H24授業のエキスパート養成事業 中2 音楽科 「歌詞の内容や曲想を味わい、思いを込めて歌おう」 《本題材で重点を置く指導事項》 A表現(1)歌唱ア、ウ B鑑賞ア 〔共通事項〕音色、旋律、速度、テクスチュア、構成 ● 歌詞の内容や曲想を味わい、曲にふさわしい表現を工夫して歌うこと。 ● 声部の役割と全体の響きとの関わりを理解して、表現を工夫しながら合わせて歌うこと。 ● 音楽を形づくっている要素や構造と曲想との関わりを理解して聴き、根拠をもって批評するなど して、音楽のよさや美しさを味わうこと。 《主な言語活動》 ● 生徒が楽譜を読み解きながらどのように歌ったらよいかについて、話し合う活動を通して、音楽 表現を高める。 《題材の目標》 ○ 歌詞の内容や曲の仕組み、曲想の変化に関心をもち、曲にふさわしい表現を工夫して歌ったり、 鑑賞したりする活動に主体的に取り組む。 【音楽への関心・意欲・態度】 ○ 作詞者の心情を汲み取り、歌詞の内容を理解するとともに、音楽を形づくっている要素の変化や 声部の役割などの働きを生かして、曲にふさわしい音楽表現を工夫し、どのように歌うかについて 思いや意図をもつ。 【音楽表現の創意工夫】 ○ 創意工夫したことを生かし、曲にふさわしい音楽表現をするために必要な発声方法、発音の仕方、 呼吸法などの技能を身に付ける。 【音楽表現の技能】 ○ 合唱曲を比較鑑賞し、2曲の仕組みの違いを聴き取り、それぞれの特徴を感じ取りながら、よさ や美しさを味わう。 【鑑賞の能力】 第 1 次 ◇ 「僕らは忘れない」 、学級歌、 「信じる」の歌詞の内容に関心をもつとともに、歌詞に込められた 思いを生かして表現する。 第 2 次 ◇ 仕組みの違う合唱曲を聴き比べ、音楽を形づくっている要素と曲想との関わりを理解して、それ ぞれが捉えた特徴について話し合った後、批評文を書き、曲を味わう。 第 3 次 ◇ 「信じる」の歌詞の内容と曲想の変化、音楽を形づくっている要素を関連付け、曲にふさわしい 表現を工夫し、どのように歌ったらよいかについての自分の思いや意図をもって歌う。 授業改善のポイント ◆ 表現と鑑賞の関連【参考1】 合唱表現に生かすため、鑑賞教材として、曲の仕組み の違いによる印象の違いを聴き取りやすい楽曲を取り上 げ、比較鑑賞を行った。 ◆ 言語活動を取り入れた指導の工夫【参考2】 教師主導の授業となりがちな合唱の授業で、生徒が自 身の思いを伝え合い、その思いを聴き手に伝えるには歌 い方をどのように工夫したらよいかを話し合う活動を取 り入れた。 ◆ 話し合い活動のまとめ【参考3】 生徒が聴き取った音楽を形づくっている要素を、楽譜上で確認したり個人の意見を学級全体で共有した りするために実物投影機を利用した。 【参考1】表現と鑑賞の関連 和声の響きを生かしたバッハ作曲「マタイ受難曲」の一部と、多声の特徴や面白さを感じ取ることので きる編曲の「アヴェマリア」を取り上げて比較鑑賞し、音楽を形づくっている要素と曲想との関わりを理 解して解釈したり、それぞれの面白さを考えたりする活動を通して曲を味わわせた。 生徒からは、 「和声の響きは迫力がある。 」 「授業ではソプラノだけが主旋律だと思っていたので新鮮だ。 」 といった意見が出され、音楽の仕組みによる特徴の違いを自分なりに感じ取ることができた。 【参考2】言語活動を取り入れた指導の工夫 自分たちの思いや意図が聴き手に伝わるように音楽表現を工夫する活 動の場面で、付箋を活用したグループでの話し合い活動を取り入れた。 全員に4色の付箋を配布し、歌いながら感じたことや楽譜を読んで気付 いたことを要素ごとに色分けして付箋に記入させた。パート練習では、付 箋を貼った箇所について、実際に歌いながら試し、どのように歌いたいか 意見を出し合い、その後、場面ごとに学級全体で意見をまとめた。 生徒は、 「この部分をもっと強調するためには、どう歌ったらいいだろ う。 」とか、 「この小節を歌うのが難しい。 」と、その方法や理由を考える 中で、転調による曲想の変化、和音の響き、強弱の対比などの要素の働きや、曲の構成に気付き、曲想を 生かしてどのように表現を工夫したいか、自分たちの思いをもつことができた。 【参考3】話し合い活動のまとめ 【参考3】話し合い活動のまとめ 話し合ったことを基に楽譜を読み解いていく 際には、実物投影機で楽譜を拡大して映すとと もに、模造紙に歌詞のみを縦書きで示し、生徒 からの意見を、上記の付箋紙と同じ色に要素ご とに色分けをして書き込んだ。 歌詞と楽譜の両面から要素の働きや音楽の仕 組みを確認することで、生徒は、歌詞の内容や その背景にある心情を深く味わったり、個々の 思いや意図を学級全体で共有したりすることができた。 ♪ 授業を終えて… この曲は2年生にとって初めて取り組む大曲であり、 「難 しそう」と戸惑いながら歌い始めたが、生徒は、1学期に実 施したカンボジアにおける地雷除去活動についての講演と 関連付けて、 「私」の素直な気持ちを追いながら詩の情景を 捉え、曲に夢中になっていった。また、付箋を用いた話合い や比較鑑賞を取り入れることにより、今までよりも深く楽曲 を味わって表現することができたと思う。授業後の生徒の感 想からも、この曲を歌い上げた喜びや合唱を通しての学びが感 じられた。 今後も、様々な楽曲との出会いを大切にし、曲に本気で向 き合い、自身が思考できる場、仲間と考えを共有できる場の 設定をし、より深く曲を味わわせながら合唱活動に取り組ま せたい。 ♪ 生徒の感想から… ○ 歌詞の意味について触れ、どんな 思いでこの歌詞が書かれたのかな ど深く学んでいくにつれ、歌い方に 抑揚を付けられるようになった。 ○ 「信じる」を歌う時がいつも楽し みだった。この曲の歌詞や、曲の構 成がとても奥が深いなあと思う。だ から、歌っていくと、どんどんとこ の曲の謎のようなものが解けてい く感じがしていた。ソプラノ、アル ト、男声の複雑に絡みながら統一感 があるところがとても好きだ。 ○ 歌詞の内容について自分自身の イメージをもったり、歌詞の内容や 曲の仕組みから作詞者や作曲者は、 こんな風に歌ってほしいのではな いかと想像したり、聴いてくれる人 にその思いを伝えたいという気持 ちをもって歌ったりしたことで、歌 い終えた後に今まで味わったこと がないくらいの感動と達成感があ りました。
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