神経内科学 卒業試験 - 金沢大学 神経内科

神経内科学
卒業試験
問題 1-75 (別冊:図 1-20) 2010 年 10 月 22 日 1
問題 1-4.
75 歳の男性。家系内に類症なし。既往歴、家族歴では特記すべきことなし。X 年
1月頃からしゃべりにくくなり、また、右上肢を挙上しにくくなった。6 月になる
と、労作時息切れ、全身倦怠感が出現、徐々に悪化した。10 月には嚥下困難、さら
に右下肢の脱力が出現した。X 年 12 月入院。一般身体所見では、血圧 148/94 mmHg、
脈拍 96/分、呼吸数 24/分。神経学的には、意識清明、知能正常、脳神経では咬筋の
筋萎縮と筋力低下、顔面筋の軽度筋力低下、軟口蓋挙上不良、咽頭反射両側減弱、
両側胸鎖乳突筋軽度筋力低下、舌の軽度萎縮、線維束性収縮および筋力低下、構音
障害、嚥下障害を認めた。運動系では四肢体幹の筋萎縮、両下肢痙性、右および近
位優位の上下肢筋力低下(徒手筋力テスト 2-4 レベル)を認めた。歩行は両足すり
足で、しゃがみ立ちは不可能であった。反射では、下顎反射及び四肢の腱反射が亢
進し、病的反射では右 Chaddock 反射が陽性であった。協調運動、感覚、自律神経系
には異常を認めなかった。血液検査では、血清 CK 80 IU/L、動脈血液ガス分析では
pCO2 50.6 mmHg、pO2 73.6 mmHg、HCO3 32.8 mmol/L、BE 7.6 mmol/L であった。
上記の患者について、問題 1-4 に答えよ。
問題 1. この患者の神経症候から病変の局在(局在診断)を考えた場合、不適切な
のはどれか。2 つ選べ。
a. 錐体路
b. 錐体外路
c. 延髄運動神経核
d. 脊髄前角
e. 筋
問題 2. この患者の針筋電図では、線維自発電位、陽性鋭波、多相性高振幅電位、
干渉不良を認めた。神経伝導検査では複合筋活動電位の振幅の低下、運動神経伝導
速度の軽度の低下を認めた。胸鎖乳突筋の針筋電図の弱収縮時の所見を図 1 に示す。
所見はどれか。1つ選べ。
a. 陽性鋭波
b. 多相性電位
c. 線維束性収縮
d. 干渉不良
e. 漸減現象
2
問題 3. この患者の頭部 MRI T2 強調軸位像を図 2 に示す。中心前回運動皮質はど
こか。図 2 の中の記号から1つ選べ。
a
b
c
d
e
問題 4. この患者の診断はどれか。1つ選べ。
a. 遺伝性痙性対麻痺
b. 多巣性運動ニューロパチー
c. 筋萎縮性側索硬化症
d. 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー
e. 多発筋炎
問題 5-8
50 歳の男性。家族歴では父(50 歳台で発症)
、弟、長男(10 歳台で発症)に類症
がある。タバコは吸わないが飲酒はする。35 歳頃から歩行時ふらつきを指摘され、
その後徐々に悪化してきた。45 歳頃からは歩行困難に加え、両足先のしびれ、嚥下
困難も自覚した。47 歳時、杖歩行となった。48 歳時からは歩行器を使うようになり、
ろれつが回りにくく、字も書けなくなった。49 歳時から車椅子を使用するようにな
り、排尿障害もみとめるようになった。入院時(50 歳)
、一般身体所見では異常を
認めなかった。神経学的には、意識清明、知能正常。脳神経では両側眼球上転制限、
滑動性視標追跡で衝動性眼球運動、両側方視時に注視方向性の眼振、顔面筋軽度筋
力低下、両側軟口蓋挙上不良、咽頭反射両側減弱、嚥下障害、構音障害、舌に線維
束性収縮を認めた。運動系では四肢に軽度の筋萎縮、大腿部に線維束性収縮、両下
肢の痙性、四肢の軽度の筋力低下(徒手筋力テスト 4+/5 程度)を認めた。感覚系で
は手袋靴下型の異常感覚、温痛触覚の低下を認めた。協調運動では指鼻試験、指鼻
指試験、踵膝試験で顕著な測定障害、運動分解を認め、手の回内回外試験では運動
拙劣がめだった。反射では、下顎反射及び下肢の腱反射亢進、両側 Babinski 反射陽
性を認めた。起立では、つかまり立ちで両下肢をひろげ(wide base)
