広 報 メディア 研 究 所 代 表 上 野弘子の フランス人 女 性 監 督 が 描く 1 月17日。 震 災 被 災 者 の 孤 独 死と魂 へ のレクイエ ム 毎年この日の夕刻に、東遊園地を訪 れることにしている。 「 メモ リ ー ズ ・ コ ー ナ ー 」 竹筒の中に揺れる炎を前に黙とうを し、慰霊と復興のモニュメントの水 面に白菊を手向ける。そして、志半 ばに逝った元同僚のネームプレート の前で、目を閉じ祈りを捧げる。 頭上をヘリコプターが舞い、手を合 わせ祈る人々の姿をカメラのレンズ が追う。 竹筒に書かれた「命」 「希望」などの 文字を目で追いながら歩いていた私 は、じっと炎を見つめる外国人女性 寡黙でネガティブな人間に変貌し ていた。 取材で石田を訪ねたアダは、震災 の後遺症なのか、なかなか質問に 監督 オドレイ・フーシェ 撮影 ニコラス・ゴラン 出演 デ ボラ・フランソワ 西島秀 俊 、 阿部寛 國村隼、倍賞美津子 ほか 3 月 9 日から元町映画館で 公開予定 © NOODL E S PRODUC TION, FILM ZINGARO 2 INC., FRANCE 3 CINEMA, 2011 答えようとしない彼に、なぜか魅 かれていく。そんな彼女を心配し た岡部は、石田に会うことを反対 する。岡部は、アダの相手をしてい るのが孤独死した石田の亡霊だ と気づいていたからだ。 「孤独な死を遂げた人は、過去の 肉体が体験した感情に引きとめ られ、亡 霊となる。そして、誰か の愛を求め、成仏する前に一番大 に気がついた。炎に照らしだされた 切な思い出を残していく…」 。神戸 金色の髪と美しい横顔の向こうに、 で出会った人々に、アダはこう教 スタッフらしき人々が見えた。映画の撮影なのだろうか。場の雰囲気 えられる。 を壊さない、控えめで自然な撮影手法に好感がもてた。 孤独死に興味をもったアダは、もう一度、石田に会い、現世に残した あれから 3 年。 彼の思いを受け止めようとする。そして、岡部の故郷でもある淡路 今年、映画のポスターの中で、あの日の女性に再会した。 島を訪れ、震源地の断層に孤独死した人々の霊が哀しみを埋めに 彼女の名は、デボラ・フランソワ。 きていることを知る。 阪神・淡路大震災から15 年目の神戸を舞台にしたフランス映画「メ 新進気鋭のオドレイ・フーシェ監督は、母親の友人が震災の数年 モリーズ・コーナー」の主演女優だ。フランスで 2012 年に公開された 後に神戸で孤独死したことをきっかけに、この作品に取り組んだと 同作品が、今月、神戸でも上映されることになった。 いう。独自の世界観のなかで阪神・淡路大震災の犠牲となった人々 への鎮魂の思いを深く静かに綴っている。 物語は、神戸を訪れたフランス人ジャーナリスト・アダが、震災後 15 見慣れたはずの神戸の風景が、光の当て方のせいか、映像の中で 年を経過してもなお、心の傷が癒えない被災者の心にふれるという は異国の街のように見える。同様に外国人監督が見つめた震災と もの。通訳の岡部に西島秀俊、被災者の石田を阿部 寛が演じる。 被災者の姿も、何重ものフィルターがかかった別世界の事のように 震災で家族も仕事も失った石 感じられた。 (2011 年フランス /カナダ。1 時間 22 分) 田は、一人で神戸市内の復興 上野弘子 広報メディア研究所代表。有限会社インターメディア代表取締役 住宅に住んでいる。かつて新 神戸市生まれ。雑誌「神戸からの手紙」編集部を経て(株) サンケイリビング新聞社へ。 編集長として約10年にわたり阪神間、神戸エリアを担当した後、96 年同社を退社し独立。 聞記者として活躍した彼は、孤 さいな 独と絶望、喪失感に苛いまれ、 © NOODLES PRODUCTION, FILM ZINGARO 2 INC., FRANCE 3 CINEMA, 2011 広報ツールの企画・制作、講師、審議委員、エッセイストなど幅広く活動。 公式 HP URL http://hiroko.littlestar.jp/top.html KOBE グー 21
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