PDF - 関西学院大学

腫茎□No.271平 成28(2016)年 9月
李 李 李 李 李 李 李 や や 李 ● 李李 今 李 李 李 李 李 今 や李 今 や ● ● ● 李 李 李今 李 李 今 李 李 李 今 李 李 李 金 李 李 李 ◆ 李 李今 李 李 李 李 李 ◆ ◆ 李 李 李金 李 金 李今 今 李 李 李 李 李 李 金 李 李 ◆◆ 李 李 今
李
今
金
も
◆
ムスク,ミ ント,ジ ャスミン系高級香料 の
実用的化学合成
grade musk,Ilint,and
jasmine perfumes utilizing titanium口 mediated reactions.
Ti Claisen condensations and Ti― direct aldol additions are successfully applied for a
series of pracical stttheses of v智 10us perttmes.(1)Concise syntlaeses Of∽ )― c市 etone,
and C)― muscone,tlle most important natural ma研 ocydic musks.(ii)Straightfonh7ard
syntheses of(R)― ■lintlactone and(R)中 Inenthof■ lran,two representative natural lnint
perful■ es,(ili)Expeditious
synthesis of the lactone analogs of dihydrttasmOne and
jasmone,with llmqlle odor for ttaBrance.(市
)A unique syntllesis Of lβ
―
methylcarbapenem
李
李
李
◆
李
李
李
李
antibiotics such as lneropenem.
李◆ 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 ← ◆ 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李
日辺
陽
Yoo′ ranabe
関西学院大学
理工学研究科化学専攻
今李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 φ 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李
や
◆
李
李
李
李
李
李
李
李
李
李
金
李
李
李
李
今
金
李
李
李
李
李
李
◆李 李 今 金
李李 李 李 李 李 李 李
PraCtical chetlnical syntheses of high口
◇李 金 李 李 金 李 李 金 李 ◇
や◆ 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 ◆ 李 李 李 李
チタン反応を利用する
李
今
李
金李 李李 李 李 李 李 今 李 李 李 李 李 李 李 李 李李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李今 今 李 李 李 今 李 李 李 李 李 李 李李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李 李李 李 ◆ 李 李 李 李 李 李 李李 李 李
1口
は じめ に
Chemistryの 邦 訳 書籍 が上梓 され た のが 1999年 で
D。
ある
日本 にお い て も例 えば ,野 依教 授 お よび 高
人類 の営 み を強力 に支 える有機合成化 学・プ ロセ
砂香 料 工 業 による不斉合 成反応 の 開発 が天然 香 料
ス化学 は,環 境 問題 を踏 まえた新 たな局面 を迎 えて
久 しい。香料科学 にお い て も当然 これが相 当する。
ゴーメントールの化学 工 業 生 産 に結 びつ き,天 然植 物
の 伐採 による環境破壊 を防 ぐことに成 功 した の。ま
今 回,「 香料」誌 へ の執筆依頼 を拝受 した。最近 ,香
た ,カ ルバ ペ ネ ム 抗 生 物 質 の生 産 にお い て は ,向
料科 学 か ら離 れてお り,正 直遊 巡 したが ,本 稿 が ア
ー カイヴとして この分野 に 関 わ る有機合 成化学者 ヘ
山・野依 ・村橋 法 とい う純 国産 の独 自技術 が 医療 に
寄与 して い るの。
何 らかの参考 になれば と,回 顧 も含 め著述 す ること
昨今 で は ,ク ロス カップ リング反応 の進展 普及 が
にした。
,
医農薬 品 の創 薬 お よびプ ロセス化 学 にお いて不 可
欠 なツール となったD。 いず れ にお いて も日本人 の寄
2.グ リーンケミス トリー とプロセス化学
与 が大 きく,ノ ーベル 賞 やそれ に相応 す る価 値 あ る
方 法論 として化 学・製 薬 産 業 に 占 め る位 置 が大 き
い わゆ るグ リー ンケ ミストリー を考慮 した有 機 反
い ③これ らの事 実が喜 ば しい ことで あ ることは他 言
応 の 開発 と合成へ の適用が叫ばれてか ら久 しく約 20
をまたな い。今後 は有機触媒化学や C― H直 接活性化
年 とな る 。 P.Anastas教 授 が 提 唱 し た Green
有機化学 の実用化 時代が来 ると期待 され る。
29
Lactone analog Of oFs― 」asmone
(Photottraph l)
ジヤコウネ コ
ハート
「基礎有横化学」ω(倍 風館)か ら転載
Scheme l.
