の残件は別途予算確保に委ねる形となっていた。し かし、『アメニティ創造のまちづくり実習』に於い て以前より必要とされていたパンチルトズームカメ ラ(図 6)導入の機会を得ることができた。 5.追加整備 以下は、本計画に引き続き、他のプロジェクトメ ンバーは参加せず、技術職員のみで実施した追加整 5.1.1 マップケース 整備前の実習室(3C402)での利用方法に加え、 引き出し毎の施錠により、従来準備室(3C401)で 保管・管理されていた図面も収納可能となった。 5.1.2 広幅複写機 複写原稿は、多くがマップケース内の図面である。 この空間配置により、作業効率が高まった。 5.1.3 印刷機(リソグラフ) 印刷機は、学類共通の A3 版対応リソグラフが準 備されているが、設置場所が離れている、専用カー ドが必要等の制約があり、本機は、最大原稿サイズ A4、かつ低速度等の不便はあるものの、この使い勝 手の悪さが解消され、稼働率は明らかに上昇した。 図 6. 設置されたカメラと設置状況 同実習では、各学生が各自制作した 1/500 の模型 をギャラリ全員の前に提示し発表する。机上の実模 型をプロジェクタ投影することで、後席者とも情報 共有が可能となる。設置後の発表会では、ギャラリ が積極的に参加する姿勢がみられ、極めて有用な設 備であることがわかった。実際に利用している様子 を図 7 に示す。 5.1.4 URP パソコンコーナー 機器構成は、以下の通りである。 - サーバ 1台 - クライアント 4台 - プリンタ 2台 - プロッタ 1台 図 7. 実際の利用風景 図 5. URP パソコンコーナー機器構成 6.PODCAST による報告 これらは、全て他の部署より譲与された再利用機 器である。 同コーナーは、通常のパソコン利用に加え、 NetBootシステム、Webサーバとしての機能も有する。 NetBootシステムは、同構成の基幹システムでもある 追加整備の後、平成 19 年度末にプレゼンテーショ ンルームに演台、プロジェクタ台を追加し、プレゼ ンテーションルームとしての基本環境が整った。こ こまでの作業経過については、平成 20 年度第 3 回シ 4 14 http://www.cc.tsukuba.ac.jp/computer/pps/ ステム情報工学等技術室業務報告会において、既に 報告している。 その後、PowerPoint,Keynote等のプレゼンテーショ ンファイルを利用したPodcast配信の方法について 学ぶ機会 5 を得、Mac OS X Server 10.5 の機能の一つ である「Podcastプロデューサー」とMac OS X 10.5 の 付属アプリケーション「Podcastキャプチャ」を利用 したPodcast配信を試みた。業務報告会の際に使用し たKeynoteファイルをコンテンツとし、関係者への作 業終了と利用者への公開を目的に行った。 6.1 サーバの設定 図 8. サーバ管理:設定:サービス設定画面 6.1.1 対象サーバの主な仕様 6.2 コンテンツの制作と配信 対象マシンの仕様概略および既に稼働中の主なサ ービスは、以下の通りである。 - Power Mac G5 1.8GHz Dual 1GB/80GB/SD - Mac OS X Server 10.5.5 - 都市計画専攻資料ダウンロードサービス - 都市計画専攻 web サイト内コンテンツ - FileMakerWeb 公開 - weblog, Wiki サービス アプリケーション「Podcast キャプチャ」によって、 コンテンツの収録、サーバへの転送、データエンコ ード、そして公開までの一連の作業を自動的に行う ことができる。実際の手順は、図 9 の設定画面で 「Podcast のタイプ」を指定し、「ワークフロー」の 種類を選択するだけである。今回は、ファイルとし て業務報告会の際に使用したプレゼンテーションフ ァイルを指定し、ワークフローは”アーカイブなしの ブログ”とした。 6.1.2 システム条件[3] Podcast プロデューサーのシステム条件は、次の通 りである。 【Podcast キャプチャの必要条件】 - MacOS X 10.5 を実行する Mac - iSight カメラまたは FireWire デジタルビデオ カメラ(Option) 【Podcast Producer サーバの必要条件】 - MacOS X Server 10.5 を実行する Mac - Option のクラスタファイルサービス用の Xsan 【Podcast Producer Xgrid レンダリングの必要条件】 - Intel ベースの Macintosh サーバまたは Intel ベースのデスクトップ Mac - MacOS X 10.5 または MacOS X Server 10.5 - 1 GB 以上のメモリ (RAM) およびプロセッサ コアごとに 512 MB の追加 RAM - 50 GB 以上の空きディスク容量 - Option のクラスタファイルサービス用の Xsan - Quartz Extreme に対応するビデオチップセット 図 9. Podcast キャプチャ設定画面 6.3 情報共有 図 10 は、実際に公開した(試験運用)Web ペー ジの様子である。 対象サーバは、上記の Xgrid レンダリングの必要 条件(CPU)を満たしてはいないが、敢えて試みた。 6.1.3 設定手順[4] アプリケーション「サーバ管理」で、Podcast プロ デューサーに加え以下のサービスを起動させた(図 8)。各サービスの設定項目と値については、別の機 会にまとめてみたい。 - DNS - Open Directory - Quick Time Streaming - Web(稼働中) - Xgrid -メール 図 10. Podcast(試験運用)web 公開ページ ここで、画像部をクリックすると、動画が展開さ れる。QuickTime ムービーとして保存することもで きる。また、右上部の”iTunes で登録”を選択すると、 iTunes が起動し、ライブラリに追加される(図 11)。 5 Apple 教員向けワークショップ「授業をビデオ Podcast 〜撮影から配信までのノウハウ〜」(平成 20 年 8 月 29 日受講)http://www.apple.com/jp/education/events/report/apd/ 15 その後は、通常のメディアファイルと同様 iPod 等デ ジタルプレーヤーに転送して、いつでも自由に再生 することができる。 倒に思える作業計画や徹底した情報の共有は、プロ ジェクト達成のためには重要な要因であることも確 認することができた。同時に、今回の実習室整備等 教育環境の充実は、学生の自由な発想や活動を促し、 少なくとも本学期の実習成果物に顕われたような教 育的効果をもたらすことも改めて実感することがで きた。 また、真の終結ともいえる作業報告で試みた Podcasting は、多くの課題を残しながらも概ね順調 に稼働している。今後は、実習用資料等コンテンツ の充実を図りながら本格稼働を目指したい。 8.おわりに 図 11. PM は、今回のような単一のプロジェクトだけで はなく、様々な場面に適応可能と考える。技術職員 の組織体制、業務運営、個々の業務の取り組みにこ の概念を導入することにより、『技術室』はより充 実した体制となり得るのではないかと思う。 iTunes 起動画面 6.4 今後の応用 謝辞 Podcast の最大の特徴は、コンテンツを「購読」と いう形で利用者の手元にダウンロードし、好きな時 に好きな場所でそれを再生できるところにある。 都市計画分野での応用として、”街歩き”の際、教 員が随時 Podcast サーバ上の資料を更新し、学生は 最新の資料が取り込まれている iPod 等を携帯して 現地を訪れる、等の利用法が挙げられる。 特に、フィールド活動時には有用なツールとなり 得ると考えられる。 実際の整備計画・実施および本報告書作成におい て、多大なご指導とご助言を頂きました本学システ ム情報工学研究科小場瀬令二教授、村尾修准教授に 深く感謝致します。また、プロジェクトに参加頂い た皆様にお礼申し上げます。 参考文献 [1] プロジェクトマネジメント関連用語集. http://www.mitsue.co.jp/case/glossary/y_index.html [2] プロジェクトマネジメント用語集. http://www1.neweb.ne.jp/wb/fukud/glossary.htm [3] MacOS X Server 技術仕様. http://www.apple.com/jp/server/macosx/specs.html [4] Leopard Server に願いを. http://builder.japan.zdnet.com/sp/mac-os-x-server-for-ente rprise-2008/ 7.まとめ 今回の事後評価を通じ、その都度経験のみの判断 基準により進めてきた手法が、予想以上に PM の標 準化された定義に合致していたことがわかった。そ して、目先の効率のみを考えると無駄に感じたり面 Renewal processes of Urban and Regional Planning Studio - from planning to presentation by Podcast Sonomi Kitahara Technical Service Office for System and Information Engineering, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8573 Japan We have conducted renewal programs for Urban and Regional Planning Education for one and a half years. This was done as part of efforts to develop a center, incorporating practical education in design workshops, for training in social engineering, urban planning and town development. This report describes this process, as an example of adapting project management techniques. The report covers everything from the preliminary discussion stage to the actual movement of goods and provision of related equipment. Also, podcasts were used to notify the persons involved in the project that work was finished, and to arouse user's attention of that the facility was open for use. The method of distributing those podcasts is also discussed. Keywords: Urban and Regional Planning; Project management; practical room; Podcast 16 学生実験における酵母の胞子形成条件の検討 木澤 祥恵 筑波大学生命環境科学等技術室(応用生物化学系) 〒305-8572 茨城県つくば市天王台 1-1-1 地を用いている。しかし、植菌量を多めにして生菌 量を調節するなど、初めて微生物を扱う場合には取 り扱いが難しく、塩類溶液の調製などにも手間がか かり、実際に観察できるプレパラートを作成するこ とが大変難しい。そのため、より扱いやすく、確実 に胞子形成を観察できる培地条件を調べる必要があ ると考えた。 概要 微生物実験で使用する 4 種類の酵母を用い、より 扱いやすく、確実に胞子形成を観察できる培地の検 討を行った。 現在学生実験で使用している Kleyn 培地では、7 日以上培養しても受講生 20 名前後のうち胞子を確 認できるプレパラートを作成できた例が 1~2 人で あったが、今回の実験では 3 日ないし 4 日で胞子が 確認でき、それぞれの胞子の特性を確認することが できた。培地組成も Kleyn 培地より単純で、新たな 試薬を購入する必要もなく、今後の実験でも導入し やすいと考えられる。 2.方法 2.1 応用生物学実験Ⅱ(生物学類 2 年生対象)で供試 菌として用いている酵母(Saccharomyces cerevisiae、 Hansenula anomala 、 Candida utilis 、 Schizosaccharomyces pombe)を使用した。マルト培 地のスラントで保存した株を3種類の胞子形成培地 (SPO 培地、ME 培地、KAc培地:組成を Table1 に示す。)のプレートに植菌し、30℃で 5 日間培養 した。 本来、SPO 培地は Saccharomyces cerevisiae の胞子 形成培地として、ME 培地は Schizosaccharomyces pombe の胞子形成培地として用いられているもので あるが、今回は対比実験として、どの菌も 3 種類の 培地に植菌し、生育状態と形態を観察した。 キーワード:酵母、胞子形成、学生実験 1.はじめに 微 生 物 実 験 で 酵 母 の 供 試 菌 ( Saccharomyces cerevisiae 、 Hansenula anomala 、 Candida utilis 、 Schizosaccharomyces pombe)の同定を行う際、生菌 を光学顕微鏡で観察して出芽、分裂などの様子を観 察するほかに、胞子形成培地に生育させた酵母の胞 子を顕微鏡で観察している。胞子の形成にはスポア 形成培地で栄養増殖を抑えながら、なおかつ菌が生 育できる条件を作り出す必要があり、現在、応用生 物学実験Ⅱ(生物学類 2 年生対象)では、Kleyn 培 培地名 Malt 培地(マルト培地) Kleyn 培地 供試菌 Table 1 培地組成 組成(/蒸留水 1000 ml) 麦芽エキス 20.0 g ペプトン 1.0 g ブドウ糖 20.0 g 酢酸ナトリウム・3H2O 5 g pH 6 Agar 2% 7 2% K2HPO4 0.2 g KH2PO4 0.12 g ブドウ糖 0.62 g NaCl 0.62 g 塩類溶液 a) 10 ml ビオチン 20 μg 胞子形成培地 SPO 培地 酢酸カリウム 10 g 酵母エキス 1 g ブドウ糖 0.5g 胞子形成培地 ME 培地 麦芽エキス 20.0 g 胞子形成培地 KAc 培地 酢酸カリウム 10 g a) 塩類溶液:MgSO4・7H2O 0.4g, FeSO4 0.2 g, CuSO4・5H2O 0.02 g, NaCl 0.4 g, MnSO4・4H2O 0.2 g, 蒸留水 100 ml 17 2% 5.5 2% 2% 2.2 プレパラートの作製及び観察 3.3 Candida utilis 生育状態を確認しながら 3 日、4 日、5 日目の生菌 をスライドグラス上で火炎固定し、5%マラカイトグ リーン(商品名 ブリリアントグリーン 和光1級) 水溶液をピペットでのせてバーナーの上でゆるく沸 騰させ、空冷して水洗し、胞子部分を緑色に染色し た。栄養細胞を赤く対比染色するために、0.5%サフ ラニン液に 5~10 秒浸漬して再度水洗し、風乾した。 光学顕微鏡は Olympus CX41、撮影用のデジタル カメラは E-330 を用いた。 無胞子の酵母の代表として用いているが、わずか な核の部分や死細胞と思われる部分が胞子と同じ緑 色に染色されてしまうために、外の菌と見比べない と勘違いしてしまう可能性もあり、実験の際に注意 を促す必要がある。やはり KAc 培地では生菌そのも のの生育が悪く、観察を断念せざるを得なかった。 3.結果 3.1 Saccharomyces cerevisiae 胞子形成培地のうち、SPO 培地、ME 培地の 2 種 類では生育も良く、却って栄養細胞での増殖の方が 多く見られるのではと危惧していたが、5 日目には SPO 培地、ME 培地ともに細胞内の子嚢胞子がごく わずか観察できた。KAc 培地では生菌そのものの生 育が悪く、観察を断念せざるを得なかった。 50μm Figure 3. Candida utilis SPO 培地 3.4 Schizosaccharomyces pombe 4 日目の SPO 培地、ME 培地から作成したプレパ ラートで、きれいな接合胞子の形が観察できた。KAc 培地では生菌そのものの生育が悪く、観察を断念せ ざるを得なかった。 50μm Figure 1. Saccharomyces cerevisiae SPO 培地 3.2 Hansenula anomala 50μm 胞子らしいものも観察できたが、今回の実験では 確認できたとは言いがたく、更なる条件検討が必要 と考えられる。逆に ME 培地などでは培地成分によ るものと思われる菌体の形状の相違が激しく、対比 実験の供試菌としては不向きであると考えられる。 やはり KAc 培地では生菌そのものの生育が悪く、観 察を断念せざるを得なかった。 Figure 4. Schizosaccharomyces pombe SPO 培地 4.考察 今回の実験で、SPO 培地、ME 培地はそれぞれ子嚢 胞子をつくる Saccharomyces cerevisiae、 Schizosaccharomyces pombe の 2 種類の酵母の胞子を 観察するのに適しており、従来使用している Kleyn 培地に比べて調製も簡単であることがわかった。KA c培地は栄養細胞の成育が極めて悪く、今回の実験 には不向きであると考えている。今後は染色方法に 50μm Figure 2. Hansenula anomala SPO培地 18 るよう努力していくことが重要ではないかと考えて いる。 も改善を加え、さらに観察のしやすい方法を検討し ていきたいと考えている。 謝辞 微生物の形態の観察は応用実験を行っていく過程 でももちろん重要であるが、分類学上では生活環や 生育状況で変化する形態よりも遺伝子の解析が主に なりつつある傾向があり、特に分類学上不安定な位 置にある酵母では、胞子の観察をする機会は余程専 門的な研究に必要がない限り学生実験以外で取り扱 う機会はごく少ないと考えられる。今回取り上げた テーマ以外でも同じように廃れていきがちな基礎実 験、基礎的な手法というものが学生実験ではまだ多 く残されており、残された少ない機会であるからこ そ、今後もより観察のしやすい手法を取り入れられ 本検討の一部は、日本学術振興会 科学研究費補 助金(奨励研究)20934009 によるものである。 参考文献 [1] [2] [3] [4] [5] 近藤正臣・渡部一仁 編著, スポア実験マニュアル, 技報堂出版, 1995 年 応用生物化学実験Ⅱ実験書, 筑波大学生物学類 2008 年 東京大学農学部 農芸化学教室 編, 実験農芸化学 (下)第3版, 朝倉書店, 1983 年 大隈良典・下田親 編, 酵母のすべて 系統,細胞から 分子まで, シュプリンガー・ジャパン, 2007 年 菊池韶彦 著, 酵母のライフサイクル, サイエンス社, 2006 年 Investigation of sporulation conditions of yeast in student’s training experiment Yoshie Kizawa Institute of Applied Biochemistry, Technical Service Office for Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8572 Japan This study examined culture media which are easier to handle and enable definite observation of sporulation. The study was conducted using the 4 types of yeasts employed in microbiology experiments. Kleyn’s medium is currently used in student’s training experiments. But even if culturing is done for 7 days or more with Kleyn’s medium, only 1 or 2 of about 20 students can make a slide enabling confirmation of spores. In this experiment, sporulation could be confirmed in 3 or 4 days. It was also possible to confirm the characteristics of the various spores. The medium composition is simpler than Kleyn’s medium, and there is no need to purchase any other extra reagents. This medium may also be useful in other laboratory training in the future. Keywords: yeasts; sporulation; student’s training experiments 19 担持貴金属触媒の低温(180 K)からの昇温還元法(TPR) 伊藤 伸一 筑波大学数理物質科学等技術室(物性・分子工学専攻) 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 概要 貴金属微粒子をシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3) などに担持した担持貴金属触媒のキャラクタリゼー ションのひとつである昇温還元法について検討した。 小型の電気炉を作成し、これを液体窒素で 180 K (-93℃)まで冷却してから昇温を開始した(冷却電 気炉法)。その結果、直線性のよい昇温プロファイ ルが得られた。 キーワード:昇温還元法、Temperature-programmed reduction (TPR)、担持貴金属触媒、冷却電気炉法 1.はじめに 担持貴金属触媒のキャラクタリゼーションのひと つに昇温還元法(Temperature-programmed reduction: TPR)がある[1]。これは、アルゴンなどの不活性ガ スで希釈した水素ガスを一定流量触媒に流通させな がら一定の速度で温度を上げていき、触媒の還元特 性を調べる方法である。酸化物担体に担持した貴金 属微粒子(白金(Pt)やパラジウム(Pd))は、室 温付近から還元が始まるので、室温で水素を流通さ せただけで還元が起こることが考えられ、より正確 な還元特性を知るためには、より低温から行う必要 がある。反応管内に固定した触媒を室温以下に冷却 するには、反応管そのものをアセトンシャーベット (-94℃:179 K)などであらかじめ冷却しておかな ければならない。しかし、このままでは室温との温 度差が大きく、アセトンシャーベットを除去すると ただちに触媒層の温度が急激に上がり、一定の速度 での昇温が難しい。一つの方法として、コイル状の 銅パイプを反応管に巻きつけ、パイプ内に冷媒を流 通させるものがある。この方法については、電気炉 で昇温した際にパイプ内に残った冷媒の突沸や、万 が一、パイプが閉塞した場合には内圧が上昇する危 険がある。 そこで、小型の電気炉を製作し、これを液体窒素 で 180 K 以下に直接冷却し、昇温する方法を検討し た。その結果、直線性のよい昇温プロファイルが得 られた。これ以降、この方法を冷却電気炉法と呼ぶ。 定原理は次の通りである。アルゴンベースの 5%水 素ガスを用いる。分岐したガスの一方は、フローコ ントローラー 1 で流量制御(一般的には 30 mL/min 程度)したのち反応器に導入し、TCD ガスクロマト グラフのカラム 1 に導入する。もう一方のガスはフ ローコントローラー 2 で流量制御し、ガスクロマト グラフのカラム 2 に導入する。これらの 2 系統のガ ス流量は同じに設定する。カラムの充填剤にはモレ キュラシーブを用いると、触媒の還元により生成し た水を吸着するので都合がよい。また、カラムの直 前にトラップを入れて水を除去してもよい。電気炉 を一定の速度で昇温すると、触媒の還元が起こり水 素を消費する。ガスクロマトグラフの検出器 1 に導 入されるガス組成が変化することで、記録計に還元 の様子が記録される。すなわち、還元挙動がわかる。 前述のように、低温からの TPR を行うため電気炉を 直接液体窒素で冷却する方法を検討した。市販の電 気炉では無理があるので、今回新たに製作した。そ の方法について次節で述べる。 5.0% H2 / Ar (0.2 MPa) Flow controller 1 Flow controller 2 Quartz reactor Furnace Program controller Catalyst bed TCD Gas chromatograph Recorder 2.昇温還元法 昇 温 還 元 法 ( Temperature-programmed reduction: TPR)とは、触媒化学の分野で用いられるキャラク タリゼーションの一つで、触媒の還元性を調べる方 法である。実験装置の概略を figure 1 に示した。測 Figure 1. The outline of experimental apparatus for Temperature-programmed reduction (TPR) . 20 また、低温からの TPR を行う場合は、触媒を入れる 反応器も水素/アルゴンガスを流す前に冷却してお く必要がある。冷却には、アセトンシャーベットを 使用する。アセトンシャーベットはデュワー瓶に入 れたアセトンに液体窒素を攪拌しながら徐々に加え ていくと、-94℃:179 K でシャーベット状になり冷 却剤として使用されるものである。そのため、反応 器の形状も円筒状のものから、U 字型に変更した(後 述)。 素材にアスベストが使用されていたが、現在ではセ ピオライトなどの別の物質が使用されている。補強 のための細線が編みこまれているが、これがときお り漏電の原因となることがあるので、注意が必要で ある。Figure 2(b) は断熱(耐熱)シートである。厚 みは 1 mm ほどであるが、破れやすいので慎重に扱 う必要がある。絶縁性があるので、電気炉を製作す る際にはボビンに電熱線を巻きつけた上から、この 断熱(耐熱)シートで覆う。 Figure 3(a) に示したように、電気炉用ボビンに電 熱線を巻きつけ、両端は同じ種類の電熱線を利用し 固定した。電気炉の中心部は、約 10 mm のピッチで 3.電気炉の製作 電気炉の製作には次のものを使用した。 電熱線:鉄クロム合金線 0.5 mmφ (6.4 Ω/m)、2 m 電気炉用ボビン:外径 45 mm、内径 35 mm、長さ 200 mm 断熱(耐熱)シート:200 mm × 700 mm × 1 mm 断熱(耐熱)リボン:25 mm × 2 mm、長さ 3 m コード:1.25 mm2 、1 m コードコネクタ:100 V 用プラグ 圧着端子:1.25 mm2 用スリーブ 碍子:内径 1 mm、外径 3.5 mm、長さ 5 mm Figure 2 に電気炉製作の準備の様子を示した。断 熱(耐熱)リボンは、最初に使用するときに可燃性 のガスが生じるので、あらかじめ予備加熱を行う。 Figure 2(a) に示したように、ドラフトチャンバー内 でガスバーナーを使用し、処理を行った。写真では よく見えないが、炎がでて可燃性ガスが燃えた。炎 が消えれば処理が完了する。色は白色から灰色に変 化した。この断熱(耐熱)リボンは、かつてはその Figure 3. Production of furnace. (a) after setting of heating wire (iron-chrome wire: 0.5 mmφ, 2 m), (b) after coating with heat-resistant sheet, (c) after coating with heat-resistant ribbon. Figure 2. Preparation of materials for furnace. (a) precalcination of heat-resistant ribbon, (b) heat-resistant sheet. 21 巻きつけた。次に、figure 3(b) のように、上から断 熱(耐熱)シートを巻きつけ、やはり同じ種類の電 熱線で固定した。さらに、一度空焼きした断熱(耐 熱)リボンを巻きつけたのち、電熱線の両端を圧着 端子でコードと接続した(figure 3(c))。また、電熱 線がむき出しになるのは、漏電や感電の原因となる ので、露出しないように碍子を使用した。コードの もう一方の端には、コードコネクタを接続した。電 気炉の温度制御は、市販のプログラム温度調節器を 用いた。一定の昇温速度で電気炉の温度を制御でき るもので、試運転を行い P、 I、D の 3 つのパラメ ーターの最適値を求め設定した。 5.測定方法 TPR の測定方法を述べる。反応管の形状が異なる が、そのほかは同じであるから Figure 1 の概略図を 基に述べる。