、つかまりなが
ら、すり足で数歩歩くのがやっとだった。
上記の患者について、問題 5-8 に答えよ。
3
問題 5. この患者の神経症候から考えられる局在診断として不適切なのはどれか。1
つ選べ。
a. 錐体路
b. 錐体外路
c. 小脳系
d. 脳神経
e. 脊髄
f. 末梢神経系
問題 6. この患者の病歴から考えられる病変の性質(カテゴリー)診断に関する判
断として不適切なのはどれか。2つ選べ。
a. 変性
b. 腫瘍
c. 中毒
d. 血管障害
e. 炎症
問題 7. この患者の頭部 MRI T2 強調画像を図 3 に示す。MRI 上めだつ所見はどれ
か。2つ選べ。
a. 小脳の萎縮
b. 脳幹の萎縮
c. 脳梁の萎縮
d. 大脳基底核病変
e. 視床病変
問題 8. 可能性のある疾患の責任遺伝子を検査した。この患者でみられる遺伝子異
常について最も可能性の高い異常はどれか。1つ選べ。
a. ミスセンス変異
b. 3 塩基リピート延長
c. ナンセンス変異
d. フレームシフト変異
e. 遺伝子重複
問題 9-12
68 歳の男性。家族歴、既往歴に特記すべき所見なし。X 年頃から、字を大きく書
こうとしても、小さな字になってしまうことに気づいた。また、この頃から、歩行
の速度が遅くなり、右上下肢に振るえがみられるようになった。X+2 年に受診し投
薬を開始され症状は改善したが、X+5 年頃から薬が効いている時間が短縮して症状
(歩行障害、振るえ)の日内変動がみられるようになり、投薬が増やされた。X+8
4
年頃から、いないはずの人が見えるなどの幻視、事実と異なることを信じ主張する
などの妄想が頻繁に出現するようになった。X+11 年入院した。
入院時、一般身体所見に特記すべき異常なし。神経学的には、診察時には意識は
清明で明らかな認知機能低下を認めなかった。仮面様顔貌、Myerson 徴候陽性。四
肢に右優位の軽度の歯車様筋強剛を認めたが、筋萎縮はなく筋力は保たれていた。
協調運動では手の回内回外運動の振幅および速度低下を認めた。反射、感覚系には
異常を認めなかった。起立では前傾姿勢で後方突進現象を認め、歩行は介助で小刻
み歩行、すくみ足を認めた。排尿は 1 日 7 8 回、排便は下剤を内服して 2 日に 1
回程度、立ちくらみはなかった。一般血液検査では異常を認めなかった。
上記の患者について、問題 9-12 に答えよ。
問題 9. 診察時の神経症候に基づく局在診断として適切なのはどれか。2 つ選べ。
a. 錐体路
b. 錐体外路
c. 小脳
d. 脊髄前角
e. 自律神経
問題 10. 頭部 MRI 画像を図 4 に示す。所見として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 海馬の萎縮
b. 大脳基底核の萎縮
c. 小脳の萎縮
d. 脳幹の萎縮
e. 以上のいずれでもない
問題 11. 脳血流 SPECT(Tc99m-ECD SPECT)の統計解析画像(eZIS)
(血流低下部位を
示す)を図 5 に示す。所見として適切なのはどれか。1つ選べ。
a. 前頭優位の血流低下
b. 後頭優位の血流低下
c. 小脳の血流低下
d. 脳幹の血流低下
e. 以上のいずれでもない
問題 12. 診断として適切なのはどれか。1つ選べ。
a. 多系統萎縮症
b. 進行性核上性麻痺
c. Parkinson 病
d. 大脳皮質基底核変性症
e. 慢性マンガン中毒
5
問題 13. 64 歳の男性。3、4 年前から徐々に異常な行動がみられるようになり、社
会生活に大きな支障をきたすようになり来院した。診察すると、記憶はほぼ保たれ
ているようだが、診察に対して非常に非協力的で、勝手に診察室を立ち去ってしま
うなどの行動がみられた。この患者の頭部 MRI 所見で、最も予想される所見はどれ
か。1つ選べ。
a. 前頭葉の萎縮
b. 側頭葉内側部の萎縮
c. 側頭葉後方の萎縮
d. 頭頂後頭連合野の萎縮
e. 線条体・黒質の萎縮
問題 14-15.
