全国JRCモデル校最終報告書

青少年赤十字モデル校最終報告書
(平成 20 年度)
学校名
広島市立国泰寺中学校
所属長名
濵村龍彦
学校住所
〒730-0042 広島市中区国泰寺町 1 丁目 1-41
担当者教諭名
学校電話番号 082-241-8108
e-mail
瀧口純二
学校 FAX 番号 082-240-1379
[email protected]
教員勤務年数 23 年
役職
生徒会部長
担当教科
加盟校勤務年数 11 年
青少年赤十
字指導歴
9年
活動計画作成(年
間計画)の有無
理科
有・無
青少年赤十字加 1.全校加盟 2.学年加盟 3.クラス加盟 4.クラブ・部活動による加盟
盟形態
5.その他
在校児童・生徒数
500 人
うち青少年
赤十字活動
対象者数
500 人 校務分掌
1・2・3・4・5・6・7
8(その他)
タイトル
めざせ!『実行の人』
サブタイトル
Light The Darkness ∼心に灯りをともせ
活動の種類
奉仕・国際
活動の単位
理解親善
全校の取り組み
活動
2年
期間
教育課程 上 特活・ 総合 的 な
の位置づけ 学習
具体的な活動内容(1200 字以上)
①
(1)評価活動を工夫し、VS活動を活性化させる
VSカードの発行と運営を定着させた。VSスピリット賞などのさまざまな賞
を制定したり、1つの取り組みが終わったら、必ずVS掲示板に写真入りの活動
報告を掲示し評価した。新たに定めた賞は次の通りである。
VSスピリット賞 ?
あいさつ運動や、放課後のVS活動に参加すると、VSカードを発行しカード
の裏にVSシールを1枚ずつ貼ることにした。
1
一枚のカードに20枚のVSシールが貼れるようになっていて、一杯になると、
アセンブリーで生徒会長が該当生徒に賞状(VSスピリット賞)を贈り、表彰す
る。VSカード等は生徒会室のパソコンを使って作成し、運用は生徒会執行部が
すべて行う。1年前から始めた取り組みで、延べ人数にすると、今までに100
名を超える生徒が受賞した。中には1人で5回以上受賞している生徒がいる。先
日のアセンブリーでは、19人の生徒がVSスピリット賞の表彰を受けた。
アンリー・デュナン賞
?
「JRC重点取り組み」という、1年間通して重点的に取り組む活動テーマを生
徒総会で決めるが、その具体的な活動の中で、すくれた活動をしたクラスを、1
つの活動が終わるたびに生徒会長が表彰する。
JRCスピリット賞
?
3年間、JRCの実践目標である健康・安全、奉仕、国際理解・親善の3つの
分野で顕著な実績を残したと認められる生徒を生徒会担当教師が選出し、学校運
営委員会の承認を得て、学校長が表彰する。楯と賞状が贈られる。3年前から実
施しており、毎年卒業式前のアッセンブリーで表彰する。毎年、3年生の中から
3人ずつ表彰している。本年度は、生徒会長、生活委員長、庶務会計委員長が選
ばれた。
委員会単位の表彰
?
各委員会単位の取り組みにおいても、活動が終わるたびに、優れた活動を行っ
たクラスを表彰している。
(2)VS掲示板の運用を活性化
JRC活動の特色の1つとして、「掲示板」の活用がある。本校には、玄関ロ
ビーのところに大きな掲示板がある。数年前までは、この掲示板が十分に機能を
果たしているとは言えなかった。今では「VSの募集」などに活用され、運用を
活性化させることができた。
(3)生徒総会の工夫とJRC重点取り組み
国泰寺中学校では、毎年5月に行われる生徒総会で、その年に行うJRC活動
のテーマを決めて、活動するようにしている。そのテーマを「JRC重点取り組
み」と呼んでいる。この基本アイディアは、田村真一先生(現吉島中)からいた
だいたものだが、もう何年もこのやり方で盛り上がりを見せている。方法だが、
まず全クラスで学活の時間を2時間使う。1時間目に、各班ごとにこの1年間か
けて全校で取り組むJRC活動について考え、1枚の模造紙にまとめる。それを
教室の前に貼りだし、順番にプレゼンテーションを行う。そして、最後に多数決
で1つに絞り、クラス案として執行部に提出する。学活の運営は、生徒会執行部
の生徒が各クラスに出向いて行う。
全クラスから集まった案を執行委員会で検討し、優れた案3∼5案を選出する。
そして、選出された案を、それを考えたクラスが、生徒総会でプレゼンテーショ
ンし、全校生徒の投票で1つに決定する。
2