U 字型の反応管に石英ウールを詰め、 担持貴金属触媒 50 mg を詰め、さらに上から石英ウ ールを軽く詰めた。触媒はあらかじめ空気焼成また は酸素処理を行った。反応管を配管し、ヘリウムで 空気を置換したのち、アセトンシャーベットに浸け た。ガスを水素/アルゴンガスに切り替え、フローコ ントローラー1 と 2 で流量を設定した。ガスクロマ トグラフを起動し、カラム温度 328 K、検出器温度 383 K、カレント電流 60 mA に設定した(島津製作 所 GC-8A)。ガスクロマトグラフからの信号が安定 したのち、冷却電気炉の準備を行った。Figure 5 に 電気炉を液体窒素で直接冷却する様子を示した。換 気に注意し、炉心の温度を測定し、170 K 程度まで 冷却した。電気炉の温度が安定したら、反応管を冷 やしているアセトンシャーベットを外し、ただちに 電気炉を設置した。電気炉の温度が徐々に上昇する ので、180 K になったら、プログラム昇温を開始し た。昇温速度は 10 K/min。ガスクロマトグラフの出 力信号は、記録計(島津製作所 C-R8A)で記録した。 昇温が終わったら、得られた還元ピークの面積か ら還元量等を計算する。還元ピーク面積の検量は、 酸化銅(CuO)を基準物質として行うが、今回この 結果については割愛した。 4.TPR 用反応管の製作 Figure 4 に反応管の寸法を示した。材質は石英で、 本学研究基盤総合センターのガラス工作部門に製作 を依頼した。U 字の底の部分から 25 mm 上に内径の 細い部分をつくり、この位置に石英ウールを用いて 触媒を固定するようにした。実験装置のガスの配管 は、ステンレスパイプを使用したが、石英反応管と の接続には Swagelok(テフロンフェルール)を使用 した。この U 字型反応管については、当初パイレッ クスガラスの管を研究室で細工し使用していた。し かし、担持貴金属触媒の貴金属と添加物(主に酸化 物)との相互作用を調べるためには、より高温で還 元特性を調べる必要があったことから、石英を使用 することにした。 6 25 50 175 Figure 5. Cooling down of the furnace with liquid N2. 6.TPR 測定結果 TPR 測定結果の一例を figure 6 に示した。用いた 試料は酸化物担体にパラジウム(Pd)を 6 wt% 担持 したものである。グラフの横軸は経過時間を、左縦 軸は水素消費量(任意単位)を、右縦軸は温度をそ れぞれ示している。赤線で示されているように測定 開始直後にわずかな温度の乱れがあったが、それ以 降は直線的に昇温した。10 分後、300 K 付近に大き なピークが現れた。これは、パラジウムの還元によ るものである。ピークの立ち上がりが 260 K(-13℃) 付近からみられることから、今回の低温からの TPR ではじめて正確な還元挙動を知ることができた。17 分後、360 K 付近に逆向き(下向き)にピークが出 unit: mm 25 25 Figure 4. The quartz tube for TPR. 22 ているが、これは還元したパラジウムが、吸蔵した 水素を放出したためであると考えられる[2]。また、 200 K 付近の小さなピークは、アセトンシャーベッ トと冷却電気炉を付け替えた際のわずかな時間の温 7.謝辞 本報告を行うに当たり、ご指導をいただきました 本学数理物質科学研究科、物性・分子工学専攻、国 森公夫教授、冨重圭一准教授に感謝いたします。TPR 測定については、本学数理物質科学研究科(博士前 期課程)物性・分子工学専攻、福士広多君にご協力 いただきました。感謝いたします。石英反応管の製 作については、本学研究基盤総合センターのガラス 工作部門に依頼した。明都茂氏、門脇英樹氏に感謝 いたします。また、今回の成果は、平成 20 年度科学 研究費補助金、奨励研究(課題番号 20915008)の一 部から得られました。ここに謝意を表します。 800 [×105] 4 3 600 2 400 Temperature / K Hydrogen consumption / a.u. 度変化により水素/アルゴンガスの流量がわずかに 変化したことによるものであると考えている。 1 0 0 200 20 40 60 Time on stream / min 参考文献 Figure 6. TPR profile of a supported palladium catalyst after calcination in air at 773 K. [1] 触媒講座第 3 巻 、p145、講談社(1985)、東京. [2] R. Compesi, F. Cuevas, R. Gadiou, E. Leroy, M. Hirscher, C. Vix-Guterl, M. Latroche, Carbon, 46, (2008) 206-214. Temperature-programmed reduction (TPR) technique of supported noble metal catalyst from low temperature (180 K). Shin-ichi Ito Institute of Materials Science, Technical Service Office for Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8573 Japan Temperature-programmed reduction (TPR) technique of supported noble metal catalyst from low temperature (180 K) was constructed. A small electric furnace was produced for the TPR. The furnace was directly cooled down with liquid N2 to 180 K before the TPR measurement (cold furnace method). The temperature was increased linearly from 180 K to 773 K by this method. Keywords: Temperature-programmed reduction (TPR); noble metal catalyst; cold furnace method 23 二成分系ゲルマニウム酸塩ガラスの作製とラマン散乱 間宮 精一 筑波大学数理物質科学等技術室(物性・分子工学専攻) 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 Kamitsos ら[3-5]と Henderson ら[1, 6-8]による多くの研究 がある。Kamitsos ら[3, 5]はモード 520 cm-1 が低濃度 (10.9≤x≤22.4)において 6 つの GeO4 四面体の 3 員環 を も つ GeO6 八 面 体 中 の Ge(4)-O-Ge(4) 架 橋 と Ge(4)-O-Ge(6)架橋の対称伸縮振動に起因すること を明らかにした。Henderson ら[6, 7]は酸化アルカリの 添加と伴に GeO4 四面体の 3 員環の生成を提案した。 しかし、その微視的起源は未だ明らかではない。彼 らは K2O の 9 mol%でゲルマニウム酸塩異常が起こ る理由を説明していない。故にカリウムゲルマニウ ム酸塩ガラスの構造を明らかにするためにラマン散 乱を調べる。この研究において中振動数帯域 (350-700 cm-1)のスペクトルをカーブフィットした [8] 。独立なガウス曲線は K2O 濃度と伴に解析された。 この解析はガラスにおける構造変化を理解するのに 役立つと考えられる。 概要 本研究を行うために均一で泡のないガラスを溶液 反応法で作製した。そして、その組成分析も行った。 カ リ ウ ム ゲ ル マ ニ ウ ム 酸 塩 ガ ラ ス , xK2O·(100-x)GeO2 のラマンスペクトルを 0≤x≤39.0 の 範囲で K2O モル%の関数として研究した。中振動数 帯域 (350-700 cm-1)のスペクトルを K2O 濃度の増加 に 伴 なう 構造 変 化を 理解 す るた めに 解 析し た。 x=0.00 でのモード 420 cm-1 は K2O 濃度と伴に劇的に 減少し x=22.4 で消失した。x=0.00 でのモード 520 cm-1 は K2O 濃度と伴に著しく増加し x=10.9 で最大に 達した。また、x=22.4 で K2O 添加前の初期値より減 少した。更なる K2O 濃度の増加に対して x=22.4 と 29.7 の間で殆ど一定になった。更に K2O 濃度を増加 させると減少し始めた。モード 420 cm-1 の強度の減 少とモード 520 cm-1 の増加は GeO4 四面体の 6 員環 が 6 つの頂点で酸素を介して結合した四面体 GeO4 の 3 員環(Ge3O6)をもつ GeO6 八面体に変換すること を意味した。それはゲルマニウム酸塩異常が GeO6 八面体ではなく GeO6 八面体に付随する 6 つの GeO4 四面体の 3 員環により直接引き起こされることを示 唆した。 3.実験 3. 1 サンプルの作製 10 種 類 の 異 な る ア ル カ リ 濃 度 の ガ ラ ス を 0≤x≤39.0 について xK2O·(100-x)GeO2 により準備した。 すべてのガラスを“溶液反応法”[10]により作製した。 この方法の特徴は、初原料が均一に混合するために 水溶液中でまず反応することにある。分析等級試薬 KOH·H2O と GeO2 を最も純粋な初期原料として使用 した。最初の原料はテフロンビーカー中で蒸留水と 反応された。ビーカー中の水が完全に蒸発した後、 化学合成された粉末を得た。この粉末は組成により 約 950~1300℃で 1.5 時間白金坩堝により溶かした。 均一で泡のない融液はバルクガラスを作るためにグ ラファイト型に鋳込み、または板間急冷した。バル クガラスを直径 15 mm 厚さ 1 mm の円盤状に切断し 分光測定のために研磨した。そして、すべてのガラ スを組成分析し正確なアルカリ濃度を決定した。 キーワード:溶液反応法、ラマン散乱、カリウムゲ ルマニウム酸塩ガラス、ゲルマニウム酸塩異常。 1.はじめに ガラスは紀元前 7000 年来、人類と馴染みの深い物 質である。それは日常においてあらゆる場所で利用 されている。例えば、構造材としての窓ガラス、機 能材としてのレンズ、光ファイバー等が挙げられる。 近年、核廃棄物のガラス固化のためにも利用されて いる。その中で特にアルカリゲルマニウム酸塩ガラ スは独特な物理特性をもつため大きな関心を集めて いる。所謂“ゲルマニウム酸塩異常”と呼ばれるも のである。この異常の微視的起源を明らかにしよう と様々な研究が行われている。しかし、未だ明快な 説明のなされないままである。そこでカリウムゲル マニウム酸塩ガラスの構造変化を明らかにするため にラマン散乱を調べた。 3. 2 ラマン分光測定 ラマン散乱は 532 nm の波長と約 100 mW の出力 のダイオード·ポンプ固体レーザーを使い励起した。 狭帯域バンドパスフィルター、半波長板と偏光板を 通った光線はレンズによりサンプル上に焦点が結ば れる。サンプルからの散乱光は後方散乱配置による レンズ系により集められ加分散のトリプル格子分光 器により分光される(Jobin Yvon 64000)。スペクトル 分解能は約 2 cm-1 であった。ラマンスペクトルを室 温で 10-1100 cm-1 の範囲で測定した[11]。 2.ゲルマニウム酸塩異常 “ゲルマニウム酸塩異常”[1]は“ホウ酸塩異常”[2] と伴にガラス科学の目下の問題の一つである。ゲル マニウム酸塩異常とは、GeO2 ガラスにアルカリを加 えたときガラスの密度がアルカリの増加と伴に増加 し極大をもつ振舞のことである。一方、ケイ酸塩ガ ラスはそのような振舞は示さない。ゲルマニウム酸 塩異常は広範囲に渡り研究されて来た [1, 3-9] 。特に 24 4. 2 ラマンスペクトル分析 4.結果と考察 カリウムゲルマニウム酸塩ガラスの偏光(VV)ス ペクトルは図 3 に示される。説明と考察のためにス ペクトルを高振動数帯域 700 から 1000 cm-1, 中振動 数帯域 200 から 700 cm-1, 低振動数帯域 200 cm-1 以下 の 3 つの領域に分割する。 4. 1 組成分析 K2O mol%濃度を知るために図 1 のフローチャー トに従って中和滴定を行った[12]。 (b) (a) 513 874 x=19.0 10.9 412 345 241 866 774 x=39.0 29.7 504 858 956 0 Intensity / arb. unit Intensity / arb. unit 538 22.4 0.00 200 400 600 800 1000 1200 -1 Raman shift / cm 0 200 400 600 800 10001200 -1 Raman shift / cm 図 3. xK2O·(100-x)GeO2 ガラスの組成依存性 (a) x=0.00~19.0, (b) x=22.4~39.0. 4. 2. 1 高振動数帯域 高周波帯域(700-1000 cm-1)のスペクトルは興味深 い。低 K2O 濃度(x≤19.0)で 858 と 956 cm-1(x=0)の 2 つの帯域の強度は K2O 濃度と伴に少し増加するが、 それらはまだ弱い。2 つの帯域の振動数は少し減少 し、高い方の振動数帯の強度は K2O 濃度と伴に低振 動数帯の強度と比べて増加する。870 cm-1 での高振 動数帯の強度(x=19.0)は(x>19.0)で劇的に増加し x=29.7 で特徴的帯域となる。その帯域は四面体 Q3 種(Qn 種は(4-n)非架橋酸素をもつ)と考えられる。2 つの帯域(x>29.7)は 770 cm-1 と 710 cm-1 で現れる。 それらは四面体 Q2 と Q1 と考えられる[ 3]。 図 1. 滴定のフローチャート 組成分析により下のような結果 (表 1, 図 2) が得 られた。仕込値と分析値の差が小さく良好な試料で あることが確認された。 表 1. 組成分析 / mol% 仕込値 8 12 16 20 24 28 32 36 40 分析値 差 7.6 10.9 15.3 19.0 22.4 26.8 29.7 34.4 39.0 0.4 1.1 0.7 1.0 1.6 1.2 2.3 1.6 1.0 4. 2. 2 中振動数帯域 中周波帯域(200-700 cm-1)のスペクトルは最も興 味深い。それらは 400 と 650 cm-1 の間の強い帯域と 240 と 330 cm-1 の弱い帯域から構成されている。強 い帯域(x<19.0)は支配的特徴がある。412 cm-1 での K2O ガラススペクトルの強い帯域は K2O 濃度に従っ て高振動帯に移動し強度を減少させる。412 cm-1 で の帯域の 504 cm-1 の肩は K2O 濃度と伴により高振動 帯に移動し強度を減少させる。599 cm-1 の肩(x=19.0) は現れ、x=34.4 で消滅する。641 cm-1 でのもう 1 つ の肩(x=22.4)は出現し、x=39.0 で消滅する。 GeO2 ガラスの 412 cm-1 の支配的帯域は 6 員環すな わち 6 つの GeO4 四面体からできた環における Ge(4)-O-Ge(4) の対称伸縮振動と考えられる。535 cm-1 での支配的帯域は GeO4 四面体の 6 つの 3 員環 (Ge3O6)に頂点で酸素により結合された GeO6 八面体 中 の Ge(4)-O-Ge(4) 架 橋 の 対 称 伸 縮 振 動 と Ge(4)-O-Ge(6)架橋との畳み込みに起因される。325, 598, 640 での 3 つの帯域は稜共有の 4 つの GeO6 八面 体中の Ge(6)-O-Ge(6)モードのためと考えられる[3]。 分析値 / mol% 40 30 20 10 0 0 10 20 30 40 仕込値 / mol% 図 2. ガラス組成の分析値-仕込値 25 Integrated intensity of four modes / arb. unit 4. 2. 3 低振動数帯域 0 低振動数帯域(0-200 cm-1)のスペクトルは広い台 形状をしている。それは K2O 濃度で殆ど変わらない。 -1 420 cm -1 520 cm -1 600 cm -1 645 cm 5.結び 5 10 15 20 25 30 35 40 K2O content / mol% 図 4. K2O 濃度(mol%)の関数としての各振動モード の積分強度 主振動数帯域(350-700 cm-1)は適当な数のガウス 曲線の和によりカーブフィットされた(図 4)。 4 つのピークは約 420, 520, 600, 645 cm-1 を選んだ。 各ガウス曲線を積分した。図 4 は K2O 濃度の増加と ともに 4 つのモードの積分強度を示す。モード 420 cm-1 は K2O 濃度とともに急激に減少し x=22.4 で消失 する。それは 6 員環中の Ge(4)-O-Ge(4)架橋の対称伸 縮振動が x=22.4 で消滅することを示す。モード 520 cm-1 は K2O 濃度とともに劇的に増加し x=22.4 と x=29.7 の間で殆ど一定となる。そして、再び減少す る。x=10.9 におけるモード 520 cm-1 の最大値は 9 mol% K2O でのゲルマニウム酸塩異常の最大値、す なわち密度最大値に対応する[1]。低 K2O 濃度ガラス 構造は x=29.7 で完全に消滅する[13]。 構造的見地から見ると、504 cm-1 の肩(モード 520 cm-1 に含まれる)は 3 員環の Ge(4)-O-Ge(4)架橋の対 称伸縮振動と考えられる。K2O の追加でその肩は GeO4 四面体の 6 つの 3 員環(Ge3O6)と頂点で酸素と 結 合 し た GeO6 八 面 体 の Ge(4)-O-Ge(4) と Ge(4)-O-Ge(6)架橋の対称伸縮振動と見なせる支配 的振動帯域となる。これは GeO6 八面体が K2O 濃度 とともに増加しモード 520 cm-1(x=10.9)の最大値が x=9.0 でのゲルマニウム酸塩異常の最大値と対応す る。これは GeO4 四面体の 3 員環のためである、な ぜなら、環の構造が GeO4 四面体の 6 員環のそれよ り小さな空孔を作るからである[6]。それはゲルマニ ウム酸塩異常が GeO6 八面体によるのではなく GeO6 八面体に付随した GeO4 四面体の 6 つの 3 員環によ り直接引き起こされることを示す。モード 520 cm-1 が x=22.4 で K2O 注入前の最初の値より減少すると き低 K2O 濃度ガラスの構造は消失し始める。それは GeO6 八面体が消失し低濃度ガラス構造も消滅する ことを示す。そして Q3 と Q2 は K2O 濃度の増加とと もに劇的に増加する。 26 カリウムゲルマニウム酸塩ガラスをラマン散乱 により研究した。 高振動数帯域おける低 K2O 濃度(x≤19.0)の 2 つの帯 域の強度は K2O とともに少し増加する。870 cm-1 で の高い方の帯域の強度(x=19.0)は(x>19.0)で劇的に 増加し x=0.32 で四面体 Q2 と Q-1 に起因する 2 つの小 さな帯域が x>29.7 で現れる。 中振動数帯域において強い帯域(400-650 cm-1)と 弱い帯域(240 と 330 cm-1)から構成される。強い帯域 は x<19.0 では支配的である。 カーブフィットによる解析により x=10.9 付近で のモード 520 cm-1 における最大値が密度のゲルマニ ウム酸塩異常 x=9.0 mol%と対応することと x=29.7 で低濃度 K2O のガラス構造が完全に消滅することを 示した。このことによりカーブフィットによる解析 が構造解析に有効であることを明確に示した。 謝辞 本報告を行うにあたり、数々のご指導を頂きまし た筑波大学数理物質科学研究科、小島誠治教授、狩 野旬助教、松田裕学振研究員他小島研究室ガラス班 の皆様に深く感謝します。 参考文献 [1] G. S. Henderson, J. Non-Cryst. Solids, 353, (2007) 1695-1704. [2] M. Kodama, A. Ono, S. Kojima, S. A. Feller, M. Affatigato. J. Glass Sci. Technol., B 47, (2006) 465-470. [3] E. L. Kamitsos, Y. D. Yiannopoulos, M. A. Karakassides, G. D. Chryssilos, H. Jain J. Phys. Chem., 100, (1996) 11755-11765. [4] Y. D. Yiannopoulos, C. P. E. Varsamis, E. I. Kamitsos J. Non-Cryst. Solids, 293, (2001) 244-249 [5] Y. D. Yiannopoulos, C. P. E. Varsamis, E. I. Kamitsos Chem. Phys. Lett., 359, (2002) 246-252. [6] G. S. Henderson, M. E. Fleet J. Non-Cryst. Solids, 134, (1991) 259-269. [7] M. H. Wang, G. S. Henderson, Chem. Geol., 213, (2004) 17-30. [8] L. G. Soltay, G. S. Henderson Phys. Chem. Glasses, 46, (2005) 381-384. [9] A. C. Hannon, D. D. Martino, L. F. Santos, R. M. Almeida J. Non-Cryst. Solids, 353, (2007) 1688-1694. [10] Y. Matsuda, Y. Ike, M. Kodama, S. Kojima J. Phys. Soc. Jpn., 77, (2008) 084602. [11] A. Hushur, Y. Akishige, S. Kojima Mat. Sci. Engin., B 120, (2005) 45-49. [12] M. Kodama, K. Iizuka, M. Miyashita, N. Nagai, W. Clarida, S. A. Feller, M. Affatigato Glass Technol., 44, (2003) 50-58. [13] T. Furukawa, W. B. White J. Mat. Sci., 15, (1980) 1648-1662. Preparation and Raman scattering measurement of binary potassium germanate glasses Seiichi Mamiya Institute of Materials Science, Technical Service Office for Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8573 Japan For this research, homogenized bubble-free glasses were prepared using solution method. Their compositions were analyzed through titration. Raman scattering spectra of potassium germanate glasses, xK2O·(100-x)GeO2, have been investigated as a function of the K2O content in the range of 0 ≤ x ≤ 39.0 mol%. The spectra of the middle frequency region (350-700 cm-1) were analyzed to understand the structural change with increasing the K2O content. The mode at 420 cm-1 and at x=0.00 drastically decreases with the K2O content and disappears around x=22.4. The mode at 520 cm-1 and at x=0.00 markedly increases with the K2O content and reaches the maximum at x=10.9, and then decreases down to the initial value before doping the K2O at x=22.4. For the further increase of the K2O content, it becomes nearly constant between x=22.4 and 29.7 and decreases again with the K2O content. The reduction of the mode at 420 cm-1 and the increase of the 520 cm-1 mode indicate that six-membered rings of GeO4 tetrahedra convert into GeO6 octahedra linked by corner oxygens to six three-membered rings (Ge3O6) of GeO4 tetrahedra. It suggests that the germanate anomaly is directly caused not by GeO6 octahedra but by six three-membered rings (Ge3O6) of GeO4 tetrahedra that attach to GeO6 octahedra. Key words: solution method; Raman scattering; potassium germanate glasses; germanate anomaly 27 附属坂戸高等学校学務処理システムの構築 加島 倫 1 附属学校教育局 学校支援課 附属坂戸高等学校係 学務システム WG 〒350-0214 埼玉県坂戸市千代田 1-24-1 概要 2. 設計 本システムは、附属坂戸高等学校における、諸学 務処理業務支援を行うための基幹業務ソフトウェア であり、Windows Server 2003 R2, SQLServer 2005 (Standard) DBMS 上で稼働し、.Net ASP Web フレー ムワーク及び、C#言語にて記述される。 機能には、入試業務、出欠席記録、履修管理、成 績記録、指導要録管理、生徒情報管理などがあり、 それぞれは web フォーム型 (.net ASP)、C#アプリケ ーション型どちらかの適当なインターフェースで提 供される。 端末に Nintendo DS (Wi-Fi 対応携帯 ゲーム機)の利用することを特徴とする、無線出欠 席入力機能を有し、各教室に配置されたアクセスポ イントを経由、サーバーにアクセスし、出欠席情報 をリアルタイムで入力することが可能である。 帳票出力機能には、SQLServer Reporting Service を 利用し、web ブラウザーからの操作・閲覧・印刷が 可能となっている。 キーワード:学務、坂戸高等学校、指導要録、ソフ トウェア 教員数名とワーキンググループ(WG)を構成し、既 存業務の洗い出しからの進行作業を図 2 のようなワ ークフローとした。 情報処理規模を検討し、稼働させるハードウェア, OS 構成を下記のように決定した。 Server DELL PowerEdge 2900 Xeon 5130 2GHz (2CPU), 2GB RAM, HDD 250GB (RAID1) OS Microsoft Windows Server 2003 R2 DBMS Microsoft SQLServer 2005 Standard Client Windows XP Professional, Nintendo DS OS, DBMS は、Linux+MySQL 等の無料のものも候 補に挙がったが、開発作業を分担して行うことを想 定し、参考書や開発情報の豊富な Microsoft 製のも のを選択した。 ソフトウェアの仕様を策定するにあたって、現在 稼働している業務内容について確認し、モデル作成 を行うため、各担当者に既存の業務で使用している 入力と出力帳票などを元に、流れを整理するととも に、データーフロー図 (DFD) を記述していただい た。 記述方法として Gane-Sarson 記法(図 3)採用 した。完成した DFD の一部を図 4 に示す。 1. はじめに 本校では、生徒履修情報等を管理する学務ソフト ウェアとして、当初 DBASE-IV を用いたシステム (図 1)が稼働しており、下記のような機器構成で運用さ れていた。 近年、これらの機器も老朽化し、維持 が難しくなったことから、現行のパーソナルコンピ ューターで動作するシステムを構築することとなっ た。 旧システム構成 Server NOS Client DBMS その後、作成すべきアプリケーションと機能をま とめ、システム機能構成図を作成した(表 1, 2)。 