57 歳の男性。53 歳時から進行性のもの忘れで来院。診察では、近時記憶障害と日
時に関する失見当識を認めた(MMSE 24/30)
。ルーチンの血液検査では異常を認め
なかった。頭部 MRI T1 強調画像を図 6 に、糖代謝 PET [FDG, 統計解析画像(3D-SSP)]
を図 7 に示す。
上記の患者について、問題 14-15 に答えよ。
問題 14.母と姉に類症があることが判明したため、遺伝子検索を行ったところ変異
が見出された。その遺伝子はどれか。1つ選べ。
a. プレセニリン 1 遺伝子
b. α シヌクレイン遺伝子
c. プリオン蛋白遺伝子
d. ハンチンチン遺伝子
e. Notch-3 遺伝子
問題 15. 本患者に対する治療薬として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. ドネペジル塩酸塩
b. クロナゼパム
c. 塩酸アマンタジン
d. リスパダール
e. ペントサン硫酸
問題 16-19.
10 月 27 日午後 1 時 30 分、救急隊から 68 歳の意識障害の男性患者を搬送すると
連絡あり。午後 1 時 43 分救急車到着。
付き添いの家族の話では、3 年前に肺癌の手術を受けたが、その後は再発なく当
6
院呼吸器外科に通院していた。高血圧と不整脈の指摘があり、10 年前から近医にて
薬をもらっているとのことであった。しかし、糖尿病、脂質異常症の指摘はなし。
本日午後 1 時過ぎ、昼食に帰ってこないため畑に行ったところ、畑の中に座り込ん
でいた。声をかけると「あー、うー」と答えるのみであり、顔貌がいつもとは違っ
ていた。立たせようとしたところ、右半身がだらりとしており、すぐに救急車を呼
んだとのことであった。
上記の患者について、問題 16-19 に答えよ。
問題 16. 患者の家族が患者に声かけをしたときに、患者が「あー、うー」と答えた
現象の説明として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 意味性失語
b. 運動性失語
c. 感覚性失語
d. 構音障害
e. 伝導性失語
問題 17. この患者の顔貌の所見として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 左前頭筋を含む顔面麻痺
b. 左前頭筋を除く顔面麻痺
c. 右前頭筋を含む顔面麻痺
d. 右前頭筋を除く顔面麻痺
e. 両側前頭筋の麻痺
問題 18. この患者の頭部 MRI 拡散強調画像を図 8 に示す。所見として適切なのは
どれか。1 つ選べ。
a. 左前大脳動脈域の急性期脳梗塞
b. 左中大脳動脈域の急性期脳梗塞
c. 左穿通枝領域の急性期脳梗塞
d. 左前および中大脳動脈域の急性期脳梗塞
e. 左前および中大脳動脈の分水嶺領域の急性期脳梗塞
問題 19. 遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベーターの適応を考慮するため
に確認すべき事項に含まれないのはどれか。1 つ選べ。
a. 21 日以内の消化管出血の有無
b. 3 ヶ月以内の脳梗塞の既往
c. 肺癌手術の術式
d. 発症時間
e. ワルファリンの服用の有無
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問題 20-23. 47 歳の女性。1 年前より手のひらに膜が張ったような感覚を自覚した。同時期よ
り、足にもむずむずした感じが出現した。症状は徐々に悪化し、半年前にはじんじ
ん感が手首より末梢と下腿より末梢に感じるようになった。このころから、スリッ
パがすぐ脱げる、ペットボトルの栓が開けづらいことも自覚するようになった。9
ヶ月前には、これらの症状は軽減したため様子を見ていたが、3 ヶ月前より、四肢
末梢のしびれが増悪、常にじんじんとするようになり、ものをよく落とし、上肢挙
上も困難、段差につまずくようになった。体重は半年で 8kg 減少した。近医内科を
受診後、大学病院神経内科に紹介となった。3 年前から甲状腺機能低下症があるが、
甲状腺ホルモン補充療法にて加療をおこない甲状腺ホルモン値は正常化している。
身体所見:意識清明。右手きき。身長 146 cm、体重 38 kg、体温 36.5 度。
血圧 112/64 mmHg、脈拍 92/分。甲状腺腫大なし。胸部にラ音は聴取しない。腹部に
異常なく、下肢に浮腫なし。脳神経には異常なし。筋緊張はやや低下。四肢筋力は
上肢近位筋 MMT(徒手筋力テスト)3 から 4 レベル、上肢末梢 MMT 4、握力は
右 12 kg 左 9 kg。下肢筋力は近位筋 MMT 4、遠位筋 MMT 3 レベルであった。腱反射
は減弱ないし消失、Babinski 反射は陰性であった。表在感覚は手首より末梢および
下腿 1/3 より末梢で低下、異常感覚も認めた。指-鼻-指試験および踵-膝試験は正常。
Romberg 徴候陰性。Gowers 徴候陰性。
上記の患者について、問題 20-23 に答えよ。
問 20. 左正中神経の神経伝導検査の結果を図 9 に示す。所見より読み取れる障害部
