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サプライチェーンマネジメントによる経営システムの改革

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9 8 年度専修大学経済学部経済学科望月宏ゼミナール2 年次進級論文
「サプライチェーンマネジメントによる経営システムの改革」
w090113 河西 真祐美
序章
第 1 章 サプライチェーンマネジメントとは何か
第 1 節 サプライチェーンマネジメントの理論
第 2 節 サプライチェーンマネジメントに至るまでの過程
第 3 節 サプライチェーンマネジメントのコンセプト
第 4 節 サプライチェーンモデル
第 5 節 サプライチェーンマネジメントパッケージソフト
第 2 章 アメリカにおけるサプライチェーンマネジメント
第 1 節 アメリカにおける経営体制の変革
第2節
アメリカにおけるサプライチェーンマネジメントの現状と導入企業
第 3 章 日本におけるサプライチェーンマネジメント
第 1 節 日本における経営体制の変革
第 2 節 日本におけるサプラチェーンマネジメントと導入に関する問題点
第3節
日本におけるSCMシステム導入企業とその成功
第4節 日本におけるSCMの実現に向けて
第4章
サプライチェーンマネジメントの今後の可能性
第1節 サプライチェーン全体の効率化…3PL
第2節 サプライチェーンマネジメントの国際標準化
終章
補足説明資料
用語説明
参考文献
序章
サプライチェーンマネジメント
従来、日本経済は物価の継続的な上昇を前提として成り立ってきた。そのような状況下で
工場は大量に生産し、販売部門は大量に販売すれば、それで利益に結びついた。
しかし、現在のような需要の低迷が続くようになると、大量生産による在庫の増加は収益
の足を引っ張り経営を、経済をも圧迫する。かといって生産調整で品不足となれば商機を
失うことになる。
また競争が全世界化してきており、競争力のあるよい製品に関してもそれを上回るライバ
ルの商品が登場する。特にハイテクの分野では技術革新が厳しいため 3 ヶ月もすると新し
い商品が登場し以前の商品が陳腐化する。つまり様々な分野の商品が“生鮮食品化してい
る。需要が盛り上がっている旬のときにサッと届け、パッと売り切らないと利潤が上がら
ない。
つまり変化、多様性に対応できる身軽で俊敏な組織、個性的で顧客満足を高められるよう
な企業…時代の要求にこたえられるマネジメントをした企業が勝利する。
生産と販売の同期を取り、原材料の調達から、製品化、販売まで一元的に監視し、モノの
流れを最適化する必要が生じてくる。これを可能にするのがサプライチェーンマネジメン
トである。
第1章では、サプライチェーンマネジメントとは一体どのようなものであるか、第2章で
はそれをいち早く生み出し効果をあげているアメリカの経緯と現状を、第3章では日本へ
の適応性の問題と現状、そしてその実現にむけて、第4章では国際標準化に向けたサプラ
イチェーンカウンシルについて論じていきたい。
1
章 サプライチェーンマネジメントとは何か
第1節 サプライチェーンマネジメントの理論
サプライチェーンマネジメント(SCMとする)は資材供給から流通、生産、販売をネッ
トワークで結び、関連する複数の企業や部門間の業務情報や経営資源を 1 つのビジネスプ
ロセスを使ってリアルタイムに共有することで、チェーン全体のスピード化と効率化高め、
キャッシュフローのスピードを上げる21世紀に向けた経営管理手法である。
イスラエル人の物理学者であるゴールドラッシュ博士が開発した「制約理論(TOC)」が
基盤となっている《図1−1 参照》
。 TOCとは、企業目標達成のためにそれを阻害する
制約条件を見つけそのボトルネックを克服し利益を最大化するためのシステムの改善手法
である。つまり生産システム全体の中で、どこにどのように注目すれば最適な解決策が導
き出せるのかという問いに答えてくれるものでもある。
TOCによる企業の目標(ゴール)である利益の最大化のための改善手法は 3 つあり、1つは
スループットを最大化させること、2つめが在庫を減らすこと。3つめが固定費を減らす
ことである。これをそれぞれのサプライチェーン (SC ) =材料・部品の供給から加工・製造・
流通を経て顧客に引き渡すまでの物の流れ・加工プロセスの連鎖(チェーン)に合わせて実行
することによりSCMのゴール・メイクマネーすなわちキャッシュフロー(資金の流れ)を上
げることに繋がるのである。
第 2 節.サプライチェーンマネジメントに至るまでの過程
SCMは突然現れたものではない。様々なベストプラクティス、情報技術が進化し、融合
したものである。融合してきた流れとしては①情報技術の革命的進歩②情報技術の進歩に
伴う経営管理技術の発展③多品種少量時代の新しいマネジメント概念の登場④EDI/C
ALSなどの標準の進展⑤流通業界におけるQR/ECRの進化の 5 つがある。《図1−2
参照》
①情報技術の革命的進歩
サプライチェーン経営改革を可能とした背景に、情報技術の進展がある。特にインターネ
ットの成長が大きい。インターネットは、全世界の「データ・フリーウェイ」といえる。こ
れは、時間と空間を圧縮し、世界の人々、企業が簡単に知り合い、コミュニケーションで
きる世界を作り上げた。
「データ・フリーウェイ」を活用して様々なビジネスの展開が本格化している。インターネ
ットを通じた電子商取引は、消費者と企業をダイレクトに結びつける。中間流通の中抜き
が実現し、ローコスト流通を可能にする。また消費者との直接のコミュニケーションが始
まり、企業は消費者のニーズ、需要動向の的確な把握が可能となる。効果的新商品開発や
需要に連動した生産も可能になる。また消費者に対し、インターネットを通じて様々なサ
ービスが可能となった。
②情報技術の進歩に伴う経営管理技術の発展
生産管理の基本的メカニズムに、MRP(資材所要量計画)がある。生産計画と部品表(生
産の構造をユニット、部品と段階的に表したもの )を掛け算して必要な量を求め、在庫を引
き当て正味必要量を発注するメカニズムである。発明した当時は、これをすべて展開する
には何日もかかり前提とした生産管理を行うしかなかった。このような情報技術の限界の
中で、当時の生産管理の仕組みはできていた.コンピュータ利用技術としては、世界最高
のIBMでさえ、7年から8年前まで最終製品のMRP、それに使うユニットのMRP、
それに使う半導体のMRPと世界各地に広がる拠点ごとにMRPを展開していると半月近
い時間がかけられていた。これではとても需要に連動できなかった。
SCPはこれを元にし、ほぼMRPに近いロジックを瞬時に回し、制約を即座に発見し、
対策に結びつける、これに加え需要予測、在庫最適化、納期回答、生産スケジューリング、
輸送最適化などを同時に連動させ計画することを可能にした。
サプライチェーン内のあらゆる資源を需要や顧客のニーズに合わせ、何度も繰り返し、計