さらに、必要なエンティティーをまとめて、DB テーブル、フィールドを設計した(図 5) 。 NEC N5200 Novell Netware PC9801 MS-DOS Borland DBASE-IV 図 1. 旧システム画面(出欠席) 1 [email protected] 28 図 2. ワークフロー 図 3. Gane-Sarson 記法のルール 29 図 4. データーフロー図(履修サブシステム) 表 1. 出力帳票一覧(抜粋) プログラム名 処理系 帳票名 RepJM01 RepKS01 RepKS02 RepKS03 RepKS04 RepKS05 RepKY01 RepKY02 RepKY03 RepKY04 RepKY05 RepKY06 RepKY07 RepKY08 RepKY09 RepKY10 RepKY11 RepKY12 RepKY13 RepKY14 RepKY15 RepKY16 RepKY17 RepKY18 RepKY19 RepKY20 RepKY21 RepKY22 RepKY23 RepKY24 RepKY25 RepKY26 RepPTA01 RepTS01 RepY101 要録くん 入試判定出力 通知くん シラバスエディタ SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service SQL Reporting Service C# C# C# C# [事務] 生徒手帳半印台紙 [科目選択] 選択者一覧表 [科目選択] 選択者集計表 [教務] 選択科目教科書注文調査票 [教務] 必修科目教科書注文調査票 [教務] 教科書注文調査票 [教務] 居住地別生徒数一覧 [教務] 生徒基本台帳 [教務] HRリアルタイム出欠レポート [教務] マイ名簿印刷 [教務] HR出欠集計表 [教務] 科目出欠集計表(全報告ベース) [教務] 科目出欠集計表(マイ名簿ベース) [教務] 担任・科目出欠報告相違一覧(HR別) [教務] 担任・科目出欠報告相違一覧(科目別) [教務] 科目出欠報告状況レポート [教務] 暫定通知表 [教務] 科目出欠の報告の矛盾一覧 [教務] 成績一覧表 [教務] 通知表 [教務] 成績入力達成表 [教務] 科目別成績平均一覧表 [教務] HR別成績表 [教務] 科目別成績入力確認表 [教務] マイ名簿上の成績の付いていない生徒一覧 [教務] 成績不良者一覧表 [教務] 調査書(進学用) [教務] 個人別全科目成績一覧表 [教務] 成績証明書 [教務] 調査書(就職用) [教務] 単位修得証明書 [教務] HR別欠席集計表 [PTA] 会員名簿 [図書館] 新入生貸出台帳作成シート [年次]新入生クラス編成カード 指導要録 入試判定会議資料 通知表 科目選択ガイダンスブック(シラバス)版下 表 2. 入力フォーム一覧 グループ 科目管理 プログラム名 テーブル名 webページ(学生用) 科目選択 科目管理 シラバスエディタ シラバス 指導要録管理 要録くん 指導要録_記 指導要録管理 要録くん 指導要録_単 出欠席管理 webページ(携帯端末用) HR出欠 出欠席管理 webページ(教員用) 科目出欠 出欠席管理 webページ(教員用) 出欠名簿 出欠席管理 webページ(教員用) 名簿所属 出欠席管理 ナースくん 保健入室 成績管理 成績くん 成績 成績管理 通知くん 通知表 生徒情報管理 webページ(教員用) 認証 生徒情報管理 生徒諸くん 生徒 生徒情報管理 中学校エディタ 中学校 入試管理 一般エントリ 一般入試 入試管理 一般会場設定 一般会場 入試管理 一般素点入力 一般素点 入試管理 推薦エントリ 推薦入試 入試管理 推薦会場設定 推薦会場 入試管理 推薦素点入力 推薦素点 表 3. 機能構成図(履修サブシステム) システム名 履修管理サブシステム システム機能 アプリケーション サービス シラバス編集 シラバス管理 科目選択条件編集 科目選択管理 受付期間設定 DBアクセス 更新 更新 定員越え科目ロック 非開講科目処理 DB管理・照会機能 レポート機能 履修者リスト管理 更新 履修者検索 参照 履修者リスト印刷 参照 CSV出力機能 30 図 5. テーブル構成図(抜粋) 31 報告できるようにした。 出欠席情報がリアルタイム でサーバーに格納されることにより、授業担当教員 は出欠席情報をすぐさま端末から参照できることに なる。 なお、連絡事項の情報は RSS フィードとし て配信されている。 無線端末には、携帯ゲーム機 Nintendo DS を使用 している。 Nintendo DS は、ソフトウェア Nintendo DS ブラウザーを搭載することにより、Wi-Fi 対応 Web ブラウザーとして使用することができる。 他 の端末候補として、SONY 社の PSP、mylo、各携帯 電話会社のスマートフォン等もあったが、2007 年現 在もっとも安価に導入できる Nintendo DS を採用し た。 3. 機能・プログラム構成 3.1 入試業務サブシステム 入試業務のためのソフトウェアは以下の通りであ る。 受験者情報入力フォーム (C#) 試験採点結果入力フォーム (C#) 選抜会議資料出力 (Reporting Service) 不合格通知出力 (Reporting Service) 合格通知出力 (Reporting Service) 入試試験採点結果の扱いには特に注意をはらい、 充分な試験運用を行わなければならない。 本シス テムでは、旧システム、新システムの並行運用と同 時に、点数の加工計算においては、素点情報を表計 算ソフトなどの第 3 の処理系に移して手計算をし、 厳重な動作試験を行った。 3.2 出欠席記録サブシステム SHR 出欠席入力フォーム (Web, Nintendo DS) マイ名簿作成フォーム (Web) 講座出欠入力フォーム (Web) 出欠席集計出力 (Report Service) 図 6. 携帯端末 (Nintendo DS) 出欠席情報は、最も稼働率の高いデーターであり、 効率の良い運用をするためには、簡単・シンプルに 操作できる必要がある。 従来のシステムでは、予 定されている授業の日付枠に出欠席記録を埋めてゆ く方式がとられていた。 このため、年度(学期) 初めに授業予定情報を入力しておかなければならな かった。この作業はインターフェースが古いことも あり、非常に面倒な作業であった。 新システムでは、このような講座時間情報を放棄 し、日付、科目、状況を 1 組としてポストしてゆく 投票方式の出欠記録となっている。 ただ、対象日 の決定は報告者に委ねられるため、誤って授業の無 い時間についての出欠もポストされてしまう可能性 があるという欠点がある。 出欠情報は、HR 担任が記録する出欠情報を HR 出欠テーブルへ、各授業で行う出欠を科目出欠テー ブルへ分割して収納している。 HR 出欠テーブル は、1 レコードあたり 1 日・人で、1 時間目~7 時間 目までの出欠情報を持ち、科目出欠デーブルは、1 レコードあたり、1 限・人・科目で記録される。 レ コードの増加規模は、学校全体(全校生徒数 480 人) で HR 出欠が 1 日 480 レコード、科目出欠が 1 日お およそ 3,360 レコードとなる。 1 年間では 85 万レ コードとなるため、年度更新時に消去しアーカイブ 保存する。 ・遅刻者数自動報告機能 生徒指導のための機能として、SQL Server 2005 の スケジュール機能を用いて、毎昼 12:00 に朝の出欠 報告の情報から遅刻者の集計をし、e-mail で各教員 へ通知する機能を作成した。 報告される情報は、そ の日の遅刻者と、当月、遅刻が 5 回を超えた生徒の 一覧である。 ・マイ名簿機能 出欠席入力をより抽象化するために、教務手帳を モデルにした、マイ名簿という機能を作成した(図 7)。 教員は出欠席の記録において、教務手帳や、それ に代わるノートの類を携帯して出欠席を記録し、そ の生徒一覧は、頒布されたか自作した表計算シート を縮小印刷し、帳票をノートに切り貼りしている。 マイ名簿では、科目選択システムで収集している 履修情報、生徒情報により、履修科目名簿、クラス 毎の名簿を検索、グループ化し、マイ名簿として教 員毎に管理できるようになっている。 マイ名簿を呼出し、日付、出欠席情報に科目番号 を付け加えて、サーバーにポストすることにより、 教務手帳での記録作業と同様の感覚で出欠席入力が できる。 ・無線端末システム 高等学校では、各教室においてショートホームル ーム (SHR) と呼ばれるクラス担任による朝礼があ り、朝の登校時の出欠席とその日の連絡等が行われ る。 本システムでは、無線端末を利用し、学校レベル の連絡事項の確認や、出欠席情報をリアルタイムで 32 3.4 成績記録サブシステム 成績入力フォーム (C#) 成績会議資料出力 (Report Service) 成績情報は、重要情報であるため、C#アプリケー ションで作成している。 C#アプリケーションは設 計機能専用であり、インストールしていない PC で は作動しないため、セキュリティーを高められると 共に、Web アプリケーションにはできない細かい処 理もインプリメントすることができる。(図 9) 図 7. マイ名簿編集画面 3.3 履修サブシステム 科目選択入力フォーム (Web) 科目選択者管理 (Web) 科目選択集計出力 (Report Server) シラバス編集フォーム (C#) シラバス出力 (Report Service, C#) 図 9. 成績入力画面 3.5 指導要録作成サブシステム 成績証明書出力 指導要録入力フォーム (C#) 指導要録出力 (Report Service, C#) 履修システムでは、シラバスと選択科目(履修) 情報の管理を行う。 シラバステーブルには、同時 履修不可科目などの選択条件フィールドが含有され ており、生徒が Web 端末から行う履修科目選択にお いて妥当性の判定に使用している。 科目選択入力 フォームは Web アプリケーションとして提供され、 生徒がパソコン室からアクセスできるようになって いる。 選択作業の許可制御は教員端末から設定が可 能である。(図 8) また、シラバスの印字出力は、そのまま製本会社 への版下となる。 文部科学省規定の指導要録を記録することができ る。(図 10) 指導要録には成績情報が含まれるが、 更新頻度と保存期間が異なるため、成績サブシステ ムのテーブルとは別テーブルで扱っている。 増加 してゆく一方の膨大なレコードを、日々更新する成 績情報と同居させるのは動作効率が悪い。 図 8. 履修条件設定画面 図 10. 指導要録編集画面 33 3.6 保健室記録サブシステム 3.7 生徒情報管理サブシステム 保健室入室記録フォーム (C#) 生徒情報の管理を行う。 入学時に提出される、 生徒の情報が記された、生徒カードと呼ばれる書類 をスキャナーで取り込み、写真、住所等を入力する。 保健室を利用した生徒の入室時間、時限を記録し、 出欠席情報集計、生徒指導などに利用する。 3.8 教員 ID 管理サブシステム 各教員の ID と、ロール(操作権限)管理を行う。 4. Reporting Service, .Net ASP について 本ソフトウェア作成において使用した処理系のプ ログラミング例について簡単に説明する。 3) 更新ボタンを配置、 SqlDataSource.Update()を記述。 4) Web 発行 4.1 Web (.Net ASP)アプリケーション 以上でテーブル編集機能が Web 上で実現される。 但し、オプティミスティック同時実行制御方式(配 列に残っている更新する前のデーターと更新直前の オリジナルデーターを比較し、他で変更されていた らエラー)であるため、多人数のアクセスは障害の 原因となる。厳密な排他制御をする場合は、 TableAdapter.Transaction プロパティに排他 モードを指定し、ロールバック処理その他を記述し なければならない。 また、ユーザー認証には Windows 認証が使われ るが、認証機能がサービスできない場合(Nintendo DS や Windows Home Edition での接続)は、フォー ム認証処理を記述する必要がある。 オプティミスティック同時実行制御方式(楽観的 排他制御)でのデーター利用をする場合では、テー ブル編集程度の簡単なものであれば、数回のオペレ ーションで作成することができる。 1) データーベース構成ウィザードで、接続する SQL Server, DB 名, テーブルを指定し、 DataSource を作成する。(図 11) 2) GridView コンポーネントをページに配置し、 GridView タスクで新しいデーターソースの 作成をし、作成ウィザードに従って SQL Server のテーブルを登録する。(図 12) 図 11. DataSource の作成 図 12. .Net ASP での GridView 4.2 SQL REPORTING SERVICES による帳票機能 Reporting Service は、SQL Server Standard Edition 以上のグレードに付属する IIS 用 Web サービスコン ポーネントである。 Web 上で DB 検索等に使用す るパラメーターを入力し、SQL 文を実行、結果を帳 票にして表示することができる。 のである。 パラメーターを使用することにより、 Web ブラウザーの画面上から情報を SQL 文へ引き 渡すことができる。 レポート配置までのオペレーションをまとめると、 以下のようになる。 1) Visual Studio でレポートサーバープロジェクト を新規作成 2) レポートウィザードに従い、SQL 文を入力、適 当なテンプレートを選択 3) レポート配置(Web に展開) SELECT 年, 組, 番号, 氏名 FROM V 生徒年組番 WHERE 年 = @年 AND 組 = @組 上の SQL 文は、学年と組に合致する生徒のリストを 抽出するコマンドである。 Reporting Service におい て、@の付く変数は入力パラメーターを指示するも 34 Report ドキュメントは、Web ブラウザー上だけで はなく、C#アプリケーション内からも印刷可能なビ ューとしてアクセス可能である。 閲覧時は、Web ブラウザーからは出力された帳票 を XLS ファイルや CSV、PDF へエクスポートする ことができる。 印刷機能ももちろん提供されるが、 これは Internet Explorer 限定で、IE 以外のブラウザ ーを使っている場合は一度 PDF に落とす必要があ る。 図 13 はレポートレイアウトの編集画面である。 図 13. レイアウト画面 5. おわりに 今回初めて C#, SQL, ASP 処理系を取り扱った。 C#については、ポインタ概念がなく、データーの受 け渡しで違和感を覚える部分があった。 内部で実際 どのように処理されているかがプログラマに見えに くいところがあるが、計算機のメモリーも処理速度 も充分な現在においては、もはや気にしなくて良い ポイントとなっている。 SQL は、C 言語に慣れて いるプログラマにとっては古くて使いにくい言語で あると感じた。 単純検索(SELECT 文)では 1 行 で済むためさほど気にならないが、ストアドプロシ ジャーでの多行にわたるプログラミングでは、構文 をスマートに記述できず、言語を複雑に工作して無 理矢理処理させているような感じがした。 本システムの構築においては、プログラミング技 術的にはさほど難しくなかったものの、既成業務の 解析作業において大半の時間を費やした。業務ソフ トの作成とは、業務モデルの洗い出しそのものであ る。 情報化が進んでいない事業所の場合、各業務間の インターフェースは数百の無秩序な表計算ファイル と口頭伝達によるものとなる。 マクロ等が多数含 まれている表計算ファイルはプログラムリストにす るなど図式化が難しいため、第三者が理解すること は非常に難しい。 しばしば作成者自身ですら理解 不能となっていることもある。 だが、こういった 状況が悪いかと言うと、実はそうではない。 全体 の業務規模や複雑さにも依存するだろうが、分散処 理という意味では、一部が壊れても自己修復(担当 が辞める→別の担当者が入る→新しい自前の Excel を作る)可能な、インテリジェントで優れたシステ ムなのである。 なんと言ってもコストがかからない。 もちろん、基幹業務ソフトウェア・システムを持っ ているに超したことはないが、システムには専属オ ペレーター(既成ソフトなら製造会社と SE の派遣) が必要である。システムには、故障や処理修正など のメンテナンス作業はつきものであり、電源を入れ ておくだけで永久に使い続けられることはあり得な い。 専門技術者を持たない事業所は、億単位の導入費用 と数千万円の年間維持費をもって、業務ソフトウェ アと付き合わなければならないだろう。 高等学校のような営利のない小規模事業所では、 前者のような形態で運営するのも間違いではない選 択だと考える。 参考文献 [1]小野哲、藤本 亮, 現場で使える SQL, 翔泳社 , 2001 [2]SQL Server 2005 Books Online, Microsoft [3]Microsoft Support Online, http://support.microsoft.com/, Microsoft [4]MSDN Library, http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/, Microsoft [5]埼玉県学校便覧 http://www.pref.saitama.lg.jp/A20/BA00/chousa/binran.ht ml , 埼玉県 [6]Scott W. Ambler, Agile Modelling, http://www.agilemodeling.com/ Development of School work Computer System for the Senior High School at Sakado, University of Tsukuba. Hitoshi Kashima Senior High School at Sakado 1-24-1 Chiyoda, Sakado, Saitama, 350-0214 Japan This system provides a service of school work assistance for Senior High School at Sakado, University of Tsukuba. This system running on server computer system with DBMS of Microsoft SQL Server 2005 and .net ASP framework written in C# language. There are few system groups for assistance in education work, an entrance examination work, a roll book, course registration work, Student information system and some administration tools. One of novel feature, Nintendo DS Wireless LAN roll-book system. This system can record absence information on real time to the database via Wi-Fi access points. Keywords: SQL Server; School work; C#; .net ASP; Sakado 35 ブラックジャックゲームの設計 中山 勝 筑波大学システム情報工学等技術室(装置開発班) 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 オープンにして配る。その次にディーラーは、自分 にオープンで 1 枚、伏せた状態で1枚配る。その後、 プレーヤーがカードを続けて引き(引かなくてもよ い)手札を決定する。次にディーラーは、手札の合 計が 16 以下の場合は、カードを引き続け、17 以上 になったら Stand する。その際、絵札はすべて 10 と 数えエースは 1 か、11 かを選べる。(今回の設計で は、エースは 1 としか数えない。) 概要 筑波大学情報学類・情報科学類の実験にプロセッ サの設計開発というテーマがある。このテーマは、 開発ツールを使って、ハードウェア記述言語 (VHDL)で記述した論理回路を Field Programmable Gate Array(FPGA)に実装して行われる。そのため、 開発ツールの使い方や、VHDL について学ぶ必要が ある。 そこで学生が、論理回路設計に興味を持って取り 組めるように、トランプゲームの、ブラックジャッ クゲームを設計させることを提案した。 用語 プレーヤー ディーラー Hit Stand バースト キーワード:VHDL、FPGA、ブラックジャックゲー ム 1.はじめに 表 1 基本用語 意味 ボードを操作する人(ボタンを押す) カードを配る人(論理回路) カードを引く これ以上カードを引かない 手札の合計が 21 を超えた ゲームの進行中にプレーヤーがバーストした場合、 無条件でディーラーの勝ちとなる。プレーヤーの手 札の合計が 21 以下でディーラーの手札の合計より 数が大きい場合、もしくは、ディーラーがバースト しているときはプレーヤーの勝となり、双方同じ数 の場合引き分けとなる。 ブラックジャックゲームは、トランプゲームの 1 つである。学生は、シミュレーションで各部の動作 を確認しながら、VHDL で回路設計をする。回路が 完成し動作に問題がないと判断したら、スパルタン 3 スタータキット(図 1)上の FPGA に実装し、動 作させる。その過程において、開発ツールを使った、 VHDL による論理回路設計と、シミュレーション方 法を習得することができる。しかし、一からすべて を考え、設計させるには時間的に無理がある。その ため、基本回路の構成を提示し、その内容に沿って 設計させることにした。 3.ゲームの構成 ゲームを実現する上で、論理回路に必要な機能が いくつかある。このゲームは、プレーヤーとディー ラーが 1 対 1 で対戦する。そこで論理回路には、デ ィーラーとしての判断ができる機能を持たせること になる。 3.1 ルーレット機能 ランダムにカードを配るために、ルーレットが必 要となる。プレーヤーが 1 回ボタンを押すと回転し、 もう 1 回押すと停止して配るカードが決まる。図 2 は、プレーヤーの 3 枚目のカードを配るため、ルー レットが回っている様子である。8 に見えるのは、1 ~d(16 進)を連続表示しているからで、ドットを 点灯することで、ルーレットの回転と、配られたカ ードの値 8 を区別している。また、右の 2 つの値は、 すでに配られたカードを示す。 AN3 AN2 AN1 AN 0 図 1. スパルタン 3 スタータキット L D 1 LD 0 2.ブラックジャックゲームとは 図 2. ルーレットが回転する様子 表 1 にゲームの基本用語を示す。このゲームは、 手札の合計がディーラーよりも大きい数で、かつ 「21」を超えない範囲で「21」に近づけるトランプ ゲームである。まず、プレーヤーに 2 枚のカードを 36 プレーヤー Stand(LD6)は、プレーヤーの手札が 決定した際に点灯し、ゲーム終了(LD7)は、プレ ーヤーとディーラーのすべてのカードが決定した際 に点灯する。 3.2 Stand 検出機能 プレーヤーの Stand は、ボタンが押されることで 判断する。ディーラーの Stand は、カードを合計し た値で決まる。論理回路により状況を判断し、正し くゲームを進めていく必要がある。 4.3 押しボタンスイッチ 押しボタンスイッチは、論理回路に意思を伝える ため、またゲームを進めるための入力として用いる。 それぞれ 4 つの押しボタンスイッチに、 Reset(BTN3)、 Hit(BTN2)、Stand(BTN1)、表示切り替え(BTN0) の機能を割り当てた。 3.3 ゲーム進行機能 ゲームは、カードを配りながら進められる。論理 回路は、次にどちらにカードを配るべきか知ってい る必要がある。また、配られたカードを把握し、ゲ ームの終了判定を行なう必要がある。 5.回路構成 3.4 勝敗判定機能 ブラックジャックゲームを論理回路で構成するに は、必要な機能毎にモジュールを分けたほうが得策 である。そこで以降説明する 6 個のモジュールと 1 つのサブモジュールに分けることにした。 ゲームが終了したとき、プレーヤー、ディーラー それぞれのカードの合計を計算し勝敗判定をする。 また、この時 16 進数で保存されている値を 10 進数 で表示する(図 3)。 AN3 AN1 AN2 5.1 serve モジュール AN0 LD1 LD0 図 3. 勝敗表示 図 5. serve モジュール 4.ユーザーインターフェイス 図 5 に serve モジュールの入出力を示す。このモ ジュールは図 6 のようなステートマシンで、配られ るカードを決める機能を持つ。Start 入力が 1 になる とルーレットが回転し、1~d(16 進)の値を連続的 に出力する。Start 入力が 0 になると停止しその時の 値を保持する。 図 4 に示すように、スパルタン 3 スタータキット には出力として 7 セグメント LED が 4 個(AN0~ AN3)、発光ダイオードが 8 個(LD0~LD7)あり、 入力としてスライドスイッチが 8 個(SW0~SW7)、 押しボタンスイッチが 4 個(BTN0~BTN3)ある。 ゲーム終了 AN3 プレーヤーStand ディーラー AN2 AN1 AN0 Reset プレーヤー 1 Start Start d LD7 LD6 BTN3 LD5 LD4 BTN2 LD3 LD2 BTN1 LD1 3 C BTN0 SW6 SW5 SW4 SW3 SW2 SW1 Start Start SW0 表示切替 カードを引く Start Start LD0 SW7 Reset 2 4 b Standする Start 図 4. ボードの入出力 Start 5 A Start Start 9 4.1 カード表示用 7 セグメント LED 6 Start 7 セグメント LED は、カードの数字を表示する。 7 セグメント LED の数は 4 個のため、プレーヤー、 ディーラー各々最高 4 枚のカードで勝負するゲーム ルールにした。また、カードの数字は、A(エース)、 2~10、J(ジャック)、Q(クイーン)、K(キング) だが、ここでは 1~d(16 進)となる。 8 7 Start Start 図 6. カードの値を出力するステートマシンの 状態遷移図 また、カードが決まったことを知らせる信号とし て、1クロックサイクルの信号(Hit)を、図 7 に示 すステートマシンで出力する。 4.2 状態表示用発光ダイオード 発光ダイオードは、現在の状態を表すために用い る。プレーヤー(LD0)とディーラー(LD1)は、 現在どちらのカードが表示されているかを表す。ま た、最後の勝敗表示のときに勝ったほうが点灯する。 37 S0 Hit<=0 無条件 Start 表 2 Phase モジュールのステートの意味 S1 Hit<=0 not Start ステート Phase00 Phase01 Phase02 Phase03 Phase04 Phase05 Phase06 Phase07 Phase08 Phase09 S2 Hit<=1 図 7. Hit 信号出力 5.2 phase モジュール phase モジュールは、ゲームの進行状況を管理する モジュールで、図 8 に示す入出力を持つ。このモジ ュールもステートマシンからなり、図 9 に示す状態 遷移図で表現できる。 意味 初期状態 プレーヤーのカードが 1 枚配られた状態 プレーヤーのカードが 2 枚配られた状態 ディーラーのカードが 1 枚配られた状態 ディーラーのカードが 2 枚配られた状態 プレーヤーのカードが 3 枚配られた状態 プレーヤーのカードが決まった状態 ディーラーのカードが 3 枚配られた状態 ディーラーのカードが決まった状態 ゲーム結果を表示する状態 5.3 hand モジュール 図 10 に示す Hand モジュールはフリップフロップ からなり、プレーヤー4 枚、ディーラー4 枚、計 8 枚のカードを記憶する。 図 8. phase モジュール Reset Result 図 10. hand モジュール 5.4 selector モジュールと decide サブモジュ ール Phase00 Hit Phase09 Phase01 Result Hit Phase08 Phase02 Hit Hit or Stand Phase07 Phase03 Stand Hit Stand Phase06 Hit or Stand Hit Phase04 Hit Phase05 図 9. phase モジュールの状態遷移図 phase モジュールは、ゲームの進行中には Hit 信号 または Stand 信号で遷移し、結果表示と初期状態に 戻るときは Result 信号で遷移する。表 2 に、それぞ れのステートの意味を示す。 図 11. selector モジュール 図 11 に、selector モジュールの入出力を示す。組 み合わせ回路からなるこのモジュールは、Show 信号、 Roulette 信号、Phase 信号の組み合わせで、発光ダイ オード及び 7 セグメント LED の表示データを決める。 