位として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 脊髄後索
b. 脊髄神経後根
c. 末梢神経軸索
d. 末梢神経髄鞘
e. 神経筋接合部
問題 21. この患者の神経生検(ときほぐし法)の結果を図 10 に示す。所見として
適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. たまねぎ状髄鞘形成
b. 髄鞘球形成
c. 節性脱髄
d. 有髄線維脱落
e. 無髄線維脱落
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問題 22. この患者に対する治療方針として不適切なのはどれか。2 つ選べ。
a. 甲状腺ホルモン補充療法
b. 副腎皮質ホルモン投与
c. 血漿交換
d. 免疫グロブリン大量療法
e. ビタミン B1 補充療法
問題 23. この患者の疾患について適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 自己免疫の関与が推測される。
b. 遺伝性疾患が考えられる。
c. 予後は不良で人工呼吸器が必要となる。
d. 症状の出現は単峰性で症状は改善する。
e. 治療として栄養管理が重要である。
問題 24-25. 20 歳の女性。2 週間前に微熱、咳嗽、下痢などの風邪様症状を認めた。昨日から
下肢の軽い痛みを自覚、本日になり両下肢の脱力感が出現した。夕方には下肢脱力
のため歩行が困難となり、口角からよだれが出るため救急車にて来院した。救急部
で頭部 MRI を施行したが異常を認めず、神経内科に紹介された。
上記の患者について、問題 24-25 に答えよ。
問題 24. この症例で認めた身体所見として適当なのはどれか。2 つ選べ。
a. 腱反射減弱
b. 失調性歩行
c. 視力障害
d. 顔面神経麻痺
e. Romberg 徴候陽性
問題 25. この患者の治療として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 組織プラスミノーゲン活性化因子投与
b. 免疫グロブリン大量療法
c. メチルプレドニゾロン投与
d. アシクロビル投与
e. フェニトイン投与
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問題 26-27.
40 歳の男性。会社では部長職でありストレスが多かった。糖尿病のため 20 日前
よりインスリン療法導入のため内科に入院中である。1 週間前より風邪をひき、咽
頭痛を認めていた。2 日前より歩行時のふらつきを自覚した。昨日からは上下のも
のが見づらくなり、看護師からも歩行開始時にふらつくことを指摘され、本日にな
って複視も自覚したため神経内科に紹介された。
一般身体所見:身長 171 cm、体重 85 kg、BMI 29.1、体温 36.8 度、血圧 162/90 mmHg、
脈拍 62/分。扁桃腺の発赤以外、特記すべき異常はなし。
神経学的所見:意識清明。視野、眼底異常なし。眼球運動制限あり。他の脳神経に
異常なし。上下肢 MMT 正常。四肢腱反射消失。下肢病的反射陰性。感覚正常。指
鼻試験および膝踵試験にて軽度の測定異常、運動分解を認めた。つぎ足歩行は数歩
に一度足を踏み外し、通常歩行では軽度の失調性歩行であった。自律神経障害は認
めない。
上記の患者について、問題 26-27 に答えよ。
問題 26. この患者の発症に関与するものとして適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. ストレス
b. 糖尿病
c. インスリン投与
d. 感冒
e. 高血圧
問題 27. [不適切問題として削除]
問題 28. Guillain-Barré 症候群で認める自己抗体として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 抗アクアポリン 4 抗体
b. 抗アセチルコリン受容体抗体
c. 抗カリウムチャネル抗体
d. 抗カルシウムチャネル抗体
e. 抗ガングリオシド抗体
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問題 29. 神経生検検査を行う際の神経として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 脛骨神経
b. 正中神経
c. 橈骨神経
d. 腓骨神経
e. 腓腹神経
問題 30. 脚気で欠乏するビタミンはどれか。1 つ選べ。
a. チアミン
b. シアノコバラミン
c. ニコチン酸
d. ピリドキシン
e. 葉酸
問題 31.脳梗塞急性期の治療として誤っているのはどれか。1 つ選べ。
a. 抗血小板薬
b. 脳浮腫治療薬
c. 血栓溶解療法
d. 脳保護薬
e. 血圧降下療法
問題 32.脳梗塞慢性期の治療・管理として正しいのはどれか。1 つ選べ。
a. 心原性脳塞栓症に対しては、ワルファリンよりもアスピリンを用いる。
