原油の供給障害リスクを考慮した メタンハイドレート開発の有効性評価

Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4
原油の供給障害リスクを考慮した
メタンハイドレート開発の有効性評価
Effectiveness Assessment of Methane Hydrate Development
Considering Risk of Crude-Oil Supply Short
野 尻 智 洋 *・ 佐 藤
Tomohiro Nojiri
徹
Toru Sato
**
・ 縄 田 和 満
***
Kazumitsu Nawata
(原稿受付日 2008 年 1 月 10 日,受理日 2008 年 6 月 13 日)
Methane hydrate is one of attractive energy resources as promising domestic fossil fuel in Japan, even though its
gas-production cost is larger than the current oil price. This study evaluates the merit of methane hydrate development,
considering risk of crude-oil supply short such as “Oil Shock” and military events in oil-producing countries. For this
purpose, a Monte Carlo simulation and an LCA analysis using input-output tables were conducted to estimate the risk of oil
import in the both aspects pf price increase and supply decrease. The resultant risks were compared with the cost of methane
hydrate development and the benefit of CO2 emission trade and suggested that methane hydrate is worth to develop.
1.はじめに
削や海上設備等のコスト内訳における主要部分に既存の技
術を適用した生産モデルを設定し, 南海トラフにおいて,
メタンハイドレートの開発技術は研究段階であり, また
沖合 40 km, 水深 1000 m, 海底面下 500 m に賦存する層圧
仮に技術が確立してもその開発コストの高さが問題視され
16 m の海域メタンハイドレート開発についてコスト評価
ている.2006 年平均の原油 CIF 価格 50.97 $/bbl に対して, メ
を行っている.総生産ガス量は 66.8 億 Sm3 で操業期間は
タンハイドレートの開発コストに内部収益率 10 %を加算
10 年間である.計算結果のうち最も廉価な水平坑井を用い
した単価は 70.2 $/Boe1)と予想されており, 昨今の急激な原
た減圧法を想定すると, 内部収益率 10%となる単価は 70.2
油高は投機的な要素が大きいことを考慮すれば依然高い値
$/Boe である.
であるといえる.他方, 一次エネルギー資源の大半を輸入
本研究では上記研究の基本ケース(ハイドレート層 1m
に依存するわが国にあって, 賦存量が日本の消費する天然
当たりのガス生産量: 60 Sm3/d・m, 水平坑井長 1000 m)の水
ガスの約 96 年分 2)という近海のメタンハイドレートは, 国
平坑井減圧法をベースとして, 開発規模を南海トラフ・九
産資源として有益であるといえる.
州東方海域全域に拡大した場合を想定した.評価で変更し
本研究ではメタンハイドレート開発について, まずコス
たパラメータは総生産ガス量(66.8 億 Sm3→1 兆 Sm3), 及
ト面での現状及び原油からのエネルギーシフトに伴う CO2
びパイプラインの長さ(40 km→900 km)である.これによ
排出量削減のメリットを評価・考察した後, 国産資源とし
って単位開発量当たりのパイプライン敷設距離が短くて済
てのメリットを顕在化するべく, 在来型化石燃料資源の抱
み, 開発コストは 62.9 $/Boe と, 河田ら 1)と比較して若干下
える貿易リスクの分析を行う.具体的には代表的な原油に
がり, 内部収益率 10%となる単価は 69.2 $/Boe となった.
ついて, 供給障害を価格の上昇と量的な不足という 2 つの
2.2 CO2 排出量評価
視点から統計的に考察し, 障害への対応手段としてのメタ
ここでは原油から非在来型天然ガスであるメタンハイド
ンハイドレート開発の有効性を評価する.
レートへのエネルギーシフトによる CO2 排出量の削減効果
を評価する.河田ら
2.コスト・CO2 排出量評価
はコスト評価同様の生産モデルにお
いて, メタンハイドレートの CO2 排出量について, 生産設
2.1 コスト評価
河田ら
1)
備からの CO2 排出量・操業燃料からの CO2 排出量・生産ガ
1)
ス消費による CO2 排出量を併せて評価しており, 水平坑井
は海域メタンハイドレート開発において坑井掘
減圧法による開発の場合, 排出原単位は 58.43 g-C/Mcal と
*
東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻
〒277-8563 柏市柏の葉 5-1-5
e-mail [email protected]
**
東京大学大学院新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻
〒277-8563 柏市柏の葉 5-1-5
