4.授業展開 教師の指示・発問・説明 0 導 入 8 月に開かれた北京オリンピックでは,選手 の皆さんの熱戦に感動しましたね。ところで, オリンピックの準備段階では,中国政府や北京 市は、市民のマナー向上キャンペーンを大々的 に展開し、市民の反発も招いたようです。 ・なぜ,中国政府や北京市は,オリンピックを 前に,市民の反発をおしてまで,市民のマナ ーをうるさく指導したのでしょうか。 中国政府による指導の内容には ,「先進国た る中国の国民のとるべき態度」が規範として示 されています。 ・規範とは何か。辞書を引いてみましょう。 ・規範は,具体的にどのようにとらえることが できるでしょうか。 日本の場合,大都市が発展し,都市で生活す る 者 の 規 範 が 明 確 に な っ て き た の は , 1900 年 前後から 1920 年代(明治末から大正時代)で あると言われています。 ・教科書や年表をもとに,この時代の主な出来 事や特徴をまとめてみましょう。 教授・学習活動 T.発問する P.答える 資料 生徒の応答・学習内容 1 2 ・中 国が ,都 市の施設だけでなく,国民の 態 度・ マナ ーの面においても,オリンピ ッ クを 開催 するにふさわしい先進国であ る こと を, 世界に示そうとしたのではな いか。 T.発問する P.辞書で用語の意 味を確認する T.説明する T.復習として説明 する ・規 範と は, 社会・集団の一員としての行 為の根拠となる基準である。 ・規 範は ,特 定の状況のもとである地位に ある人に期待される行為として(「 ~は, ~ の 時 は ( 状 況 で は ), ~ す べ き ・ す べ き でな い」 という表現により)つかむこ とができる。 例 :「 先 進 国 た る 中 国 の 国 民 は , 公 共 の 場 では ,一流のマナーを身に付けて いなければならない 。」 ・規 範は ,様 々なメディアによる「語り」 として示される。 年表 ・日 清・ 日露 戦争の勝利により「一等国」 への仲間入りを果たした。 ・工業化が進み,重工業部門が発展した。 ・政党政治が実現した。 ・ 植 民 地 を 得 て ,「 日 本 帝 国 」 の 形 成 が 進 んだ。 ・この時代,都市の発達はどのように進んだの でしょうか。東京の人口の変化から考えてみ ましょう。 T.説明する 3 ・東京市の人口は 1908 (明治 41 )年の統計 によれば 219 万人である。東京は, 1920 ( 大 正 9 ) 年 に は, 市部 と隣 接五 郡を 合 わせて約 336 万人の人口を持った。 ・大 正時 代は ,大都市化が進行した時代と 言える。 ○この時代に,なぜ東京の人口は急激に増加し たのでしょうか。 T.発問する P.答える 4 ・東 京の 人口 が増加したのは,仕事を求め て 農村 から 移り住んだ人々が増えたから である。 ・工 場の 経営 者と労働者とは別の,役所や 会 社に つと めて給料をもらう新しい階層 ( サラ リー マン)が増えたことも,この 時 代の 都市 の人口増加の大きな理由であ る。 この単元では, 1900 年前後から 1920 年代の 大都市,特に東京を事例にして,次の学習問題 を追求していきます。 ①都市という場(空間)において,そこで生活 する者としてふさわしい規範がどのような 「語り」として示され ,「望ぞましい日本国 T.小単元の学習 問題を提示する -1- 民」の姿を示したのかを明らかにする。 ②時代の都市生活の規範は,国家・社会との関 わりの中で,なぜ積極的に語られ,人々の間 に定着し維持されたのか,そこからどのよう な社会問題が生み出されたのかをつかむ。 ③時代の学習を鏡にして,現代社会に生きる私 たちがなかば常識としている規範と行為のあ り方について吟味し討論する。 Ⅰ 時 代 の 社 会 や 特 定 の 状 況 に お け る 生 活 者 の 行 為 を 規 定 す る 規 範 の 把 握 Ⅱ 規 範 と ◎この時代に,都市に生活する者にふさわしい 規範は,どのような「語り」として示された のでしょうか。 資料5と資料6は,当時の子どもたちが遊ん だ双六です。双六は,子どもたちに時代の規範 を語るひとつの道具であったと言えます。 