また、下位モジュールとして decide サブモジュール を持つ(図 12)。decide サブモジュールも組み合わ せ回路からなり、プレーヤーの手札の合計とディー ラーの手札の合計を計算して勝敗を判定する。また、 38 各々の手札の合計の値を 16 進数から 10 進数に変換 する機能を持つ。 プフロップで設計する。Deal_out 信号と Result 信号 は、同じ Deal_in 入力から作るがその時の Phase 入力 によって作る信号を切り替える。それぞれの信号は、 図 15、図 16 のようなステートマシンで設計する。 Deal_in and S0 その他の遷移条件 Deal_out<=0 S1 Deal_out<=1 not Deal_in and その他の遷移条件 not Deal_in and その他の遷移条件 S3 Deal_out<=1 図 12. decide サブモジュール 5.5 stand_judge モジュール S2 Deal_out<=1 Deal_in and その他の遷移条件 図 15. Deal_out 信号出力 Deal_in and その他の遷移条件 S0 Result<=0 not Deal_in and その他の遷移条件 S1 Result<=1 無条件 S2 Result<=0 図 16. Result 信号出力 5.7 その他のモジュール 図 13. stand_judge モジュール 図 13 に示す stand_judge モジュールは、プレーヤ ーの手順で、Stand 入力があった時、1 クロックサイ クルの信号を出力する。またディーラーの手順で、 手札の合計が 17 以上の時も、同様の信号を出力する。 5.6 switch_ctl モジュール 以上が、学生に設計させるモジュールとなる。し かし実際には、これらのモジュールだけでは動作し ない。他に、スパルタン 3 スタータキット上の 7 セ グメント LED を 4 個同時にそれぞれの値を表示させ るためのダイナミック点灯モジュールと、スイッチ のチャタリングを防止するための Enable 信号を作る モジュールが必要となる。しかし、これらのモジュ ールまで設計させるのは学生に対して余計な負担に なると考え、あらかじめ設計してあるものを提供す ることにした。 6.回路の完成 今まで述べてきたモジュールを、図 17 の回路図の 様に、VHDL で記述すれば回路の完成となる。 7.まとめ 現在、ブラックジャックゲームの設計は、実際に 学生実験に取り入れられている。開発ツールの使い 方、シミュレーションの方法、VHDL による論理回 路の設計などを理解する上で、適当な規模の回路に なっていると考える。 図 14. switch_ctl モジュール Switch_ctl モジュール(図 14)は、押しボタンス イッチのチャタリングを取り除くと共に、それに対 応する制御信号を作るモジュールである。Stand_out 信号と Show_out 信号は、イネーブル付きのフリッ 39 図 17. ブラックジャックゲームの回路図 謝辞 参考文献 今回の提案を採用してくださった、システム情報工 学研究科コンピュータサイエンス専攻の和田耕一教 授に感謝いたします。また、学生に提供するモジュ ールを設計してくださった、システム情報工学等技 術室(装置開発班)の小野雅晃技術専門職員に感謝 いたします。 [1] 長谷川 裕恭 著, 改訂 VHDL によるハードウェア設 計入門, CQ 出版. [2] Introduction to Programmable Logic, XILINX. 40 The design of Blackjack Masaru Nakayama Technical Service Office for Systems and Information Engineering, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8573 Japan One assignment among the experiments in the College of Information Science in the University of Tsukuba is to design and develop a processor. Students complete this assignment by using a development tool to implement logic circuits specified in a hardware description language (VHDL) in an FPGA (Field Programmable Gate Array). To do that, students must learn how to use the development tool, and about VHDL. Thus, it was proposed that students be asked to design a “Black Jack” card game, to make the process of logic circuit design more interesting. Keywords: VHDL; FPGA; Blackjack 41 ヘリウム液化機と運転制御システム 宮内 幹雄 a)、近藤 裕 a)、敦賀 将太 a)、池田 博 b) a) 筑波大学研究基盤総合センター技術室(低温部門)、 b) 筑波大学数理物質科学研究科物性・分子工学専攻(低温部門) 〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1 から構成され装置は大型なもので取り扱いが不便だ った。その後 Windows-PC からの設定が可能となり 取り扱いが容易になり、2008 年 4 月には VME から 省スペース型の EzMPICSⅡ (Easy Multi Performance Integrated Control System) にシステムが更新された。 以下にヘリウム液化装置の運転制御システムについ て説明する。 概要 ヘリウム液化機の制御システムには大陽日酸製デ ジタル計装システムを採用している。液化機の自動 運転からヘリウム液化装置の監視画面の管理を行っ ている。またこのシステムは運転プログラム等の変 更が可能である。本報告では筑波大学におけるヘリ ウム液化装置及び運転制御システムについて紹介す る。 2.ヘリウム液化装置概要 ヘリウム液化装置のフローを図 1 に示す。設備の 概要は次の通りである。 キーワード:ヘリウム液化機 1.はじめに 学内で実験に使用されたヘリウムガスは当センタ ーのガスバックへ回収される。ガスバックの容量は 60 ㎥である。回収されたガスは回収圧縮機で圧縮し 高圧ドライヤーで水分除去した後カードルに充填し ストックする。回収圧縮機の処理量は 80N ㎥/hr、カ ードルの最高充填圧力は 14.7 MPa、カードル貯蔵能 力は 2880 N ㎥である。 液化は液化用圧縮機で圧縮したガスを液化機コー ルドボックスの液化系に送り込み液化する。液化用 圧縮機は吐出圧力 1.6 MPa、処理量 1500 N ㎥/hr の油 冷式スクリュー圧縮機である。液化のためのガスは カードルのガスを中圧乾燥器で 2.5 MPa に降圧し液 化機コールドボックスの内部精製系へと送られる。 内部精製器において不純物を除去した精製ヘリウム ガスは液化の原料ガスとして液化系に供給される。 ヘリウム液化機の液化能力は内部精製使用時で 150 L/hr である。液化機コールドボックス内に製造され た液体ヘリウムは三重管トランスファーチューブで 内容量 4000Lのヘリウム貯槽に移送・貯蔵し供給に 備える。 低温部門ではヘリウム液化機を運転し学内に低温 物性実験等に使用する寒剤として液体ヘリウムの供 給を行っている。原料ガスであるヘリウムガスはリ サイクルシステムで賄っているため低温部門にはヘ リウム液化機の他に回収システムを有している。そ れらを総じてヘリウム液化装置と呼ぶ。制御システ ムでは液化機自動運転及びヘリウム液化装置の監視 画面の管理を担う。 制御システムには大陽日酸株式会社が開発したデ ジタル計装システムを採用している。総合監視シス テム及びヘリウム液化装置制御システムのプロセス コントローラーの機能を持つデジタル計装システム ではヘリウム液化機の運転から全系の監視を一つの システムで行うことが可能である。 1997 年にヘリウム液化装置の更新時に当システ ムは導入された。当初のシステムはワークステーシ ョンによる設定と VME (Versa Module Europe) 装置 液化機 コールドボックス 中圧乾燥器 液化用 圧縮機 (内部精製器付き ヘリウム液化機) トランスファーチューブ CEタンク 回収カードル 高圧ドライヤー ヘリウム貯槽 ヘリウム 回収用圧縮機 ガスバック 図 1. ヘリウム液化装置フロー 42 実験室 からの回収 各入出力ボードは EzMPICSⅡに接続し、監視画面 表示管理および液化機の運転制御プログラムの処理 を行わせている。 EzMPICSⅡの端末にはデジタル計装のプログラ ム設定用PC、液化機運転用PC、運転モニター用 PC、監視モニター用PCとして 4 台のパソコンを LAN で接続している。 なお、このヘリウム液化装置のガスバックを除く 設備全体が高圧ガス製造設備である。高圧ガス保安 法のもと茨城県へ許可申請を行い第一種製造事業所 として許可を受けている。さらに毎年茨城県による 立ち入り検査(保安検査)に合格することで液体ヘ リウムの製造業務を継続することができる。 3.運転制御システムの基本構成 4.ヘリウム液化のしくみ ヘリウム液化装置の制御システムの構成内容につ いて説明する。図 2 はシステムの基本構成図である。 大きく分けるとヘリウム液化装置、液化機制御盤、 端末のパソコンからなる。液化機制御盤には入出力 ボードと EzMPICSⅡ (CPU) が収納されている。入 出力ボードとはフィールドであるヘリウム液化装置 間を結ぶアナログ入力(AI)、アナログ出力(AO)、 デジタル入力(DI)、デジタル出力(DO)の4種の 入出力機器のことである。ボードの入出力信号の仕 様は以下の通りである。 液化機の運転プログラムの説明の前にヘリウム液 化のしくみ、300 K のヘリウムガスが 4.2 K の液体ヘ リウムになるまでの過程を簡単に説明する。図 3 は 液化機を簡略化したものである。 圧縮機から吐出した 300 K、1.6 MPa のヘリウムは まず①77 K の液体窒素で冷却される。約 80 K まで 冷却されたヘリウムは熱交換器を通り②タービンに 送られる。毎秒 4400 回転するタービンでは断熱効果 を効率的に行いタービン出口温度において約 12K まで冷却される。最後に③J-T 弁のジュールトムソ ン効果により気液状態で液化される。気体部分は熱 交換器を戻り再液化に回される。液化は各熱交換器 を段階的な温度平衡を保ち冷却効果を上げ連続的 に液化を行う。 また本来の液化機には内部精製が内蔵され回収 ガスを精製し液化機へのヘリウムガスとして供給 される。内部精製では低温凝縮精製に必要な寒冷を 液化ラインから引き込み、精製-加温再生-再冷却 の過程を繰り返し運転する。 以上の内容は液化機が定常液化運転における運 転の過程である。通常の液化運転では各熱交換器の 温度平衡に到達させるための予冷運転が必要とな る。室温からの運転で約 4 時間、連続運転で 1 時間 の予冷運転ののち定常状態になる。これら予冷運転 から定常運転への運転制御をデジタル計装システ ムで行う。次に制御プログラムについて述べる。 AI:入力レンジ4~20 mA/入力点数 28 点 接続機器:圧力・温度・回転数・液面計 AO:出力レンジ4~20mA/出力点数 16 点 接続機器:バルブ操作 DI:入力接点 DC24V/入力点数 24 点 接続機器:接点信号・機器運転状態 DO:出力接点オープンコレクタ/出力点数 17 点 接続機器:電磁弁・ランプ・緊急停止 液化機運転用PC 運転モニター用PC L A N ケー ブ ル 監視モニター用PC スイッチングハブ EzMPICS設定用PC EzMPICSⅡ AI ヘリウム 液化装置 AO DI DO 液化機制御盤 図 2. 制御システム構成図と制御盤 図 3. ヘリウム液化機 43 図 5 は圧縮機起動のシーケンステーブルである。 図中にシーケンステーブルの各部名称を示す。テー ブル上側 A が条件部、下側 B が操作部である。 条件 と操作を個々に並べ条件の組み合わせでどの操作を 行うかを記述している。D の条件部タグ名称欄に操 作の条件となるタグを入力し、F の条件部ルール欄 に 条 件を 設定 す る。 条件 と して 成立 す るも のに は ”y”、否であるものには ”n” を入力、無関係のも のは空白とする。操作部は E の操作部タグ名称欄に 操作するタグを入力し、条件成立時に行う操作を G の操作部ルール欄に設定する。操作部タグを ON す る場合には ”y” を OFF する場合には ”n” を入力す る。シーケンステーブルはルール番号順に順次実行 する。実行周期は 1 秒である。 条件に使用するタグ名は、外部デジタル入出力の 状態、内部デジタル信号の状態、タイマの状態、ア ナログ値の比較を条件式として登録したのちタグ名 に識別子(=・<・>)を設定し使用する。操作に 使用するタグ名は外部デジタル入出力信号状態の操 作、内部デジタル信号状態の操作、タイマ操作、アナ ログ値の操作を操作式として登録し使用する。現在、 条件式 132 項目、操作式 177 項目を登録し運転に使 用している。 制御プログラムはシーケンス制御とともにフィー ドバック制御プログラムを使用する。フィードバッ ク制御は、現在の状態を検出してから出力量を決定 するという方法である。バルブの出力部に PID ユニ ット、入力レベル判定ユニットやランプ設定ユニッ ト等のフィードバックプログラムを組み込み出力信 号の制御を行う。このように、シーケンス制御機能と フィードバック制御機能とを連動させることにより、 運転制御プログラムを動作させている。 5.運転制御プログラム 運転制御プログラムはシーケンス制御で行われデ ジタル計装ソフトのシーケンステーブルに記入し実 行される。シーケンステーブルを作成するには初期 条件として機器定義を行う。機器定義にはアナログ 入出力、デジタル入出力および内部アナログ・デジ タル信号をユーザタグとして定義する。ここで定義 しない限りシーケンスプログラム等に使用すること はできない。入出力設定は入出力ボードの各スロッ ト番号にユーザタグ名を割り振り設定する。内部ア ナログ信号(IA)の設定は変数として取り扱われ設 定値の入力等に使用する。内部デジタル信号(ID) の設定は状態変化の on-off 信号として定義する。 表 1 はアナログ入力(AI)の設定の一部である。機 器名称については後述の監視画面系統図を参照のこ と。 表 1. アナログ入力 (AI) 設定 No. ユーザタグ名 機器名称 0 SICA111 1 SICA121 TI回転数 T2回転数 2 TIC105 80K AD入口温度 3 TI110 TI入口温度 4 TIA111 TIブレーキ温度 5 TIA121 T2ブレーキ温度 6 TIC130 T2出口温度 7 TI170 LHe貯槽戻り温度 8 TI172 気液分離戻り温度 9 T14051 IMPUカードル温度 10 TIS402 精製He出口温度 シーケンステーブルは運転内容別に細分化してい る。図 4 は全自動運転(シーケンス名称:F1-1) と全 自動停止 (F1-2) の構成図である。全自動運転の構 成はスタート後、圧縮機起動 (F2-1) が動作する。 圧縮機運転が静定すると次に液化機運転 (F3-1) 及 び内部精製器運転 (F4-1) が平行動作始め、最後に 各運転状態が静定し液化機は定常運転へと入る。全 自動停止 (F1-2) の構成はスタート後液化機停止 (F3-2) と内部精製器停止 (F4-2) のシーケンスが同 時 に 動作 始め る 。各 運転 が 停止 後、 圧 縮機 停止 (F2-2) のシーケンスにより圧縮機が停止して終了 する。他にインターロックとして液化機緊急停止条 件と圧縮機緊急停止条件のシーケンスが動作する。 D 条件部タグ名称欄 テーブル名称: コメント: 演算周期: A 条件部 条件 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 B 操作部 操作 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 F2-1 圧縮機起動 1sec タグ名 ルールNo. → コメント F2_1START CMPRNG 1_2MPa_FLG T2_1_1,ST T2_1_1,UP F2_1JC0000,LT F2_1JC0001,GE F2_1JC0002,GT F2_1JC0003,LT T2_1_2,ST T2_1_2,UP T2_1_3,ST T2_1_3,UP F2_1JC0004,GT F2_1JC0005,GE F2_1JC0006,GE T2_1_4,ST T2_1_4,UP 実行許可フラグ He圧縮機運転 1.2MPa静定フ タイマ1 停止状態 タイマ1 アップ状 LPIC2052<0.2MPa PSV2001=30% LPIC2051.PV>1.19 LPIC2051.PV<1.21 タイマ2 停止状態 タイマ2 アップ状 タイマ3 停止状態 タイマ3 アップ状 LGIC2001.PV>30% GIC2001>=70% PSV2001>=68% タイマ4 停止状態 タイマ4 アップ状 CMPON.P F2_1AC0000 LPIC2052_CS.L F2_1AC0001 F2_1AC0002 F2_1AC0003 MV2501A_UNT_AT.L MV2501A_UNT.MV,ON MV2501A.H MV2501B_UNT_AT.L MV2501B_UNT.MV,ON MV2501B.H LPIC2051_DV.L F2_1AC0011 F2_1AC0004 T2_1_1,RN LPIC2051_CS.L F2_1AC0005 F2_1AC0006 F2_1AC0007 T2_1_2,RN 1_2MPa_FLG.H T2_1_3,RN LGIC2001_CS.L F2_1AC0008 F2_1AC0009 CMPOK.H T2_1_4,RN CMPONAL.H F2_1AC0010 He圧縮機起動指令 LPIC2502.MV=100% 吸入圧コントロー LPIC2052.SV=LPIC20 RP_LPIC2052.SP=200 IA0004=0.165 C ルール番号 1 2 3 4 n y y y n y y y y n n y y y y y y y y y n n n y y y y n y y y y y y n n y y y y y y y y y y y y y y y y y y y y y y F 条件部ルール欄 y y y y y y y y Y Y y Y Y y y Y y n G 操作部ルール欄 y y y y y n N N y y n y y y y y y y n n y Y 図 5. 液化機のシーケンステーブル 44 y Y n N Y y E 操作部タグ名称欄 図 4. シーケンス構成図 y y y y LOAD弁用電磁弁 UNLOAD弁用電 LPIC2051.S,DMV RP2_LPIC2051.SP=1 IA0003=50% タイマ1 RUN LPIC2051 カスケー LPIC2051.SV=LPIC20 RP_LPIC2051.SP=100 IA0002=1.2 タイマ2 RUN 1.2MPa静定フ タイマ3 RUN LGIC2001 カスケー RP_LGIC2001.SP=400 IA0000=30 He圧縮機定格フラ タイマ4 RUN 起動渋滞 IA0000=70 y y 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 n N y 6.運転操作・監視端末 運転操作・監視用PCのアプリケーションソフト には Labview を使用している。画面構成は運転画面、 個別計器画面、アラームイベント画面、トレンド画 面、系統図画面からなる。運転画面からはシーケン スを起動し全自動運転・停止から個別の運転操作を 行う。個別計器画面では圧縮機、液化機1、液化機 2、内部精製の 4 種類の画面に分けられ、必要なと きマニュアルでバルブの操作や電磁弁の ON・OFF を行うことが可能である。アラームイベント画面は 異常発生時の発生時間、異常発生ユーザタグ、異常 内容について表示する。トレンド画面は圧縮機系、 液化系、タービン系、内部精製系、回収ガス系の表 示画面を持ち、温度、バルブ開度、液面、回転数等 の時間変化をグラフ表示する。図 6 に液化系の運転 トレンドを示す。図に示す通り A の予冷運転の時は 大きく状態が変化し B の定常運転では安定状態のグ ラフになっていることがわかる。図 7 は内部精製系 のトレンドである。C の予冷運転後、D:精製運転 -E:加温再生-F:再冷却の状態が把握できる。我々 はこれらトレンド画面を常に監視し予冷運転から定 常運転へさらには定常運転において異常がないか見 極めトラブルの早期発見へ繋げている。 最後に監視画面系統図を図 8 に示す。この画面に よりヘリウム液化装置全体の情報を入手することが できる。各部の説明と動きは次の通りである。 ①ガスバックは回収量に合わせ表示が上下する。 ②回収圧縮機運転、③高圧ドライヤー再生、④中圧 乾燥器再生、⑥液化用圧縮機運転、⑩タービン回転 は状態を色識別する。彩色は運転中が緑、停止中が 赤である。⑦のバルブは開閉状態及び開度、⑧の電 磁弁は開閉状態を開のとき緑、閉止のとき白で表示 する。⑤は回収カードルの圧力値で⑪はタービンの 回転数を表示する。下部の⑫は内部精製の運転状態 液化運転 A: 予冷運転 B:定常運転 図 6. 液化系予冷と定常状態のトレンド 内部精製運転 F:再冷却 C:予冷運転 E:加温再生 D:精製運転 図 7. 内部精製系トレンド を点灯させる。またアナログ表示は表示点数が多い ので、温度に対し黄、圧力に対し青、バルブの開度 に対し白として色分別することで機器の状態把握を 容易にしている。 ⑦ ⑥ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 内部精製 液化系 ⑤ ④ ③ ⑫ ② ① 図 8. 監視画面系統図 45 7.まとめ 8.おわりに ヘリウム液化装置の制御システムである大陽日酸 開発のデジタル計装システムはオープンシステムで ある。ゆえに液化機の運転プログラムの変更が可能 なことが特筆できる。これまでにシーケンス変更や フィードバックプログラムの改良を行い、また設定 温度等の変更など様々な改善を行いヘリウム液化機 の安定化を計ってきた。これは低温部門の役割であ る学内への液体ヘリウムの安定供給へと結び付いて きた。これからも運転制御システムを最大限に活用 し安全且つ定常的な液体ヘリウムの供給に努めたい。 このシステムの監視画面は設備全体の状況の入手 として高圧ガス設備の保安管理上便利であるが、こ の情報を過信することは禁物である。あくまでも監 視画面は参考値であり基本的な状況は現場にあるこ とを忘れてはいけない。バルブ操作においても同様 に現場との連携のもと操作することが高圧ガス設備 の安全確保の原則である。 Control system for helium liquefier Mikio Miyauchia) , Yutaka Kondoa) , Shota Tsurugaa), Hiroshi Ikedab) a) Cryogenics division, Technical Service Office of Research Facility Center for Science and Technology, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8577 Japan b) Materials Science (Cryogenics division), University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8577 Japan The cryogenics division, Research Facility Center for Science and Technology, supplies the liquid helium as liquid refrigerant to the laboratories in the university we operate helium liquefier . The control system for the helium liquefier takes liquefaction machine automatic driving and the management of the monitor of the helium liquefier. In this report we introduce the control system for helium liquefier. Keywords: helium liquefier 46 伊豆半島南部の 2 地点における海底水温長期モニタリングの技法 土屋 泰孝・佐藤 壽彦・品川 秀夫 筑波大学生命環境科学等技術室(下田臨海実験センター) 〒415-0025 静岡県下田市 5-10-1 概要 3.調査方法 南伊豆の東岸の大浦湾と西岸の中木において、 2001 年より水深 10 m 地点の海水温の長期モニタリ ングを行ってきた。計測間隔を 1 時間に設定した自 記記録式の水温計を設置し、1-2 ヶ月に 1 回潜水に よって測器を交換し、データ読み出しを行っている。 これまでの調査記録から、両地点における水温変化 の特徴と地点間の相違が明らかになってきた。 3.1 水温計について 計測に用いている水温計は離合社の RMT-500 型 自記水温計で、1 時間毎のデータを記録するように 設定した。 3.2 水温計設置方法 キーワード:伊豆半島、環境調査、海底水温、モニ タリング 1.はじめに 地球温暖化の影響が拡大する現在、環境の長期モ ニタリングを行いそのデータを公開することの意義 は大である。臨海研究施設は海洋環境の長期変化の 計測基地として好適であるが、海底の同地点に長期 間にわたって測器を設置して計測を行う場合には、 汚損による影響や波浪による影響などを受けやすく、 大きな技術的困難を伴う。下田臨海実験センターで は、毎月または隔月でダイバーが水温計の交換更新 を行うことによって 2001 年より南伊豆の 2 地点、下 田市大浦湾および南伊豆町中木湾水深 10 m の海底 において継続的計測を続けている。このモニタリン グ技法について報告する。 カジメ育成基盤周辺の海底は砂底に大型礫の埋在 する比較的不安定な環境である。このため、水温計 が埋没や海底直上での局地的水温変化の影響を受け ぬように、水温計はカジメ育成基盤の固定パイプに 接続した直立パイプ上の海底から 1.2 m の高さにセ ンサーが下部になるように設置した。鉄パイプには 電食防止のための亜鉛板を取りつけた(図 2)。 2。調査場所 水温計の設置場所は、下田市大浦湾と南伊豆町中 木湾のそれぞれ 1 地点である(図1)。水深は 10 m で、この水深に設置したのは、波浪による影響の回 避のためと隣接するカジメ育成基盤周辺の環境記録 を主とするためである。底質は砂底からカジメ林の 形成されている岩礁底への遷移帯で、主に大型礫が 埋没している砂底である。 図 2. 海底水温計設置場所の側面図. 移植カジメ群落と亜鉛板と水温計を示す. 3.3 水温計交換方法 温度計は大浦湾では 1 ヶ月に 1 回、 中木湾では 1-2 ヶ月に 1 回スキューバ潜水によって交換し、データ の読み出しと計測器の清掃および点検を行った。 図 3. 海底水温計の設置と交換.左:海底水温計設 置場所の側面図;右:海底水温計交換の状況. 4.調査結果 図 1. 調査場所 図 4 に最近 3 年間の計測データの例を示す。月別 の平均気温で表しているが、中木湾と大浦湾では前 47 者において最低水温が高く、水温上昇が先行するこ とを確認できる。一方で水温降下の時期には両地点 において大きな違いのないことも見て取れる。年に よる比較からは、2006 年の春期に一時的かつ顕著な 水温上昇が生じたことが分かる。また、2008 年の春 期にも小規模の水温上昇がみられている。 更新する方法は、安価で、センサー部分のメンテナ ンスも行い易い。 今回は煩雑化を避けるために最近データのみ示し たが、2001 年から取り続けているデータは 10 年経 過も目前である。環境の変化には、周年変化のよう な短期的な周期的変化と長い周期で繰り返される周 期的変化がある。また、温暖化のような長期にわた る漸次的変化もある。何が周期的変化で、何が突発 的または異常な変化なのか、また、どのような緩や かな変化が生じているかについて知るためには、長 期にわたるモニタリングが必須である。今後も計測 を継続し、長期変化の傾向や急潮など短期間の突発 的変化の解析なども行ってゆく予定である。 6.まとめ 下田臨海実験センターのような臨海施設は、野外 における長期調査を実施するサイトとして理想的な 環境にあるといえる。下田臨海実験センターには潜 水調査のための施設や調査用船舶も完備されている ため、潜水作業による海洋環境モニタリングのサポ ート作業も行い易い。長期の環境観測は環境の変化 をとらえるために大切であるのみでなく、臨海実験 センターで研究を行う研究者へ提供しうる情報とし ても大変に有用なものである。