e-mail [email protected]
***
東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻
〒113-8654 文京区本郷 7-3-1
e-mail [email protected]
されている.
本研究では以上の結果をベースに, コスト評価同様, 規
模拡大・パイプライン敷設延長を想定して再計算を行い,
単位生産量当たりのパイプラインにかかわる CO2 排出量の
第 26 回エネルギー・資源学会研究発表会の内容をもとに作
成されたもの
24
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削減効果を考慮した.その結果, メタンハイドレートの
るようなケースに用いられ, レアメタルの供給障害と同様,
LCA 評価での CO2 排出原単位は 58.30 g-C/Mcal となる.
原油の場合にも適応は可能である.シミュレーションの概
要を表 1 に示す.
一方, 原油の LCA 評価での CO2 排出原単位は, 83.63
3)
g-C/Mcal である.代替による CO2 排出量の削減量は, 後者
供給障害回数として与えられるポアソン乱数に対し, そ
と前者の差 25.33 g-C/Mcal に, 代替量を乗じることで求め
の数だけ供給障害規模のガンマ乱数を与え, その最大値
られる.この排出削減量を排出権取引によって売却した額
(表 1 では太字で示す)を抽出する.試行回数は 10000 回
を, CO2 排出量削減のメリットとして計算する.取引価格は
とする.以上から与えられた 10000 個の最大供給障害規模
2000 円/t-CO2 とした.
を, 確率分布として導出する.さらにその期待値をとるこ
とで, 長期で予測される最大の供給障害規模を算出する.
30 年間での最大供給障害規模の確率分布は図 1 のように
3.供給障害リスク評価
なり, その期待値は 1.25 であった.これは 30 年間で予測さ
過去, 事変等のイベントによる供給障害により日本の原
れる最大価格上昇度の期待値が 1.25 であることを意味する.
油輸入量が減少したとみなせるケースはなく, 影響はすべ
て価格の上昇として反映されている 4).
ただし, 2007 年 1 月にはベラルーシのパイプライン停止
により, ロシアからヨーロッパへの石油の供給障害が懸念
された例もあり, 我が国においても将来的には量的な供給
障害が起こる可能性もある.そこで原油の供給障害につい
て, 価格ベースおよび量ベース両方での分析を行った.
3.1 価格上昇リスク
世界的供給障害イベント(オイルショック, 産出国の政
変, 中東戦争等)由来と思われる原油価格の上昇データ
4)
を元に, イベント前後の年別価格比から 1 を引いたものを
価格上昇度(供給障害規模)とし, 回数を分析年数で割っ
たものを価格上昇(供給障害)の発生確率とする.過去 30
図1
年間(1973 年~2002 年)では, 価格上昇が起きたのは第4
価格上昇ケースにおける
30 年間での最大供給障害規模の確率分布
次中東戦争・イラン革命・湾岸戦争時などで発生回数は 7
回, 平均の価格上昇度は 0.54 で, 発生確率は 7/30 であった.
さらに乱数のパラメータ(発生回数)を変更し, シミュ
レーションの対象期間を 30 年から 100 年まで 10 年おきと
表 1 価格上昇ケースにおける
モンテカルロシミュレーション概要
すると, 期待値は図 2 のように上昇する.これは表 1 で与
えられる供給障害規模の最大値からその確率分布を導出し
供給障害規模
たためで, 対象期間が長くなると障害発生リスクは大きく
(ガンマ乱数)
供給障害回数
(ポアソン乱数)
7
0.2
0.5
0.7
3
0.1
0.6
0.3
5
0.8
0.2
0.3
0.5
0.3
0.2
0.5
⋮
⋮
⋮
⋮
なることを示している.
0.9
1.1
実際の供給障害リスクは, レアメタルの供給障害リスク
に関する研究
5)
を参考に, 一定期間で発生しうる最大供給
障害の規模とその発生確率をモンテカルロシミュレーショ
ンを用いて算出する.一定期間での供給障害発生回数がポ
ワソン分布, 障害規模がガンマ分布に従うと仮定する.ポ
図2
ワソン分布とは, 発生確率が低く, かつ各事象が独立であ
25
価格上昇ケースにおける長期最大供給障害規模
Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4
結果を図 3 に示す.供給障害が大きな影響を及ぼしてい
価格上昇発生時の国内経済への影響は, 産業連関分析の
6)
金融・保険(部門番号 74), 電力(部門番号 69),
価格波及モデル によって, 石油・天然ガス以外の各産業部
る部門は,
門の価格波及増分を, 投入係数に石油・天然ガス部門の価
自動車・機械修理(部門番号 97), 自家輸送(部門番号 80),
格増分を乗じることによって算出した.この手法は, 1990
分類不明(部門番号 104), その他の対事務所サービス(部
年のイラク軍によるクウェート侵攻時の原油価格上昇時に
門番号 98), 物品賃貸サービス(部門番号 96), 不動産仲
分析手法としても用いられている
6)
介及び賃貸(部門番号 75)などである.
.産業部門の価格波及
増分ΔP は, 投入係数 aij および石油天然ガス部門の価格増
次に各部門の価格波及額の合計を供給障害に伴う経済影
分Δpn から以下のように求められる.ここで投入係数とは,
響額とし, 分析期間を 30 年から 100 年として経済影響額の
ある産業の生産総額に対する他の産業からの投入額の割合
推移を導出する.結果を図 4 に示す.分析期間の長期化に
である.
伴って, 経済影響額が 35 兆円から 50 兆円に増加していく.
3.2 量的供給障害リスク
∆P =