資料5の「実業少年出世双六 」( 1908 年)を 見ましょう。 ・「 出世」のゴールは何ですか。 ・主人公の少年は,奉公するために,どこから やってきたと考えられますか。成功して独立 開業した会社は,どこにあると描かれていま すか。 T.パートⅠの学習 問題を提示する 5 6 T.発問する P.答える ・独立開業して社長になること。 ・田 舎( 農村 )から,奉公するために都市 に出てきた。 ・大 都市 で, 大きな会社を営むことが「出 世」のゴールであると描かれている。 ○どうやったら「出世」の道が開かれると言っ ていますか。 T.発問する P.答える ・辛抱努力して仕事に励むこと。 ・衛生を実行すること。 ・常 に勉 学に 励んで,新しい知識を吸収す ること。 ・主人を大切にすること。 ・得 た収 入は 浪費せず,貯金すること。 など ○この時代の人々は,出世についてどのような 考え方をもっていたのでしょうか。 T.発問する P.答える 今度は ,資料6の「 二十四時家庭双六 」 (1912 年)を見ましょう。この双六は ,「出世」を果 たした「男性」の家庭生活を ,「男性の妻(主 婦 )」の視点から描いていると見ることができ ます。 ○主婦の一日をたどって見ましょう。家庭の主 婦が果たすべき役割や守らなければならない ことについて ,どんなことを読み取れますか 。 T.発問する P.答える T.発問する P.答える ・夫 (世 帯主 )は外で働き収入を得て,主 婦は家事と育児を引き受けねばならない 。 ・主 婦は ,新 聞を読んだり,読書の時間を 持って,教養を培わねばならない。 ・主 婦は ,家 庭婦人にふさわしい身だしな みを整えなければならない。 ・主 婦は ,時 間に従って,合理的で計画的 な生活を築かねばならない。 ○ 2 枚の双六は,この時代にある程度の社会的 地位に就いて出世を果たした者が送るべき家 庭生活について,どのような規範を示してい ましたか。短い言葉でまとめてみましょう。 T.発問する P.答える ・勤労 ・衛生と身だしなみ ・勉学と教養 ・性別の役割分業 ・愛情による家族の結びつき ・時間に従った計画的な生活 ◎時代の都市生活の規範は,国家・社会との関 わりの中で,なぜ積極的に語られ,人々の間 に定着し維持されたのでしょうか。 T.パートⅡの学習 問題を提示する ○なぜ都市の生活者に対して,衛生を実行する T.発問する -2- 7 ・こ の時 代の 庶民の出世についての考え方 は ,必 ずし も大臣や大将になることを望 ん だの では なく,官庁の役人になる,工 場 長に なる ,小さくてもいいから会社を 興 し社 長に なるといった現実的なもので あった。 社 会 構 造 ・ シ ス テ ム と の 相 互 の 関 わ り 合 い の 分 析 ことが大切だと説かれたのでしょうか。 ・この時代,人々の命を脅かし ,「亡国病」と いわれた伝染病が流行しました。それは何で すか 。その病の症状はどのようなものですか 。 T.説明する ・結核が流行った社会的な背景は何ですか。 T.資料をもとに 説明する ・なぜ都市の生活者に対して,衛生を実行する ことが大切だと説かれたのでしょうか。 T.発問する P.答える ○なぜ立身出世のために勉学に励むことが重要 だと言われたのでしょうか。 T.発問する ・当時,役所や大きな会社で必要となってきた 知識や技能は,どのようなものでしたか。 T.資料をもとに 説明する 9 ・役 所や 会社 の規模が大きくなり,専門的 技 術や 英語 ,法律,簿記などの知識が必 要となった。 ・資料 10 によれば, 1907 (明治 40 )年から安 田銀行が学校出の採用を始めた理由は何です か。 T.資料をもとに 説明する 10 ・専 門的 な知 識や技能が必要となってきた こ と以 上に ,銀行や会社が学校出を多く 採 用し てい ると,社会的に信用を得るこ とができたことによる。 ・なぜ立身出世のために勉学に励むことが重要 だと言われたのでしょうか。 T.発問する P.答える ○なぜ都市生活において,時間を守ることや時 間を短縮するための行動の大切さが語られた のでしょうか。 T.発問する P.