O miC「 Obial
oxidat on
Z―
C02Me
C° 2Me
o e c acid
n)MeoH,Hi
一
ゆOH
りH十
TiCi4 Et3N
わrg力 reacす o打 的 ros′ r/
3日
)―
C VetOne
されて い る (9章 ,ア ルデ ヒトとケトン)(PhOtograph
研 究の経緯
きっか けは,「 香料 ・テルペ ンお よび精油化学 に関
ジョー ンズ の有機化学 "と い う定評 あ る教 科書
にもシベ トンのコラム記載があ る。
する討論会」であった。ここで ジャパ ンエ ナジ ー (当
ジャコウネ コを構 に幽 閉 し,香 の うか らシベ トンを
l)。
時)の 研 究 者 か ら,私 た ち の チ タンを用 い る反応
搾 取す るとい う。 い ささか残 虐 な行為 で あ るが ,ワ
クライゼ ン縮合 ,Ti― 直接 アル ドール付加反応 )を
シントン条約 (CITES)に は抵 触 しな い らしい。目的
(Tト
利用 して ,シ ベ トンを合 成 で きな い か との 提案 で あ
は香料 ,特 に珍 種 コーヒー の原料 とい う。
った。これ らの反応 をコスメトロジー の分 野 に適用
す べ く,ま ず ,香 料 業界 最大 の テ ーマ つで あ る天 然
は意外 と難航 して い た。 17員 環 とい う特殊 な構造 と
シベ トン・像 )_ム ス コン)の
(Z)二 重結合 の布在 に起 因する。ここで2つ の合成
大環状 ムス ク香料
((Z)―
実用 的化学合成 に取 り組 んだ (Figure l)D。 加 えて
,
ジャスモ ンや ミント系 の香料 の短段 階実用合 成 へ の
この ような有名 な化合 物 にも関 わ らず ,そ の合 成
法 を紹介する。いずれ も対称性 を活か した tan head
to head tail type C―
C結 合形成反応 を利用 す る⑥
展 開 も行 った⑥
4口 Ti由
30
ク ライゼ ン縮 含 を利用 す る
シベ トンの化学合 成
(1)Tl― ディー クマ ン (分 子 内 クライゼ ン )縮 台 を
用いる (Z)‐ シベ トンの実用合成 働
セ )― オレイン酸 を出発 物質 とす る方法 で ある。ジ
ャパ ンエ ナジー で確 立 されて い る長装 カルボ ン酸 の
ハ ー トの「基 礎有機化学」の教科 書 °に “シベ トン"
末端酸化技術 9に よリジカルボン酸 とし.こ れ をメテル
の構造 とそれ を産 出するジャコウネ コの 写真 が掲 載
エステル化 しジメテル エ ステル に導 (lScheme l)。
チタン反応を利用するムスク,ミ ン ト,ジ ャスミン系高級香料の実用的化学合成
Scheme 2.
/\ ▼/へ ` /ハ \マ/C02Me
ググ\ヤ
TiCi4 Bu3N
/toluene
O-5° C14h
軸
調呂
畳
O
りHO
(Grubbsi catalyst)
りH+
Civetone
84%
/toluene
l10° C,2h
95%
EiZ=ca 3打
E:Z=ca 3:1
Grubbsi catalyst
TiCi4 Bu3N
C02Me
r!!培
号
h
腎
_c02ド MeCI
培
后
h
ll‖
―
腎
CiVetOne
ど
業ca al
Scheme 3.