また、これらの情報 の公開は近隣の海域を利用する一般の人々に対して も役に立つものである。今後、引き続き海底水温の モニタリングを行うとともに、予算獲得の機会など があれば、計測地点数を増やしたり、計測項目を増 やしたりすることも検討してゆきたいと考えている。 図 4. 大浦湾 (OURA、黒線) と中木 (NAKAGI、灰 色線) における 2006-2008 年の月平均海底水温の経 時変化. 5.考察 海底水温の長期モニタリングには様々な手法があ る。センサーを海底に固定し、センサーに接続した ケーブルを研究室まで引いて研究室において継続的 にモニタリングする方法もあるが、施設の維持に多 額の経費がかかり、センサー部分の定期メンテナン スも必要となる。本報告におけるダイバーが測器を A long-term monitoring method of the bottom water temperature at two localities in the southern region of Izu Peninsula Yasutaka Tsuchiya, Toshihiko Sato, Hideo Shinagawa Shimoda Marine Research Center, University of Tsukuba, 5-10-1 Shimoda, Shizuoka, 415-0025 Japan A monitoring survey of bottom temperature at 10 m depth has been conducted at Oura Bay, Shimoda and at Nakagi Bay, Minami-Izu since 2001. A water-proof thermometer automatically recording water temperature with one-hour interval was fixed on the steel pipe fixed to the bottom. The thermometer in each site was exchanged with 1-2 month interval by SCUBA divers. The data so far recorded shows the characteristics of temperature changes at each site, and also shows the topological difference between two sites Keywords: Izu Peninsula; environmental survey; bottom water temperature ; monitoring 48 生物材料加工学実習における加工技術 田所 千明 筑波大学生命環境科学等技術室(農林工学系) 〒305-8572 茨城県つくば市天王台 1-1-1 概要 影響を受ける。茂った枝葉に掛かる重力や風に対抗 する為に木材内部の鉛直・水平方向に応力を発生さ せる(成長応力)。そのため、丸太を鉛直方向に切 断した場合は、樹皮側に反り、円周方向に縮む。ま た、枝の発生、育つ地形や気候等により細胞の組織 や木材成分が変動する。また、季節による細胞の成 長量の違いから年輪等が出来、密度の差が生まれる。 これらが複雑に関係した細胞組織により形作られ る木材は、他の材料には見られない特殊な加工が必 要である。また、円筒形である木材を加工して得ら れる直方体(柱や板)の各面にも、様々な細胞の配 列があり、色々な性質が現れる。 木材は水を吸収して成長する。材料となった後も 水および水蒸気による影響を常に受けている。繊維 方向(伸張方向)、放射方向(放射組織の方向)と 接線方向(材円周に対して)は水分に対する反応が 異なる。膨潤・収縮の違いはそれぞれ 1:5:10 であ る。また、乾燥により木材は木表側に反る。常温で 平衡状態になるまでよく乾燥させることが必要であ る。 生物材料加工学実習は生物資源学類・環境工学コ ースの専門科目Ⅱにある。中学校技術家庭科教員を 目指す学生や生物材料分野に関心のある学生が受講 しており、技術的な指導を主に技術職員が担当して いる。 実習は木材を材料とし、手工具を中心に加工を行 っている。木材の様々な性質を、木材を加工するこ とで理解し工具の仕組みや扱い方を学ぶ。今年度(平 成 20 年度)は調理台(足付きまな板)と卓上トレイ を製作した。 キーワード:木材、加工、技術 1.はじめに 生物材料である木材は、伸長成長と肥大成長を続 けながら細胞の数を増やしていく。それらは育つ環 境により様々な影響を受け蓄積されていくために、 多種多様な個性が潜在している。木目や年輪に適応 した加工が行われているが、材内部にも様々な性質 があるため、材料の見極めと加工方法・工具の検討 および選択が必要である。この木材と加工技術およ び工具との関係を、生物材料加工学実習を素材に述 べる。 3.手工具 3.1 種類 木材を加工する工具は大まかに、刃物工具(切断・ 削り・穴あけ・けがき)、その他(叩き用、定規類・ 圧締具、等)である。 2.木材の性質 木材は異方性の材料である。長さ 1~5 mm 前後の 細胞が鉛直方向に重なりながら上方に長く成長する (伸長成長)。直径約 0.01 mm 程の細胞が横に増え て太くなる(肥大成長)。また、中心部から外に伸 びて養分等を運ぶ放射組織もある。主にこの 3 方向 の細胞の違いにより木材独自の性質(異方性)が生 まれる。木材は大きくなるに従い、外部から様々な 3.2 のこぎり 切断用工具であるのこぎりは、繊維方向に切断す る縦びきのこぎりと繊維を横に切断する横びきのこ ぎりがある。縦びきのこぎりは、つながりあった細 胞をかき出すように切断し、切り屑は繊維が絡まり あった状態になる。歯先は平行で、歯の大きさが手 元側で小さく、先に行くほど大きい。従って手元側 でひき始めると引き始めの抵抗を小さくすることが 出来る(図 2)。硬い晩材やあて材等の影響を受け やすく、のこびき途中でのこ身が曲げられ、のこび き抵抗が増したり、目的の形状に加工することが難 Ⅰ Ⅱ 図 1. 製作例 Ⅰ:足つきまな板、Ⅱ:卓上トレイ 図 2. 縦びきのこぎりの切削量の違い 49 しい。また、成長応力により切断した材料が途中で 締まり、のこぎりが挟まってしまうことがある。 横びきのこぎりの歯は、管状の細胞を横に切断す るため、歯先は鋭くナイフ状をしており、切り屑は 粉状になる。また、縦びきのこぎりと違い細胞組織 の影響を受けることは少ない。歯の大きさは元も先 も同じである。 Ⅰ 定規板 刃 さお Ⅲ Ⅱ 刃 定規板 3.3 かんな かんなは木材表面を削り、目的の形に加工する工 具である。目的とする形にあったかんな台とその刃 がある。 平かんなは平面を作るためのかんなであり、その 加工精度とそれを生み出す機構は精密である。非常 に薄いかんなくず(ミクロン単位)を連続して出す ことが出来るかんなは、かんな台下端のゆがみが、 かんな屑の厚さよりも非常に少ない量でなければな らない。この下端面と刃先の距離は、パソコンに用 いられているハードディスクドライブ装置の、高速 回転する円盤と読取ヘッドとの距離と同程度である と言われている。 このように、精密さが必要な平かんなによる加工 は、削られる板およびそれを支える支持台の平面の 正確さも必要である。中央がかんな刃の出より凹ん だ板は削れない。表裏面とも平面な板でも支持台が 凹んでいては削れない。中央が凸状の板および支持 台が削りやすい。 低密度材の中でもヘタリが出やすいものがあり、そ の場合はより大きく増分を取り、馴染ませながら接 合させる。木殺しされた細胞組織は細胞壁が曲がり 互いに密着するが、吸湿等で徐々に回復する。 3.4 定規類(けびき(図 3)) 3.6 胴付き(図 5) 木材加工における加工位置は、定規に沿って刃物 や鉛筆で記される。その刃物にはけびきやしらがき がある。けびきは定規板と刃を接合したさおにより 出来ている。さおは定規板に開けられた穴に取付け られていて、定規板と刃の間隔を自由に変える事が 出来、一定の間隔の線(溝)を引くことが出来る。 種類には、すじけびき、かまけびき、割りけびき等 がある。すじけびきの刃は片刃で、切れ刃面が定規 板と相対し、裏刃が垂直な平面になっている。切れ 刃面が傾斜しているために、板に深くけびき線を引 こうとすると板から押返されるため、定規板が板側 に引き寄せられ、刃先と木端面との間隔を一定に保 つことが出来る。しかし、晩材や逆目等複雑で硬さ の変化する場所にけびき線を引こうとすると、硬い 部分が切れずに柔らかい側に刃先が動いてしまう。 その結果、定規板と材料の間隔が空いてしまい正確 なけびき線が引けない。そのため、正確にけびき線 を引くには、刃先で硬い部分をよく切りながら、繰 返し筋を付け、徐々に食い込ませなければならない。 刃が一定の深さまで材料に入ると裏刃面側に微小 な平面が出来る。これを基準とし加工することによ り正確な加工が可能となる。 胴付きは木口断面と他面との接合部をいう。この 胴付きが隙間無くかつ、ほぞがきつく入った状態が 良い接合である。木口面の仕上がりが重要で、丸の こ盤で加工しただけではきれいには仕上がらず、わ ずかに隙間とバリが見える。良く切れる刃物による 加工が必要である。 さお 材料 Ⅳ 力 材料 材料 図 3. すじけびき Ⅰ:すじけびき、 Ⅱ:けびきの様子 Ⅲ: けびき跡、 Ⅳ:加工例 4.加工 4.1 足つきまな板(図 6) 調理台は二本の足を持つまな板で、主に鮨屋で盛 3.5 木殺し(図 4) 木材加工における接合の基本は、木材同士が互い に圧縮された状態で接合することである。そのため にほぞ(オス)をほぞ穴(メス)よりも大きい幅に 加工し、増分を玄能で叩き(木殺し)ほぞ穴に差し 入れる。この増分は木材の密度により変わる。高い 密度の材は少なく、低い場合は大きくなる。また、 図 4.木殺しの様子(木口面:ベイヒバ) 50 表 1. 足付きまな板の加工工程 工 程 丸のこ盤 かんながけ けびき加工 〃 のこ引き、のみ加工 溝加工 オス 墨付け 〃 足加工 接合 整形 かんな 図 5.胴付きの違い(ベイヒバ) り台として使われている。大きさは 270×160×38 mm で樹種はベイヒバである。足を吸い付き桟と言 われる方法で接合したまな板である。アリ型断面を 持つテーパー状に加工したオス(足)とメス(台) を叩いて嵌め合わせる。はじめに、メスの溝を作り、 それに合わせてオスを加工する。メスのテーパー状 に加工した溝の大きい端部からオスの幅の狭い端部 作 業 平面加工 メス 墨付け けびき加工 かんながけ かんながけ、面取り 工 具 平かんな すじけびき あぜひきのこ ぎり、のみ けびき きわかんな 玄能 平かんな を差し入れる。きつく接合するために、オスを手で 押し込んだ場合、残り 1/4 位まで入るようにオスを 削る。その後、玄能で叩いて徐々に入れ、互いの様 子を確認しながらオス・メスをなじませる。そして、 不具合箇所を修正し、反対側に足の端部が出るまで 入れる。なお、足と台は木材の繊維方向が異なるた め、水分による膨潤収縮の割合が異なる。そのため、 乾燥や吸水で足が出張ったり引っ込んだりする(図 7)。作業の工程を表 1 に示す。 240 4.1.1 平面検査(図 8) 32 155 板を平面に加工しても、乾燥や応力の緩和により 時間の経過とともに反ってしまうことがある。平面 を調べるために、かどが鋭角で幅の狭い(約 10 mm) 板を用いて検査をする。まず、検査をする板の面の 上に検査用板を乗せ、検査板の片側を軽く持ち左右 に往復させる。高い場所がある場合はその場所を中 心に検査板が回転する。中央が低い(両端が高い) 場合は手と反対側の端部近くを中心に回転する。同 様に検査板の反対側の端部を持って同じ場所を検査 する。検査する面が平面の場合は、回転の中心とな る所が無いために検査板は回らない。検査板のかど と板との接する面積が増え摩擦抵抗が増えるため、 検査板が引きずられた状態になる。まな板のメスの 溝の平面を調べる場合も同様にする。 19 25 ・まな板寸法 (mm) 4.1.2 墨付け メスの墨付けは、まな板裏面上に足となる板を左 右均等で並行に 2 本のせ、まな板側に鉛筆で印を付 ける。次に、木端(こば)面にアリ型の墨付けをす る。まな板の鉛筆線を基に直角定規で木端面に垂線 を鉛筆で引く。この鉛筆線は、実際の足の幅よりも 小 大 天板 : 裏面 側面 小 Ⅰ 大 大 小 2 1 脚 Ⅱ 75° 7 脚 1 1 Ⅲ ・吸い付き桟:アリ溝の詳細 図 7. 足付きまな板の膨潤と収縮 Ⅰ:気乾、 Ⅱ:水着け、 Ⅲ:乾燥 図 6. 足付きまな板の寸法と詳細 51 して同じ作業を繰返すと、溝の中央部が山形になる。 この山を同様に削っていく。おおよそ平面になった ら突きのみを用いて、より平面に削る。初めは表刃 を下にした状態で削り、仕上げに裏刃を使って薄く 削る。のみは片刃なので、裏刃を平面に沿わせて押 すと板に食い込みやすい。 4.1.5 足のオス加工 はじめに、メスの溝の深さと同じ幅の筋けびきで 長さ方向に深く筋を入れる。次に、きわかんなで長 さ方向にメス溝の傾斜と同じ角度になるように削る。 時々角度を確かめながら削り、メス溝端部の大きい 部分よりも少し大きめになるまで、足の両側を同量 削る。次に、一方だけを斜め(テーパー状)に削る。 はじめに先端部分だけを少しずつ削り、徐々に終端 近くまで平面になるように削る。そして、オスの幅 の狭い端部が、メス溝の幅の狭い端部よりも少し大 きくなるように加工する。 きわかんなで斜めに削っていくと、隅に削り残り が出来る。これを削り取るには、のみの裏刃面をオ スの斜面に置きのみの角を使い、滑らせるように削 り取る。このとき、のみの表と裏刃面を親指と人差 し指で挟み、中指を木端面に密着させて移動しなが ら削る。 A B 図 8. 平面の検査 A:中央が凹、B:中央が凸 4.1.6 破壊の見極め 鉛筆線の幅分だけ大きいので、裏面の鉛筆線の幅の 内側を鉛筆の外側になるように木端に引く。次に、 木端面に筋けびきを用いて溝の深さ分(オスの高さ と同じ)の線を薄く引く。この線と鉛筆線との交点 より 1 mm 離れた内側で、けびき線上に鉛筆で印を 付ける(あぜひきのこぎり作業での曲がり過ぎを見 越した長さ)。この 2 点からけびき線を基に 75°と 105°の角度を持つ鉛筆線を上側に引き、下方に広い 台形を書く。その 2 本の木端面のかどにある鉛筆線 より、裏面に木端面を基準に垂直を引く。その垂線 と反対側の木端面とのかどに出来る交点の、どちら か一方の点から 1 mm 内側に点を記す。その点とは じめの木端面かどの点を鉛筆線で結ぶ。一方は板と 平行でもう一方は先に行くほど間隔が狭くなる線 (テーパー)が引ける。その線より反対側の木端面 にもはじめの木端面と同じ台形の形の線をけびき線 まで引く。最後に台形の底辺の長さ分だけけびきを 用いて深く引く。 オスはメスの溝に合わせて加工するため、墨付け はしない(4.1.5 参照)。 オスとメスの嵌め合いがきつ過ぎると、玄能で叩 き入れている途中で、オスまたはメスが破壊する。 これを防ぐために以下のことに注意する。嵌め合い が極限まできつくなると、玄能を持つ手に叩いた衝 撃が大きく伝わる。また、わずかな抵抗で入って行 く時に比べ、叩いた時の音が徐々に高くなっていく。 4.2 卓上トレイ(図 9) 卓上トレイは、側板に穴を開けて取っ手としたも ので、大きさは 400×290×48 mm である。材料は、 ラワン材とラワン合板を用いる。側板同士を 3 枚組 接ぎ法により接合し、酢ビ接着剤で接着した後、釘 打ちダボ埋めをしている。底板は、側板に加工した 溝にはめ込み固定する。組み立て後、植物染料で着 色しアクリルラッカー塗装仕上げをする。染料とし て柿渋、ヤシャブシ、水戸黒(ヤシャブシと鉄錆液) を用いる。ヤシャブシは、本学農林技術センター苗 畑演習林で採取したハンノキの実より抽出したもの である。作業の工程を表 2 に示す。 4.1.3 あぜひきのこぎり 4.2.1 けびきによる墨付けの要点 あぜひきのこぎりは、のこ身が卵型をしていて歯 先が湾曲している。自由なのこぎりびきが出来る反 面、一定の平面を作ることが難しい。正確な平面加 工をするためには、ストロークを長くし、出来るだ け長い時間のこびきをする。 ほぞの墨付けは、オスとメスでは寸法の取り方が 異なる。オスは木端面と同じ向きとなるほぞの位置 にけびき線を引くため、長さ方向に向って右側の位 置にけびき線が入る。メスはオスと同様だが、長さ 方向に向って左側部分にけびき線が入る。 4.1.4 メスの溝加工 4.2.2 オス幅の決め方 あぜひきのこぎりを用いて木端面の 75°の墨付 け線に沿ってのこびきし、けびき線まで切る。他の 墨付けをした溝も、のこびきする。次に、のみを用 いて溝となる部分を削る。溝の端より溝幅中央にの みを置き、手前に向かってのこびき線まで削る。そ して、他端まで同様に削る。次に、板を反対向きに 通常、3 枚組み継ぎ加工をする場合は、初めにメ スを作り、それに合わせてオスを作る。これは、加 工ミスに対処するためである。メス幅よりも大きめ にオスを作り、木殺しをして接合する(図 10)。 52 4.2.3 目違い払い 表 2.トレイの加工工程 組立て後、加工による誤差(目違い)が出ること がある。これを修正するためかんなを用いて出過ぎ ている所を削る。このとき、隣接する板を削ること になるので、かんなを斜めにして削り、縁を割らな いようにする。次に、板全体が直線になるように削 る。 4.2.4 小刀の使い方 小刀は、刃先を出来るだけ使うようにする。刃全 体を使うと刃全体を研磨することになり、小刀の寿 命が短くなる。刃先を使い、そのつど研磨し使用す る。これはカッターナイフにも当てはまる。 4.2.5 ダボ加工 はじめに、ダボ穴よりも 2 mm ほど大きい正方形 断面の角棒を作る。利き手にかんなを持ち他の手に 角棒を持つ。角棒の一端を体に近づけ、斜めにした 作 業 工 程 メス 墨付け けびき加工 〃 のこびき、のみ加工 加工 オス 墨付け けびき加工 〃 のこびき、のみ加工 加工 仮組立て 取っ手加工 底板 墨付け 目違い払い ヤスリがけ けびき加工 〃 溝製作 溝加工 底板 加工 釘穴 墨付け 〃 加工 ダボ孔加工 290 組立て ダボ加工 工 具 けびき 両刃のこぎり 薄のみ けびき 両刃のこぎり 薄のみ 平かんな ヤスリ すじけびき 溝製作用工具 のみ 寸法合わせ 穴あけ 丸棒削り 内側かんながけ、酢ビ 接着、はたがね締め、 釘打ち ダボ製作、ダボ打ち ボール盤 ボール盤 平かんな はたがね 玄能 平かんな 玄能 乾燥 48 整形 塗装 かんながけ、面取り、 研磨 染色、塗装、研磨 平かんな 400 かんなで 4 箇所の角を削り 8 角形にする。棒を回転 させながらこの操作をくり返し、円形に加工する。 ダボ穴よりも少し大きい寸法に仕上げ、木殺しをし、 接着剤を付けてダボ穴に叩き入れる。 ・トレイ寸法 メス オス 4.2.6 塗膜研磨 b 塗装はハケを用いて行うが、ハケ塗りはハケムラ が出来やすく、きれいに塗ることが難しい。塗膜を 厚くするために約 4 回塗料を塗った後、耐水ペーパ ー(#800)で水研ぎ研磨し、塗りむらやゴミ等でザ ラついた表面を平滑にする。次に、仕上げ塗装をし 完成させる。 側板 a a 側板 b b b a 側板 けびき刃 けびき刃 5.溝製作用工具の試作(図 11) 側板 底板取付け用の溝は、手で作るために工具を試作 した。けびきを改良したもので、強度とねばりのあ るイタヤカエデを用いた。通常、けびき刃は進行方 向に平行となっているが、これは進行方向に直角に 取り付けた。その刃の幅は底板の厚さよりも約1 mm 幅の狭い刃を用いた。削り量を一定にするため a ・けびきによるほぞ加工 図 10. 3 枚組み継ぎの木殺しとほぞ接合 図 9.トレイ寸法とほぞ加工 53 ける事で再使用できる。1人当たりの作業で 0~2 回ほど付け替えた。 出来た溝の両端をすじけびきを用いて底板の厚さ、 幅となるようにきれいに削る。 6.まとめ ものづくりに使用される道具は、先人の様々な創 意工夫が組み込められ現在も日々進化している。木 材加工の現場でも、刃物材料の高性能化で、高速回 転により正確な加工が行われている。加工が高度に なればなるほど、木材の特性を考慮しなくても良く なり、生産性が上がる。一方、生活の一部として身 近な木材は人間に馴染みやすい。太古の昔から利用 してきた木材は、人間の DNA にしっかりと息づい ている。木材の手による加工は、手間と時間は掛か るが、機械加工と同程度か、それ以上の精度で行う ことができる。そして、そこには作る喜びがプラス されている。手、指、体を、そして頭を使ったスポ ーツに似た喜びがあると考えられる。木に直接触れ、 加工し、複雑な木の事をより深く考える加工実習が 目標となる。 ガイド板 刃 図 11. 溝製作用工具の試作品と刃先の詳細 謝辞 のガイド板を刃の前方に取り付けた。この部分は非 常に負荷が掛かるため、破損し易い。そのため、負 荷が掛かると外れるように、接着剤等で固定しなか った。ガイド板は木殺しをし、厚さを調節して製作 したもので、溝を付けたさおにしっかりと接合した。 外れたガイド板は水を含ませて木殺しした後取り付 この報告書を作成するにあたりご指導いただきま した、故農林技術センター水井正夫様ならびに生命 環境科学研究科国際地縁専攻長土居修一先生に深謝 いたします。 Technique in the training for the processing of biomaterials Chiaki Tadokoro Life Environmental Science Technical Service Office(Institute of Agriculture and Forest Engineering ) University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8572 Japan Training for the Processing of Biomaterials is a specialized course in Environmental Engineering in the College of Agrobiological Resources. This course is taken by students aiming to be teachers of “Technology and Home Economics” in junior high school, and students with an interest in the field of biomaterials. Technical guidance for this subject is provided mainly by technical staff. In this training, students use wood as a material, and work it using tools. By working with wood, students gain an understanding of its various properties, and learn about tool mechanisms and handling. This year (2008), students made food preparation stands (cutting boards with legs), and tabletop trays. Keywords: wood; processing; technique 54 「夏休み自由研究お助け隊2008」:医学系からテーマを提供して 伊藤 清子、菅江 則子、佐藤 晶子、梶原 典子、文隨 和美、 櫻井 秀子、福井 智津子、加藤 奈津子、樺山 綾子、大野 良樹 筑波大学医学系技術室 〒305-8575 茨城県つくば市天王台 1-1-1 概要 ーマは、① 植物の培養実験~台所でバイオテクノロ ジー、② 動物のお腹の中を見てみよう、③ 植物に 血液型ってあるのかな?である。 「夏休み自由研究お助け隊」は、2004 年度に「筑 波大学社会貢献」1 の一環として実施されて、今年度 で 5 回目となる。つくば市および周辺地域の中学生 を対象に、夏休みの自由研究がより有意義なものに なるよう、技術職員が蓄積した技術や経験を提供す ることを目的としている。 今年度は、8 月 2 日、3 日の 2 日間、技術職員が提 供した 15 のテーマと中学生が考えた1つの独自テ ーマで実施した。 医学系技術職員は、「大きな結晶をつくってみよ う」、「顕微鏡を使って赤血球・白血球・血小板を 見てみよう」、「身近なもので布を染める」の 3 テ ーマを提供し、参加中学生から好評であった。また 全体の運営に協力するとともに、他部門の提供テー マや展示コーナーにも協力し、筑波大学技術職員と して所属を越えて連携する良い機会となった。 2.1 「大きな結晶をつくってみよう」 キーワード:夏休み自由研究、自由研究お助け隊、 筑波大学技術職員、筑波大学社会貢献 1.はじめに 筑波大学技術職員は、中学生を対象に夏休みの自 由研究がより有意義なものになるよう、蓄積した技 術や経験を提供することを目的として「夏休み自由 研究お助け隊」を 2004 年度から開催している[1]。今 年度の「夏休み自由研究お助け隊2008」 2 には、 つくば市および周辺地域などから延べ 145 名の中学 生が参加し、好評であった。 医学系技術職員は、今年度も全体の運営に協力す るとともに、複数のテーマを提供し、展示コーナー および他部門提供テーマへ協力した。 2.提供テーマについて テーマ提供にあたり、医学系の技術職員が持って いる知識と技術を提供することとし、医学に関連し たテーマに限らず広く検討して 6 テーマをあげたが、 結果として 3 テーマを実施した。実施したテーマは ① 大きな結晶を作ってみよう、② 顕微鏡を使って 赤血球・白血球・血小板を見てみよう、③ 身近なも ので布を染める、である。今回実施できなかったテ 1 2 http://www. tsukuba.ac.jp/community/index.html http:// www.tech.tsukuba.ac.jp/ summer2008/index.html 55 「結晶」は中学1年の科学第1分野「身近な物質」 の学習テーマであり、水溶液の中から溶けている物 質をとりだし、その物質の形を見ることによって、 物質には「規則正しい形」があることを学ぶ。しか し、「大きくきれいな結晶」は授業時間では得られ ない。「結晶つくり」は「夏休み自由研究」テーマ に適しており、水溶液から大きな結晶をとりだすこ とを経験することで、科学に興味をもってもらおう と考えた。 「大きな結晶をつくってみよう」には、2 日間で、 今年度の提供テーマで最も多い 16 名が参加した。 材料には家庭で手に入るものとして、漬物などの 色あげに使われるミョウバンを用いた。実験用具も 家庭で楽しく作れるようにと、台所用品や身近なペ ットボトルなどを使用した[2]。 はじめに、結晶について簡単な説明をし、実際に 中学生が作成した「硫酸銅」や「塩化銅」、「塩」、 「砂糖」などの結晶を見てもらった。 時間制約があるため、「結晶の成長」を観察する ところから開始した。準備した「結晶ミョウバン」 の中から「形の良いもの」を参加者に選んでもらい、 「種結晶」とした。選んだ種結晶に熱したエナメル 線を接着させたりテグス糸を結びつけて、吊り下げ られるようにした。なかなか困難な作業で、苦労し ているようだった(図 1)。 次に、室温で飽和となる量のミョウバンと温めた きれいな水を量り、ペットボトルにいれて、湯せん してミョウバンを溶解させた(図 2)。このミョウ バン液を「母液」とし、ジャム瓶などに入れて静置 した。母液の液温が室温近くまで下がったところで、 静かに「種結晶」を吊るして結晶の成長を観察した。 参加者は、目に見えて結晶が成長していく様子に感 激していた。また、途中で種結晶が外れて落ちてし まうケースもあり、根気強く何度もやり直す場面も 見受けられた。 「結晶の成長」を観察しながら、「種結晶つくり」 にも挑戦した。母液つくりと同じようにしてミョウ バン液を調製し、平底容器(皿など)に入れて静置 した。液温が下がるにつれて、何も見えないミョウ バン液中に「モノ」が現れ、成長していく様子を観 察した。そして、その「モノ」がミョウバンの結晶 であり、規則正しい「正八面体」であることを知っ てもらった。 実験の合間に、展示コーナーのデジタルマイクロ スコープでミョウバン結晶を観察した。参加者は、 肉眼で見える結晶と拡大した結晶との違いに感嘆し ていた。 参加者に、ミョウバンの結晶は「規則正しい形」 の正八面体であることから、身近な塩や砂糖や他の 物質にも「規則正しい形」があることを考えてもら うきっかけになった。 最後は、「より大きな結晶」をつくるために引き 続き自宅で結晶を成長させようと、できたミョウバ ン結晶を大事に持ち帰ってもらった。 参加者から、 「最初は2, 3 mm位の大きさが、3時間 位すると1 cm位にもなり、形もはっきりしてきれい だった」、 「1 cm以上の結晶ができてうれしかった」 、 「これをまとめて、今年の自由研究にいかしたい」 、 「結晶の作り方を教えてもらったので、夏休みに作 ることができる」 、「この研究で、結晶のことが良く 分かった」などのアンケートが寄せられた。 中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球)・血小 板を比較しながら描いてみる。後半は、標本染色に 使用する緩衝液を自分達で調製し、染色を体験する。 自分で染色した標本を顕微鏡で観察し、前半で描い た血球と対比して考えながら、特徴を理解してもら うことを目標に行った。 