画し、最適解を発見していく。この過程で、ロスを最小化し、利益を生み出していく。ハ
ード(メインメモリ、CPU、ハードディスクなど)の高速化、高性能化、ローコスト化、ソ
フト(データベース、計算アルゴリズムなど)の情報技術の進歩、そしてサプライチェーン間
の情報収集を可能にするインターネットなどのネットワーク技術の発展は、新しい経営改
革を生み出した。
③多品種少量時代の新しいマネジメント観念の登場
需要の多様化、商品の多様化があらゆる産業において進展している。多様性が拡大すると
1つ1つの標準作業化による改善だけでは、生産性は向上しない。むしろその他の要素が
多くなる。顧客の多様性に的確に対応しつつ事業として成り立つ統合的生産性を高めるマ
ネジメントが重要となる。そのアプローチには3つある。
1.モジュール化
ユニット、部品工程を共通化し様々な用途に活用できるようにする。製品もコアの部
分とオプション、アタッチメントなどの対応が可能な構造となっている。
2.プロセスを直結化し、多様性の要素を減らす。
3.関連するプロセスを同期化させ、スループット時間(投入してから完了するまでの時
間)を短くする。多様化することにより、流通プロセス、物流プロセス、生産プロ
セス、調達プロセスが多様に複雑化する。
④EDI/CALSなどの標準化の進展
EDI
EDIとは受発注、見積もりなど、商取引に関わる情報をデジタル化し、コンピュータネ
ットワークを通じてやり取りする仕組みのことである。サプライチェーンを統合していく
上での重要な仕組みである。しかし現段階では次のような問題がある。
1.大手小売チェーンに見られるように、独自の専用EDIになっているケースが多く、
複数のEDIに対応しなければならない取引先企業の負担となっている。
2.VAN(付加価値通信網)事業者などによって運営されているが、導入コストはかなり
高い。関連する中小企業すべてに導入するのは難しい。
3.多くの企業ではEDIを部分的にしか活用していない。
1996年ごろからウェブを利用したインターネットEDIサービスが登場している。ウ
ェブであればパソコンを持ち、インターネットに接続している企業であればそくたちあげ
ることができる。このため、サプライチェーンを広く活用していくためには、EDIはオ
ープンでグローバルな標準でローコストな仕組みとして重要な要素となっていくであろう。
CALS
デジタルデータに基づいたビジネスプロセス変革や国際規格や標準化などを総合的に利用
しより効率的な商品開発や商取引及び管理を可能とするビジネス戦略である。
⑤流通業界におけるQR/ECRの進化
様々な経営手法、情報技術がサプライチェーンというコンセプトの下に統合され、大きな
うねりとなって産業構造の変革、各企業の経営改革の推進の原動力となっている。
小売業を中心として発展してきた運動にはQR(クイックレスポンス)、ECR(エフィシェ
ント・コンシューマー・レスポンス)がある。
《図1―3参照》QRは百貨店を主体とする
衣料品や住居関連用品を取り扱うリテール業者が、取引先のメーカーなどと共同して繰り
広げてきたものである。
ECRはその後1993年ごろからアメリカのスーパーマーケットなどの食品・雑貨を取
り扱うグローサリー業界で、業界を上げて取り組むようになっていった。
⑥QR/ECRからSCMへ
今後QR/ECRはSCMへ発展し特に次のような点が強化されるだろう。
1、QR/ECRは、主に小売業、卸売業、製造業の三者に焦点を当てて、製販一体化
戦略を展開してきた。SCMでは、製造業の先の部品サプライヤー、材料メーカー、
そして小売業の先の消費者までを直結する。
2、QR/ECRでは、商品の流れと在庫、取引データの流れの共有化が中心であった。
SCMでは商品、情報、資金の流れを共有化し、最高の効率を追求する。情報面で
は単なる在庫や取引データだけでなく、消費者と直結することにより、消費者個々
の購買履歴、趣味指向などを分析し、各消費者のニーズに合わせた提案までも可能
にしようとしている。
このように様々な要因が絡み合いサプライチェーンマネジメント実現に至ったので
ある。
第 3 節 サプライチェーンマネジメントのコンセプト
①SCMは個別企業にとって差別化の根泉にある。特に新たな観点で事業構造を見直しS
Cを構築することは企業の優位性の確立に貢献する。
②SCMの最終目的は、個別企業の枠を超えて、製造・物流・販売のSCを効率化するこ
とであり利益を享受するのは、共同でSCMに取り組んだ仲間としての企業群である。
③SCMによって最終的な利益を享受するのは消費者である。すなわちSCMの取り組み
が広く各業界に浸透することは、全体の社会コスト低減に繋がるのである。
第 4 節.サプライチェーンモデル
SCMは経営の重要なビジネスプラクティスとして注目されている。経営コンサルティン
グ企業、SCMツールベンダー、ERPベンダーなどが様々な「サプライチェーンモデル」
を提案し、多くの企業の関心を集めている。代表的なものを挙げる。
・パイプランマネジメントモデル
アンダーセルコンサルティングが主張している考え方。企業のパイプラインの中にモノが
あるうちは、利潤は生まれない。次々と業務がスムーズにプロセスに進むことで、大きな
成果が上げられる考え方である。このモデルは「supply」・「operations」・
「distribution」のそれぞれの大区分と、その中にどういった業務内容が含ま
れ、構成されているかを表したものである。
《図1−4参照》
・A.T.Kearneyのモデル
サプライヤーズから部品や原材料の供給を受け、製品として顧客に出していく。そのサプ
ライヤーからカスタマーまでの中心に自分達の企業があり、そこに存在する自社の機能を
サプライチェーンの一部として捉えるやり方である。Acquire(購買・調達)、Con
vert(原材料を製品に転換)
、Distribute(商品を動かし販売まで)、デザイ
ンから始まって販売までを業務領域としている。《図1−5参照》
・Ernst&Youngのモデル
「plan(企画)」「buy(購買)」「make(製造)」「move(運ぶ)」「sell(販売)」の 5 つ
のサプライチェーンの業務領域を示したものである。ここでは「計画」し、原材料・部品を「調
達」し「製造」したものを「運び」顧客へサービスをして、結果を得るという中に「sell」と
いうマーケティングに関する業務までを領域として入れている。
《図1−6参照》
・『サプライチェーンマネジメント・レビュー』誌に紹介されたモデル
商品の流れ、情報の流れ、お金の流れがそれぞれを串刺しにするような形。例えば土管の
中を水が流れるように動いていく考え方。
《図1−7参照》
・サプライチェーンカウンシルが約70社位の企業と一緒に作ったビジネスモデル
サプライヤーズから顧客までのサプライチェーンを「plan」「source」「make」
「deliver」という 4 つの大きな対象業務領域により構成している。その 4 つの領域
の業務を的確に行うことによって顧客満足を上げていこうというものである。
《1−8参
照》