O
H2
Cat(S)― Ru― BINAP
E:Z=9419
(R)一
MuscOne
54%
TiC14 Bu3N― imidazole
ジメチルエステル を分子 内Ti― ディー クマン結合 (分
ケトエ
子 内クライゼ ン縮合 )に よって,17員 環状 β―
ステル に導 くことができた。引 き続 き加水分解・脱
(2)Ti白 クライゼン縮台およびメタセシス環化を利
用 したシベ トンの短段階製法
10
炭酸することで,天 然物 と同一 で あ るZ‐ 体 の シベ
まず,末 端 に二重結合 を有す9-デ セノ酸 メチルを
Tl― クライゼン縮合 によって,鎖 状 β―
ケトエステルに
トンを合成 す ることに成 功 した。
導 く(Scheme 2)。 この反応 も従来 の塩基法 に比べ
この鍵段 階 で ある環化 の最大 の特徴 は,強 力 な
炭素 ―炭素結合 能 を有す反応 のため,類 型 の環化 ヽ
高速 ,高 収率 ,低 温 で進行する。続 くGrubbs触 媒 を
用 い るオレフィンメタセシス環化 により,17員 環状 β―
反応 に比 べ 高濃 度 ,短 時 間 で進行す る点 で ,い わ
ゆるグリーンケミカルなもので ある。Tl― デイー クマ
ケトエステル (E/Z tt ca.3:1)を 得 た。先述 と同様
に加水分 解・脱炭酸することにより,シ ベ トン● /Z=
ン環化 とTiC13-Zn/Cuを 用 い るA/1cMurryカ ップ リ
ca.3:1)を 合成することがで きた。3段 階の通算収率
ングを比 較 してみる。Tl― デイークマン環化 :0-5℃
が 74%で あり,こ れ までのシベ トン合成 の 中で最 も
∼ 100
,
mM,lh.McMurryカ ップ リング :80℃ ,∼ 5
mM,∼ 50h。 安価 な原料 〔セ )― オレイン酸)・ 反応剤
(TiC14,Et3N等 )〕 を使用 してい るため工業的 に有望
な製法である。
高 い。しかも,こ れ ら一連 の反応がワンポットで進行
することを見出した。
すなわち,各 段 階が高J又 率 で進行するのは,同 じ
トルエ ン溶媒 を使用 して い るため可能であり,脱 メ
トキシカル ボエル化 まで反応が一気 に進行す るとい
31
Scheme 4.
ド
一
O
R
Re
Scheme 5=
O
Ph02C_
_
人
OAc
TiC 4 Bu3N
う,こ れ までの合成法の中で最 もシンプルな製法 と
なった。ただし,Grubbs触 媒が非常 に高価 で ある
こと,環 化 の容積効率が
Tiデ ィークマン縮合反応
に比べ ,約 30-100倍 の高希釈 を必要 とすることか ら
6口
Tト アル ドー ル縮含 を 用 いる三 置換
フラノンの一 段 階合成 と
天然 ミン トラク トンの合成 へ の 応用
,
大量合成 には不向きな実験室的な方法 である。
2(5rr)内 フラノンは天 然物 の基 本骨格 として ,ま た
合成 中間体 として基 本 的 に重要 な複素環 で あ るが
・交差型 Tト クライゼ
5.Tト アル ドール付カロ
ン縮含を用 いる仔ムスコンの短段階合成
Tト アル ドール付加 を利用 して ,(R)― ムスコンの 短
段 階形式合 成 を行 ったい
,
三置換体 の一般 的・実用 的合成法 は少 ない。筆者 ら
は 向山アル ドール反応 を利用 す る段 階的な合成法 を
い
す で に報告 したが か,そ の後 ,Tl― 直接 アル ドール縮
合 を利用す る一 段 階法 を見 出 した (Scheme 4)。 そ
(Scheme 3)⑥ 入手容易 な
の応用 として ,闘 値が非常 に小 さい (香 気 が強 い)天
末端 ジメテルジケトンの アル ドール反応 は,従 来法 で
は縮 合 まで進行 し,E,Z混 合 物 の α,β ―
不飽和 エ ノ
然 ミント香料 である 律 )― ミントラクトン・律 )_メ ントフ
ランの短段 階合成 に適用 できた巧D。
ンを与 える。温和 で 強力 な Tl― アル ドール付 加 を利
これ まで ,ま た ,そ の後 の幾 つ かの既 存合 成法 は
用 し,初 めて付加体 を単離可 能 で ,引 き続 く立 体 選