今年は、『拾えば学校が好きになる』という案が選ばれた。これは、校内に落ち
ているゴミに生徒一人一人が気づき、拾ってゴミ箱に捨てるようにしようというも
のである。この活動の最終的な目標は、ゴミを捨てない雰囲気を校内につくるとい
うことである。
生徒総会で決めるのは、あくまでも大まかな活動方針である。それは、各クラス
からあがってくる案がそれほど細かいものではないからだ。一応、5 W 1 H(トレ
センのワークショップ形式)で案を作ってもらうが、限られた時間での話し合いな
ので、それほど完成度は高くない。だから生徒総会で決まった後の、細かい取り組
みのやり方については、執行部が細案を作り、代議員会に提案し決定する。「拾え
ば学校が好きになる」というテーマの具体的な活動方法だが、これは生徒会長を中
心に考えた。一回の取り組み期間は約一週間で、毎日、朝の学活で、「落ちている
ゴミを拾いましょう!」と代議員を中心に呼びかけをする。そして、終学活で「今
日、落ちていたゴミを拾った人は手を挙げてください」と代議員が問いかけ、挙手
してもらう。代議員は数を数えて記録用紙に記録する。これを毎日一週間続けて、
週末にゴミを拾った人の延べ人数を合計し、記録用紙を執行部に提出する。執行部
は、それに基づいて、人数の多かったクラスを上位 3 クラスを次の週の全校朝会で
表彰する。ずいぶん地味な活動のように思えるが、以前はゴミの多かった校内がず
いぶんきれいになったように思う。
(4)リーダーシップの育成を強化
4月に1泊2日の日程で行われる新入生TCでは、生徒会執行部が同行し、教師
とともに指導的な役割を果す。日程を先見させ、食事のときの配膳と片づけなどの
VS、勉強法などについての体験発表、生徒会活動(JRC活動)についての説明、
レクレーションの運営などを担当する。これによって、生徒会執行部のリーダーシッ
プを育成する。なお、生徒会執行部のTCは、12月に新執行部が決定した直後に
校内で2日間、夏休みには1泊2日の日程で行う。これらのTCは、「JRCのト
レセン」のやり方を取り入れて行う。
夏休みには、広島県青少年赤十字トレセンに1、2年生の生徒を可能な限り多く
参加させるようにしている。毎年10名を超える生徒が受講している。
(5)国際交流の積極的な推進
夏休みに行われる、日赤広島県支部と広島県青少年赤十字指導者協議会主催の日
韓相互交流事業の韓国派遣プログラムに1∼2名の生徒を参加させている。また、
受け入れプログラムには、執行部の生徒を全員参加させている。その中で、参加生
徒は教室では学べないたくさんのことを学んでいる。
3
(6)「キー・コンピテンシー」育成として視点
近年、OECDによって、今までの学力観を包括する、より広義の学力観として
「キー・コンピテンシー」という概念が提案されている。今後、日本の教育もこの
影響を受けるものと予想される。「キー・コンピテンシー」は、
1.自律的に行動する能力
2.社会的に異質の集団での交流能力
3.社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力
に集約されている。この「キー・コンピテンシー」という視点を取り入れて執行部
の指導を行った。
(7)教員への青少年赤十字の普及
学校に青少年赤十字の考え方を普及させていくために、とても大切なことの1つ
は、教員への働きかけである。毎年4月には、青少年赤十字校内研修会を開く。昨
年度と本年度は、濵村校長に講師を務めていただいた。また、日赤広島県支部が年
に2回開催している「青少年赤十字指導者研修会に、昨年度は3名、本年度も3名
の教員が参加した。それ以前に、青少年赤十字の研修を受講した教員は、濵村校長
と私を含めて5名いた。本校の教員の3分の1を超える教員が研修を受けたことに
なる。また、研修を受けている教員だけでなく、出来るだけ多くの教員に青少年赤
十字に積極的に関わっていただいた。
(8)特徴的な活動について
年間の生徒会活動として行われたJRC活動 については、いくつかの特徴的な活
動について説明する。
1.募金活動
国内外で地震などによる災害の情報が報道されるとすぐに執行部を中心に募金活
動を行う。昨年の中国大地震の際には、5月に行われた体育大会で執行部が募金活
動を行い、集まった募金を日赤広島県支部に届けた。この活動の様子は、中国新聞
にも掲載された。
2.折り鶴デー