L L
 1− a11
O
 M
 M
O


 − a n −11 L L

−a


M


M

1− a n −1 n −1 
1 n −1
−1







′
過去に日本では量ベースの供給障害は起こっていない.
(1)
 a n1 


 M 
 M  ∆pn




 a n −11 
そこで, 過去の原油の世界的供給障害量の割合をそのまま
日本の輸入量の減少割合として考え, 平均供給障害度と年
間発生確率を算出することとした.過去 30 年間の世界的な
供給障害は, スエズ動乱, 第4次中東戦争, イラン革命時
などに起こっており, その発生回数は 5 回, 平均の障害規
74
69
模(供給障害量の割合)は 6.4 %であった.
75
これを用いて, 価格上昇の場合と同様にモンテカルロシ
97
80
ミュレーションを行い, 長期最大供給障害規模を推定する.
104
96
一定期間での供給障害の発生回数がポアソン分布に, 障害
98
規模がガンマ分布に従うと仮定する.シミュレーションの
回数も価格上昇と同様 10000 回とする.図 5 はモンテカル
ロシミュレーションの結果である.以上より, 分析期間 30
年間から 100 年間の障害規模の期待値を算出し, 最大供給
障害規模とする.結果を図 6 に示す.
次に,これを用いて分析期間 30 年間から 100 年間までの
図 3 価格上昇ケースにおける
産業連関分析による各部門への影響
経済影響額を計算する.経済影響額は産業連関表による環
境負荷原単位データブック(3EID)7)のエネルギー消費量
における全資源に対する石油・天然ガスの供給障害量の比
に原油供給障害量を乗じたものを各部門の生産縮小率とし
て, 産業連関表における各部門の生産額に乗じて求める.
例えば部門番号 31 のプラスチック製品であれば, 原油・天
然ガス起源原料(原油~LPG の計 12 原料)の投入量の合
計が 1,232,240 TOE(ton oil equivalent), その他の原料投入
量が 3,269 TOE であるから, エネルギー消費量における原
油・天然ガス起源原料の割合は 99.7%, 供給障害規模を
6.4%とすれば, 生産縮小率は 6.38%となる.これに産業連
関表におけるプラスチック生産部門の国内総生産額 1.02×
1012 円を乗じた 6.51×1010 円がこの部門の生産縮小額とな
る.これを全部門について行い, 総和をとることで国内経
済影響額とする.
図 4 価格上昇ケースにおける
長期での最大供給障害による経済影響
26
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供給障害規模が 6.4%の時, 各産業の生産縮小率を図 7 に
示す.各産業部門に万遍無く影響が及んでいることが分か
る.影響の少ない部門は, 住宅賃貸料(帰属家賃)
(部門番
号 77), 事務用品(部門番号 103), 石炭製品(部門番号
30),銑鉄・粗鋼(部門番号 38), 廃棄物処理(部門番号 72),
セメント・セメント製品(部門番号 35), パルプ・紙・板
紙・加工紙(部門番号 18), 鋼材(部門番号 39)などであ
る.先ほど求めた最大供給障害規模をもとに 30 年から 100
年間にかけての量的供給障害による経済影響額を算出した
図 5 量的障害ケースにおける
30 年間での最大供給障害規模の確率分布
結果を図 8 に示す.75 兆円から 90 兆円の経済リスクがあ
ることがわかる.