事前にライト染色の血液塗抹標本(図 3)を準備 した。初めての人には、自分でいろいろな血球を探 すことは難しいため、6 台の顕微鏡を使って観察す る血球をあらかじめ設定し、その血球についてのコ メントを用意し識別しやすいようにした。 血球の観察を始める前に、① これから観察する血 球の種類やそれぞれの機能、末梢血液中の血球数や 割合について説明した。② 顕微鏡の操作については、 標本の焦点の合わせ方を練習した。③ 血球をスケッ チする事はなかなか難しいので、血球の図譜を見な がら血球の描き方を説明した[3]。 実際の血球のスケッチでは、① どの位の大きさの 血球を見ているのか、わかり易く捉えられるように、 赤血球の直径(平均 7~8 μm)を基準にして他の血 球の大きさを比較してみる、② 血球の全体的な形を 観察する、③ 細胞質の色調や顆粒の有無をみて、顆 粒が見られた場合は、顆粒の数、色合い、大きさを 比較する、④ 核を持っている白血球では、その形や クロマチン網工などを観察し、血球の特徴をとらえ る、などに注意しながら描いてもらった。 参加者は、初めて見る血球に工夫しながら取り組 んでいたが、血球を描く時間が人により様々であっ た(図 4)。1 台の顕微鏡にかかる時間を区切らずに 好きなように移動してスケッチをしてもらったため、 顕微鏡 6 台の設置は必要であると感じた。 後半は、血液染色で一般的に行われている血液塗 抹標本によるライト染色を、医学の研究室で行った (表 1)。 まず、染色に使用するリン酸緩衝液を調製した。 参加者全員で、分担しながら試薬を計り、溶液にし、 pH 計で酸性か塩基性か pH を確認した。この緩衝液 を用いてライト染色を順番に行った。緊張している 様子も見られたが、きれいに染色することができた。 標本染色において pH は重要であり、なぜ血球が それぞれの色調に染色され、それを利用して血球の 鑑別に活用されるか、イオン結合による染色の原理 について染色の反応時間を利用して説明をした。 次に、自分で染めた標本を、実際に顕微鏡を操作 しながら観察し、血球の分布状態を見てもらった。 好きな血球の所で画像を取り込み、印刷し、持ち帰 りの資料の 1 つとした。また、印刷した血球が前半 でスケッチしたどの血球に識別されるのかを、血球 の特徴を比較しながら確かめた。 短時間であったが、それぞれの血球についてわか りやすく取り組めるように心がけた。参加者からは 質問などもあり、熱心な姿が見られた。アンケート 図 1. ミョウバンの種結晶にエナメル線や糸をつ ける作業 図 2. ミョウバンを水に溶かす作業 2.2 「顕微鏡を使って赤血球・白血球・血 小板を見てみよう」 1 回の参加人数を 3~4 名にして、約 3 時間の内容 で 2 日間にわたり計 4 回実施した。 前半は、血液塗抹標本を顕微鏡で観察し、色鉛筆 で各血球をスケッチする。スケッチは時間をかけて 観察することにつながるため、赤血球・白血球(好 56 2.3 「身近なもので布を染める」 にも「白血球の中でも、いろいろあることがわかっ た」、「血液の染色が楽しかった」、「血液にふく まれているものや働きがよくわかった」などの声が 寄せられた。 今回、顕微鏡は医学 PCME 室の技術職員に、また 研究室については血液内科および腎臓内科の先生方 にご協力を頂き、より良い環境で行うことができた。 参加者も有意義な体験になったと思う。 「身近なもので布を染める」は、朝から 1 日通し ての日程で実施し、5 名が参加した。 染色の材料として、身近にある玉葱の皮と藍の生 葉、茜の根、蓬の葉を準備した。 藍の生葉を用いての染色は、火を使わない数少な い染色法である。染色液を作ってから 20 分以内に染 めなければならないので、参加者は慌てながらもき ちんと順序を踏み、絹のマフラーを染め上げた(図 5)。 また参加者は、茜の根による染色では煮出す時に 食酢を使用する事や、玉葱の皮による染色では 3 色 もの色が出る事などにも驚きながらメモしていた。 同じ染色液を用いても、媒染剤の違いで発色が劇 的に変化する事にも大いに驚いて、原理などを調べ てみたいとの新たな課題を見つけたようだった。 糸の種類によっても染まり方がちがう事を知るた めに、絹糸、木綿糸、羊毛の 3 種類を顕微鏡で観察 し、動物性の糸、植物性の糸の違いや、羊毛にあっ たキューティクルなども観察し、それぞれの違いを 認識してもらった。 ろうけつ染めでは、各々好きな絵柄を書き、真剣 に打ち込む姿には、物作りの楽しさを感じてもらえ たのかと嬉しくなった。 色出しと乾燥のために外に干した作品にはそれぞ れ個性があり、夏の空間に青が爽やかだった(図 6)。 参加者は、染め上がった布を眺め、これで何を作ろ うかと楽しそうだった。 布が染まるまでの待ち時間に、実際に畑で育てた 綿花を用いての糸紡ぎにも挑戦した。糸車をまわし ながら、自分たちの着ている服がこの一本の糸から 作られている事を改めて認識したようで、意外な程 強い興味を示してくれた事に驚いた。 来年は機織りもやってみたいとの感想も出て、更 に充実した体験をしてもらえるよう検討していきた い。 図 3. ライト染色した赤血球・白血球・血小板標本 図 4. 顕微鏡による血球標本の観察 表 1. リン酸緩衝液の作り方とライト染色の方法 かんしょうえき 緩 衝 液 を作ってみよう。 試薬をはかり溶液をつくる。 ① リン酸 2 水素カリウム(KH2PO4) 0.907g ② リン酸水素 2 ナトリウム (Na2HPO4) 0.946g じょうりゅうすい 両方とも 蒸 留 水 を入れて溶かし 100ml にする。 ①液 28ml と②液 12ml を混合する。 アルカリ性か酸性かを見てみる。 作った緩衝液を 10 倍に希釈する。 標本を染色してみよう。 標本にライト液 1.5 ml をのせる。 図 5. 藍の生葉による染色作業 2 分間後に、作った緩衝液を 2 ml 加えて混ぜ合わせる。 5 分間染めてから、水で洗い流す。 乾燥させる。 57 納豆菌 ヨーグルト 図 6. 染めあがった布の乾燥 3.展示コーナー「デジタルマイクロスコ ープ」を担当して ミョウバンの結晶 顕微鏡メーカーのご好意により毎年貸していただ いているものだが、「大きな結晶を作ってみよう」 や「身近な微生物を培養・観察してみよう」、その 他の提供テーマの参加者が出来上がった結晶や標本 を観察したり、持参したプランクトンや昆虫、植物 を熱心に観察する参加者がいたりと、好評だった(図 7)。 自分で作成した標本や結晶、持参した昆虫や植物 が、普段見たことも無い倍率で観察でき、微細な部 分に複雑な構造が存在することを確認して、科学へ の興味がますます湧いた様である。 図 8 に参加者自身が顕微鏡を操作し、撮影した写 真を示した。 プランクトン 空蝉 アリマキの幼虫 イネ科植物の開花 空蝉の複眼 図 8. デジタルマイクロスコープ観察より 4.他部門提供テーマおよび全体の運営に 協力して 医学系技術職員はテーマ提供の他に、サポートス タッフとしても協力した。 サポートした環境安全管理室技術職員提供の「簡 単な化学分析を体験してみよう」へは、2 日間で 8 名が参加した。 初めに「ペーパークロマトグラフィー」の原理を 簡単に説明した後、実際に自分たちでろ紙の準備か ら始めてもらった。参加者は、時間が経つにつれ展 開していく色素の動きを、真剣な眼差しで見ていた。 出来上がった色素の展開図を見ながら最後にもう 一度説明すると、原理がより理解できたようで、思 いもよらない質問なども寄せられた(図 9)。 図 7. デジタルマイクロスコープで観察する参加 者 58 5.最後に 普段から教えることが専門ではないので、参加者 にとって担当の説明が分かりにくかった面があった かと思うが、化学に親しむ一助になったと思う。 同じ大学にいても、様々な測定に関する実務、教 育・研究に従事している技術職員が一緒に活動をす ることは少ない。「夏休み自由研究お助け隊」は、 筑波大学技術職員が組織の壁を越えて連携して実施 できる良い機会になった。 さらに、医学系技術職員は当日の受付業務などの 運営にも協力することで、他部門の技術職員との連 携を深めた(図 10)。 「夏休み自由研究お助け隊2008」への参加者 は、つくば市内および茨城県内外の 31 中学校に及ん でいる。参加者は目を輝かせ、担当技術職員の話を 聞き、お互いに対話をしながら、熱心にテーマに取 り組んでいた。また参加者からのアンケートに、担 当技術職員の説明やアドバイスが彼等の自由研究に 大いに役立ったと、好意的な声が多数寄せられてい る。 医学系技術職員は 6 テーマを候補にあげ、3 テー マ実施した。医学系技術室および実行委員の方々や 他部門の方々のご協力があって、実施できたといえ る。今年度実施できなかった 3 テーマで、「植物の 培養実験~台所でバイオテクノロジー」は、植物切 片の培養実験に台所用品を使用する計画だった。バ イオテクノロジーの一端に触れることで、科学技術 への好奇心を高めてもらうことを目的としたが、提 案者の事情で募集を停止した。また、「動物のお腹 の中を見てみよう」および「植物に血液型ってある のかな?」については、関係者などとの調整も含め、 準備不足のため実施できなかった。今後、これらの 3 テーマについても、時間をかけて検討し、関係機 関の方々のご協力のもとに提供できるように取り組 んでいきたい。 筑波大学技術職員として、私達は今年度の経験を 生かし、大学の多くの教職員とも連携・協力しあっ て、今後も「筑波大学の社会貢献」に寄与していき たい。 最後に、実行委員長・中島孝氏(システム情報工 学等技術室)をはじめ16名の実行委員、およびご協 力をいただいた多くの技術職員、大学執行部、数理 物質科学等支援室、関係各研究科に感謝申し上げる。 図 9. 「簡単な化学分析を体験してみよう」より 参考文献 [1] 齋藤静夫, 「夏休み自由研究お助け隊2004」ワー クショップについて, 筑波大学技術報告, 25, (2005) 21-23. http://www.tech.tsukuba.ac.jp/2004/report/06-Shizuo_Sait o-2005-web.pdf [2] 左巻健男 実験監修, 「キッチンで育てる大きな結 晶」, NGK サイエンスサイト, (1999). http://www.ngk.co.jp/site/no25/content.htm [3] 小宮正文, 図説 血球のみかた 第 8 版, 南山堂, (1985). 図 10. 受付の様子 59 Summer Workshop 2008 for junior high school students, University of Tsukuba: - The report for three themes presented by medical technical staff - Seiko Ito, Noriko Sugae, Shoko Sato, Noriko Kajiwara, Kazumi Bunzui, Hideko Sakurai, Chizuko Fukui, Natsuko Kato, Ayako Kabayama, Yosiki Ohno Institute of Medical Science, Technical Service Office for Medical Science, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8575 Japan Summer Workshop 2008 for junior high school students by technical staff in University of Tsukuba started at 2004 as one of the social contribution in University of Tsukuba. The purpose of this workshop is to give technical advice to junior high school students on conducting their independent research works during the summer vacation. The workshop was held on August 2-3, this year. 145 students participated in this workshop and sixteen themes were presented: fifteen by technical staff and one by a student. The themes presented by medical technical staff are three and their titles are “Preparation of a bigger crystal of alums”, “Observation of red blood cells, white blood cells and platelets with microscope”, and “Dyeing of cloths with familiar materials”. Those three themes attracted student’s interest. Keywords: summer workshop 2008; independent research work; technical staff; social contribution 60 光ビート法により発生した高周波信号の参照信号強度依存性 松山 英治 筑波大学数理物質科学等技術室 (物性・分子工学専攻) 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 概要 分光に用いられる光は高いスペクトル純度と良好な C/N ( 信号光強度とバックグラウンドノイズ光強度 との比 ) が求められる。筆者は分光の要素技術の開 発と分光解析の結果に影響を及ぼす要因の研究を行 っている。これらの条件を充たす電波・光境界領域 の電磁波を発生させるため光ビートを用いて高周波 ( RF ) を発生する基礎的な実験を行っている[1],[3],[5]。 今回は光ビートによる光ヘテロダインミキシング参 照光強度と計測した、RF スペクトル純度について 報告する。 マイクロ波からテラヘルツ ( THz ) の電磁波は、ス ピ ン や量 子振 動 を観 測す る 走査 プロ ー ブ顕 微鏡 ( SPM ) の新しい光源として有望視されている。光 ビート法によりマイクロ波を発生させるため、波長 が近赤外領域( 1.0 から 2.0 μm) にある、2 本のレー ザビームを混合し、単一モード光ファイバを用いて 非線形受光素子に導いた(光ヘテロダインミキシン グ)。発生させた電磁波の中心周波数は 569.1 MHz である。この出力信号のスペクトルを観測すること により、出力信号の参照信号強度依存性を詳しく調 べた。 参照信号強度を –5 dBm から –50 dBm へ と減少させても、スペクトル純度は 5 MHz 幅に維 持された。また、出力信号強度は参照信号強度の減 少(-5 dBm から –50 dBm)とともに直線的に減少 した。よって、本報告で述べた光ビート法を拡張す ることにより、波長と強度を精密に制御できる、マ イクロ波および THz 電磁波を発生させることが可 能であると示唆された。 2. 装置と測定法 2.1 装置 今回使用した装置は、近赤外波長可変レーザ 2 台、 光ファイバ導波路、光波長計、光受信機、スペクト ルアナライザー、光減衰器 ( ATT ) から構成されて いる。近赤外波長可変レーザは、1.0 ~ 2.0 μ m の光 通信波長領域でレーザ発振波長を精密に可変できる 光発振機である。光ファイバ導波路は、光通信波長 領域でレーザ光を単一モードで低損失に伝送でき、 各々のレーザ発振機からの 2 本の光を 1 本に混合で きる機能を持つものである。光波長計は、近赤外光 通信波長領域でレーザ発振波長を精密に計測できる 測定器である。光受信機は、1.0 ~ 2.0 μ m の光通信 波長領域で 2 光波混合 ( 2 周波混合法 ) された光を 受け、差周波数を出力できる非線形特性光受光素子 と増幅機能を備えた光通信用受信機である。スペク トルアナライザーは、RF 信号を周波数領域で検出し て表示する測定器である。光 ATT は光ファ イバ導 波路内に挿入し精密に通過光を減衰させ光量を調整 するものである。測定器の仕様を 2.1.1 ~ 2.1.6 に示 す。 キーワード・走査プローブ顕微鏡 、THz、 光ビート、ESR - STM 1. はじめに 従来の光にない性質、生体試料などの指紋領域に ある波長を持ち、量子エネルギー (hν) が触媒化学 反応過程に関わる領域にある、THz 電磁波 ( 電波、 光 ) を使用した新しい分光技術が注目されている。 特に微小な領域を観察する顕微分光、SPM、走査近 接場光顕微鏡 ( NSOM ) など最新の技術は電波・光 境界領域にある電磁波の利用が期待されている。従 来から THz 電磁波の発生には多くの技術的に困難 な点があり、この分光領域の光源として取扱いが簡 単で高性能な ( 光の線幅が狭い、振動数が安定、ノ イズとの振幅比が良い、振動数と強度を広い範囲で 精密に可変できる )[1,2] 光源はなかった。 2 周波混合法:周波数が異なる 2 つの電磁波 ( 光 ) を非線形な特性を持つ受光素子に入射させ、 各々の周波数の和と差の成分を出力に生じさせる、 光混合法。 61 2.2 波長可変 レーザ 1 光導波路 実験は、マイクロ波・ミリ波領域における、電波 工学上の周波数変換技術 ( 光ビートを用い、ヘテロ ダインミキシングを行い光の差周波数の振動を発生 する ) を 1.0 ~ 2.0 μ m 領域の近赤外レーザ光に適 用して実施した。具体的には、2 本の連続発振 ( cw ) レーザ光を混合して、単一モード光通信用ファイバ 導波路をへて ( 2 光波混合法 ) 非線形特性を持つ 光受光素子に光を導き、光ビートの非線形効果ミキ シングを行った[1,2]。2 つの光の差周波数の振動数を 持つ電磁波発生の手順は以下のとおりである。波長 可変レーザ 1 を 1.55 μm の波長に固定し発振させた。 波長可変レーザ 2 をレーザ 1 の発振波長に合わせる ように発振させた。光波長計により発振線の接近を 確認しさらに接近させスペクトルの重なりを確認し た Fig 2, a, b 。レーザ ( 1, 2 ) の発振波長の差がマ イクロ波領域で観測される周波数になる。レーザ 2 の発振波長を精密に可変させた ( 差周波数 2 GHz 付近まで接近 )。レーザ 1 の発信波長と光出力の設 定は 1.549978 μm, -3.90 dBm とした。レーザ 2 の発 信波長と光出力の設定は 1.549999 μm, -3.90 dBm とした。レーザ 2 の出力ライン光導波路の中に光 ATT を挿入し通過光量を指数オーダーでステップ 状に減衰させ光ヘテロダインミキシングの参照光強 度設定を行った。この光を単一モード光ファイバ、 ( 3 dB 分枝、混合機能を持つ ) 3 dB カップラへ入射 し、レーザ ( 1, 2 ) 2 本の光出力を一本の光ファイバ により混合させ 2 光波を伝送し、非線形効果受光素 子を持つ光受信機に導いた。このときファイバ内の 光電界分布はレーザ ( 1, 2 ) ともに同一方向に設定 した。光受信機内で発生するマイクロ波の出力信号 を取出し交流 ( AC ) 結合された、RF スペクトラム アナライザーにより発生したスペクトルの純度を調 べた。 光受信機/光波長計 RF 1.55μm 光減衰器 ATT 測定方法 スペクトルアナライザー 波長可変 レーザ 2 Fig 1 . Composition of measuring Equipment 2.1.1 近赤外波長可変レーザ 外部光共振器型精密波長可変型 サンテック:RSL - 210、安定度: ( +,- ) 0.005 nm /30 min、線幅 : <500 kHz Hewlett - Packard:8168 F、安定度:0.001 nm、 線幅:100 kHz 2.1.2 光ファイバ導波路 2 入力 1 出力光ファイバカプラ、 日本航空電子工業:DS – 15 - 5 0 XK - 380 分岐比:45 ~ 55 % ( 1547 , 1553 nm ) 過剰損失:0.25 ( dB ) 以下 ( 1.547, 1553 nm ) 2.1.3 光波長計 Hewlett - Packard:8120 C: 1270 ~ 1650 nm、 表示解像度: 0.001 nm 精度: ( +,- ) 2 ppm ( +,- 0.003 nm at 1550 nm and 1310 nm ) 2.1.4 光受信機 Hewlett - Packard:11982 A : Light wave converter 1200 ~ 1600 nm、変換帯域幅:15 GHz 、 等価ノイズ:30 Pw √ Hz 3.結果 3.1 光波長計による計測 2.1.5 スペクトルアナライザー Anritsu: MS2687 B ~ 30 GHz 1270 ~ 1650 nm の計測範囲で、波長可変レーザ ( 1, 2 ) の発振線として 1.55 μm 付近に 2 本観測された Fig 2. a 。 スペクトルのさらなる接近に伴い 2 台のレーザの 発振線スペクトルは重なって観測された。Fig 2. b 。 上記の計測範囲で、レーザ ( 1, 2 ) の発振線以外 の光は観測されなかった。 レーザ 1 の発振波長と光強度は 1.549978 μm, -3.90 dBm であった。 レーザ 2 の発振波長と光強度は 1.549999 μm, -3.90 dBm であった。 2.1.6 光減衰器 ANDO: AQ – 3505 A 減衰量 :1.55 μm, 0 ~ 65 dB 光の振動数の表記は波長を用いた。( nm ) マイクロ波の振動数の表記は周波数を用いた。( Hz ) 光,マイクロ波強度の表記は dBm を用いた。 0 dBm = 1 mW である。 62 光強度の指数的減衰 ( レーザ, 2 ) に発生した 電磁波の強度は指数的に減衰した Fig 3. a, b , c , d , e, f , g 、Fig 4 。計測した強度範囲においてマイクロ 波スペクトルの線幅は 5 MHz 以下であった。C/N : |15 ~ 75| dB を計測した Fig 4 。 c 3.2 スペクトラムアナライザーによる計測 d スペクトラムアナライザーで計測された信号は、 光ビートがマイクロ波領域の電磁波に変換され光受 信機から出力された電磁波である。 センター周波数 569.1 MHz、信号強度・ノイズ 比:C/N 75 dBm、線幅 W:5 MHz 以下であった Fig 3. a 。 位相ノイズは、観測された信号の中心周波数から ( +,- ) 60 MHz の範囲で急激に減衰した Fig 3. a 。 線幅が 5 MHz 以下のスペクトル線 1 本が常に観 測された。 時々2 本 15MHz の間隔内にホッピング ( 10 MHz の範囲に変動して希に現れる ) を伴い観測された Fig 3. a , c , d , e 。 参照光レーザ ( 2 ) 光強度の指数的減衰に応答し た、RF スペクトルプロファイル Fig 3. a, b , c , d , e, f , g , Fig 4 。 Fig 2 . c and d Near infrared region laser (1, 2) Wavelength and Power. 観測条件、観測温度: 300 K スペクトルアナライザー設定:RBW 300 kHz , VBW 30kHz ( RBW:分解能帯域幅 ) , ATT 10 dB である。 Fig 3 . a Measured microwave spectrum. Fig 3 . b Measured microwave spectrum. a b Fig 2 . a and b Near infrared region laser (1, 2) Oscillation line. 63 Fig 3 . c Fig 3 . d Measured microwave spectrum. Measured microwave spectrum. Fig 3 . f Measured microwave spectrum. Fig 3 . g Measured microwave spectrum. -60 -50 -40 マイクロ波出力 dbm - 3 0 -20 -10 0 -10 -20 -30 -40 -50 -60 0 光参照信号強度 Fig 3 . e dbm Fig 4 . Reference light Power and generated microwave Power. Measured microwave spectrum. 64 4. 考察 5. まとめ 筆者は業務の一つとして、電子スピンの情報を得 る走査トンネル顕微鏡 ( ESR - STM ) を用いて、ト ンネル分光と ESR 検出感度の向上開発に取り組ん でいる[5]。ESR - STM の観測対象はナノサイズ領域 の分析であり、計測される不対電子のスピン数は極 少数となる。STM による単一スピンの検出が期待さ れている[4][5]。ESR - STM が観測する信号は微弱で熱 限界付近になり極めて高い検出感度と STM のトン ネルコンデションに高い安定性が求められている [4][5] 。近年 ESR が計測する周波数は超小型超電導マ グネットの普及によって、サブミリ波 ~ TH 領域へ 広っており SPM による新たな分光技術の構築が期 待されている。2 台の波長可変レーザが発生する差 周波数は、MHz ~ THz と極めて広くかつ緻密である。 波長可変レーザの発振波長を精密に制御することで コヒーレンスの高い光ビートを作成できる[2]。光ビ ートを各種の非線形効果特性を持つデバイスに照射 すれば、マイクロ波からサブミリ波の電磁波を発生 できる[1,2]。今回の実験条件は L バンド ESR - STM の ESR 共鳴要素をもつ参照信号光として、数百 MHz に光ビートの設定を行った[5]。レーザ ( 1, 2 ) の発 振線は良好であった Fig 2. a, b 。 発振波長の接近 によって光スペクトルは重なって観測された Fig 2. b 。観測した波長領域にノイズ源となる光は測定さ れなかった ( 1200 nm ~ 1600 nm ) 。このことは、光 ビートを広い波長領域の任意な波長に設定可能であ ることを示している Fig 2. a, b 。観測されたマイク ロ波のスペクトル純度は信号強度・ノイズ比:C/N 75 dBm と 7 桁の範囲にあり、線幅は W:5 MHz 以 下、と良好であった Fig 3. a 。参照光の指数的強度 減衰に、発生する電磁波強度の応答は良い直線性を 示した Fig 3. a, b , c , d , e, f , g 、Fig 4 。測定結 果から発生した電磁波の線幅、と C/N は SPM によ る表面分光に充分活用可能な値が確保されている 。 微弱な信号強度においてもスペクトル純度の荒れは 確認されず、高いスペクトル純度が得られた。レー ザ ( 1, 2 ) の設定波長と測定されたマイクロ波の周 波数にわずかな差が見られた。これは光強度測定の おり参照光ビート設定レーザ光の on/off 制御をア クテブスイッチの on/off によって実施したことで、 レーザ発振に穏やかな温度によるドリフトが生じわ ずかな周波数のずれとして観測されたものと理解さ れる ( 1 GHz 以下 )。観測されたスペクトルに小さ なホッピングが測定された Fig 3. a, c , d , e 。波長 可変レーザ発振波長と線幅を高安定化するレーザ制 御機能から生じ、本実験はレーザ ( 1, 2 ) の光をヘ テロダインミキシングすることで高精度な計測を実 施しており計測されたものと推察する。 波長が 1.55 μ m の光は 190 THz 付近の周波数を 持つ電磁波である。2 台の近赤外波長可変レーザに より作られた光ビートをマイクロ波の電磁波に周波 数 ( 波長 ) 変換することが可能である。光ヘテロ ダインによる波長変換では観測された電磁波のスペ クトル純度に 2 台のレーザ其々の発振線が持つコヒ ーレンスが含まれて表されている。計測したマイク ロ波スペクトルの純度は、参照光強度の指数的減衰 に 5 MHz 以下の線幅を維持した。位相ノイズの計 測結果は 100 MHz の範囲で急峻に,バックグラウン ドノイズレベルに減衰した。スペクトルの C/N:は | 15 ~ 75 | dBm の値を得た。その線形性は 5 桁を越え て計測された Fig 4 ( m W ~ n W ) 。このことは微 弱な電磁波を検出する励起参照信号光に活用できる ことを示している Fig 3. a, g 。スペクトルアナライ ザーが測定した 200 MHz のスキャン領域にサブス ペクトルのない、純粋なビート信号 1 本のみ計測さ れた。発生した電磁波のコヒーレンスとスペクトル 純度は高く、高周波走査トンネル顕微鏡 RF - STM、 ( ESR - STM )、NSOM など SPM の新しい励起参照 光源として充分活用可能であることを確認できた。 本光ヘテロダイン法を拡張すれば、参照光パワーの 変化にスペクトル純度を維持できる。波長、強度を 精密に制御可能なマイクロ波から THz 電磁波の発 生が可能であることが示唆された。 6. 謝辞 本実験実施に際し、根本承次郎 筑波大学名誉教授、 筑波大学数理物質科学研究科 重川秀実 教授、中村 潤児 教授、の多大なご指導とご鞭撻に感謝いたしま す。 