毎月1回、全校生徒で折り鶴を折り、千羽鶴にまとめていろいろな機会に献納し
ている。今年の夏には、各小学校区の慰霊祭に持って行った。また秋には、赤十字
賛助奉仕団と日赤広島県支部の方にお願いして、スイスのマルセル・ジュノー博士
の碑に千羽鶴を届けていただいた。
3.放課後のVS活動
毎月数回、放課後にVS活動を実施している。企画は、各委員会単位で行う。健
安委員会主催のクリーン活動や、庶務会計委員会のベルマークの集計作業、生活委
員会主催のVS花壇へ花の苗を植える活動などがある。毎回、数十人の生徒が自主
的に参加している。
4
活動のねらい(動機・背景など)
②
「LIGHT THE DARKNESS」というシュバイツァー博士の言葉を、校訓「実行の
人」とともに、VSカードの表に表記している。「LIGHT THE DARKNESS」、
つまり「闇に明かりを灯せ」ということである。闇というのは、切り取ってなくそ
うと思ってもそれは不可能な話である。どうすればよいのか。それは「明かりを灯
す」ことである。闇は明かりを灯すことによってのみ消える。臨床心理学では、起
こっている問題を除去して解決しようとする『問題除去モデル』ではうまくいかな
いことが分かってきた。そうではなくて、問題解決像を構成する『解決構成モデル』
での治療が中心になっている。つまり、ここでの言い方をすると明かりを灯すこと
によって問題を解決ということである。(もっと具体的な言い方をすると、適切な
活動を増やせば増やすほど、不適切な行動は少なくなるということである。)もち
ろん、灯りをともす活動は、「人道・博愛」に基づいた青少年赤十字の活動である。
活動上のポイント、指導上の工夫、活用した人・もの・団体など
③
・JRC活動を推進していく上で、生徒会執行部のリーダー指導に力を入れた。生
徒会執行部(18人)が中心になって主体的に動けるように様々な工夫を行った。
・VSの入口として、VSカードなどを配布したり、賞を与えたり、掲示板に写真
を使った活動報告をこまめに行うなど、興味・関心を引きつける工夫を行った。
活動の成果
④
朝のあいさつ運動や放課後のクリーン活動など、校内のVSが以前に比べて活性
化している。朝のあいさつ運動では、毎朝、40人を超える生徒が正門のところに
並んで、登校してきた生徒たちに向かって元気よくあいさつをする。放課後のクリー
ン活動(月に1、2回)も、VS掲示板などを活用し参加を呼びかけ、毎回20∼
30人の生徒が自主的に参加する。自然災害などの復興支援のための募金活動も、
ニュース報道などを見て、執行部の生徒が主体的に立ち上げて活動するようになっ
た。折り鶴の取り組みも定着した。毎月一回、折り鶴デーを設定し、全校生徒で折
り鶴を一羽一羽折ってそれを執行部の生徒が千羽鶴にまとめ、高齢者福祉施設に届
けたり、原爆慰霊碑などに献納したりしている。また、日々の生活面の充実にも目
を向け、「ハンカチを持ってこよう運動」「着ベル強化デー」「ゴミを拾えば学校
が好きになる運動」などを展開している。
モデル校に指定される前は、多少、停滞気味だったJRC活動が再び活性化し、
校内が活気のある雰囲気を取り戻している。
教師の間でも、JRCへの理解が広まり、常にJRCワッペンをつけて日々の教
育活動に当たっている教師が増えている。
5
モデル校指定前と後を比較して変化したこと及びその効果
⑤
一言で言うと、校内のJRC活動(生徒会活動)が活性化したということで
ある。そして、活性化したことによって、本校の教育活動の好循環が生まれた
ということである。建設的な生徒の行動が増え、その分、マイナスの行動(不
適切な行動)が確実に減少した。
モデル校指定以降の青少年赤十字活動の学校での取り組みの見通し
⑥
基本的には、今まで育んできた取り組みを継続できるようにしていきたいと
考えている。ただ、本校は「健康・安全」に関する取り組みが「奉仕」「国際
理解・親善」の分野に比べて弱いので、この分野での活動の充実が必要である。
日本赤十字社(本社・支社)への要望・提言
⑦
日本赤十字社広島県支部組織振興課のスタッフの方々には、様々な活動のサ
ポートや講師の派遣など精力的に支援していただいている。この場を借りて感
謝の気持ちを伝えたい。
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