3.3 メタンハイドレート代替によるリスク低減効果
価格上昇の供給障害の場合のメタンハイドレートによる
原油供給障害の代替効果とは, 代替による価格上昇リスク
の低減であり, 代替される割合に上記の長期最大供給障害
規模を乗じたものとなる.そこで, 代替率を年間原油・天
然ガス需要量に対し 10, 15, 20%として, 代替割合分の経済
影響が緩和すると考える.例えば図 2 より, 分析期間 80 年
における最大供給障害規模(価格上昇度)1.61 を採用した
時の経済影響は 47.5 兆円であるので, 47.5 兆に 0.1, 0.15, 0.2
図 6 量的障害ケースにおける長期最大供給障害規
を乗じた額が経済影響緩和額, すなわち価格上昇リスクの
低減額となる.
一方, 量的供給障害の場合は, 原油供給障害率分をメタ
ンハイドレートが代替することで, 経済影響を 0 にするコ
ストとして代替効果を算出する.例えば図 6 より, 分析期
間 80 年での最大供給障害規模(量的減少率)10.8%を採用
した時の経済影響 88.0 兆円が量的供給障害リスクの低減額
となる.
4.メタンハイドレート開発の有効性評価
原価格上昇のケースでは, 80 年間の最大供給障害規模
図 7 量的障害ケースにおける各部門への経済影響度
(価格上昇度 1.61)を想定し, 供給障害時に年間原油天然
ガス総需要量(2.52×109 Boe)の 10%をメタンハイドレー
トが代替したケースについて考える.供給障害リスクの低
減(ベネフィット)と比較するべきメタンハイドレート生
産に伴うコスト増とは, メタンハイドレートを継続的に生
産し続けていると仮定し, ある障害から次の障害が起こる
までの期間(安定供給期間)のメタンハイドレート生産に
かかるコストから, メタンハイドレートによって代替した
分の原油の価格を減じたものと考える.すなわち, 代替し
た原油量と等しいエネルギー量のメタンハイドレートの開
発コスト(62.9 $/Boe)とその原油価格(50.97 $/bbl)との
図 8 量的障害ケースにおける
長期での最大供給障害による経済影響
差額の安定期間分となる.安定供給期間には, 安定供給が
続く最大の期間の期待値(最大安定供給期間)を考えるの
27
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が妥当である.そこで最大供給障害量を計算した際と同様
格上昇のケース同様に図 10 に示す.これより 86 兆円のメ
に,安定供給期間のガンマ乱数を与え, 10000 回のモンテカ
リットがあることが分かり, 価格上昇ケースと比較すると,
ルロシミュレーションによってその期待値を求めた.最大
世界の量的供給障害の割合を日本のそれに用い, かつ供給
安定供給期間はコストの計算に, 最大供給障害規模はリス
障害割合をそのまま生産縮小率とした仮定の妥当性を検証
クの計算に使っており, 最大供給障害規模が最大安定供給
する必要があるものの, メタンハイドレートの開発が一層
期間毎に起こっているということではないことに注意を要
の供給障害リスク対策としての効果があることが示された.
する.この結果, 最大安定供給期間は 6.1 年となり, 総生産
量は 1.53×109 Boe である.よってメタンハイドレートによ
5.まとめ
12
る代替にかかるコストは 2.20×10 円, CO2 排出については
本研究では, 国産資源であるメタンハイドレート開発に
