「ドロップ着地における下肢三関節モーメントによる姿勢制御の生体動力学解析」の概要 本論文では画像解析装置とフォースプレートを使用し,逆動力学解析を中心にドロップ着 地の解析をおこなった.そこで,本研究の目的は,ドロップ着地中の姿勢制御を下肢三関節 モーメントの発揮パターンから検討し,この発揮パターンが転倒しない制御にどのように影 響を及ぼしているか,着地中の姿勢制御はどの関節,またはどの筋群によって大きな影響を 受けているのかを動力学の観点から解明することであった. 1)各章のまとめ z 第 3 章では水平地面反力を減少させることにより股関節モーメントを低くさせ,低いサ ポート・モーメントでドロップ着地ができることがわかった. z 第 4 章では STIFF なドロップ着地をおこなう場合には,SOFT よりも後方への回転安 定性が低くなるので,安定性の制御のために膝関節屈曲モーメントと股関節伸展モ ーメントの協調作用が重要な役割を果たすことがわかった. z 第 5 章では股関節はあまり負の仕事をしていないが後方への回転安定性を保つため に重要であることがわかった.そして,関節パワーの発揮パターンにより衝撃緩衝を おこなっている時と姿勢制御をおこなっている時があることが推測できた. z 第 6 章では摩擦のために地面反力ベクトルが傾き,関節位置までの距離が変化し, 特に股関節モーメントが変化することがわかった. 2)ドロップ着地の姿勢制御をするために重要なこと z 関節モーメントから膝関節モーメントと股関節モーメントの打ち消しあうパターンが重 要であることがわかった. z 回転安定性から SOFT な着地の場合,後方への回転安定性が増加することがわかっ た. z 関節モーメントと回転安定性から地面反力ベクトルを股関節・質量中心付近に向ける と股関節モーメントが減少し,回転安定性が高まることがわかった. z 関節パワーと関節仕事量から衝撃緩衝をおこなっている時と姿勢制御をおこなって いる時があることがわかった. 3)まとめ これらの結果を総合的に考えると,地面反力ベクトルを股関節・質量中心付近に向け回 転安定性を高めつつ,大腿四頭筋による衝撃緩衝と,ハムストリングスによる姿勢制御を交 互におこなうことがドロップ着地には重要であることが示唆された.また,ドロップ着地におい て転倒しないための回転安定性は下肢関節の屈曲角度により後方のみに影響がでることが わかった.この後方への回転安定性にはハムストリングスの伸張性収縮が深く関係している と考えられた.これらをわかりやすく説明するのであれば,ドロップ着地では衝撃緩衝ばかり に注目するのではなく,姿勢制御にも注目する必要があるということになる.そのためには大 腿四頭筋だけでなくハムストリングスの筋活動にも注目していく必要があるということになる.
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