・サプライチェーンカウンシルのマルチサプライズ・ツー・マルチカスタマーのモデル
一連の繋がり (チェーン)の中心に自分の会社を置いている形である。
,source,ma
ke,deliverというビジネスプロセスは、どこの会社でも持っている。その企業
が集まって1つの仮想企業体という形でサービスを行う。するとサプライヤーズサプライ
ヤー、カスタマーズカスタマーと上流に向かっても下流に向かっても途切れることのない
チェーンで永遠にカバーしている。こうしたカバーをすることが、自社にとっても協力会
社にとっても、パートナーにとっても、また顧客にとっても大変効果があり,喜ばれると
いう考え方である。
《図1−9参照》
第5節 サプライチェーンマネジメントパッケージソフトベンダー
SCMのコンセプトをソフトウエアに反映させたパッケージソフト業界が急成長している。
SCMパッケージソフトの基本的機能は以下に示す6つである。
①需要計画
過去の実績および市場の需要動向を調べる。各種統計手法を使い、高度な需要予測を行い
生産計画に反映させる。
②製造計画
各種制約条件を考慮しながら、最適な生産計画を作成する。有限および無限ソースでの生
産計画シュミレーションが可能である。
③スケジューリング
各種制約条件を考慮して、スケジュールをダイナミックに実行する。
④輸送計画
ROA、利益率、目標サービスレベルが最大となる輸送計画を作成する。輸送機関、経路
積載量を選択し、最適な輸送計画をリアルタイムに作成する。
⑤物流計画
倉庫の広さ、輸送車両の使用状況、輸送コストなどすべてを考慮した上で、在庫が常に適
正基準に保たれるように物流計画をリアルタイムに作成する。
⑥納期解答
各種制約条件を考慮した上で、納期及び可能数量を解答して、顧客対応をする。
パッケージソフトの良さは複雑的な制約条件をコンカレントに処理し、リアルタイムに動
作するシュミレーションの機能によって瞬時に最適な計画値を算出してくれることにある。
代表的なSCMソフトベンダーとその製品を見ると、現時点では欧米の企業が日本の企業
より製品力、サービス力、そして販売力のいずれをとっても先行しており、欧米有利の構
造ができつつある。経済のグローバル化が進行してきており、これに対する対応力を持つ
欧米企業と、国内企業のみを対象としてきた日本企業との差が出てきた感じがある。
《図1
−10参照》
SCMソフトとしては大手企業『i2テクノロジーズ』
『マニュジスティックス』の2大ソ
フトがあり「RHYTHM」は製造業向けであり、「マジスティク」は物流中心の意思決定ソ
フトとして定評がある。
特に「マニュジスティック」はフォーチェン10社の企業中7社、商品小売リチェーン上位
14社中12社、化学会社5社中4社が、薬品販売チェーン上位10社中6社がで採用さ
れている。流通関係では、すでにP&G/ウォルマート、Safeway、kマート、ア
メリカン・ストアーズが採用しており、今後もその採用数は急激に増加することが予想さ
れる。
・i2テクノロジーズ社
1988年設立SCMソフトだけでなく、サプライチェーン収益改善機会分析のコンサル
ティングやサービスも提供している。「RHYTHM」というソフトの商標で販売を開始し
瞬く間にSCMソフト分野のトップベンダーに成長した。
「RHYTHM」の特長
①同時並行計画(Concurremt Planning)
従来のMRPに基づくシーケンシャルな生産計画立案とは異なり、すべての制約条件、例
えば顧客要求納期、資材・設備能力、人的資源などを同時に考慮し実行可能な計画を1回
で作成できる。
②高速計画作成
すべての計算をメモリー上で行うため、従来の数十分の1あるいは数百分の1に短縮でき
る。
③全体最適化及び可視性
サプライチェーン全体、すなわち生産、物流、販売などを一つのモデルとして表すことが
できるので、従来の部門別縦割りの部分最適化を目指したシステムとは異なり、サプライ
チェーン全体での最適解を追求することができる。
④TOC(制約理論)に基づく問題解決
システムのスループットはボトルネックとなる箇所によって決まるので資材と能力(設備、
輸送、労働力)などの制約を明確化し、プランナーとの対話形式で制約を解決し実行可能
で最適な計画に近づけることが可能である。
また「RHYTHM」はERPのトランザクション処理やデータ管理機能と連携を取りなが
ら、顧客応答性、在庫削減、納期達成率、スループット、経費削減などに大きな効果が得
られるといわれている。
「RHYTHM」が提供する機能を図表《図1-11参照》にあらわす。
・マニュジスティック社
1969年前身になる ScientificTimeSharingCorporation を設立、見込需要をベースにし
た S C M でここ1,2年で急速に海外展開している。S C M ソフト「マニュジスティック5」
の特長を紹介する。
「マニュジスティック5」の特長
①需要プランニング
イベントなどの販売促進活動を反映させた予測モデルを作成することも可能である。
②ディストリビューション・プランニング
資材の流れを考慮しながら、需要を流通計画と基準製造計画に置き換える。
③制約付き製造プランニング/製造日程スケジューリング
詳細な工場設備ごとのスケジュールを作成する。
④輸送マネジメント
サプライチェーン全体との比較で、最適な輸送資源の配分とコスト効率の高い輸送スケジ
ュールを作成する。
⑤サプライチェーン・ナビゲーター
サプライチェーン全体を視覚的に把握できる機能を持つ。
マニュジスティクス・サプライチェーン管理が提供する機能を図表《図1-12参照》に示
す。
補足説明…《図1−13参照》
第2章 アメリカにおけるサプライチェーンマネジメント
第1節 アメリカにおける経営体制の変革
アメリカの製造業の辿ってきた道は 1950 年∼ 60 年代半ばの黄金時代、60 年代後半∼80 年
代初めの衰退期、80 年代後半からの復活期に分けることができる。
黄金時代・・この時代はとにかく製品を作ればモノは売れる時代であり、経営者の関心事
は大量生産、大量販売という「量」の問題であった。工場では大量生産方式が追求され、設
備もより大型で高速のものに置きかえられ、設備の高稼働率を目指して大ロット生産が行
われた。このような結果、工業製品の値段はどんどん安くなっていき、物質的にはきわめ
て豊かな国となった。
しかし 70 年代に入り、圧倒的な優位性に安住し、品質向上の努力を怠っている間に、気が
つくと日本企業が信じられないほどの高品質の製品とともにアメリカ市場に進出していた
だが、アメリカは以前からの考え方から脱却できなくなっており、結果として品質や棚卸
回転率といった重要な生産力指標が悪化し、アメリカのメーカーの競争力は低下していく
こととなったのである。
80 年代に入りアメリカ企業は品質に目覚め始め、日本に習うような体制「ニッポンスタディ
ー」ができていった。このときにアメリカは、トヨタのJIT(ジャストインタイム)方式
を取り入れた。そして設計・生産・販売などの水平分業体制でなく、製品ごとの垂直分業