削減量が 3.85×1010 kg-CO2 で, その売却益は 7.70×1010 円,
関してコストのみでなく, 原油の輸入に関する供給障害リ
供給障害リスクの低減が 4.75×1012 円となる.これを図 9
スクを価格上昇と量的な供給障害の二面から算出し, さら
に示す.負方向がコスト, 正方向がベネフィットである.
にメタンガスと石油の CO2 排出原単位の差を考慮し, その
有効性を評価した.その結果, 供給障害リスクについて長
期最大供給障害への対応を考えた場合,メタンハイドレー
ト開発のメリットは明らかであることがわかった.
コスト
リスク低減
CO2
-4
-2
0
2
4
本研究に関連する今後の課題としては,包括的なメタン
ハイドレート開発の評価という観点から, 開発の際に懸念
されるメタンガスの漏洩並びに地盤沈下などの環境リスク
6
の算定, 及び一次エネルギー資源を石油からメタンガスに
経済的価値(兆円)
置き換える際のインフラのコストの考慮が挙げられる.
図 9 価格上昇リスクに対する
メタンハイドレート開発の有効性評価
謝辞
東京大学技術経営戦略学専攻の茂木源人准教授には, 原
油供給障害事例に関してご教示いただきました。
コスト
リスク低減
CO2
-20
0
20
40
60
80
参考文献
1)
100
河田裕子, 藤田和男, 増田昌敬, 松橋隆治; 海域メタ
ンハイドレートガス開発の経済性及び CO2 排出量評
経済的価値(兆円)
価, 日本エネルギー学会誌,82, 4, (2003), 197-207.
図 10 量的供給障害リスクに対する
メタンハイドレート開発の有効性評価
2)
佐藤幹夫; ガスハイドレート(IV)-メタンハイドレ
ートの分布とメタン量及び資源量-, 日本エネルギー
学会誌, 80, 11, (2001), 1064-1074
メタンハイドレートによる原油供給障害リスクの低減が
3)
メタンハイドレート生産のコストを上回るため, 合計で
尹性二, 山田竜也; わが国における化石エネルギーに
関するライフサイクル・インベントリー分析,
2.6 兆円のメリットがあることが分かり, 供給障害リスク
http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/enekei/lci.pdf
への対応という観点でメタンハイドレートの開発は有効で
4)
あると言える.他方, CO2 排出減によるベネフィットはリス
財団法人省エネルギーセンター; エネルギー統計要覧,
(2006), 44-45
ク低減と比較して 1%以下であった.
5)
量的供給障害についても, 80 年間での最大供給障害規模
資源エネルギー庁資源燃料部鉱物資源課; 総合資源エ
ネルギー調査会鉱業分科会レアメタル対策部会中間
(10.8%)を想定すると, 上記と同様にモンテカルロシミュ
報告, (2004).
レーションによって求めた最大安定供給期間は 6.7 年であ
ったため, メタンハイドレートによる代替コストが 2.41×
1012 円, CO2 の排出削減については削減量が 4.21×1010 kg-
6)
宮沢健一; 産業連関分析入門, 日経文庫, (2002).
7)
南斎規介, 森口裕一, 東野達; 産業連関表による環境
負荷原単位データブック(3EID), 国立環境研究所地
CO2 で, その売却益は 8.42×1010 円, 供給障害リスクの低減
球環境研究センター, (2002).
が 8.80×1013 円となる.以上のコスト・ベネフィットを価
28