参考文献 [1] [2] [3] [4] [5] 65 H. Ito, T. Furuta, Y. Hirota, T. Ishibashi, A. Hirata, T. Nagatsuma, H. Matsuo, T. Noguchi and M. Ishiguro Photonic millimetre-wave emission at 300GHz using an antenna-integrated uni-travelling-carrier photodiode Electronics Letters 38 (2002) 989-990. M. Musha, A. Ueda, M. Horikoshi, K. Nakagawa, M. Ishiguro, K. Ueda, and H. Ito, “A Highly stable mm-wave synthesizer realized by mixing two lasers locked to an optical frequency comb generator ”, Optics Communications ,240, (2004) 201-208. 松山英治 光ビート法による高周波の発生 筑波 大学技術報告書集 NO 28,(2008)62-65 E. Matsuyama, S. Yasuda, O, Takeuchi, H, Oigawa, J. Nakamura, and H. Shigekawa, Development of Radio Frequency STM for ESR Spin Detection, 13 th Intrenational Conference on Scanning Tunneling Microscopy/Spectroscopy,119(2005) 特許(特願 2006-7) ヘテロダインビートプロー ブ走査プローブ顕微鏡およびこれによってトンネル 電流に重畳された微小信号の計測方法 Dependence of High Frequency Signal Generated by an Optical Beat Method on the Reference Signal Intensity Eiji Matsuyama Institute of Materials Science, Academic Service Office for Pure and Applied Sciences University of Tsukuba, 1-1-1 Tennohdai, Tsukuba, Ibaraki 305-8573, Japan Microwave to terahertz electromagnetic waves are considered as promising new light sources for the scanning probe microscope ( SPM ) such as the high frequency tunnelling microscope ( RF-STM ) and the near field microscope. In order to generate microwaves by an optical beat method, two laser beams were mixed and guided through a single-mode fiber to a nonlinear detector ( optical heterodyne mixing ). The wavelengths of two beams are 1.0 ~ 2.0 μm of near infrared region. The center frequency of the output signal from the detector is 569.1 MHz. The dependence of the output signal on the reference signal intensity was examined in detail by observing the spectrum of the output signal. Even when the reference signal intensity decreased from –5 dBm to –50 dBm, the spectral purity of the output signal was maintained to 5 MHz width. The intensity of the output signal was decreased linearly when the reference signal intensity was changed from –5 dBm to –50 dBm. Hence, it is suggested that, by extending the optical beat method described in this report, microwaves and terahertz electromagnetic waves whose wavelengths and intensities are strictly controllable can be generated. Keywords: Optical beat; Scanning probe microscopy; Terahertz; ESR – STM 66 フライス盤作業の効率化 石川 健司 筑波大学研究基盤総合センター技術室(工作部門) 〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1 概要 2 番目の特徴は加工ガイダンス機能と呼ばれるパ ターン入力加工ができる事である。加工ガイダンス 機能とは、汎用フライス盤では加工困難な斜め直線 や円弧等の複雑な形状を簡単な操作で加工可能にす る機能である。本工作ではプログラムを組まず、こ の機能を使い加工を行った。3 番目の特徴は、NC プ ログラム運転ができる事である。大量に同じ物を作 るときには、プログラムを組んで加工できる。 2008 年 3 月に導入された、山崎技研製 CNC フラ イス盤 YZ-320NCR にはパターン入力加工(加工ガ イダンス機能)が有り、同じパターンの加工ならデ ータを入れるだけで加工が可能である。その機能を 使ってステンレス製引張試験片を作製した結果を報 告する。 キーワード:CNC フライス盤 2.2 加工ガイダンス機能 1.はじめに 加工ガイダンス機能とは、YZ-320NCR に用意され ている加工パターンであり、自分の希望する物を選 び数値を入力すれば、複雑な加工も容易に可能にな る。 工作部門は、学内の研究者(教員・学生)の依頼 によって実験機材・装置の製作、試料・試験片の作 製等を主な業務として行っている。 今回依頼されたのはステンレス製引張試験片の作 製である。ステンレス研削丸棒φ26(SUS304)を支 給され図 1 の寸法に 15 本加工する。引張試験片が個 性を持っていては正確なデータが取れないので、複 数の試験片を精度良く同一寸法に仕上げなくてはな らない。 試験片両端の円柱部分は旋盤で削り、中央部分付 近の角柱加工はフライス盤を使って加工するが、汎 用フライス盤では加工できない円弧が入っている。 山崎技研製 YZ-320NCR にある、加工ガイダンス 機能「輪郭」を使い必要なデータを入力し、刃物の 軌跡が円弧で入り・直線加工・円弧で抜ける加工を 行い、引張試験片が完成した。 本報告では、YZ-320NCR と加工ガイダンス機能ま た試験片固定方法について述べる。 図 2. 輪郭加工 図 2 は加工ガイダンス加工メニューキーで輪郭 加工を選んだ時の、表示部のハードコピーである。 図 1. 引張試験片 2.CNC フライス盤 YZ-320NCR 2.1 特徴 図 3. パターン位置 山崎技研 YZ-320NCR の 1 番目の特徴は、X・Y・ Z の各方向に独立したハンドルを持ち、普通の汎用 機として使えるようになっている。 67 図 3 はパターン位置の最初の画面である。パター ン位置にも図に示している 5 通りが用意されていて、 それぞれのパターンを選ぶと数値入力の画面が出て くる。 図 6. 数値入力画面 図 6 はパターン位置円周の数値入力画面である。 前頁図 3 のパターン位置円周を選択すると、この画 面が出てきて必要なデータを図中に黄色で点灯し、 データを入力すると下にカーソルが移動し次のデー タ場所を示す。 図 4. 側面加工 3.実際の加工 3.1 試験片の固定 試験片の固定方法は、V 溝を切ったアルミニウム 製ブロック(A5056)と同じく V 溝を切った押え板 を使い、上からねじで締め付け固定した。そのブロ ックはフライス盤のバイス(万力)に固定し、試験 片をブロック上にセットする時はバイスから位置決 めストッパーをセットしておき、軸心と左端はどの 試験片も同じ位置なるようにした。座標はストッパ ーに当たる左端を X 軸の-75 として、V 溝の中心を Y 軸の 0 とした。この固定法で、上下二面の加工が できる。 図 5. ポケット加工 加工メニューはここに載せた以外にも、斜め直線 加工、円弧加工、リミット加工、コーナー加工、平 面加工、穴あけ加工が標準であり、オプションで輪 郭加工、輪郭プロと呼ばれる機能もある。ガイダン ス加工の補助機能として測定機能も装備されている。 プログラムを組むには機械の動作を NC 言語に置 き換えて入力する必要が有り、動作を頭の中で想像 しながら組み立て、それが正しいかシミュレーショ ンし作り上げていくため時間がかかるが、同じ物を 大量に作るときには、適している。 一方、加工ガイダンス機能を使えば、加工ガイダ ンスメニューを選択し、加工ガイダンスメニューの データを入力し、すぐガイダンス加工に入れ汎用機 の感覚で NC フライス盤の機能を使え、一品物とか 少量しか作らない場合には、プログラムを作るより 速く加工でき、利便性が高いと言える。 68 図 7. 試験片固定治具 に上に設定しておけば、うっかりハンドルを回し過 ぎても切込まないので、治具や刃物や機械を傷つけ ない。 図 9 に Z 軸リミットの状態を表示する。Z が 0 で リミットがかかるようにセットしてあり、この状態 から Z 軸のハンドルをまわしても切込まない。 3.2 データ入力 図 8. データ入力画面 加工ガイダンスで輪郭を選ぶと図 2 を表示し、輪 郭加工を選択すると図 8 のデータ入力画面の表示に なる。図中の黄色の*がスタートポイントを示し、 カーソルが X の座標に移動している。この図は実際 の入力画面であり、このデータで加工を行った。 入力画面の説明を行うと左上に四角で囲まれた XYZ は今の主軸の位置座標、中上はスタートポイン トから、次座標への進み方(直線で進む時は 1、時 計回りに円弧で進む時は 2、反時計回りのときは 3) を図示している。右上は U0、U1 は上向き削りか、 下向き削りかを表示している。 このデータは軸の上半分の加工データであり、ス タートポイントは、X0 、Y15 である。 スタート時 Z(切込み位置)0、送り速度 160 mm./min、 工具径 10 mm を設定し、 第 1 ポイント(X-21.488、Y10.5)まで下向き削りで 移動。 第 2 ポイント(X-7.5、Y3.5)まで半円運動、R は 21.5 である。 第 3 ポイント(X7.5、Y3.5)まで直線運動。 第 4 ポイント(X21.488、Y10.5)まで半円運動、R は 21.5 という事を表すデータである。 切削加工は、荒加工・仕上げ加工とも直径 10 mm のエンドミルを使用、切込みは工具系補正のφの値 を変えて行った。図中の座標は主軸の中心が通る値 だが、機械のアプローチと逃げ動作が分からないた め 2 次元 CAD で図面を書き、円柱と円弧の接点か ら 1.5 mm はなれたところの座標を取り、そこから 円弧加工が始まり、終わりの座標も同じように求め た。 データ入力が終わると、動作確認のためフライス 盤にドリルチャックをセットし、刃物径と同じ 10 mm の丸棒をくわえ、同時 2 軸送りハンドルにより テーブルの動作を確かめ、締め付けボルトと干渉し ないかを確認し、良ければ記憶ボタンを押し記憶す る。データは 2 パターン記憶できるので X 軸を対称 に下半分のデータも作り記憶する。データの切替え は、呼出 1・2 で行えるので工具径補正で調整しなが ら寸法を出していく。 輪郭加工では、Z 基準面からの切削深さに深さ制 限がかかるので、0 設定を固定治具底面よりわずか 図 9. Z 軸リミットがかかった図 3.3 切削加工 この仕事は初めて行うものなので、切削条件も分 からず普通の加工のように行った。切削抵抗が大き く、丸棒が急激に細くなる形なので、治具を使い切 削部の近くを固定しなければ、ビビリが発生する事 は予測できた。治具の押え板は板厚を厚く、切削部 の間近をボルトで締める構造にした。エンドミルを 直接ミーリングチャックに把握すると、治具の締め 付けボルトの頭がチャックと干渉しそうなので、延 長ホルダーを介して加工した。しかし主軸から刃物 の先端までの距離が長くビビリを発生した。このた めホルダーをはずし、直接エンドミルを把握した。 この時ボルトの頭とチャックが干渉しない位置まで エンドミルを出して把握し、荒取り用、仕上げ用の 2 種類をミーリングチャックにセットしておく。 フライス盤の主軸には、クイックチェンジホルダ ーがセットしてあり、荒取り用エンドミルと仕上げ 用エンドミルそれぞれ切削条件出しを行う。荒取 り・仕上げともに高速度鋼製エンドミルで、切削油 は冷却性を考えて水溶性のものを使用。 荒取エンドミル・コーティング 4 枚刃、切削速度 15.7 m/min、送り速度 80 mm/min。 仕上げエンドミル・コーティング 4 枚刃、切削速 度 25 m/min、送り速度 160 mm/min。 試験片を加工するとき、試験片のほぼ全断面が当 たるので、切削抵抗も大きい。荒取りの時は切込み を 1 mm 以上入れられるが仕上げになると、残りの 板厚も少なくなりビビリやすくなるため仕上げしろ 0.2 mm.を残し荒取りのエンドミルで切削加工する。 仕上げは、ビビリが発生しないように切込みを何 度かに分けて行い、指示寸法+0.02 mm、-0.01 mm 以内の精度を出せた。 以上の作業を行って、15 本の引張試験片は完成し た(図 10・11)。 69 図 10. 引張試験片 1 図 12. 治具側面 4.終わりに 今回山崎技研製 YZ-320NCR を使い、プログラム を作らなくても NC 加工ができ、作業に入るまでの 時間は短く効率的なことを実感できた。また NC 言 語を知らなくても、一般的なフライス盤作業ができ る人なら、誰でも使えるので、利便性が高いといえ る。 治具を作るとき、把握力ばかり考え作ったが、切 粉が逃げやすい形にすれば、切粉で仕上げ面をこす ることはない(図 12)。 今回の作業で、ビビリが発生するのは、刃物剛性 か治具の剛性か主軸の強度不足か又は作業内容の難 易度から来る物か検証はできなかったが、次に同じ 作業が来た時には、エンドミルを太い物に変えて、 変化があるか調べてみたい。 同時 2 軸送りハンドルは、データを入れたときの テーブルの動きを手動で確認できるので、工作物と 主軸の衝突を未然に防ぐことができる、とても有効 な機能だと考えられる。 図 11. 引張試験片 2 . Improvement of the working efficiency of the milling machine Kenji Ishikawa Engineering Workshop, Technical Service Office of Research Facility Center for Science and Technology University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8577 Japan A YZ-320NCR CNC milling machine made by YAMASAKI GIKEN Co. Ltd., was installed in March 2008. This equipment has a pattern input machining function (machining guidance function), and machining can be repeated by simply entering data when machining the same pattern. This report describes the results of fabricating a stainless steel piece for tensile testing using that function. Keywords: CNC milling machine. 70 技術報告 石英ガラス製円筒炉心管内のテーパー管溶着加工 明都 茂、門脇 英樹 筑波大学研究基盤総合センター技術室(工作部門) 〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1 概要 2. 理化学ガラス加工において、トラップ管の様な二 重管を製作する際、内側のガラス管が動かないよう に保持具を使い仮固定し溶着加工する。工作部門ガ ラス工作室にも、何種類かの保持具が用意されてい る。しかし、それらはストレートガラス管用で、テ ーパー状(円錐)のガラス管は構造上固定できない。 今回、製作手順のみを工夫して現有するストレート ガラス管用保持具を使用し、テーパーガラス管の溶 着加工を試みた。 仮固定法の検討 2.1 保持具の検討 ガラス二重管を製作する際、外側ガラス管と内側 ガラス管を何らかの方法で仮固定する必要がある。 通常、双方の隙間の間隔により段ボールや金属の薄 板、または肉厚パイプ状の保持具を挿入し仮固定す る。工作部門ガラス工作室には、何種類かの保持具 が用意されている。ストレートガラス管用保持具の 構造は単純で金属の丸棒をくり抜いた肉厚パイプ状 である(図 2)。 キーワード:ガラス加工、二重管、保持具 1. はじめに 本学研究基盤総合センター工作部門ガラス工作室 に依頼されるガラス機器・装置類は、多種・多様な 形状、寸法、更に単品の工作依頼品が多い。その中 にはガラス管が二重構造になったトラップ管、冷却 管、恒温ジャケット付き反応管、デュワー瓶等の製 作依頼もある。それらの多くは外側ガラス管、内側 ガラス管ともにストレートで長く、簡単な構造の保 持具で製作が可能であった。 今回、石英ガラス製円筒炉心管内にテーパー状で 短い石英ガラス管(以下、ノズルという)を溶着加 工する工作依頼があった(図 1)。現有のストレー トガラス管用保持具を使用することにより、容易に 短時間で製作ができたので製作法を報告する。 図 2. 保持具 図 1. 石英ガラス製円筒炉心管(単位:㎜) 71 材質は軽量化を図るためにアルミ材を使用している。 保持具の外径、内径寸法は、ガラス管の寸法誤差を 考慮し、余裕を持たせてある。保持具外径は、およ そ、外ガラス管内径-3 mm、保持具内径は、内ガラ ス管外径+3 mm で製作してある。 外側ガラス管と内側ガラス管の隙間に挿入し、そ れぞれを固定する。そのままでは隙間が残るので、 充填用にコピー用紙等をロール状に巻いて調整する。 保持具を使用した二重管製作の一例としてトラップ 管の製作時の保持具の使用例を図 3 に示す。 図 3. トラップ管の製作時の保持具の使用例 外側ガラス管と内側ガラス管が、ストレートで長 い場合は、保持具図 2 を使用し簡単に製作が可能で ある。 しかし、今回報告する石英ガラス製円筒炉心管は、 外径φ43 ㎜、内径 φ40 ㎜、全長 1000 ㎜の石英ガラ ス管内の中央付近に、テーパーの形状でしかも短い 石英ガラス管を溶着しなればならない(図 4)。 ③石英ガラスは熱の不導体であるが、加工温度が 1700℃以上と著しく高い。ノズルが短いため溶 着時のバーナー熱による保持具の焼き付き、そ れによる炉心管内への金属不純物混入の恐れが ある。 以上のためノズル専用の保持具を設計製作するこ とは不向きと考え断念した。 2.2 加工手順の検討 今までの製作法や加工手順を様々な角度から見直 した結果、ノズル製作の手順を変更することにより、 ストレートガラス管用保持具の使用が可能となった。 ノズルの材料となる石英ガラス管はノズルの大口 径側と小口径側に合わせた 2 種類を使用する。ノズ ルの製作はガラス旋盤で双方を接続し、その後、指 定のノズル寸法に成形加工する。出来上がったテー パー部分をノズルとして利用する。当初はノズル大 口径側と小口径側を切断して、完成したノズル図 4 を溶着加工することを考えていたので専用の保持具 が必要であった。今回は、ノズル大口径側のみを炉 心管の内径に合わせ切断機でカットし、小口径側(ノ ズル先端)は残しておくことにした。この形状で現 有のストレートガラス管用保持具の使用が可能とな る。また、ガラス管の切断方法にヤスリで 2~3 ㎜の キズを付け、キズを中心にして左右 50 ㎜程度の場所 を持ち、引き離すように切断する方法がある(図 5)。 外径 15 ㎜程度までのガラス管なら軸に対して直角 に切断することが可能である。小口径側の石英ガラ ス管の切断は、予めヤスリでキズを付けておき溶着 後この方法で切断することにした。 図 5. ガラス管の切断、引き切る方法 3. テーパー管の溶着加工 3.1 ノズルの製作 図 4. ノズル(全長 45 ㎜) 炉心管本体は外径φ43 ㎜、内径φ40 ㎜、長さ1000 ㎜の透明石英ガラス管で依頼者からの支給品である。 ノズルの材料となる石英ガラス管は外径φ40 ㎜ (内径φ37 ㎜)と外径φ10 ㎜(内径φ8 ㎜)の2 本を工作部門で用意した。それぞれの石英ガラス管 はノズルの大口径側と小口径側に合わせ、ノズルを 製作しやすいサイズである。 ノズルの製作はガラス旋盤で双方を同心円の異径 管状に接続する。その後、段差を利用してテーパー 形状に成形加工し指定のノズル寸法に仕上げる。保 持用に使用する外径φ10 ㎜の石英ガラス管の長さ は550 ㎜、外径φ40の石英ガラス管の長さは200 ㎜ とした(図6) 。出来上がったテーパー部分をノズル 過去の製作手順では、ノズルを指定の寸法で完成 させてから、保持具を使い指定の場所に仮固定し溶 着加工することとなる。現有のストレートガラス管 用保持具では、テーパー形状のノズルを保持するこ とは不可能である。そのためには専用の保持具が必 要になるが、いくつかの困難な理由が以下に挙げら れる。 ①形状が円錐形、溶着場所が深部なので保持具の 構造が複雑になり設計、製作が困難。 ②今まで何度か依頼があったが、その都度ノズル の寸法が違うため保持具を毎回新規に設計製作 すると効率が悪い。 72 紙をロール状に巻いて調整し挿入する(図8)。 次に、保持具にノズルを固定した物を炉心管本体 に挿入する。保持具と炉心管本体にも3 ㎜程の隙間 があるので、今度は保持具に紙をロール状に巻いて 調整する。紙の巻き加減は、溶着後に保持具を取り 外すので、立てた状態で軽く叩いて保持具が動く程 度にする。炉心管本体内径と溶着されるノズルには 0.5 ㎜の余裕しかないので、強く当たらないように 注意しながら所定の溶着位置まで移動する。溶着後、 ノズルから保持用の石英ガラス管を引き切るための 持ち手として、炉心管端面からは150 ㎜程露出して いる。 (図9-1, 2, 3) として利用するため切断機で加工をする。ノズル大 口径側で図6A部分を切断機でカットする。炉心管 本体の内径がφ40 ㎜あるので、切断後の外径はφ 39.5 ㎜とした。ノズル先端部分(内径φ8 ㎜)は溶 ズ 着加工後に切断するため図6のB部にヤスリでキズ を付けておく(図7)。 図6. ノズル成形加工 図8. 保持具に固定されたノズル 図9-1. ノズルの仮固定 図7. 切断加工後、ヤスリでキズつけ 3.2 ノズルの仮固定 今回使用したストレートガラス管用保持具は外径 φ37 ㎜、内径φ13 ㎜、全長100 ㎜の物を使用した。 このアルミ製の保持具は20年程前に工作部門機械工 作室で製作した物である。始めに保持具のφ13 ㎜の 通し穴にノズルの長い管部分を通し固定する。双方 の隙間が3 ㎜程あるので、φ10 ㎜の石英ガラス管に 図9-2. 仮固定部拡大写真 図9-3. ノズルの保持具固定概略図(単位:㎜) 73 3.3 ノズルの溶着加工 ノズルの溶着に使用したガラス加工旋盤は、日善製 作所製 DE-12(チャック間最大距離 1500 ㎜、チャッ ク能力φ320 ㎜~φ8 ㎜、主軸貫通穴φ120 ㎜、主軸 回転数、無段 0~120 rpm)を使用した。ノズルを仮 固定した炉心管をガラス加工旋盤にセットし毎分約 30 回転のスピードで回転させる。ガラス加工用ガス バーナーで炉心管の外側からノズルの大口径側を加 熱することにより、炉心管が軟化し内側に萎みノズ ルと接触し溶着される。 バーナーを使っての溶着にかかる時間は 3 分程度 である(図 10)。 図 12-1. ノズル先端切断後の完成品(全体) 図 10. ノズルの溶着加工 図 12-2. ノズル先端切断後の完成品(ノズル部) 3.4 考察 保持具の取り外し 保持具の取り外しは、炉心管が冷えたらガラス加 工旋盤から外し、炉心管の保持具が入っている方を 下にして手で持ち、軽く叩きながら少しずつ移動さ せ取り外す(図 11)。 図 11. 保持具取り外し後 3.5 ノズル先端の切断 ノズル先端から繋がっていた保持用の石英ガラス 管の切断は、予めノズルに付けたヤスリキズを上に して左手は本体の中心付近を右手は炉心管本体から、 150 ㎜突き出ている部分を持って左右に引き離すよ うに切断する。 この切断方法はガラスの耐圧力は非常に強く、反 面、張力は耐圧力の 1/10 程度と弱い特性を利用した 方法である。ヤスリキズに引く力が集中し中心軸に 対して直角に切断される。理化学ガラス加工におい ては、日常的に行う切断作業である。 今回考案した製作方法により、完成までの作業時 間は 1 時間 30 分程度であった。(図 12-1, 2) 現有のストレート管用保持具を使用することによ り、専用の保持具を設計製作することなく、容易に 短時間で製作ができた。依頼者にも短時間で引き渡 しができ、保持具の費用も発生しないため安価であ った。 同様の依頼が何件かあり、ノズルの長さ、角度、 先端穴径が違っていたが、保持用の石英ガラス管サ イズをφ10 ㎜管にすることにより、全て同じストレ ート管用保持具が使用可能であった。 石英ガラス管の加工温度は 1700 ℃以上と高温で あるが、溶着加工部より仮固定部分が離れているの で、熱による保持具からの金属焼き付きによる不純 物の付着の心配も無くなった。 ガラス工作室への依頼は、全学からあり内容も多 種多様である。また、依頼件数も年間 400 件程度と 多く、2 名で担当しているので、効率よく作業する 必要がある。また、実験中の器具の破損による緊急 の修理製作もあり、ひとつの物に多くの時間をかけ られない状態である。 以上の点を考えると、現有の保持具を使用し様々 なノズル形状に対応した今回考案した製作方法は有 効な手段であった。 謝辞 本報告書作成にあたり、研究基盤総合センター工 作部門長喜多英治教授、本学京藤康正准教授に感謝 致します。度々保持具等の製作を担当してくださる 工作部門機械工作室技術専門職員の中村三郎氏、同 吉住昭治氏に感謝致します。 74 Welding processing of the taper pipe into the reactor core pipe made from silica glass Shigeru Aketsu, Hideki Kadowaki Engineering Workshop, Technical Service Office of Research Facility Center for Science and Technology, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8577 Japan When fabricating scientific glassware with dual tubes such as trap tubes, fusing is done while temporarily immobilizing with a holder so that the inside glass does not move. Holders of various types are available in the glass workshop of the industrial arts department. However, they are for straight glass tube, and cannot be used to immobilize tapered (conical) glass tubes due to their structure. In this case, an attempt was made to fuse tapered glass tubes by using the currently available holders for straight glass, and modifying only the fabrication procedure. Keywords: fabricating scientific glassware; dual tubes; holder 75 筑波大学プラズマ研究センター防災訓練実施記録 2 平田 久子 筑波大学数理物質科学等技術室(物理学専攻) 〒305-8571 茨城県つくば市天王台 1-1-1 概要 ○予め運転室、大実験室、データ処理室に教職員、 学生を配置しておく。