答える 11 ・鉄 道, 役所 ,工場,会社,学校,軍隊な ど 都市 にで きたそれらの施設では,仕事 を 効率 的に 進めるために,時間を守り, さ らに 時間 を短縮するための行動や工夫 が求められたから 。。 ○性別の役割分業の規範のもとで ,家庭婦人に , 家事や育児をこなすことだけでなく,適度に 教養を培い,身ぎれいにしておくことが求め られた背景には,どのような時代の考え方が あったのでしょうか。 T.発問する P.答える 12 ・年 齢や 社会 的地位にふさわしい教養や美 の レベ ルが 有り,女性,とくに家庭婦人 は それ に応 じたふるまいをすべきである という考え方があった。 ○東京などの大都市では,どのような手立てに よって,こうした規範が語られ広められたの でしょうか。 T.発問する P.答える 13 ・鉄 道, 役所 ,工場,会社,学校,軍隊な ど 都市 にあ る施設が規範を広める役割を 果たしたが ,国民の就学率が高くなると , 特に学校が重要な役割を果たした。 ・マ スメ ディ アの発達が,都市生活の規範 の 広が りに 大きな役割を果たした。新聞 広 告や 女性 に人気の雑誌,著名人による 講演などが宣伝効果を発揮した。 人々にとって都市生活は,必ずしもよいこと T.資料をもとに ばかり,楽しいことばかりではなかったようで 説明する す。不況のため会社が倒産し,失業することも ありました。受験に失敗したり,学費が続かず 都会での勉学をあきらめた者もたくさんいまし た。都市の人々は,故郷をなつかしんで同郷会 をつくって互いに励まし合い,なぐさめあって -3- ・結 核。 結核 菌による慢性感染症。発熱と 喀 血が 典型 的な症状である。結核の初感 染は,まず肺で起こる。 8 ・ 1900 年前後から,日本は産業革命の時期 に 入っ た。 東京のような工場や事務所な ど が集 中す る大都市には,農村部から多 く の労 働者 や「出世」の期待を抱いた人 々 が集 まっ てきた。埃や湿気まみれの職 場 での 長時 間労働や密集した住居での暮 らしは,結核菌の温床となった。 ・人 々が 集ま り絶えず行き交う都市では, 結 核な どい つ罹るかわからない慢性の伝 染 病の 流行 をおさえるために,常に衛生 を 実行 する ことが,そこで生活する者の 作法と考えられた。 ・役 所や 大会 社に採用されるためには,専 門 的な 知識 ・技術とそれを裏付ける学歴 が 必要 にな ってきた。勉学を積んで学歴 を得ることが ,出世の近道となったから 。 14 15 もいたようです。また,家庭婦人は,家庭で妻 ・母としての役割を果たすことと自分なりの夢 や願いの実現との間で悩んでもいたようです。 Ⅲ 規 範 が つ く り 出 す 社 会 関 係 の あ り 方 と そ こ か ら 生 じ る 社 会 問 題 の 批 判 的 解 明 ○それにもかかわらず,これまで勉強してきた 都市生活の規範が,人々の間に定着し維持さ れてきたのは,なぜだったのでしょうか。 T.発問する P.答える ・資 本主 義が 発達し,役所や会社の仕事が 専 門的 にな っていく中で,都市にはいわ ゆるサラリーマンが成長してきた 。また , 女 性た ちの 中からも「職業婦人」が生ま れ てき た。 サラリーマンとその家庭や新 興 の職 業婦 人達は,不況による失業の危 機 や能 力に もとづく競争と序列づけのプ レ ッシ ャー に常にさらされていた。彼ら は ,自 分た ちの不安定な地位や立場を実 感 しな がら ,自分たちの地位を社会に表 明 し, 自分 たちの自己実現のためにめざ す べき もの を確認するために,都市の規 範を受け入れ常識とし , 「 文化 」 「 モダン 」 「 美し さ」 と言った言葉で表現された, こ の時 代の 都市にふさわし生活の仕方や 行動の仕方を実行していった。 ○これまでの学習から,規範が,社会の中に定 着し維持されるということについて,どのよ うにまとめることができるでしょうか。 T.説明する ・時 代の 国家 ・社会が規範をつくり出し, 私 たち に押 しつけてくるという面がある け れど も, その規範は,私たち自身が納 得 し常 識と して,それにふさわしい生活 や 行動 を自 発的に重ねることによって定 着し維持される。 ◎この時代に,国家(政府)が目標とし,都市 を舞台につくり出されてきた近代日本の国民 がもつべき規範は,人々の間にどのような結 びつきをつくり出したでしょうか。 その結びつきからは,どのような問題点を引 き出すことができますか。 T.パートⅢの学習 課題を提示する 国家が目標とし,都市を舞台につくり出され た様々な規範は,それを人々が常識として受け 入れることによって定着し維持されることを学 びました。その規範とそれにもとづく(望まし い)行為は,社会の人々のまとまりをつくり上 げていきます。そして,規範に照らして「望ま しくないと判断される国民」を否定し排除する ことで,その規範が人々の間に定着していくの です。 T.説明する ・ハンディキャップ(病気や身体障害)を観点 に ,時代の規範が ,人々をどのように分類し , 差別し排除したかを,資料を読み理解しまし ょう。 T.発問する P.資料を読み まとめ発表する 16 ・伝 染病 者や 精神病者,身体障害をもつ者 を 療養 施設 に隔離することが盛んに行わ れ た。 都市 では,こうした施設に対する 差別のまなざしがつくり出された。 ・性差と社会的地位を観点に吟味しましょう。 T.発問する P.資料を読み まとめ発表する 17 18 ・大正期に ,雑誌などでもてはやされた「 モ ダ ン都 市・ 東京にふさわしい女性の美し さ 」は ,中 流以上の地位にある男性の立 場 から 論じ られている。そのために,女 性 は常 に「 美しくあること」を強制され る立場に置かれた。また ,「女性美」は, 年 齢や 社会 的地位にふさわしい規範とし て 示 さ れ た た め ,「 家 庭 婦 人 」 の 立 場 か ら ,バ スの 女性車掌やエレベーターガー ル 、カフェの女給など新しく生まれた「 職 業 婦人 」に 対して「派手で不真面目な化 粧」など批判と蔑視が生まれた。 ・貧困と地域・場所の観点から吟味しましょ う。 T.発問する P.資料を読み 19 20 ・都 市で ,衛 生意識と文化的生活が定着し て くる と, 不衛生,不潔,文化程度の低 -4- まとめ発表する。 Ⅳ 自 己 が 拠 る 規 範 の 反 省 的 吟 味 と 再 定 義 ○ 1900 年前後から 1920 年代に,国家(政府) が目標とし,都市を舞台につくり出されてき た近代日本の国民がもつべき規範は,人々の 間にどのような関係をつくり出したのです か。その関係からは,どのような問題点を引 き出すことができますか 。。 T.発問する P.答える ◎時代の学習を鏡にして,私たちがなかば常識 としている現代生活の規範を吟味しましょ う。 その規範の使われ方に問題がありますか。な ぜ問題と言えますか。 問題を克服するためには,規範をどのように 変更すればよいですか。 T.パートⅣの学習 課題を提示する ・ 1900 年前後か 1920 年代に,都市を舞台につ くり出されてきた健康・美(おしゃれ )・勉 学・男女の役割・労働などの規範は,現代の 私たちの日常生活でも生きていますか。 そのように考える理由は何ですか。 T.発問する P.答える ○規範に関わる次の5つの観点を,5つのグル ープにそれぞれ割り当てます。グループごと に,最近の新聞記事,新聞折込広告,テレビ CM, 雑誌 など を調 べて,それらがメッセー ジとして発信している現代の規範を見つけ出 してみましょう。 規範は ,「~は,~の時には(状況では)~ すべき(すべきでない )」というように表現 でまとめましょう。 観点①健康・衛生・身体・美(おしゃれ) ②勉学・知識・学歴 ③男女の役割・男らしさ女らしさ ④労働・職業 ⑤家族・家庭生活 T.グループでの作 業課題を与える P.作業課題にグル ープで取り組む ○それぞの観点で,規範を見つけ出したら,次 の課題を各グループで話し合い,まとめてく ださい。まとまった内容をクラスに発表して ください。 私たちは,新聞やテレビ,雑誌などから規範 に関わる様々な言葉に触れています。日頃は 当たり前に受けとめている規範の意味や使わ れ方をよく考えてみましょう。その規範と言 葉のなにげない使い方で不当な評価を受け, 自分自身や他の誰かが納得のいかない思いを したり,つらい思いをしていることはないで しょうか。 T.指示する P.グループで話し 合いまとめる クラスに発表する ○規範がもたらす問題を解消するために,規範 をどのように変更すればよいですか。 