b. ラクナ梗塞には、シロスタゾールなどの抗血小板薬投与は行わない。
c. 収縮期血圧は、150 mmHg を目標に血圧管理を行う。
d. 血栓溶解療法を行う。
e. アテローム血栓性梗塞にクロピドグレルなどの抗血小板薬を用いる。
問題 33.脳内出血で血腫除去術の効果を期待しうるのはどれか。2 つ選べ。
a. 橋出血
b. 中脳出血
c. 視床出血
d. 被殻出血
e. 小脳出血
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問題 34.延髄外側症候群で病巣と反対側にみられるのはどれか。1 つ選べ。
a. 軟口蓋麻痺
b. 味覚障害
c. Horner 症候群
d. 小脳性運動失調
e. 上下肢の温痛覚鈍麻
問題 35. 重症筋無力症クリーゼに対する初期治療として正しいのはどれか。2 つ選
べ。
a. 大脳磁気刺激療法
b. タクロリムス投与
c. 緊急胸腺切除術
d. 血漿交換療法
e. 副腎皮質ステロイドパルス療法
問題 36. 筋強直性ジストロフィーについて正しいのはどれか。1 つ選べ。
a. 知能や人格は保たれている。
b. 筋の線維束性収縮を伴うことが多い。
c. 緑内障を早期から伴うことが多い。
d. 筋を叩くと弛緩する。
e. 遺伝子異常は CTG 反復配列の異常延長である。
問題 37. 正しい組合せはどれか。 2 つ選べ。
a. Duchenne 型進行性筋ジストロフィー —————常染色体劣性遺伝
b. 筋強直性ジストロフィー —————————— 伴性劣性遺伝
c. 低カリウム血症性周期性四肢麻痺 —————— 甲状腺機能低下症
d. 顔面肩甲上腕型進行性筋ジストロフィー ——— 常染色体優性遺伝
e. 多発筋炎 ————————————————— 悪性腫瘍
問題 38-41.
64 歳の男性。大学教授。高血圧に対し近医から降圧薬を処方されていたが、その
他に健康上の問題は指摘されていない。某日の午後 3 時には異常はなかったが、午
後 4 時に秘書が部屋を訪れると机の上に伏せて鼾をかいていた。呼びかけても起き
ないので、救急車を要請し、救急病院へ搬送された。
来院時の血圧は180/90 mmHg、
脈拍は80/分、
整、
意識レベルはJapan Coma Scale (JCS)
の 200。頭部 MRI 撮影後入院したが、補液のみで午後 7 時には意識レベルは JCS 2
12
まで改善し、歩行・経口摂取も自力で可能であった。
上記の患者について、問題 38-41 に答えよ。
問題 38. 頭部 MRI 画像(入院時の拡散強調画像と FLAIR 画像、入院 1 カ月後の T2
強調画像)を図 11 に示す。病変はどこか。1 つ選べ。
a. 被殻
b. 淡蒼球
c. 内包
d. 尾状核
e. 視床
問題 39. この病変を生じる血管はどれか。1 つ選べ。
a. 内頚動脈
b. 前大脳動脈
c. 中大脳動脈
d. 脳底動脈
e. 椎骨動脈
問題 40. この病変で起こりうる症状として、誤っているのはどれか。1 つ選べ。
a. 記憶障害
b. 知覚障害
c. 自発痛
d. 運動失調
e. 運動性失語
問題 41. 来院時の午後 7 時の時点での治療として正しいのはどれか。1 つ選べ。
a. 血管内手術
b. 副腎皮質ホルモン剤
c. 昇圧薬
d. 降圧薬
e. 抗血小板薬
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問題 42-44.
30 歳の女性。半年前から、起床時しばらくは問題ないが、午後になると瞼が下が
り、物が二重に見えるとのことで来院した。眼瞼下垂、複視を認めたが、その他の
脳神経も含め神経学的所見に異常は認めなかった。
テンシロン試験は陽性であった。
上記の患者について、問題 42-44 に答えよ。
問題 42. 右眼輪筋の反復神経刺激筋電図での所見を図 12 に示す。何と呼ぶか。1
つ選べ。
a. 線維束性収縮
b. 陽性棘波
c. 筋強直性(ミオトニー)放電(myotonic discharge)
d. 漸増現象(waxing 現象)
e. 漸減現象(waning 現象)
問題 43.次に行う検査項目として不適切なのはどれか。2 つ選べ。
a. 頭部 MRI
b. 抗アセチルコリン受容体抗体
c. 甲状腺ホルモン
d. 胸部 CT
e. 四肢骨格筋 CT
問題 44.入院後の検査で、眼輪筋以外に異常を認めず、また全身臓器に腫瘤も認め
なかった。開始する治療として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 血漿交換療法
b. 免疫グロブリン大量療法
c. 抗血小板療法
d. 抗凝固療法
e. 副腎皮質ステロイド経口投与
問題 45.頸動脈狭窄症の治療について誤っているのはどれか。2 つ選べ。
a. 頸動脈内膜剥離術
b. 頸動脈ステント留置術
c. 抗血小板療法
d. 副腎皮質ホルモン投与
e. 超音波療法
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問題 46-47.