電話番の技術職員は、統括 デスクを担当。大実験室の(エックス線遮蔽用) 重量扉は閉めておく。 ○地震発生。直ちに統括デスク担当職員は机上の緊 急停止釦及び、副制御盤の MG(電動発電機)非 常停止釦を投入。 ○大実験室及びデータ処理室の学生は、担当してい る通電中機器の電源を切断。 ○センター内緊急放送で地震発生、学生等退避を指 示(センター長)。 ○院生・学類生は最寄りの安全な出入り口より外に 避難、外側を通って玄関前のスペースに集合する。 行先表示は移動しない。 ○人員確認係は、予め準備しているカーボン紙付き センター名簿(2 枚組)を用いて、在セ中の人をチ ェックし、運転室へ向かう。運転室で 1 枚は防災 本部へ、他の 1 枚は警備搬出班長へ手渡す。 ○教職員は全員運転室に集合し、防災隊を組織。運 転室の白板に自衛防災組織表を掲示し、在・不在 を各自で記す。防災隊長、副隊長、EL (実験リー ダー)の順に実際の隊長を決定し、組織上手薄な班 へ適宜人員を再配備する。 消火工作班(班長 I 村) 1 消火器・ヘルメット・懐中電灯・トランシー バを確保 2 実験室の火災等の有無の確認作業を指示(防 災隊長) 3 RI の安全の確認を指示(防災隊長) 4 RI 担当は RI の安全確認及び組み立て調整室 内の避難を確認して本部へ戻り、安全・無事 を報告 5 班長が大実験室 2 階ギャラリーより実験室内 を見渡し、1 階東エンドタンク付近に火の手 を、西棟 1 階 1MW ジャイロトロン周辺より 煙を確認。ただちに運転室に戻り、口頭で連 絡 6 緊急放送により 2 カ所からの出火の報告と消 火作業を指示(防災隊長) 7 班長は班員を 2 組に分け、各々で消火器を持 って現場へ急行。消火活動開始。ガスパフ用 筑波大学プラズマ研究センターでは毎年、防災訓 練を行っている。今回、中規模地震と火災を想定し た訓練を行った。その結果、緊急事態への対応につ いて、いくつかの問題点が明らかになった。 キーワード:防災訓練、中規模地震、停電、救護 1.はじめに 大規模の事業所では安全の為に災害を想定した訓 練をする必要がある。殊に大学では学生を預かって いるため、その学生の安全を優先して図らなければ ならない。 前回の報告[1]ではプラズマ研究センター独自の訓 練の報告をしたが、まだ年度の行事として定着して おらず、なかなか前回の教訓が反映されていない。 今般、ここに整理することで次回に確り反映させる べく防災訓練の記録をまとめた。 平成 19 年度は前年度の意見をもとに年度の比較 的早い時期、7 月に実施した。 2.実施前 前年の例に倣い、訓練実施日の朝に、先ず訓練実 施要領を説明し、各職員、各学生の心掛けること、 行動の基本的指針を示した。なお、後に述べる行方 不明になる役の学生の選定は事前に依頼してある。 また、災害の設定は年々条件を追加している。 以下に防災訓練シナリオ及びプラズマ研究センタ ー規則に準拠するセンター防災組織表を掲げる。 ******************************************* 平成 19 年度プラズマ研究センター防災訓練実施要 領(平成 19 年 7 月 17 日実施) 中規模地震(建物の倒壊は無いが実験装置、什器等の 転倒、火災を想定)発生を感知して開始する。 (15 時頃予定)-今回も実験時とし、2 カ所出火を 想定- 76 水素ガスボンベ元弁“閉”確認 8 早く消火作業を完了した組から他方へ移動し、 応援、両方の鎮火を確認 9 消火作業の完了を本部へ報告(消火工作班長) 警備搬出班(班長 K 沼) 1 ヘルメット・ハンドマイク・トランシーバを 確保 2 人員確認係より受け取ったセンター名簿を確 認 3 学生を建物の外へ誘導 4 誘導完了後、各部屋(各階居室側に限定)を 探索し、人の有無を確認 5 学生の 1 人(HM)が不明であることを本部 に連絡(警備搬出班長) 6 救出学生を確認し、最終的な(屋外退避)人 員の確認 7 結果を本部へ報告(警備搬出班長) 総務救護班(班長 MH 田) 1 ヘルメット・(前回新しく準備した)救急用 品・トランシーバを確保、運転室で待機 6*30、5*01 の電話を確保 2 警備搬出班より学生の 1 人が不明であること の連絡をうけ、実験室及び地下の捜索を緊急 放送、実験室内・地下の探索を消火工作班に 指示(防災隊長) 3 消火工作班より実験室南側で学生が動けなく なっているとの連絡を受ける。 4 簡易担架をもって現場に急行 5 行方不明者を確認し、本人の状況を本部に連 絡(総務救護班長) 6 安全経路を通って(重量扉は閉状態、停電の ため駆動モーター使用不可)避難場所に脱出 (消火工作班と連携する) 7 負傷している学生の容体が良くないので、容 体についての連絡と救急車の要請を依頼(救 護係) 8 救急車出動を要請するよう指示(防災隊長) 9 状況を随時本部へ報告(総務救護班長) 10 救急車が到着し、病院に担送された旨を本部 へ報告(総務救護班長) ○防災隊長は、学生全員安全に避難、完全消火、救 護処置完了の連絡を確認して訓練の終了を宣言 ※上記訓練に先立ち、防災用具(ヘルメット、懐中 電灯、ハンドマイク、トランシーバとバッテリー残 量)の点検、消火器の配置、防災隊組織図、緊急連 絡網の掲示の確認等を実施する。 平成 18 年度訓練時からの反映 77 実験時の訓練では、重量扉を閉じて行う。 人数確認表を最新のものにしておく。 救急車の要請もシナリオにいれる。 消火工作班リュックサックのマスク、懐中電灯の 乾電池更新。 持ちやすい救急箱に改良。 複写式人数確認表を作成。 トランシーバでの話し方の練習。 ******************************************* 全国共同利用施設 国立大学法人筑波大学プラズマ 研究センター防災安全管理委員会* プラズマ研究センター自衛防災組織 責任者* : D 副責任者* : N 嶋 総務救護班 班長: MH 田 総務係: N 嶋、(H 田) 、<K 池> 救護係: MH 田、S 山、E 藤 消火工作班 班長: I 村 消火係: I 村、M、 (K 家) 工作係: N 倉、W 所、(O 川) RI 係: K 蔵、(Y 川) 警備搬出班 班長:K 沼 警備係: H 條、S、<I 倉> 搬出係: K 沼、Y 口、(I 井) 人員確認係: Y 田、[K 沼] 但し、 ( )は物理学専攻からの応援部隊、< >は 非常勤職員、[ ]は不在時の代行 *: プラズマ研究センターの組織及び運営の基本に 関する細則第 3 条に基づく ******************************************* 3.実施 前述の流れを前提に実地訓練を行った。自衛防災 隊総務係の筆者は例年、防災本部にてタイムキーパ ーを自主的に行っているが、並行して筆記で記録を 取っている。これは各人の行動を記録しているため、 不明者を出さないためにも重要である。災害を想定 した訓練ばかりでなく実際でも必要と思える。設定 は停電を仮定しているので、連絡は基本的にトラン シーバ(ト/と記す)又は直接肉声による対話である。 センター設置の放送設備(放/と記す)は解説に限っ て使用している。なお、行頭の 4 桁の数字は時刻で ある。 1502 N 嶋: 放/地震発生 1502 S(実験中統括デスク担当) : [実験休止釦押] インタホン/実験停止しました 1502 D: 放/これは演習です。地震が発生しまし た。学生は速やかに建物から避難して下さい 1503 D: 職員は点呼して下さい 1505 Y 田: [員数確認のための表に行先表示板よ り転記し、運転室へ届ける] 1505 D: 防災隊を組織して下さい 1506 D: 実験室の確認と、RI 係は RI の安全確認 をお願いします 1506 Y 川、K 蔵: Y 川、K 蔵 RI 確認に行きます 1506 消火工作班: [黙って実験室へ行きかかる] まずギャラリーから見るだけ (そのまま)消火工作班 5 名実験室へ行きま す 1507 N 嶋: 消火工作班、聞こえますか (再度)ト/消火工作班、聞こえますか (3 度目)ト/消火工作班、聞こえますか (何れも応答なし) 1507 K 沼: 警備搬出班7名、2 階 3 階の居室確認 に行きます 1507 N 嶋: ト/消火工作班、聞こえますか (2 度言うも応答なし) 1509 N 嶋: ト/消火工作班、聞こえますか、どう ぞ (応答なし) 1510 N 嶋: ト/消火工作班、聞こえますか、こち ら本部 (それでも応答なし) 1510 MH 田: 総務救護班 1 名、消火工作班の確認 に行きます 1510 I 村: ト/(実験室)2 ヶ所で出火確認、消火 (作業)中 1510 Y 川: [K 蔵と戻ってきて]RI 異常なし D: 放/実験室で 2 ヶ所出火、消火(作業) しています。東エンドタンク付近、西棟ジャ イロトロン周辺です。 (引き続き)消火活動を お願いします N 嶋: ト/消火工作班、聞こえますか 消工班: ト/消火活動中です N 嶋: ト/応援が要りますか、こちら本部 I 村: ト/応援は必要ありません 1512 K 沼: ト/学生は避難しています。HM 君以 外は玄関前(の避難場所)にいます N 嶋: ト/HM 君が行方不明です ?: ト/聞こえますか? N 嶋: ト/搬出係から HM 君が行方不明との 1513 1515 1517 1520 78 ことです K 沼: ト/その通り、HM 君不明です D: 放/(不明) 消工班: ト/鎮火しました D: 放/消火工作班へ、学生 1 名行方不明 N 嶋: ト/学生 1 名不明、居室の捜索は終了 しています。実験室の火元確認と行方不明者 の捜索をして下さい 消工班: ト/消火工作班捜索中(後で考える と火元捜索の意だったらしい) N 嶋: ト/(学生)捜索中、 (捜索)体制を知 らせてください。消火工作班、学生を捜索し て下さい(結局、 “体制”の意を汲んで貰えな かった) N 嶋: ト/こちら本部、捜索体制は誰が何処 を見ているか、状況を知らせて下さい 消工班: ト/(他には)火元が無いことを確 認、本部へ戻ります N 嶋: ト/消火工作班へ、行方不明者の捜索 に入って下さい 消工班: [本部へ戻る] N 嶋: [消工班へ状況説明](トランシーバ で言ったことが聞こえなかったらしい) 消工班: [再度実験室へ] N 嶋: ト/消火工作班、応答して下さい 行方不明者捜索の分担を知らせて下さい 消工班: ト/3 人 1 組で実験室内を捜索中 N 嶋: ト/具体的にどちらを(探してますか) どうぞ N 嶋: ト/本部です、消火工作班、聞こえま すか 消工班: ト/I 村、K 家、N 倉、(不明) 発見しました。消火工作班、HM 君を発見。 西の南端エアコン前です(身内しか判らない としても、もう少し誤解し難い言い回しの方 がよい…実験棟南 RF 発振器そばエアコン前 とか) N 嶋: ト/本部了解、救護係、 [と、向わせよ うとしたが] (果たして必要か、ということで) 消火工作班、 (発見した)行方不明者の状況を 知らせてください 消工班: ト/倒れていて動けない状態 N 嶋: ト/こちらから救護係が向います。並 行して火元の… MH 田: 救護係 3 名、救出に行きます。担架 を持って急行します D: 放/(実験室の)火はおさまりました。 学生が1名倒れていて救護中です MH 田: ト/救護係現場到着、本部どうぞ N 嶋: ト/被害の状況を知らせて下さい 1522 1522 1522 1523 1523 1524 1524 1525 1525 1526 1526 1527 1527 1528 MH 田: ト/倒れていた学生を乗せ、担架で 外へ運び出し中、どうぞ MH 田: ト/こちら救護係、工作係も到着し ました。怪我人は腹痛を訴えています 西棟重量扉を開け、運び出す作業中です N 嶋: ト/本部了解 N 嶋: ト/こちら本部。救護係、怪我人の状 況を知らせて下さい。救急車は必要ですか MH 田: ト/こちら了解 N 嶋: [K 池さんに電話リストを示し]ここ に電話するが…(本部で誰が救急車要請の電 話をかけるか、となり今回はK池さんにお願 いしようということになった) MH 田: ト/こちら救護係、西棟重量扉は(停 電設定につき手動ハンドルを回して開けよう としているが)とても開きそうにない。 救出ルートの変更をできないか N 嶋: ト/こちら本部、扉開けのデータを取り たいのでもう少し(開ける努力を)やって下さ い 工作係: ト/こちら工作係、(扉を開ける)努 力をする。10 分以上経ると思います N 嶋: ト/あと 2~3 分努力してどの程度開け られるかみて下さい。残りは(今回は)電動で 開けて退出して下さい MH 田: ト/こちら救護係、重量扉は 5 分ハン ドルを回して 50 cm 開いた。残りは電動で開 けます N 嶋: ト/(本部)了解。担架を運び出せる幅と それだけ開けるのに要する時間を割り出して 下さい MH 田: ト/恐らく 15 分以上経る見込み N 嶋: ト/本部了解 MH 田: ト/こちら救護係、怪我人の状況は 工作係の到着時は腹痛を訴えていました。可 成り腹部を強打した模様(内蔵破裂の設定ら しい) 一般的処置をできないので救急車の要請をお 願いします N 嶋: ト/救急車(の出動)要請します D:放/救護係が(怪我人を)外へ運び出そう としています 消工班: ト/消火工作班、本部へ向います D: 放/全体の状況を知らせます 負傷者を(実験室の)外へ出しました。救急 車の出動を要請中 MH 田: ト/救護係です。救急車待ちです。 怪我人は意識を失ったまま担架の上にいます N 嶋: ト/救急車は(既に出動)要請済です。 あと 2 分で救急車は到着予定(とのこと)で 1529 1530 1531 1531 1532 1534 1536 1536 79 す (屋外への退避者の)人数を確認して下さい MH 田: ト/救護係、了解 N 嶋: ト/当初作成した員数チェック表を使 って最終的に残っている人を確認して下さい MH 田: ト/救護係です、救急車到着。怪我 をしたHM君に職員のE藤さんが付き添い、 救急車は病院へ向かいました N 嶋: ト/最終の人員チェックをお願いしま す N 嶋: 運転室点呼。11 名 D: 放/現状報告します。学生の安全を確認 しました。火災は消火しました。救護係は、 処置完了、念の為学生全員の安否を確認して 下さい MH 田: ト/こちら救護係、本部応答願いま す N 嶋: ト/本部です、どうぞ ト/(再度) MH 田: ト/聞こえてます、どうぞ N 嶋:ト/こちら… MH 田: ト/聞こえます、警備係の(トラン シーバの)聞こえが悪い…(不明) N 嶋: ト/警備搬出班、トランシーバ不調な ら(そこに一緒にいる、役目を終了した)救 護係の(トランシーバ)を使って下さい K 沼: ト/どうぞ N 嶋: ト/状況を報告してください K 沼: ト/学生 1 名、職員 1 名病院へ…(ザ ーザー不明) 他は OK です N 嶋: ト/警備搬出班、聞こえ難いのでゆっ くりもう一度伝えて下さい K 沼: ト/教職員 10 名、学生 23 名全員避難 しました。内、職員 1 名、学生 1 名、救急車 で病院へ行きました N 嶋: ト/こちら本部、元のチェック表では 学生 21 名になっています。23 名では数が合 いません N 嶋: ト/警備係、行先表示板では学生 21 名だったが、今回は 23 名と回答。病院へ行っ た HM 君を(差し)引くと 20 名の筈だが、 23 名となった根拠を知らせて下さい。教職員 数は元が 10 名で(病院へ行った)E 藤さんを 差し引くと 9 名となり、数は合います K 沼:ト/警備係から。学生はここに 23 名居 る。内 1 名は(想定地震の後)外出から戻っ たばかり。もう 1 名は(行先表示板の)表示 を“帰宅”のままセンターに居た。それを考 慮すると全員揃っている(救急車で担送され たことになっている HM 君もカウントしてる 模様) 1540 N 嶋: ト/本部了解 D: 放/訓練終了。運転室に全員集まって下 さい 1542 [全員運転室に揃う] 4.検討会 K 蔵: センター規則に則り防災訓練を終了しまし た。気の付いたことを述べて下さい。 H 田: 担架に人を乗せるとき落ちないよう固定す る為の固定ベルトや、担ぐ人の腕の負担を 軽くする為の肩紐があるといいのではない か。 S 山: 乗せる人を固定する紐は必要。担ぐのは 4 人なので肩紐は邪魔になるので不要。 N 嶋: 4 人で担架を担ぐと実験室の重量扉はもっ と広く開けなければならないか。 MH 田: 実質 1 m 開いていればよい。但し、扉の出 っ張り(駆動モーター内蔵部)を含むと実 際には 1.5 m 開けなければならない。それ 位開けるには 15 分経る。 N 嶋、H田: ハンドルのギヤ比で稼いで重さを動か しているから。 N 嶋: 全ての重量扉が同じギヤ比であろう。 I 倉: …(不明) N 嶋: 非常電源にぶら下げれば 1 回位は開けられ ないか。 MH 田: 15 分経るといっても(その間)怪我人を 出せないが救急車が到着するまでの時間… (と同じ位か) D: 重量扉の件は新たなポイントである。 N 嶋: 学生で地震発生とされた時、実験室にいて、 装置の電源を切るという作業を試みたのは 何名? [挙手]2 名だけ(他に教員 1 名) N 嶋: 基本的に地震発生で停電となり、放送設備 を使えないので、学生は自主的に非難する。 実際に避難の誘導は? 学生は迅速に動いていたか? N 嶋: カーボン紙を使用した人員チェック表(の 複写)は上手くいった。 懐中電灯が圧倒的に少ない。事務にも必ず 1 個用意する。次回は照明を消して訓練す る。 懐中電灯手配は E 藤さんにお願いする。 トランシーバが警備搬出班のはヘタって来 た。また、一部混線していた。 (前回は大丈 夫だったが、)屋外へ出ると聞き取れない。 D: N 嶋: I 村: N 嶋: I 村: N 嶋: I 村: N 嶋: I 村: H 田: Y 川: N 嶋: D: N 嶋: I 村: 80 トランシーバを使用する時は機能チェック してから持ち出す。まずスイッチを入れて 相互に連絡を取れることを確認してから使 用。 (ハンズフリー機能のを検討してほしい。 本部で聞き取り難いので心掛けてゆっくり 話して欲しい。トランシーバ使用の際は名 乗りと相手名を言うことを徹底) RI 係は(確認に行く際)実験室に入って重 量扉(どちらの?)を通らずに…(不明) 今回、人数の少ない消火工作班に合流した 時は消火中だった。 (既に鎮火の意か?) 初めはトランシーバは活きていた。現場の 消火が終えた頃、行方不明者の件の連絡の 際、同時に他の連絡が入って混乱し、直ち に不明者の捜索の指示が伝わらなかった。 運転室で改めて指示を出したが、やりとり が上手くいかなかった。 捜索の指示? 消火確認…(不明)…とほぼ同時。 消火工作班の 7 人を(不明者捜索のため)4 人と 3 人(のグループ)に分けたが誰が何 処に(捜索しているのかの問いに)はとて も応えかねる。 火災を消火し終えて、 (次に)捜索チームに 分ける時。 とても個々人の名前は憶えていられない。 こちら(本部)は聞きたい。 個々人の動きを確認して、連絡することは (作業が忙しくて、とても)できない。 タイムキーパーが実際でも本部で記録を取 っていれば(現場の)消火工作班は憶えて いる必要はなく、連絡を一方的に入れてく れればタイムキーパーが記録しておいてチ ェックをその都度するようにできる。 消火工作班にトランシーバをもう 1 台用意 し、チームに分けた際にサブ班にも持たせ る。 トランシーバを持ってる(現場の)人は自 分の所に誰がいるかは判る。 (ところが)本 部は誰がどの様に動いているか判らないの で困る。 誰が何処に向っているかが判れば…(次の 対応も考えやすい) サブリーダーを作る。 (係のリーダーでいい か) 本部としては現場の状況、安全を把握して いたい。 現場はそれどころじゃない。消火作業中に 捜索するのは難しい。 (今回はタイミングが ギリギリずれて、重ならなかった。) 作業チームを 1 階と地階に分けるのを完全 に本部へ連絡する余裕はない。 D: 事情は判る。 N 嶋: 警備搬出班は? 名簿(チェックリスト)をカーボン紙複写 で作ったが、 (運転室の)チェックは上手く いった。 Y 田: 屋外避難組は 1 回目は名を読み上げ、挙手 で確認した。(不明者となっていた筈の) HM 君の名を呼んだ際に挙手したのがいた。 (代返の常習者か?) この学生分は K 沼が読み上げ、Y 田が表に チェックし、それを運転室に届けた。 (実際にはその前に 2 階の行先表示板で 在・不在表示を記録し、それを運転室へ届 ける。自衛防災隊の警備搬出班長が複写の うちの 1 枚を持って、残っている学生を外 へ誘導し、前述の作業となる) N 嶋: 当初と鎮静後で学生の数が違うのは… K 沼: 後のは人数を数えた。 それまでの間に外出から戻ったのが 1 名加 わった。他に、行先表示を“帰宅”のまま でセンターにいたのが 1 名いた。 (この学生 は 1 回目の点呼で呼ばれなかったことにな る) N 嶋: 誰? Y 田: N 登君。 N 嶋: 今後は表示をちゃんとするように。 D: 人数チェックが合わない、と 5 分位時間を 潰した。行先表示は正確に。 H 田: トランシーバの不具合について、屋外避難 組は停電中といえども玄関インタホンを使 えないか。 I 倉: インタホンは CVCF にぶら下がっているから 停電時でも使える。 D: 救護係は? MH 田:今回はイベントが増えて、全般に不完全だ ったが、重量扉(の件)以外は OK だった。 D: 救護係からの連絡は適格だった。救急車の 要請も…(不明) 重量扉の開かないのは、実際にあれ以上早 くは開けられない。担架に人を乗せては階 段を使えなくて…(不明) I 村: 救急車の要請は重量扉を開けながら(並行 して)できないか。 MH 田: 負傷者を発見したときは意識があり、救護 係が到着した時には意識がなくなっていた。 N 嶋: 容体を知っているのは救護係で、救護係の 判断(をもとに)で救急車出動を要請する。 81 N 嶋: S: N 嶋: Y 川: E 藤: N 嶋: H 田: N 嶋: K 沼: N 嶋: I 倉: H 田: I 倉: H 田: I 倉: N 嶋: 救急車の要請には容体を伝えなければなら ないので、詳しい状態を知って判断してか ら(要請する)。 K 池さんに救急車の出動要請をしてもらう 時、 “意識不明”とした。重量扉を開けるの に時間が経るなら(到着している)救急車 を待たせる。 他に必要なものはあるか。 外との連絡は EL の携帯電話を活用できな いか。建物マスターキーも持って出るか。 又は災害本部に備えるか。 KP がマスターキーを持って出、消火工作班 に渡す。 RI 確認に組立調整室に入るが(実験中、重 量扉が閉まっていて、尚且つ外の鍵が)開 いていないことがある。今回はたまたま開 いていたがマスターキーは必要。 今までは(学生が)実験室で倒れていた、 という設定だが居室で人が倒れている、と いう設定は? 考えた。 訓練に新しい要素は 2 つ作らないという原 則(今回は 2 ヶ所出火、救急車の要請)で 外した。何れ考慮する。 レスキューの要請は? 前回は 2 ヶ所出火したらハロン消火設備を 用いることを考えた。飽くまでもやれる範 囲で(努力する)。 行先表示板のマグネットが地震で落ちた ら? 中規模という設定なので、それ以上の強さ の地震のときは逃げる(のみ)。 防災隊の組織に時間が経りすぎている。段 取りにも時間が… (この記録により)防災隊組織までは 4 分 である。 (警備搬出班は)学生を避難させ、実験室 で手が足りない時には職員は(屋内へ)戻 る、ということにしたら?(外の待機組は 暇を持て余していたようだ) (別件で)昨日の上中越沖地震の際に運転 室 MG 制御盤に警報がでた筈だが(警報は 5 分程で鳴り止み、異常表示のアナンシエ ータは点灯し続けている筈)地震の後の点 検の際には新しい警告表示をチェックして ほしい。 EL、KP(鍵当番)の連絡事項に。 非常通報装置に入れられるか。 今は入っていない。 非常通報装置には、火災、停電、その他(真 空異常)が入っているがこれに加えるか。 I 倉: そこまでしなくもよいが、とにかく記録し ておいてほしい。 N 嶋: 放っておいて致命的か。 I 倉: 実験日誌には異常なし、とあった。 K 蔵: EL と携帯電話を持っていたので(センター へ)来たが、電源盤は気が付かなかった。 今後はチェックする。 S: 電源停止状態で点灯しているものでランプ リセットできないものはその旨の目印を付 けておいて異常時に判るようにする。 I 倉: [この後、電源の電力消費はあるにしても 不要な表示が点灯しないようにし、異常が はっきり判るように制御電源をオンにし た] HM: 怪我人の立場からは迅速に対応を望む。 終了 ④ ⑤ ⑥ ⑦ 定期的に訓練を行う、新たな設定を設けて咄嗟 の応用ができるようにすることも大切である。 実験中の地震の際の怪我人の担送ルートの検討 が大きな課題として残った。 怪我人を担架で屋外に運び出した際、救急車到 着まで担架を地面に直に置くのでなく、机か台 に乗せるのが好ましい。 今回も実現しなかったが、停電で照明が消え、 非常灯と懐中電灯のみの行動がどこまでできる かを確認したい。 前回も書いたが、大きい地震でただ避難するだ けというのも所用時分、避難経路の確認という 意味で意義がある。 謝辞 筑波大学技術報告は通刊 29 号となりました。技術 職員の日頃の努力の結果を発表する場を設けること に御尽力下さった大山超初代筑波大学研究協力部長 に心より感謝申し上げます。 装置よりも人命を、職員よりも学生の安全を、と 在職中から唱えられていた初代プラズマ研究センタ ー長三好昭一先生に謹んで感謝致します。冷静に安 全を得ることが如何に大変かを実感します。 本報告の体裁において、筑波大学システム情報工 学等技術室山形朝義技術専門職員の御協力を戴きま したことをここに記し、感謝致します。 16:30 5.整理して気の付いたこと ① 火災発生すれば火災報知器が鳴る筈だが、停電 の時は如何か。 火報点検の N 防災に問うと、火報のバッテリー は 30 分位は使える、との回答を得た。 ② トランシーバの話し方を事前に練習しておいて もいざ、混乱に落ち入ると正しい話し方ができ なくなってしまう。 また、119 番や 110 番への緊急電話は大学の部 局名からでなく、所番地から落ち着いてゆっく り言うように心掛けたい。 ③ 前回の訓練での教訓が生かされなかったり、で きた筈のことができないこともあり、心掛けて 参考文献 [1] 平田久子、筑波大学プラズマ研究センター防災訓練実 施記録、筑波大学技術報告、27、(2007)91-94. Report for an emergency drill at Plasma Research Center in the University of Tsukuba II Hisako Hirata Institute of Physics, Technical Service Office for Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8571 Japan The training for protection against disasters has been performed every year in Plasma Research Center in the University of Tsukuba. In this time, some necessary practices were carried out by assuming that a pretty strong earthquake and a fire broke out. Some problems for the approach of emergency were found out. Keywords: an emergency drill; medium class earthquake; power failure; rescue 82 筑波大学技術報告 No. 29 第 8 回筑波大学技術職員技術発表会報告集 平成 21 年 3 月発行 編集 筑波大学技術発表会実行委員会編集委員会 第 8 回筑波大学技術職員技術発表会実行委員会 発行 筑波大学研究事業部研究事業課 〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1 電話 029 (853) 2924 筑波大学数理物質科学等支援室 〒305-8571 茨城県つくば市天王台 1-1-1 電話 029 (853) 5651 第 8 回筑波大学技術職員技術発表会実行委員会 実行委員長 水林 博 副学長(研究) 実行委員 [数理物質科学等技術室] 平田 久子 (物理学専攻、実行委員代表) 鶴見 明 (数学専攻、実行委員副代表) 小泉 陽子 (化学専攻) 保谷 博 (電子・物理工学専攻) 淀縄 文男 (電子・物理工学専攻) 伊藤 伸一 (物性・分子工学専攻) 松山 英治 (物性・分子工学専攻) [数理物質科学等支援室] 山本 重悦 (支援室長) 浦田 顕久 (支援室長補佐) [システム情報工学等技術室] 中島 孝 (装置開発班) 和田 勉 (情報システム管理班) 北原 匡 (情報アプリケーション班) [生命環境科学等技術室] 田所 千明 (農林工学系) 有本 光江 (応用生物化学系) [農林技術センター技術室] 本間 毅 比企 弘 [体育芸術系支援室] 林 剛人丸 (芸術) [ 医学系技術室] 大野 良樹 (医学) 佐藤 晶子 (医学) 小林 浩三 (医学) 瀬谷 祐一 (医学) [研究基盤総合センター技術室] 木村 博美 (応用加速器部門) 近藤 裕 (低温部門) [環境安全管理課] 長井 文夫
© Copyright 2026 Paperzz