その規範は,社会の皆が納得するものと言え ますか。納得いかない人が出てくるでしょう か。なぜ,そのように考えますか。 T.発問する P.クラス全体で討 論する -5- さ ,伝 染病 の巣という見方から,貧民街 の 住民 や被 差別部落に対する賤視と監視 が強化された。 ・ 時 代 の 都 市 生 活 の 規 範 が ,「 日 本 国 民 」 を ,普 通の 者と異常な者,役に立つ者と 役 に立 たな い者,というように分類し, 人 々の 間に 力に偏りのある結びつきをつ くり出している。 ・時 代の 規範 にもとづいて実行された人々 の 日常 の生 活習慣が,図らずも差別され 排 除さ れる 少数者をつくり出す働きを持 つようになっている。 ・生きている。 ・少 しづ つ変 わってきているものもあるの ではないか。 ・ 1900 年前後か 1920 年代は,現代の社会 生 活の 原型 がつくられた時代と言うこと ができるのではないか。 【教授・学習用資料・出典】 1.文書資料「北京のマナー向上キャンペーン」 ,http://www.tabine.info/beijing-orimpic/info/page_3.html 2.写真資料「バスの整列乗車を促す標識 」, http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20080821/ 3.統計資料「東京市の人口の変化 」,『週刊朝日百科日本の歴史 102 近代Ⅱ-②現代庶民生活の原型』朝日新聞社, 2004 年 , p.11 ・ 60 4.統計資料「職業構成の変化 」,竹内 洋『立身出世主義』 NHK 出版, 1997 年, p.211 5.絵画資料「実業少年出世双六 」,黒田日出男他著『社会科 中学生の歴史(初訂版 )』帝国書院, 2005 年, p.168 6.絵画資料「二十四時家庭双六 」,『婦人世界』第 7 巻第 1 号, 1912 年, http://library.u-gakugei.ac.jp/lbhome/sugoroku/1-07.html 7.文書資料「ささやかな立身出世の願い 」,竹内 洋,前掲書, pp.242-243 より発表者作成 8.写真資料「女子工員の寄宿舎での生活 」,帝国書院編集部編『中学校スタンダード歴史資料』帝国書院, 2008 年, p.152 9.文書資料「大阪丸紅伊藤本店の職員採用基準 」,竹内 洋,前掲書, p.196 より発表者作成 10 .文書資料「学校出の進出 」,竹内 洋,前掲書, pp.167-168 より発表者作成 11 .絵画資料「計算機の広告 」,橋本毅彦他編『遅刻の誕生』三元社, 2001 年, p.144 12 .写真資料「若き主婦の一日 」,大門正克他編『近代社会を生きる』吉川弘文館, 2003 年, p.226 13 .写真資料「都市生活の風景 」,朝日新聞社,前掲書, pp.11 ・ 33-34 より発表者作成 14 .統計資料「広がる経済格差 」,帝国書院編集部編,前掲書, 2008 年, p.166 15 .文書資料「家庭婦人の悩み 」,大門正克他編,前掲書, pp.234-235 より発表者作成 16 .文書・絵画資料「病者の隔離 」,『週刊朝日百科日本の歴史 89 近世から近代へ-⑨コレラ騒動 病者と医療』朝日新聞社, 2004 年 ,p.9・ 281 17 .絵画資料「美と健康の広告(雑誌『主婦之友』 1926 年 11 月号より )」,鹿野政直『健康観にみる近代』朝日新聞社, 2001 年, p51 18 .文書・写真資料「 大正期の職業婦人 」,吉見俊哉「 帝都とモダンガール 」バーバラ・佐藤編『 日常生活の誕生 』柏書房 ,2007 年 ,pp.239-240, p.244,p.248 19 .文書資料「伝染病対策~貧民部落の囲い込み~ 」,安保則夫『近代日本の社会的差別形成史の研究-増補『ミナト神戸 コレラ・ ペスト・スラム』-』明石書店, 2007 年, pp.111-112 より発表者作成 20 .写真資料「東京の貧民街」 ,『週刊朝日百科日本の歴史 105 近代Ⅱ-⑤都市と原郷 近代化への問い』朝日新聞社, 2004 年, p.11 ・ 134 【注】 1)発表者は,社会系教科教育学会誌において,行為の反省学習を提案してきた。