膀胱癌からの転移が疑われた心臓腫瘍の1例

25
膀胱癌からの転移が疑われた心臓腫瘍の1例
◎今村 寛子 1)、竹島 通 1)、松浦 かおり 1)、澤 照代 1)、中村 美江 1)、梶野 雅子 1)、菅原 雅子 1)、廣田 哲朗 1)
大津赤十字病院 検査部 1)
[はじめに]心臓腫瘍は稀な疾患である。今回右室内に巨
症とターミナル期であった為、積極的に治療は行われなか
大な腫瘍を認め、その評価に心エコーは有用であったので
った。[考察]本症例は画像上膀胱癌病変があり、傍大動脈
報告する。[症例]71 歳 女性[既往歴]糖尿病、糖尿病性腎症、
領域、左腎近傍、心右室にも腫瘤性病変が見られ、転移が
狭心症、認知症、大腿骨骨折(術後)[現病歴]尿中血塊多
疑われた。転移性心臓腫瘍は無症候性の事が多いとされて
量にて当院紹介入院。膀胱鏡にて膀胱左壁に腫瘤性病変。
いる。膀胱癌の転移臓器は肝、肺、骨、副腎、小腸、脳と
開腹術は本人の体力、理解力、下肢の拘縮の為不能であっ
されている。今回腫瘤発見後、一週間後に永眠された為、
た為、TUR-BT 術で膀胱内腫瘤を摘出され、その後放射線
詳しい検索には至らなかったが、浸潤性膀胱癌病変があり、
治療をされた。数日後、呼吸苦、血圧上昇を認めた為、心
傍大動脈、左腎近傍にも腫瘤性病変があることにより、今
エコー検査を施行した。[心エコー所見]心嚢水貯留あり。
回の心臓腫瘤は、転移性腫瘤であると思われた。[まと
左心機能は正常。右室は全体を占めるような腫瘤あり。B-
め]心エコーが有用であった、極めて稀な転移性心臓腫瘍が
mode では右室自由壁との境不明。TR は 50mmHg
疑われた 1 例を報告した。
[造影超音波]右室は腫瘍でほぼ占拠されており、腫瘍内に
造影されない部分あり、腫瘤内壊死が認められた。[MRI]膀
胱には左側壁中心に浸潤性膀胱癌病変が認められた。傍大
動脈領域、左腎近傍にも腫瘤性病変があった。胸水、心嚢
液貯留あり。右室壁に主座を有し、内腔及び心嚢腔側に発
育するような内部壊死を有する腫瘤性病変を認めた。右室
は残存する腔が弁側にわずかに認めるのみであった。認知