75 歳の男性。時々異常な行動をとるとのことで来院した。
病歴:ある時より自宅のトイレがわからなくなったり、深夜に朝食を食べると言っ
たりするようになった。衣服を自分で着られなくなることもあったが、このような
エピソードは毎日ではなく、月に 2 回程度であった。また、時々両手がふるえてい
た。精査のため当院へ入院した。
現症:身長 166 cm、体重 69 kg、血圧 120/85 mmHg、脈拍 64/分、整、貧血なし、
黄疸あり、胸部に異常なし、腹部では辺縁鈍の肝臓を触知し、波動を認める。
四肢に浮腫なし。
神経学的所見:意識は清明で、神経学的に両側上肢にアステリキシス(固定姿勢保
持困難)を認める以外に有意な所見は認めなかった。
上記の患者について、問題 46-47 に答えよ。
問題 46. [不適切問題として削除]
問題 47. この患者における脳波を図 13 に示す。疑われる診断は何か。2 つ選べ。
a. Alzheimer 病
b. 尿素サイクル異常症
c. 神経梅毒
d. Lewy 小体型認知症
e. 肝性脳症
問題 48. 脳脊髄液所見として正しいのはどれか。1 つ選べ。
a. 細菌性髄膜炎では単核球優位の細胞数増多が認められる。
b. 結核性髄膜炎では糖が低下する。
c. ウイルス性髄膜炎では多形核球が多数認められる。
d. カンジタの検出には墨汁染色が有用である。
e. Guillain-Barré 症候群では細胞数の増多がみられる。
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問題 49. ある疾患で認められた脳波を図 14 に示す。疑われる疾患は何か。1 つ選
べ。
a. Creutzfeldt-Jakob 病
b. Alzheimer 病
c. 多発性硬化症
d. Parkinson 病
e. Lewy 小体型認知症
問題 50. 次の組み合わせで誤っているのはどれか。1 つ選べ。
a. 鉛中毒 ———————— 腱反射亢進
b. 有機水銀中毒 ————— 視力障害
c. 砒素中毒 ——————— 爪の白色横線
d. マンガン中毒 ————— 無動
e. アルコール中毒 ———— 小脳の萎縮
問題 51. 68 歳の男性。頻回の転倒を主訴に来院した。
現病歴:以前より様々な疾患に対してかかりつけ医より内服薬による治療を受けて
いる。数年前より徐々に体の動きがゆっくりとなった。最近になり、頻回に転倒を
認めるようになったため、かかりつけ医より紹介されて受診した。
現症:一般身体所見に異常なし。神経学的には仮面様顔貌を認める。筋力に問題は
ないが、四肢や体幹に筋強剛を認める。反射や小脳系、感覚系に異常なし。歩行は
独歩可能だが小刻みで突進様である。姿勢反射障害を認める。
この患者に対して長期連用の有無を確認する必要がある薬剤はどれか。
2 つ選べ。
a. 高脂血症治療薬
b. 胃腸薬
c. ビタミン剤
d. 抗精神病薬
e. 抗血小板薬
問題 52. Wilson 病について誤っているのはどれか。1 つ選べ。
a. デスメ膜に異常を認める。
b. MRI で大脳基底核に異常所見を認める。
c. 肝硬変を生じる。
d. 尿中の銅排泄が増加する。
e. セルロプラスミン遺伝子に異常を認める。
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問題 53. 一酸化炭素中毒について誤っているのはどれか。1 つ選べ。
a. 軽症例では後遺症を残さない。
b. 両側淡蒼球に病変を認める。
c. 治療には高圧酸素療法を行う。
d. 一旦回復した後で健忘症状を生じる。
e. 診断には脳脊髄液検査が有用である。
問題 54. 進行性の筋力低下を認めた患者から得られた筋の染色標本(Gomori トリ
クローム変法)を図 15 に示す。この疾患で通常認めない所見はどれか。1 つ選べ。
a. 低身長
b. 脳卒中様発作
c. 外眼筋麻痺
d. ミオクローヌス
e. Parkinson 症候群
f. 糖尿病
問題 55-56.