この学習論は,行為と時代社会構造との相互の関わ り合いの認識を基盤に,子どもが,歴史的行為の評価規準を構成して,それを鏡に自己の行為の再方向付けを図るというものであ った。規範反省学習は,行為の反省学習を再構成したものである 。「行為」という用語は,それが実体的で本質主義的なものとい う理解を生みやすい 。だから ,行為の反省学習と言えば ,何か具体的な行為の修正・変更を促す学習と受け取られやすいと考えた 。 社会問題の構築主義の立場から,社会的に構築された規範が発動する権力作用こそ反省的吟味の対象にすべきとの考えに至り,規 範反省学習として理論の再構成を図った。 ・梅津正美「状況における行為の反省過程としての歴史授業構成-高校地歴科世界史 B 小単元「ナチス支配体制下の民衆生活」の 開発を事例として-」社会系教科教育学会編『社会系教科教育学研究』第 9 号, 1998 年, pp.1-11 ・梅津正美・平井英徳「行為の反省過程としての歴史学習-高校地理歴史科世界史 B 小単元「北米植民地における魔女狩りと民衆 意識」の場合-」社会系教科教育学会編『社会系教科教育学研究』第 13 号, 2001 年, pp.21-30 2 )「規範」の定義については,次の文献から学んだ。 ・前田泰樹他編『エスノメソドロジー-人々の実践から学ぶ-』新曜社, 2007 年, pp.100-107 3)権力作用を中心とする規範のもつ機能については,次の文献の内容を整理し引き出した。 ・山田富秋『日常性批判-シュッツ・ガーフィンケル・フーコー-』せりか書房, 2000 年, pp.33-36 ・ガーゲン, K.J(東村知子訳 )『あなたへの社会構成主義』ナカニシヤ出版, 2004 年, pp.300-303 4)山田富秋,前掲書, pp.27-33 5)規範反省学習が依拠する「相互関係主義の社会認識論」については,次の文献を参照されたい。 ・中村桃子『ことばとジェンダー』勁草書房, 2001 年, pp.90-95 ・田辺 浩「行為理論の革新-構造化・行為・反省性-」宮島 喬編『文化の社会学』有信堂, 1995 年, pp.14-39 6)学習指導要領に準拠した小学校社会科学習がその典型である。 7)森分孝治『社会科授業構成の理論と方法』明治図書, 1978 年 8)原田智仁『世界史教育内容開発研究-理論批判学習-』風間書房, 2000 年 9 )小原友行「 意思決定力を育成する歴史授業構成-「 人物学習 」改善の視点を中心に- 」広島史学研究会編『 史学研究 』第 177 号 ,1987 年, pp.45-67 10 )池野範男「市民社会科歴史教育の授業構成」全国社会科教育学会編『社会科研究』第 64 号, 2006 年, pp.51-60 11 )池野氏らが開発した単元「武力行使は許されるか」では,国家安全保障・国際安全保障・人間の安全保障という異なる価値と武力 行使の是非論とを結んで ,「討論の構造」の発見・吟味・提案がなされている。事例に,真珠湾攻撃,ベトナム戦争,キューバ危 機等が取り上げられているが,討論にあたり,それらの時代背景や歴史的特質,相違点の解明はほとんど考慮されていない。 12 )発表者は,ジェンダー規範と健康・身体規範を対象とした規範反省学習の歴史授業開発を先行して行っている。 ・梅津正美「国家学習の社会科授業」社会認識教育学会編『社会認識教育の構造改革』明治図書, 2006 年, pp.186-196 ・梅津正美「規範反省学習による国家・国民史理解の変革-小単元「近代日本の身体観と国民化~規範が持つ権力を考える~」の場 合-」全国社会科教育学会第 56 回全国研究大会発表資料, 2007 年 13 )改正教育基本法( 2006 年)がその目標の中で ,「日本人 」「国民」という枠組みを強調して「伝統と文化を尊重し,我が国の国土 と郷土を愛する態度の養成」を述べていることは,近年の日本の国家体制側からの規範構築と教育における規範注入圧力の強化の 事例と見ることができよう。 14 )森分孝治「対抗イデオロギー教育-科学的知識の批判的学習- 」『教育科学社会科教育』 NO.359 ,明治図書, 1992 年, pp.119-124 -6- 【参考文献 】(教授・学習用資料の出典および注に掲げた文献を除く) 〈「 社会科教育学」関係〉 1.