朝比奈 雅志(ASAHINA, Masashi, Ph.D.) 帝京大学 理工学部 バイオサイエンス学科・講師 1999 年 東京学芸大学・教育学部卒業 2004 年 筑波大学大学院・生命環境科学研究科修了、博士(理学) 2004 年~ 筑波大学・日本学術振興会特別研究員 (この間、理化学研究所・客員研究員を併任) 2007 年~ オレゴン州立大学・Postdoctoral Research Associate 2008 年~ 筑波大学・遺伝子実験センター・研究員 2009 年より現職 私は、東京学芸大学・教育学部を卒業後、筑波大学大学院・生物科学研究科(現・生命 環境科学研究科)に進学し、博士号を取得いたしました。その後、日本学術振興会特別研 究員として引き続き筑波大学に在籍した後、オレゴン州立大学と筑波大学・遺伝子実験セ ンターの研究員を経て、2009 年から帝京大学バイオサイエンス学科の教員として働いてい ます。 元々は中学・高校の理科教員を目指して教育学部に進学し、卒業研究では円石藻の研究 をしていました。しかし、卒研を行っていくうちに、研究をすることの楽しさ、新しい発 見をすることの喜びと達成感にふれ、研究者になりたいという思いが高まっていきました。 そこで、大学院への進学を決意し、また以前より植物細胞壁の機能に興味を持っていたこ とから、細胞壁・細胞間接着の研究を進めている佐藤忍先生の研究室に進学させて頂きま した。そこで与えて頂いたテーマが、今でも私の研究テーマとなっている、切断によって 分離された植物組織が再び接着する現象である「組織癒合」に関する研究です。とは言っ ても、当時、佐藤研で切断組織の癒合について研究するのは私が初めてであったので、ど んなナイフを使えばいいのか、どのくらい育った植物をつかうのか、傷の深さはどのくら いがいいのか、などという単純な疑問から、実験がスタートしました。当初は、すばらし い結果を次々と出していく仲間の姿に焦りもしましたが、 「初めて見つけることの意味」を 改めて知った時期でもありました。どんなに単純な疑問であっても、 「世界の誰よりも早く その疑問を解いたのだ」という喜びと責任感は、私が研究者を目指すきっかけとなった根 本であり、どんなにきつい時期であっても研究を続けていくためのモチベーションになっ ています。 また、筑波大学在籍時には、共同研究や学会発表などを通じて、様々な分野や所属の方 とのネットワークを築くことができました。研究には多くのハードルがありましたが、皆 さんに支えて頂き、なんとか進めていくことができました。昨年、 「植物の傷が治るのに必 要な遺伝子」を発見し、国際有名雑誌に発表することができましたが、これも実験指導を してくださった先生方、貴重なリソースを提供してくださった共同研究者の先生方をはじ め、多くの皆さんに支えて頂いたおかげであることは間違いありません。そして、将来の 夢や悩みを話しあったり、研究について議論したり、時にはお酒を飲んで話をする仲間を 得られたことは、私の人生において、とても大切な時期であったと確信しています。 筑波大学は大変恵まれた環境にありますが、せっかくのチャンスも、目の前を通り過ぎ てしまってからでは遅すぎます。サッカーでは、“Think Before, Look Around” という言 葉がありますが、日常の生活においても、 「次に何をすればいいのか、実際に行動を起こす 前からよく考えておくこと」、「周りの状況をよく見て、自分は何をすればいいのか判断す ること」は、常に意識しておくべきだと考えています。後輩の皆さんには、過ぎ去ったチ ャンスの後ろ姿を見て後悔することの無いように、充実した学生生活を送ってもらいたい と思います。 求められる人柄 朝比奈君は東京学芸大学を卒業し、大学院を私の研究室に来て博士課程を修了した。彼が 訪ねてきたのが、ちょうど私が個体レベルで起きる接着現象の一つとして、植物の傷が治る仕組 みの解明を始めようとしていた時であった。電子顕微鏡を用いた形態学が得意とのことであった ので、傷ついた茎が治るプロセスをまずは形態学的にしっかり押さえるところから始めてもらった。 その過程で、芽生えの子葉が作る植物ホルモンが重要らしいことが分かってきて、当時、和光市 にあった植物ホルモンの殿堂、理化学研究所の神谷勇治先生の研究室に朝比奈君を派遣する こととなった。高速道路を飛ばしての行き帰りでさぞ大変だったと思うのだが、弱音を聞いた記憶 がない。朝比奈君は理研で皆さんにかわいがってもらい、研究能力はもちろんだが、その人柄も 買われて現在の帝京大学のポストに就くことになった(のだと思う)。 朝比奈君の特徴と言えば、まずはサッカー好きであることだ。私は朝比奈君がサッカーをして いるところを見たことがないのだが、試合でよく怪我をして治療していた姿が強く印象に残ってい る。朝比奈君が試合でよく怪我をするのは、何事にも積極的な性格によるとのサッカー仲間の言 である。次は、宴会好きである点だ。しかし、ただ酒を飲むのではなく、那珂湊漁港に出向いて魚 を調達してきて自ら包丁をふるったり、親戚からもらったシカ肉を料理したり、美味しい酒を用意し たり、そのサービス精神は並ではない。そのような周りの人に対する面倒見の良さとリーダーシッ プは朝比奈君の特筆すべき性格である。そのようなわけで、今でも朝比奈君に後輩達の遠隔指 導をお願いしていて、大いに助かっている。 朝比奈君が多様な学生を相手にするのが仕事の大学教員に採用される際に評価された人柄 とは、以下のようなことであろうかと思う。 1、礼儀正しい。2、何事にも積極的で考え方が建設的。3、正義感がある。4、主張すべきは主張する。5、リ ーダーシップが取れる。6、気配りができる。 人間力の磨き方はいろいろだ。後に続く後輩達にも参考になれば幸いである。 朝比奈さん在籍時の指導教員:佐藤忍教授
© Copyright 2024 Paperzz