65 歳の男性。以前より眼球突出を指摘されていたが放置していた。3 ヶ月ほど前
より徐々に複視を認めるようになったため来院した。来院時、左方視時に複視が認
められた。
上記の患者について、問題 55-56 に答えよ。
問題 55. 神経学的所見から考えられる病変部位として可能性が低いのはどこか。1
つ選べ。
a. 中脳
b. 橋
c. 延髄
d. 海綿静脈洞部
e. 外眼筋
問題 56. この患者の頭部 MRI T1 強調画像の冠状断を図 16 に示す。この患者の基
礎疾患として疑われるのはどれか。1 つ選べ。
a. 糖尿病
b. 甲状腺機能異常症
c. 副甲状腺機能異常症
d. ミトコンドリア病
e. 海綿静脈洞血栓症
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問題 57. 70 歳の女性。5 年前より喘息にて吸入薬を使用している。3 ヶ月前より四
肢の異常感覚を認めるようになったため来院した。来院時、右手内筋の筋力低下と
筋萎縮、右手橈側の異常感覚と表在覚低下があり、右上肢と左下肢で腱反射が消失
していた。下肢の病的反射は陰性。神経生検の HE 染色標本を図 17 に示す。
この患者の血液検査で認められる可能性が高い所見はどれか。2 つ選べ。
a. 好酸球の増加
b. 抗ガングリオシド抗体陽性
c. アンギオテンシン変換酵素(ACE)の上昇
d. 抗好中球細胞質抗体陽性
e. 血清カルシウム値の上昇
問題 58-59.
40 歳の女性。進行性の四肢近位部優位の筋力低下を主訴として来院した。大腿部
MRI にて大腿四頭筋に T2 強調画像で高信号が認められた。同部位より行った筋生
検の結果を図 18 に示す。
上記の患者について、問題 58-59 に答えよ。
問題 58. 疑われる診断は何か。1 つ選べ。
a. Sjögren 症候群
b. 多発筋炎
c. Behçet 病
d. サルコイドーシス
e. アミロイドーシス
問題 59. この疾患で麻痺が生じる脳神経として最も頻度が高いのはどれか。1 つ選
べ。
a. 動眼神経
b. 三叉神経
c. 外転神経
d. 顔面神経
e. 聴神経
f. 舌下神経
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問題 60. 24 歳の女性。数日前よりふらつきを認めるようになり来院した。神経学
的には意識清明で、脳神経に異常を認めない。運動系では両下肢で軽度の筋力低下
があり、下肢で筋緊張の亢進を認める。上肢の腱反射は正常。下肢の腱反射が亢進
し、両側 Babinski 反射陽性。表在覚に異常はないが、両下肢の振動覚と位置覚が低
下している。協調運動系では指鼻試験は正常だが、膝踵試験で両側で運動分解が認
められる。
この患者において異常所見がみられる可能性が高い検査はどれか。1 つ選べ。
a. 聴性脳幹反応
b. 頭部 MRI
c. 視覚誘発電位
d. 脳波
e. 体性感覚誘発電位
問題 61. 痙攣重積状態の第一選択薬はどれか。1 つ選べ。
a. ジアゼパム
b. 硫酸アトロピン
c. フェノバルビタール
d. ビタミン B1
e. フェニトイン
問題 62. 三叉神経痛について正しいのはどれか。2 つ選べ。
a. 三叉神経第 1 枝領域に多い。
b. 10-20 代女性に多い。
c. 症候性三叉神経痛としては動脈性圧迫が多い。
d. 持続時間は数秒から数分であり反覆しない。
e. 治療薬にはカルバマゼピンを使用する。
問題 63. 片頭痛について正しいのはどれか。1 つ選べ。
a. 頭痛期に頭蓋内血管は収縮している。
b. 両側性には起こらない。
c. 数日間は持続しない。
d. 前兆期には血漿セロトニンが低下している。
e. トリプタン系製剤が有効である。
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問題 64. 腰椎穿刺および正常の脳脊髄液所見について正しいのはどれか。1つ選べ。
a. 色は黄色調透明
b. 圧は 200 mmH2O 以上
c. 細胞数は 5/mm3 以下
d. 糖は血清の 1/2 程度
e. IgG は血清の 20 %程度
問題 65. 脳脊髄液中の蛋白が増加するのはどれか。3 つ選べ。
a. 片頭痛
b. 脳炎
c. 脊髄腫瘍
d. 多発性硬化症
e. ラクナ梗塞
問題 66. 12 歳の男性。約 2 週間前に 3 日ほど発熱、頭痛、嘔気、嘔吐があった。
本日意識障害とともに両下肢対麻痺、尿閉が見られた。最も考えられる疾患はどれ
か。1 つ選べ。
a. Guillain-Barré 症候群
b. 硬膜外膿瘍
c. 急性散在性脳脊髄炎
d. 前脊髄動脈症候群
e. 脊髄膿瘍
問題 67. 脳脊髄液中の adenosine deaminase(ADA)の測定が診断に有用なのはどれ
か。1 つ選べ。
a. 結核性髄膜炎
b. ヘルペス脳炎
c. 肝性脳症
d. 髄膜癌腫症
e. 多発性硬化症
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問題 68-69.