のチーム体制、権限委譲による社員の他能力化、情報共有のための情報技術(IT)の活用な
どによって確実な道を歩み始めていた。
そして 90 年代は従来の品質管理からリーン生産といった仕組みへと移っていき劇的な改善
効果を生み出す企業が増えてきた。同時にアメリカの製造業の中には日本にはない独自の
取り組みによる生産・販売の仕組みの改革や情報技術の戦略応用などの事例が顕著になっ
てきた。つまりアメリカの製造業は今まで弱かった部分を日本企業から徹底的に研究しま
ねをすることによって補強し、IT(情報技術)の進化によって経済を好調へと導いたの
である。
このような流れの中で企業活動における資材の調達から生産・配送・販売・リサイクルと
いった一連のビジネスの中で各部門が部分最適化に陥ることなく、企業内だけでなく調達
先、取引先をも巻き込んで「物の流れをマネジメントする」という新しい全体最適化の経営
管理手法…SCMが構築されていったのである。(詳しくは第1章第2節を参照のこと)
第2節 アメリカのサプライチェーンマネジメントの現状と導入企業について
現在、日本が巨大な不良債権に再生の足を引っ張られている中、アメリカは 6 年にも及ぶ
長期好景気をおう歌している。失業率も最低記録を更新しつづけており、製造業の生産性
も3.5%向上した。アメリカの回復の要因は、先ほども述べたように 80 年代後半から 90
年代にかけ徹底したエンジニアリングでぜい肉を取りきったこと、それにITが大きく貢
献しSCMをバックアップしたことが上げられるだろう。
次にアメリカでの現在のSCMの成功実例を示していきたい《図2−1参照》
。特にこの中
でも目を見張るのが、デルコンピューター社であろう。デルコンピューター社のパソコン
ビジネスは、回転寿司と同じように新鮮さをリードタイム短縮というツールで実現したビ
ジネスモデルである。これにより受注後納品まで4日、在庫回転率50回/年(業界平均の
1/7)、スループット3倍という結果になったのである。
《図2−2参照》
< デルモデルの本質 >
デルモデルのメリット
①高速経営
・最小の資産で高効率のビジネスを展開(1997年のデルのROA(総資産利益率)は22.
1%。業界平均は7.5%)
・最高の技術を、顧客にタイムリーに届けることによる商品力の差別化
②ローコストオペレーション
・ユーザーダイレクトの仕組みやアウトソーシングの活用による、間接の少ない高効率経
営
デルのデルサービス
①顧客に代わって、ソフトウエアをインストールする。(マイクロソフトから供与されたも
の,顧客が独自に作成したもの、ネットワークの運営に関係するものなど顧客のニーズ
に合わせてインストールする)。通常、この仕事はユーザーが担当する。一台処理するの
に,2∼3時間、コストも200∼300ドル必要とされる。このセービングをデルが
支援する。
②顧客の備品であるというロゴのラベルを貼る。パソコンの所有に関する情報を登録して、
顧客のパソコン管理に役立てる。
③顧客に技術者を派遣して、パソコンの管理をサポートする(ボーイングは10万台のデル
のパソコンを購入している。デルは30人を派遣して、パソコンの管理をサポートして
いる)。
④大口顧客は、デルの社内テクニカル・サポート・チームと同じように、社内サポート・
ツールに直接アクセスできる。
⑤100社以上の大口顧客には「プレミアページ」というイントラネット・サイトを提供し
ている。顧客企業の社員は、このサイトから会社が指定する仕様に必要な価格や性能な
どを直接アクセスし、注文ができる。これにより調達のための様々な手続きが省略でき
る。
ユーザーダイレクトな顧客中心のビジネスモデルには次のようなメリットがある。
①ユーザーのニーズをダイレクトに把握することにより、魅力的な商品を開発できる。
②トータルな顧客サービスにより、顧客満足度を高め、一生涯を通じて顧客に対するシェ
アを高め続けられる。
③顧客の動向や重要を把握することにより、的確な生産対応が可能となる。
顧客をがっちりつかみ、顧客の各々のニーズに基づき、高速で商品トータルなサービスを
提供する。デルは顧客の新しい価値を創造し続ける。デルは流通業であり、サービス業で
あり、製造業である。デルは自社の枠組みを超え、顧客とのコラボレーション(協働作業)
を追求している。もちろん関連のパーツサプライヤー、アウトソーシングカンパニーと一
体となった、コラボレーションも徹底して追求している。顧客とダイレクトに一体となり、
関連するサプライヤーとも同じ情報を共有化し、あたかも同じ一企業体のようにダイナミ
ックに動く仕組みを作り上げる。そのバーチャルな連合組織の中で最高の生産性を追求す
る。デルは従来の企業の枠組みを超えた新しいビジネスモデルの構築に突き進んでいる。
< フェデラルエクスプレス(フェデックス)の本質>
フェデックスのメリット
フェデックスは世界規模の物流企業であり、世界212カ国をネットワークし自社で航空
機を約600機、車両約4万台を保有、1日平均約290万個の貨物を扱う。顧客のロジ
スティック全般を請け負うサービスを展開。世界に先駆けてインターネットによって小包
の配送状況がわかる貨物追跡システムを導入するなど常に最新の情報技術を活用すること
で、顧客サービスの向上を目指している。また顧客の電子商取引(EC)を支援する。フ
ェデックスの年間の情報投資額は約10億ドルで、売上の10分の1近くに相当する。
フェデックスのサービス
①先にも述べられているように、インターネット上での注文処理機能とフェデックスの貨
物発送・追跡機能をリンクさせるソフト=「バーチャルオーダー」やサーバー用の発信・
通信ソフト「フェデックス・シップ・フォー・ワングループ」を開発し、これにより顧客
はあて先情報の共有や発信ログ、貨物追跡データベースへのアクセスができる。サーバ
ーとフェデックスの接続はモデルやインターネットを通じて行う。さらにWWWブラウ
ザからフェデックスのサービスをシームレスに利用するための仕様も公開する。これに
より顧客はインターネット/イントラネット上のWWWサイトとフェデックスのシステ
ムを簡単に連携させることができる。
第3章
第1節
日本におけるサプライチェーンマネジメント
日本における経営体制の変革
経営環境の劇的な変化に伴って経済原理も変わり、従来の経営管理システムが通用しなく
なってきている。
《図3−1参照》
80年代までの経営管理は、顧客ニーズが均等でかつ安定した市場を前提として、企業の
各機能、例えば調達、設計、生産、物流、営業などがそれぞれ、コスト削減、品質向上、
売上拡大という部門ごとの目標設定に向けて業務改善を実施することに力点が置かれてい
た。これは製品のライフライクルがきわめて長く、売上拡大という経営目標達成に向けて
「規模の経済性」を追求する経営環境下で通用していた経営管理であった。
しかし90年代になると、バブル経済の崩壊もあったが、経済が成熟化し、顧客ニーズが
多様化し、製品のライフサイクルが極めて短くなってきた。世界市場を対象にしたビジネ
ス環境においては、従来の経営管理システムはもはや機能しなくなってきている。例えば