多段 階 を要 す る。本方法 はす べ て市販 の原料 ・反応
択 的脱水 で,(E)― Achの α,β ―
不飽和 エ ノン (E/Z=
剤 を用 い る最 もシンプル な合 成 で あ る。しか も(R)―
cat 9:1)を 得 ることが で きた。高砂 グル ー プに よる
体 の み ならず ,(S)一 体 も鏡像体 原料 が 容易 に合 成可
Ru
BINAP不 斉 遇 元 りを想 定 す れ ば ,約 80%eeの
は )_ム スコンの形式合成 に該 当す る。
また別 の 方 法 として ,入 手容易 な エ ステル と安価
な酸 クロ リドを用 い る交差型 Tlク ライゼ ン縮合 ・メ
能 で きる。興 味深 いの は ,こ の 報告後 に他 の3グ ル
ープの合 成法 の報告 が あるが 15d
D,私
たちの仕事 を
正 当に引用 して い な い。論文掲載 のため ,事 実 上 無
視 して い ることで あ ろうか⑥
タセ シス 環化 を利用 し,短 段 階 の (R)― ムスコンの合
今後 ,ア メニ ティー ライフの向上化 に際 し,ミ ントラ
成 を達成 した D。 さらに最 近 ,入 手容易 なラセ ミ体
クトンや ヮインラクトンに代 表 され るこの種 の香 料 の
の ムスコンか ら特異 な高位 置選 択 的 Favorski型 転
利用 が増 す もの と予想 され る。なお ,こ れ らの 絶対
位反応 を利用す る (R)― ムスコンの短段 階形式合成 も
配置 と香気 の立 体構造活性相 間 に関 しては,後 に報
見 出した
141。
告 した い⑥
なお ,類 型 の 反応 を利 用 し,γ アル キ リデ ン_2
つん
2θ
チタン反応を利用するムスク1ミ ン ト1ジ ヤスミン系高級香料の実用的化学合成
Table l. Results of odor evaluations of the synthetic compounds.
Compound
Compound
Odor dcscriptlo■
Odor dcscription
Floral,Green
Fruity
Floral,Grccn
Tubcrosc,FruⅢ
Tabac,Lactonic
Floral,Grccn
Floral,Grcen
Fruly,Fa町
Fruiけ ,Jasmine
Lactonic
Lacto■ ic
Jasmine,Spicy,
lactone anatogue
Scheme 6.
Known Basic
T′ 〃ettyrcarbape,o何
卜
河ethod
〃eroperPcm
\
R=ぃ
TiC 4 Bu3N
フラノン構 造 を有 す種 子 発 芽促 進 天然 物 質
Karrikin-1い の 効 率 的全 合 成 に も適用 で きた め。 こ
(5Fr)―
れ らの化合 物 の (E)一 ,(Z)― 立 体 選択 的合 成 が 今後
の課題 であろう。
く
[〈:需
Me2
:】
メチ
脱水型 Tト クライゼン縮含 lβ 由
・
ペ
ルカルパ ネムの短段階 実用合成
8口
香 料 分 野 とは 逸脱 す るが ,小 職 が住友化 学勤 務
時代 の最 大 の プ ロジェクトは ,メ ロペ ネ ムの企 業化
フロTiHア ル ドー ル型付加 を用 い る
天然 香料 o′ s‐ ジ ャスモ ンの
ラ ク トンアナ ログ の創製 と合成
ジャスモンの ラクト
代表 的 ジャスミン天然香料 cお ―
メチ
で あ った。 最 も進化 した抗 生 物質 で あ る lβ ―
ルカル バ ペ ネ ムの 実用合 成 法 の碓 立 ならびに合 理
化 は重 要 な課 題 で あ る。 2つ の 炭 素 骨格 形 成段 階
が あ るが ,特 に後段 の 5員 環 形 成 反 応 が鍵 で あ る
(Scheme 6)。
ンアナ ログは ,合 成香 料 としての 期待 が あ るが ,こ
ここで ,Tlク ライゼ ン縮合 は,従 来 の塩 基法 と異
れまで適 当な合成法が なかった。す なわち,環 状 ケ
な り脱水 型 で 進行 す ることが分 か り,結 果 として従
トンの ラクトンヘ の等価 変換 は ,新 規香 料 を探索 す
来法 より短段 階 で ある。高活性 ,高 性 能 の メロペ ネ