社会認識教育学会編『社会科教育のニュー・パースペクティブ-変革と提案-』明治図書, 2003 年 2.日本社会科教育学会出版プロジェクト編『新時代を拓く社会科の挑戦』第一学習社, 2006 年 3 .『現代民主主義社会の市民を育成する歴史カリキュラムの開発研究』平成 10 年度~平成 12 年度科学研究費補助金基盤研究( C )(2 ) 研究成果報告書(代表・池野範男 ), 2001 年 4 .『現代民主主義社会の市民を育成する歴史授業の開発研究』平成 13 年度~平成 15 年度科学研究費補助金基盤研究( C )( 2 ) 研究 成果報告書(代表・池野範男 ), 2004 年 5.多文化社会米国理解教育研究会編『多文化社会アメリカを授業する-構築主義的授業づくりの試み-』多文化社会米国理解教育研 究会, 2005 年 6.桐谷正信「社会科学力としての「わかる」力-歴史学習における「構築主義的思考」-」森田武教授退官記念会編『近世・近代日 本社会の展開と社会諸科学の現在』新泉社, 2007 年 7.森分孝治『現代社会科授業理論』明治図書, 1984 年 8.梅津正美『歴史教育内容改革研究-社会史教授の論理と展開-』風間書房, 2006 年 〈「 規範理論 」「行為理論 」「社会的差別論 」「言説分析」関係〉 1.黒田 亘『行為と規範』勁草書房, 1992 年 2.野村一夫『リフレクション-社会学的な感受性へ-(新訂版 )』文化書房博文社, 2003 年 3.有賀 誠他編『現代規範理論入門-ポスト・リベラリズムの新展開-』ナカニシヤ出版, 2004 年 4.藤田弘夫他編『権力から読みとく現代人の社会学入門』有斐閣, 1996 年 5.宮台真司「行為と役割」今田高俊他編『社会学の基礎』有斐閣, 1991 年 6.三浦耕吉郎編『構造的差別のソシオグラフィ-社会を書く / 差別を解く-』世界思想社, 2006 年 7.好井裕明編『繋がりと排除の社会学』明石書店, 2005 年 8.坂本佳鶴恵『アイデンティティの権力-差別を語る主体は成立するか-』 2005 年 9.ひろたまさき『差別の視線-近代日本の意識構造-』吉川弘文館, 1998 年 10 .佐藤俊樹他編『言説分析の可能性-社会学的方法の迷宮から-』東信堂、 2006 年 11 .丹治 愛編『批評理論』講談社, 2003 年 〈「 都市論 」「都市社会史 」「近代国民形成論」関係〉 1.吉見俊哉編『都市の空間 都市の身体』勁草書房, 1996 年 2.西澤晃彦『隠蔽された外部-都市下層のエスノグラフィー-』彩流社, 1995 年 3.水内俊雄他編『モダン都市の系譜-地図から読み解く社会と空間』ナカニシヤ出版 4.町村敬志他編『都市の社会学』有斐閣, 2000 年 5.成田龍一『近代都市空間の文化経験』岩波書店 6.成田龍一『「 故郷」という物語-都市空間の歴史学-』吉川弘文館, 1998 年 7.成田龍一編『都市と民衆』吉川弘文館, 1993 年 8.成田龍一他編『故郷の喪失と再生』青弓社, 2000 年 9 . 成田龍一 「 衛生意識の定着と 「 美のくさり 」 - 1920 年代 , 女性の身体をめぐる一局面- 」『 日本史研究 』 366 号 , 1993 年 , pp.64-89 10 .成田龍一『大正デモクラシー』岩波書店, 2007 年 11 .小林丈広『近代日本と公衆衛生-都市社会史の試み-』雄山閣出版, 2001 年 12 .中野隆生編『都市空間の社会史-日本とフランス-』山川出版社, 2004 年 13 .藤野 敦『東京都の誕生』吉川弘文館, 2002 年 14 .成沢 光『現代日本の社会秩序-歴史的起源を求めて-』岩波書店, 1997 年 15 .小森陽一他編『メディア・表象・イデオロギー-明治三十年代の文化研究-』小沢書店, 1997 年 16 .桜井哲夫『「 近代」の意味-制度としての学校・工場-』NHKブックス, 1984 年 17 .富永健一『日本の近代化と社会変動』講談社, 1990 年 18 .西川長夫『増補 国境の越え方-国民国家論序説-』平凡社, 2001 年 -7-
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