IT業界、とりわけコンピューター業界では近年「パラダイム・シフト」と呼ばれる大構造
変化があり、グローバルレベルでの戦略的合併や提携、また自社の経営資源を得意分野に
フォーカスする「コア・コンピタンス経営」などによる生き残りを賭けた競争が起きている。
1つの工場で行っていた製造プロセスのうち、コスト競争力のないプロセスや、品質面で
他社と同等のものを出せないプロセスなどは、外部の企業にアウトソーシングすることで
品質面やコスト面での劣勢を補い、経営資源を自社の強い分野に集中することでさらに競
争能力を高めていこうとしているのである。
また、製品開発に特化して工場を持たない製造会社や、コンピューターのOS開発のみに
特化して情報家電や自動車、そしてCATVなどの通信・サービスといった他業界へと事
業を拡大しているソフトベンダー、世界市場で1番か2番になれない事業は売却し、自社
の強い事業分野をさらに強化するために売却資金を買収に当てて急拡大している製薬・化
学分野のメガカンパニー、大きなビジネスを展開しているバーチャル・カンパニーなど従
来とは違ったビジネスモデルが続々出現してきている。こうした動きに伴って多くの企業
は、一企業内の特定のプロセスのみを管理対象にすることではもはや世界規模で生じてい
る競争には対応できなくなっている。
顧客のニーズにスピーディーかつ的確に対応するために、一企業の枠にとどまらず、調達、
生産、物流、営業の各機能にまたがる全体最適の視点を持って「モノの流れをマネジメント」
する必要性が出てきた。さらに、世界市場を対象にしたメガカンパニーとの競争激化の中
で、製品のライフサイクルは極端に短くなり、対象市場も拡大してきた。
このような経営環境の下で、製品提供ライフサイクルのスピード化、高品質の維持、低コ
ストのオペレーションを指向するためには「スピードの経済性」、「ネットワークの経済性」
という経済原則も適用される環境になってきている。
第2節
日本におけるSCM導入に関する問題点
ここでは、日本におけるSCMに関しての問題点を
1,経営戦略(strategy)
、
2,業務プロセス(process)
、
3,組織/スキル(organization/skill)、
4,情報技術 (information technology)
の4つに区分してみていく。
1,経営戦略の問題点
①サプライチェーン戦略の欠如
サプライチェーン分野にはコスト戦略が重要視されてきたため、顧客の重要度に応じ
て顧客満足を上げるサービス基準を設定し、それを敏速かつ正確に提供するという考
え方が希薄であった。
②各部門目標の最適化の障害
従来は右肩上がりの経済であったため、企業全体で収益構造のマネジメントを行うと
いう立場で部門目標を設定するという習慣がなかった。また段取りがかかる部門では
少しでもトン数を稼ごうと、重要予測を先読みして実際の生産計画より大ロットで生
産していた。工程内でこのような小さな意思決定が重なると、生産中の仕掛かり在庫
が増大し、リードタイムが長くなり、結果として顧客への納期は長くなった。
これまで長い間、生産、物流、販売の各部門では「コストマネジメント」の視点を強く意
識した経営管理を実践してきたため、この部分最適の考えが経営管理の標準的な評価指
標として使われてきたという時代背景がある。コストマネジメンの世界では部分最適の
総和は全体最適である。そして以前は企業の各機能、例えば調達、設計、生産、物流、
販売などがそれぞれコスト削減、品質向上、売上拡大で部門目標に向けて業務改善すれ
ばよかったからである。しかしスピードとネットワークの経済性の下では生産、物流、
販売などの各機能部署が、自社だけでなく調達先、顧客などと連携し、コスト削減、品
質向上だけでなく、トータルなリードタイムを短縮しスループット(貢献利益)を向上
させるために全体最適の視点を持ってビジネス・モデルの改革を実施することが大切で
ある。
2、業務レベルの問題点
①日本独特の流通システムや取引慣行
日本の中間流通の多階層化は高コストの一因である。国土の広い米国でさえ、メーカ
−倉庫から店頭までの間には1拠点または2拠点が主流である。国土の広さが日本に
近いイタリアでは最高でも2拠点で大半は1拠点である。ところが日本では3拠点が
主流であり、4拠点または5拠点さへも存在している。
《図3−2参照》
また、手形決済が取引慣習として根付いており、支払期間の長さが生む金利負担が重
荷になっている。通常120日後に支払われるのが普通である。
②時代遅れの原価計算制度
現在の企業会計制度で採用されているのは、全部原価計算という方法である。全部原
価計算は、製品別に原価と利益を計算することに主眼があり、直接・間接人員の人件
費、設備の減価償却費などの固定費を個々の製品に何らかの方法で割付けをするため、
製品戦略上、誤った結論を導き出す場合がある。
③社内各部門ルールや取引ルールなど標準化の遅れ
社内の各部門におけるルールが徹底していないので、社外とのルールはほとんど標準
化されていないのが現状である。次のEDI,ECなどのIT活用の遅れとも関係す
るが、ルール作りや標準化などは参加者が増えれば増えるほど深刻化する問題である。
3、組織/スキルの問題点
①リーダーシップの欠如
サプライチェーンは、企業内の各部門だけでなくサプライヤーや顧客先までを対象と
するチェーンであるが、それぞれの部門の利害関係で全体最適化に向けてリーダーシ
ップを発揮する適任者=社長なのだが、実際には組織内部のことまで十分に把握でき
ていないのが現状である。
③生産部門と営業部門の狭間、物流部
物流組織を企業の歴史的背景から考察すると、物流部は生産部か営業部のどちらかに
属する場合がほとんどであり、物流部の単独組織はあまり存在しない。生産部に属す
る場合は、工場に併設されている倉庫管理、営業部の場合には営業部に併設されてい
る倉庫管理が主な役割であった。物流業務で重要な需給調節業務(営業部が作る販売
計画と生産部が作る生産計画の調整)についてはほとんどリーダーシップが取れずに
実際は企業内でパワーのある部門、声の大きい部門によって決定されている。この背
景には長い物流部門の役割が極めて狭い範囲に限定されていたこと、生産と営業と
いう2つの大きな機能の狭間にあって、あまり重要視されていなかったことというこ
とがある。したがって物流担当は倉庫番としての役割であり、結果として優秀な人材
もあまり配置されてこなかった。
このため生産部、営業部のそれぞれの利害が衝突すると、作り過ぎや需要予測のミス
で在庫が増加したり、品目増大や緊急出荷などの例外処理の増加で物流コストが増加
したりといった経営上の問題に発展する場合がよく見受けられる。物流部が、営業部
が作る販売計画や生産部門が造る生産計画の調整ができれば、在庫増加や物流コスト
増といった問題をかなり食い止めることができるはずである。
4、情報技術の問題
①情報システムの壁の問題《図3−3参照》
サプライチェーンの全体最適化を拒む情報システムの壁は「個別企業内業務システム」
「個別企業内計画系と業務系」「企業間業務連携」「全体最適化計画」という4つのレベル