る一手 法 で あ り,事 実 ,デ ヒドロジャスモ ン (crs― ジ
ム 中 間体 にも適用 で きた 20。 ところで ,TBS保 護基
ャスモ ンの二 重結合飽和 体 )の アナ ログは ジ・ボ ー
ダン社 が合成 して い る。。
の 脱保 護 も重 要 な課題 で あ るが ,隣 接 基 関与 を利
実際 ,こ のテ ーマ は松井 正 直先 生の宿題 であった。
用す る TiC14-MeN02反 応剤 を用 い る脱 保 護法 も提
如
案 して い る
)。
筆者 らは温 和 で 強力 な エ ステルの Ti― アル ドール型
注 目す べ き方法 として ,メ ルク・プ ロセス グループ
付加 を利用 して合 成 を可能 にした (Scheme 5)。 調
は 院 内感 染 予 防 lβ メチル カル バ ペ ネ ム抗 生 物 質
香評価 の 結 果 ,個 性 的 な メンズ フレグ ランス を有 す
(2妃 か
香料 で あることが分か った (Table l)③
MRSA)の 5kgス ケ ールの プ ロセス合 成 を報
2)。
告 して い る
Tl― 反応 が工 業 的 にも実施 可能 で あ
る言
正左 といえる。
33
10.回
顧
私たちは,グ リーンケミストリーの考えに共鳴し
チタン=ク ライゼン縮合・アル ドール付加 という独 自
,
反応 の 開発 と有用 ファインケミカルズ合 成 へ の応 用
(プ ロダクトアウト指 向)殉 さらには各種 エ ステル化 ・
アミド化 ・スル ホ エル化 ・シリル化 などの汎用反応 の
実用 的合 理化 (マ ー ケットイン指 向)を プ ロセス化学
的観点か ら行 ってきた。
この研 究 の 契機 は 向 山昭光先生 ,松 井 正 直先 生
,
森 謙 治先 生 に師 事 した稀 有 な人 間 で あ るため ,不
肖 なが らそ の 薫 陶 の た め と言 えるか もしれ な い 。
住 友化 学 にお け る創 薬 ・プ ロセス研 究 の 経験 も影
響 を受 け て い る。一 貫 して ,有 用 また は興 味深 い
構 造 を有 す化 合物 の 短段 階・最 高通算 収率 の合 成
法 を目指 して きた。十 分 に達 成 で きた とは い い 難
い が。
ところで,2013年 の 向山アル ドール反応記念 40周 年
シンポ ジウムが盛 大 に執 り行 われた力 (Photograph
2)。
(Photograph 2)
向 山アル ドール 反応記念 40周 年 シンポ ジウム ロポスター
(2013)
的であった。言 わず もが な,四 塩化 チタン (TiC14)を
本格 的 に有機合 成 に利用 したのは,向 山アル ドール
反応
9口
Tl―
29で
ぁる。TiC14は 湿気 と反応 して 白煙 を生 じ
,
一 見使 いづ らそ うで あ るが ,実 はチタン産業 の基 幹
適用例
物質 で あ る。発 火性 もなく後処 理後 のチ タン塩 ,酸
クライゼン縮合 は,有 機合成上 の基盤物質 とい
えるさまざまな β―
ケトエステルやα_ホ ルミルエステ
ルの合成が可能である。幾 つ かの適用例が あるが
野依先生 をはじめとする基 調講演 は非常 に印象
,
化 チタンの毒性 は非常 に低 く,設 備 さえあれ ば工 業
的にも本U用 し易 い。
シンポ ジウムで取 り上 げ られた話題 として ,有 機
Coreyら は,Omuralide(COrey教 授が大村智先生の
合 成上 ,補 完 的 な塩基法 で あ るリチ ウムジイソプ ロ
ために命名 したとされる天然抗生物質)類 縁体 の合
成劾,Misttiら はα ホルミルエステルの不斉有機触
ピル アセトアミド(LDA)ア ル ドール反応 と全 く同時期
に 開発 された ことで あろう。マイルス トーンとなる研
媒による1,4-付 加反応 に応用 してい る。
ケトエステルやα_ホ ルミルエステルを出発物質
β―
坂先生が披露 した ,往 時 の苦労話 も鮮烈 な印象 を与
として ,エ ノール トシラー トやホスホナ ー トを (E)、
えた。
「当 時 NMRが 広 く普及 してお らず ,反 応 の 結
(Z)― 立体補完的にパ ラレル合成 し,鈴 木・宮浦 ,根
