3ページ - 県立自然博物園

今シーズンは結実が少ない年ですが、 ミヤマニガウリ、サルナシなど葉っぱと 同じ緑の実は9月に沢山観察できました。 実が少ないせいか、玄海広場を華やかに飾る 秋の花は、来園者の目を惹くようです。 ギンリョウソウモドキ
(銀竜草擬、学名:Monotropa uniflora)
初旬から森に顔を出したギンリョウソウもどきはツツジ科シャクジョウソウ属の多年草。
新エングラー体系※では、イチヤクソウ科に分類されていましたが、APG植物分類体系※で
は、ツツジ科に分類されています。
秋に開花することから、別名アキノギンリョウソウと呼ばれます。
梅雨時に開花するギンリョウソウ(Monotropastrum humile)は
花を覗くと、10 本の黄色の雄しべに囲まれた花柱のふちが濃紺で、
アキノキリンソウは白色です。
分類学の父と呼ばれるスェーデンのリンネ(C.V.Linne 1707-1778)から始まり、植物の分類はエングラー
(独:A.Engler)により 1890 年頃から編集されてきた新エングラー体系、クロンキスト(米:A.Cronquist)による
1998 年クロンキスト体系による分類を主として多くの植物図鑑が刊行されてきました。1998 年に発表された遺伝子情
報であるゲノムの解析に基づいた分類体系である APG 体系(被子植物系統グループ)によって植物の分類は大きく変わ
ってきています。9月は園内にセリ科の白いレース編みの様な花が目立ちましたが、以前はケナシミヤマシシウドの
名称はミチノクヨロイグサになります。イチヤクソウ科とされていたイチヤクソウ、ギンリョウソウはツツジ科のイチヤク
ソウ属になります。日本では牧野植物大図鑑をはじめ、多くの植物図鑑はこれまで新エングラー体系で分類している
ので、個人により認識が違っています。いずれにしても、植物名は人間同士においてコミュニケーションの記号にすぎ
ず、芽を伸ばし、花を咲かせ、実を結び自然の営みを丁寧に季節毎に観察していく事が大切だと思います。
9月は華やかな紅葉を前に静寂の時期ですが、9月の園内は清楚なキク
科の花が咲き揃い、緑の森を彩ります。10 月になると各地で菊まつりが開
催されますが、まだまだ博物園の自然に佇む菊も凛として美しいです。
(細谷)
アキ ノキ リンソウ
シロニガナ
ユ ウ ガギ ク
ノコンギク
ハ ンゴンソウ
チョウ ジギ ク
オニシオガマ
シロヨメナ