に分かれている。
・個別企業内業務システム間の壁
大企業においては、フロントエンドと呼ばれる最前線の営業向けの受発注システ
ム、バックエンドと呼ばれる経理、財務、人事などのシステム、工場での生産管
理システム、配送スケジューリング、在庫管理システムなど実に多くの業務を支
援する情報システムが存在しているのが普通である。これらのシステムの多くが
企業内のセクショナリズムに裏打ちされながら、独自に開発されているので、情
報のリンクがうまく取れていない。このように情報が断片的に存在すると、現在
情報に直接アクセスできなかったり、同じようで違う情報が複数個所に存在して
どれが正確なのかわからなくなったり、情報の整合性が取れなくなったりといっ
た混乱が発生する。
・個別企業内計画系と業務系の壁
これまでのシステム化の中心であった現場の業務を支えるシステムと、今後の対
象である計画計の壁である。
複雑な理論と強力なCPUパワーを必要とする計画、シュミレーション系のシス
テムは非常に高価で、またその効果も疑問があった。またこの領域はまだ経験と
カンに裏打ちされた職人の分野であったため、まだシステム化されていないか、
業務系の単独のシステムであった。
・企業間業務提携の壁
個別企業同士がシステム接続する場合の壁
各企業の情報システムがまちまちな方式によって構築されてきた結果、外部とデータ
をやり取りする部分(インターフェイス)までもが各社各様で、様々な非合理が生じて
いる。企業間のシステム接続は、システムの構築内容や方針が企業ごとに異なるため、
かなり大変な作業といえる。EDI,ECは企業間でコンピュータを接続し、情報を
やり取りするので各社のコンピュータ機種が異なるといったん「標準語」に変換してデ
―タの送受信を行う必要がある。
このようにEDI,ECを積極的に推進するためにはコンピュータ通信上のデータ電
送手順やそのフォーマット形式、各社の事務処理形態の伝票様式などを統一すること
が必要であるが、その量は莫大かつ複雑であり、また企業ごとに対応しなければなら
ずコスト負担も大きいといった理由があるために、各社間のITを活用したビジネス
取引を遅らせている。
(ex.ダイエーのWeb−EDIシステム)《図3−4参照》
・全体最適化計画の壁
業務システムレベルでの企業間連携が可能になったとしても、何をどこへどれくらい
積んだらよいのか、何をどれくらい生産して、どこにどれだけの在庫を持つべきかに
関して、サプライチェーン全体最適を誰が図るのか問題となる。
全体最適化の追求の仕組みについては、大きく2つのパターンがあり、
1つはサプライチェーンに直接関与しない第3者に任せるパターン、
もう1つは最適化の鍵となる情報を参加者で共有し、後は各自がそれにあわせて最適
化を計ることで全体最適化を図るパターンである。
(ex.IBMのCRSサービス)
《図3−5参照》
このように情報通信の問題を解決するには、4つの壁を超えなければならない。現在、前
者の2つを乗り越えるだけでも多くの企業が苦戦しているところである。たとえ4つの壁
を超えたとしても、それからの各自のスキルアップが重要となってくる。
第2節 日本のサプライチェーンシステム導入企業とその成功《図3−6参照》
表を参照してほしい。その他にも菱食、セブンイレブンなどが導入企業として有名である。
ここでは日本でサプライチェーンマネジメントの効果が大であったSONYの例を挙げて
いく。
ソニーは販売会社と事業部門、そして工場を結んで発送データと生産計画を連動させる製
販管理システム「STREAM」を90年2月に全面稼働。その後グローバルネットワーク
に構築に注力して、今では部門管理データベース「パティックス」や、部品の調達状況を検
索できる「スプリングス」など多くの物に力を入れている。
その他にもパーソナルAVカンパニー(PAV)はMDウォークマンなど個人向けAV家
電製品を担当している。PAVでは欧米で販売しているビデオカメラのサプライチェーン
を全面的に見直すことで、7週間のリードタイムを4週間に短縮。在庫の半減も実現した。
とはいえ、PAVの取り組みをそのまま他のカンパニーに当てはめるのではなく、各カン
パニーが担当する製品ごとに最適なサプライチェーンを構築できる、柔軟な生産と販売の
体制作りを並行して進めている。
また現状では、ソニーの販社における製品発注や、工場による生産計画の立案といった業
務は、すべて週1回に実施している。製品の生産や物流といった業務も、これにあわせて
基本的に週単位で計画している。
このようにソニーは先行する情報インフラを生かして製品ごとに最適なサプライチェーン
を作り出す段階にまで達しようとしている。
第3節
日本におけるサプライチェーンマネジメントの実現に向けて
日本には様々な障壁がある中で、どのようにサプライチェーンマネジメントを実現してい
ったらよいか。サプライチェーンマネジネントを実現する手順は次の5段階に分けられる。
《図3−5参照》
①個別企業の戦略の明確化
サプライチェーンマネジメントの出発点は経営トップのSCMに対する企業戦略としての
認識である。自社の競争力の根源はどこにあるか、サプライチェーンの再構築はその根源
に対してどのような貢献をするのかなど経営トップのはっきりとした意思表示が必要であ
る。また経営者がサプライチェーン全体を評価できるキャッシュフローベースの指標をつ
くり、目標として掲げることで会社としての最適化が望めるのである。
②共生の開始
・共同体設立
・プロデューサー能力
③サプライチェーンの実態把握と再設計
SCMに必要なのはサプライチェーンの各プロセスの構造、そこに流れているモノ、情報、
カネなどの生きた詳細な情報である。共同機構の参加団体が自分の持っている情報を隠し
たてずに開示し合うのが重要であり、企業間の信頼感が求められる。サプライチェーンの
実態に基づいた再設計では、SCMの端緒となった制約理論的な発想が重要である。サプ
ライチェーンのボトルネックはどこか、プロセスの同期化、集約化、増力化などそれを解
消できないか、ボトルネックをフル稼働させるにはどのようにプロセスを組替えるべきか
などの視点が必要である。
ボトルネック解消によるスループット向上を基本概念として再設計されたサプライチェー
ンも、それを誰がどのような責任と権限で通用するかを明確にしなければ実現不可能であ
る。スループットを最大化するには、1つは、サプライチェーンを短縮し、リードタイム
を短くすることである。これによって需要の予測が容易になり、よけいな中間在庫が少な
くなる。またボトルネックが明確になってチェーンの管理がしやすくなる。2つ目は、ボ
トルネックを最大限に活用することである。このために需要予測の精度を高め、それ以外
の工程をボトルネックに同期化する。
④パイロットプロジェクト実施
・成功体験の確立
・納得性を作り上げる
共通の明確な指標で効果を算出する必要がある。明確にすべきなのは、サプライチェーン
の実態把握と再設計から算出された目指すべきゴール、その効果の算出方法、結果得られ
た最終的な数値である.