果 は生成 物 をレトロアル ドール 反応 に付 し,TLCで
岸 クロス カップ リング反応 を利用 す れ ば ,多 様 な
(E)― ,(Z)― α,β ―
不飽和 エ ステルが合成できる点 で
チ ェックす る」とい った手法 を採 ったとのことで ある。
2か
も応用範囲は広 い とい える
2'。
究 の 逸話 として興 味深 い。また ,開 発者 で あ る奈 良
40年 前 で,ま さに隔世 の感がある。
最 後 に ,私 自身 ,新 規合 成香 料 の 実用 開発 の 難
しさを痛 感 した次 第 である。しか し,歴 史 を振 り返
れ ば ,技 術 の 向 上 が 科 学 の 成 果 を モ ノにす る例 は
34
チタン反応を利用するムスク,ミ ン ト,ジ ャスミン系高級香料の実用的化学合成
枚挙 に い とまが な い 。本 内容 が将 来 へ の一 助 とな
2002,9,25。 b)Tanabe,Yキ Makita,A=Funakoshi,
ることを祈念 して い る。
Si Hamasaki,R=Kawakusu,TAど ァ SynL77
C2古 21
2002,344,507.
謝
辞
9)
Okino,H,Taoka,Aキ Uemura,NI Prο cecaれ が が
山 eヱ θtt rr2控 rコ 2す 。naF Cttgrttsが EssenttaF Ofls,
本研 究 は 関西 学 院大 学 理 工 学 部化 学 専 攻 で 行 わ
れ た もの で あ り,担 当 した学 生 諸 君 の 献 身 的 な努 力
Fragrances 2担 どF12vors 1988,753 The diester
に まず深 く感 謝 の 意 を 表 した い ③次 に ,ジ ャパ ンエ
was supplied on a pllot― plant scale
ナ ジ ー (当 時 )の 牧 田博 士 ,高 砂 香 料 工 業 の 萩 原博
10)
Hamasaki,Rキ Ftlnakoshi,S:い /1isaki,TI Tanabe,
士 ,野 崎博 士 ,山 本博 士 ,松 田博 士 な どの 有益 な議
Y Tetrahedron 2000,56,7423.
論 ・助言 によるところが大 きい 。 この場 を借 りて 改 め
Tanabe,Y;い 71atsumoto N,;Higashi,TIい /1isakl,Tt
て 感 謝 申 し上 げ た い 。また ,住 友化 学 (当 時)の 松 尾
ltoh T,Yamamoto,い 江 MIitarai,Kキ Nishii,Y.
博士 ,砂 川博 士 ,佐 々木 博 士 の 有益 な議論 に基 づ き
Tetraね edron 2002,58,8269`
原論 文 の 共著 者 として 感謝 申 し上 げ たい。
Yamamoto,T,Ogura,単 ■ Kanisawa,T,
,
Teとraぬ edrθ 担 2002,58,9209
最 後 に ,本 研 究 に 関 し,各 種 科 研 費 ,各 種 公 的財
団 ,コ スメトロ ジ ー 財 団 ,住 友 化 学・高砂 香 料 工 業 を
卜
江isaki,Tキ Nagase,R,ヽ 江atsumoto,Kキ
始 め とす る企 業 の ご協力 に感 謝 申 し上 げ ます⑤
ユ _4m Cね em SOc.2005,ヱ 2Z2854
14)
Tanabe,Y
Ashida,YI Tanaka,Aキ Hosomi,K;Nakamura,AI
参考文献
い
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今回
像 )_ム ス コン の 合 成 法 を引 用 させ て い た だ い た。
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特 に口 中和 彦 先 生 ,北 原 武 先 生 ,萩 原 九 大 先 生 ,松
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田博 士 (高 砂香 料 工 業 )の 優 れ た研 究 は重 要 で あ る。
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