25 歳の女性。X 年 Y 月 Z 日午前 11 時頃、軽いめまいがったが、すぐに抑まった。
午後 1 時、左頭部のずきんずきんとした痛みが始まり、痛みの増強とともに悪心が
出現した。光過敏あり。言葉が出ず、水がほしかったがうまくいえなかった。周り
の人の話していることはわかった。午後 3 時に救急車で病院へ行く途中に嘔吐した。
来院時、言葉はしゃべれたが頭痛は続いていた。
一般身体所見:身長 165 cm、体重 52 kg、体温 36.5 度、血圧 146/72 mmHg、
脈拍 92/分、整、貧血なし。頸動脈雑音なし。心音および呼吸音正常。
神経学的所見:異常なし。
上記の患者について、問題 68-69 に答えよ。
問題 68.この患者の頭痛の評価として適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. くも膜下出血は否定できる
b. 脳血管障害は否定できる
c. てんかん発作は否定できる
d. 緊張型頭痛は否定できる
e. 片頭痛は否定できる
問題 69.今行う検査として不適切なのはどれか。1 つ選べ。
a. 脳血管造影
b. 頭部 MRI
c. 頭部 CT
d. 腰椎穿刺検査
e. 脳波
問題 70-72.
50 歳の女性。40 歳以降から繰り返す球後性視神経炎で眼科通院中。X 年 Y 月上
旬より、左下肢の力が入りにくくなってきたため、精査・加療目的にて当院に入院
した。入院時の頸椎 MRI T2 強調画像を図 19 に示す。
上記の患者について、問題 70-72 に答えよ。
問題 70. この患者の血液検査について、予想される結果はどれか。1 つ選べ。
a. HTLV-I 抗体陽性
b. HLA-B51 陽性
c. 抗アクアポリン 4 抗体陽性
d. 血清アンギオテンシン変換酵素(ACE)の上昇
e. 極長鎖脂肪酸の増加
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問題 71. IgG index は、血流脳関門内における IgG 産生の指標である。脳脊髄液検査
の結果から IgG index を求めよ。
血清 IgG 700 mg/dL、血清アルブミン 4.0 g/dL、脳脊髄液 IgG 2.8 mg/dL、
脳脊髄液アルブミン 20 mg/dL
解答:①. ② ③(記入例:0.12 の場合、① a ② b ③ c)
a. 0
b. 1
c. 2
d. 3
e. 4
f. 5
g. 6
h. 7
i. 8
j. 9
問題 72. 治療法はどれか。1 つ選べ。
a. メチルプレドニゾロンパルス療法
b. ビタミン B12 大量療法
c. コルヒチン投与
d. 抗ウイルス薬投与
e. キレート剤投与
問題 73-75.
64 歳の男性。インフルエンザが流行しており、孫がインフルエンザに羅患してい
る。X 年 2 月 11 日ごろより風邪気味であり、同月 15 日に近医を受診し、感冒薬が
処方された。翌 16 日 14 時ごろ、自動車を運転中にガードレールに接触して動けな
くなっているところを発見され、当院へ救急搬送された。搬送時の頭部 MRI FLAIR
軸位像を図 20 に示す。
上記の患者について、問題 73-75 に答えよ。
問題 73. この患者の疾患について誤っているのはどれか。1 つ選べ。
a. 発熱を伴う
b. けいれん発作を伴う
c. 大酒家に多い
d. 脳波で周期性一側性てんかん放電を認める
e. 記憶障害を伴う
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問題 74. この患者の脳脊髄液検査所見について誤っているのはどれか。1 つ選べ。
a. 圧 210 mmH2O
b. 細胞数 220/µL(単核球 208/µL、多形核球 12/µL)
c. 蛋白 92 mg/dL
d. ウイルス遺伝子 PCR 検査陽性
e. 糖 15 mg/dL(血糖 120 mg/dL)
問題 75. 行うべき治療法について適切なのはどれか。1つ選べ。
a. アシクロビル投与
b. ビタミン B1 投与
c. イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、ピラジナミド併用療法
d. バンコマイシン投与
e. タミフル投与
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