⑤共生担保の仕組み確立
・Win/Win関係の構築
これまでのような系列、囲い込みによる強引な部分最適ではなく(Win/Lose=親
会社だけが得をして下請けの子会社は何の利益もないこと)
、すべての参加企業が、ともに
利益を享受できるようなWin/Win関係を構築する。
第4章 サプライチェーンマネジメントの今後の可能性
第1節
サプライチェーン全体の効率化…3PL
物流会社と荷主企業が受注から出荷、在庫といった情報を幅広く共有することで、サプラ
イチェーン全体の大幅な効率化を狙う3PLが世界的に注目を集めている。
従来の物流会社は短期の契約でただ物を運ぶ会社として低い位置付けであった。しかしこ
れからの物流会社は長期の契約で全体最適な物流システムの提案・構築をし一貫業務請負
の企業が求められている.荷主との関係はイコールパートナーであり情報の共有化を進め
成果は配分される。単なる物を運ぶ仕事ではなく、在庫圧縮、リードタイム短縮、物流コ
スト削減を目的として物流の仕事をする。これが3PLといわれる新しい物流会社の企業
像である。
3PLという新しいビジネスの登場で、国内の物流会社はその企業戦略の全面的な見直し
を迫られている。それを極端に言うのならば、従来の物流会社に留まるのか、それとも3
PLという厳しい市場に飛び込むのかという二者択一が迫られている。
以下では後者の戦略を取った企業を紹介する。
< フェデックス社 >
フェデックス社は情報システムを駆使することで、物流の業務改革にとどまらず、新しい
ビジネスモデルを作り上げた実績を持つ。フェデックス社は日本ではじめでインターネッ
トによる貨物追跡システムのホームページを立ち上げた。このケースでは顧客がホームペ
ージから製品を発注した時点で、フェデックスが貨物追跡番号(トラッキングナンバー)を発
行している。これによりこの番号で在庫状況や製品の輸送状態がわかるしくみになってい
る。これにより顧客に信頼感をもたせることができる。
《図4-1参照》
< 日通 >
日通はフェデックスと競合する国際航空貨物はもちろん、貨物トラック便や海上輸送、欧
米やアジア各地に多くの物流センターをもつ特色を3PLの強さに転化しようとしている
のである。日通が今、注力しているのが「グローバル物流情報システム(N−SHA−TL
E)」である。荷主企業が国内と海外の物流センターに保管している在庫状況を一括照会で
きる機能を持つため在庫納入可能か、といった判断を瞬時に下せるようになる。
< 近鉄エクスプレス >
近鉄エクスプレスも約40億円を投入して3PLのインフラとなる情報システムを再構築
することで、3PLビジネスにむけて動き出した。このシステムはパソコンの組み立て(キ
ッティング)作業など、3PLに伴う様々な「加工物流」に対応していることである。具体
的には成田ターミナルに運び込まれる貨物の1つ1つに貼り付けてあるバーコードを、貨
物の移動や作業の区切りごとに読み込むことで、保管位置や作業の進捗状況を逐一、リア
ルタイムで把握できる。
《図4−2参照》
< ヤマトシステム >
大和のシステム開発が今、力を入れているものが「ABM(アクティビティー・ベースト・マ
ネジメント)システム」を駆使した倉庫業務の抜本的な改善である。入庫検品や出荷ピッキン
グなどの作業を誰がどのくらいの時間をかけて実行したかというデータを分析することで、
コスト面から非効率な業務を洗い直し、その改善につなげる。ヤマトシステム開発は、A
BMシステムによる改善提案をきっかけとして、荷主企業に対して自社への物流業務のア
ウトソーシングを促し、それを3PLビジネスに発展させることを狙っている。
大きなポイントとして次の3つが挙げられる。
まず第1に3PL戦略の明確化である。3PLにより何を改革し、何を目指すのかを明確
に定義することが必要だ。
第2として自社の戦略に合致した3PL事業者の選定である。3PLの担い手となる物流
会社などは、単なる外注先ではない。自社と一緒に業務改革をしたり、顧客情報を共有す
るパーとなである。
そして第3番目として3PL事業者の情報システム構築力やシステムコンサルティング能
力を見極めることである。3PL事業者は幅広い業務を処理する情報システムを競って構
築しているが、その機能を生かすためには荷主企業が生産や販売の情報システムを構築し
直す必要が生じることもある。その際に業務を十分に理解しているパートナーであれば、
物流の専門家の立場からの適切な助言やコンサルティングを得ることで、情報システム同
士の連携がスムーズになるだろう。
第2節
サプライチェーンマネジメントの国際標準化
急速に拡大するサプライチェーン評議会(SCC)
サプライチェーンマネジメントの重要性を提唱する米国のコンサルティング会社PRTM
及びAMRの2社を中心に96年にSCCが設立された。1997年には独立の非営利団
体として S C C Inc.として再編成され、SCOR(サプライ・チェーンオペレイション・
リファンス・モデル)というサプライチェーンの記述ツールとそれによる標準モデルに力
を入れている。主な参加企業は《図4-3参照》のような企業がある。
SCORは用語の定義から始まった。日本と比較し、標準化されていると思われるアメリ
カでもサプライチェーン内の企業同士で、用語が違ったり、用語が同じでも意味が違うと
いうことが多かった。これでは企業間を超えたサプライチェーン構築はできない。
このためにまず、プロセスの単位設定、用語の統一、標準化が大きなテーマとなった。
SCORの特長は次のとおりである。
《図4-3,4参照》
①データの流れではなく業務の流れを表している.
②プロセス中心の指向であり、経営のヨコ割のビジネスモデルになっている。
Plan−Do−Seeといったタテ割のマネジメントではなく、Planと実行(D
o−See)が分離されている。
③ビジネスプロセスは4階層から構成され、3階層までがモデル化の対象となっている。
④あくまでも、レファンス(参考)であり、プロセスそのものの記述は各種のツールを
活用してもよい。
⑤各プロセス定義のほかに、次の内容を持つ。
・パフォーマンス項目
・測定基準(指標)
・ベストプラクティス
・必要ソフトウェア特性
⑥SCORは戦略を前提に、主に次のステップで使われる。
・サプライチェーンの性質を評価し目標を設定する。
・サプライチェーンの基本構造をレファレンスモデルを参照してデザインする。
・
・各プロセスごとの指標の目標値を設定する。
・ベストプラクティスの選択や必要ソフトの要件定義を行う。
SCORによる標準化が進むと次のようなメリットが生まれてくる。
①各社がサプライチェーンを構築する際のモデルが得られる。
②用語、ビジネスプロセスが標準化されるため、以下の人達のコニュニケーションが容易
となる。
・コンサルタント、SIベンダー、ユーザー
・部門を超えたユーザー同士
・業種を超えた企業同士
③様々なパッケージがこれに準拠することにより、パッケージの理解や活用がしやすくな
る。パッケージとの組み合わせも容易となる。
④SCORを用いて、自社を分析することによって、プロセスの過不足や特殊過ぎる処理
が顕在化でき、対応が容易になる。
⑤標準のビジネスプロセスごとに、その目指すべき姿や改善案が企業を超えてディスカッ
ションできる。これにより、ベストプラクティスが蓄積され共有化される。
⑥以上の標準やノウハウを蓄積することにより、ビジネスプロセスについての体系的な教
育が可能となる。
SCC日本支部も立ち上がる
BRP,ERP,SCMと日本企業は、現在まったく受身の状態である。しかしその理論
の根源を見てみると、多くは日本にある。CE(コンカレント・エンジニアリング)
、リー
ン生産方式など。欧米からくるものがグローバルスタンダードとは限らない。日本人は残
念ながら非常によいアイデアやノウハウを持ちながら理論化、普遍化、モデル化、世界へ
の発信が苦手な民族である。しかし常に受身のままでは世界で競争できる体質にはなれな
い。
世界に、日本の意見、情報をどんどん発信していかなければならない。世界の先進企業の
人達とオープンに語り合い、日本の先進事例、先進的な意見を取り入れた「世界語」を作っ
ていかなければならない。
お互いに学び合うことによりサプライチェーン経営改革の実現の英知、ノウハウを獲得で
きるのである。
終章
これまでのわが国の経済は、右肩上がりの経済成長の影に隠れて、その非効率性や閉鎖性
があまり目立たなかった。しかしバブルの崩壊や21世紀に向けたグローバル化、ボーダ
レス化の進展によりそれが顕著になって現れてきたのである。
SCMは個別の企業の問題としてみるのではなく、全体を通したSCMに成功しなければ、
消費者へのメリットは大きくならない。日本経済の高コスト体質を是正させ、新しい経済
パラダイムへの転換を勧める必要がある。
これから日本経済を活性化させるためには、供給側…サプライサイドの強化、系列の廃止、
的確なパートナーシップが求められる。
またITの発達により、より透明性のある市場を構築する必要がある。
この論文を書くことにより、IT技術をフルに使った21世紀型の経営システムの可能性
を理解することができた。また経済という視点から、経営を見るのではなく、経営という
視点から、経済を見ることにより、また違った新しい角度から経済を認識することができ
た。
これからSCMが企業で適用される可能性は大である。今後もSCMについて深く突き進
めて研究していきたいと思う。
補足説明資料
用語説明
ERP…生産から販売、会計、人事のビジネスプロセスを支援するアプリケーションパッ
ケージ
ROA…キャッシュフローを在庫で割ったもの。スループットが大きく、在庫が小さいほ
ど大きくなる。
メイクマネー…経営の目標として挙げられるものの最上位の観念。これなしに企業は存続
できない。
コンカレントマネジメント…全体が1つの生命体のように調和のとれた同時並行の行動が
できるようにする。経営を円滑・効率的に実行するための新
しいコンセプト
部分最適化…《図5−1参照》
全体最適化…《図5-1参照》
QR…消費者の満足度をあげ、新規競争相手から生き残りを図る手段として考えられたコ
ンセプト
ECR…米国の加工食品業界によって、競争力の回復を狙って考えられた経営コンセプト
ボトルネック…サプライチェーンのスループットを決定するもの。それを認識し進めてい
くことがキャッシュフローを大きくする。
JIT…米国のスーパーマーケットの商品補充をヒントに考えられたもの。トヨタ生産方
式として日本の自動車業界を優位にした。
バーチャルコーポレーション…サプライチェーンは一企業で成り立つものではなく、サプ
ヤーからカスタマーまで長い鎖で繋がっている。別企業を
仮想的に管理対象として1つの企業体として考えるコンセ
プト
参考文献
「サプライチェーン経営改革」 日本経済新聞社 福島 美明
「サプライチェーン・マネジメント戦略の実践」 オーエス出版社 奥井 規晶
「導入サプライチェーンマネジメント」 ダイヤモンド社 原 吉伸
「サプライチェーンマネジメント」 工場調査会 今岡 善次郎
「ERP/サプライチェーン成功の法則」 工場調査会 同期ERP研究所編
「日経情報ストラデジー1月号,99年度」 日経BP出版センター
「日経情報ストラデジー3月号,99年度」 日経BP出版センター
「日経情報ストラデジー3月号,98年度」
「Japan Research Review 1998,12」
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