ライフ・スキル・トレーニングについて 1.内容、方法、評価についての検討 体験学習Ⅱの中に1学年で 「ライフ・スキル・トレーニング」 2単位を実施することにし、 教育内容・方法、評価方法などについて検討を行った。 検討の中で以下のような意見が出された。 ○支援を要する生徒を対象とした講座としたい。 ○ 見通しをもたせながら体験することが重要である。対人関係の問題は支援を要する生徒に とって障害特性そのものなので、 それをちょっとしたトレーニングだけで改善できると考え るのではなく、 困った時の対処法や支援ツールの使用法について学ぶことが意義深いことで ある。生活管理が苦手という場合、セルフモニタリングの問題である可能性がある。また、 今自分がどういう状況にあるかという場面理解や状況理解のスキルについては、 やってみて 評価するという視点が重要である。 ○ 学校側でプログラムを受けさせたいと考える生徒が、自分自身の判断でこのプログラム を選ぶという場面が必要ではないか。それは、例えば、職場実習前の準備段階として、ま た、職場実習の総括や評価による進路希望の揺らぎや不安といったことが対応する。 ○できる、できないを含めて自己理解することで障害受容が大切であり、体験する過程の中 でそれをできたらよいのではないか。 ○ 軸になる活動を入れ、それを繰り返していく中で評価をしていく。単発の活動だとトレー ニングにならないので、時間の推移に伴う成長の変化の部分を評価していきたい。また、 自分でもモニターさせていく。想定する生徒は実行機能(計画を立てて物事を遂行していく 力)と自分の行動をモニター力の弱さがある。活動が終わったら、活動を振り返り、次回ど うしたらいいのかを言語化によりプランニングさせ、それを評価しての繰り返しを行ってい く。評価の軸としてT-TAPを評価指標として利用していく。家庭尺度と学校/事業所 尺度をチェックリストして生徒にも分かるようにブレイクダウンしたものを使う。わかっ ているけどできないのが発達障害の特性である。ゆっくり考えて計画を立てればうまくい くという実感を体験させていくことを目標とする。 上記のような意見を得て、ライフ・スキル・トレーニングの構想を以下のように決定した。 (1)機軸活動(校内外の清掃活動)について 以下の6点のライフスキルの習得を目指して、項目ごとに確認をして実行する。 ① 手順に従うなどの職業スキル ② 正確に課題を終わらせるなどの職業行動 ③ 日課スケジュールに従うなどの自律機能 ④ 適切に自由時間を過ごすなどの余暇スキル ⑤ 簡単な指示に応じるなどの機能的コミュニケーション ⑥ 他人がいることを意識するなどの対人行動 (2)清掃活動を機軸活動にした理由について 以下の3点が理由である。 ① きれいになったと目で確認でき、活動結果がわかりやすい。 ② 結果がわかりやすいことで授業外の教員等からも評価しやすい ③ 清掃活動には、ほうきで掃く、雑巾で拭くといった様々な活動があり、それらを学 ぶことによって多様なスキルを習得できる。 - 14 - (3)指導形態について 市民講師と教員のティーム・ティーチング方式をとり、機軸活動の指導は市民講師が 行い、授業中の補助活動や評価活動を教員が行う。教材としては、公益社団法人東京ビ ルメンテナンス協会発行の清掃マニュアルを使用する。 (4)評価について TTAP(自閉症スペクトラムの移行アセスメントプロフィール)を評価指標とした生 徒個々の学習記録や授業態度・出席状況、成果物を基礎として、評価を重ねる。また、 自己評価活動によりセルフモニタリングする力を育成する。 さらに、ライフ・スキル・トレーニングの教育目標として「6 コミュニケーション (1)コミュニケーションの基礎的な能力に関すること。」と関連付ける。実際には機軸 活動(清掃活動を予定)を行いながら、育成する。セルフモニターとプランニングがその 主なターゲットとする。 講座開始にあたって、課題となるのは、どのようにスクリーニングするかである。スキ ルチェックシートを利用して自己チェックを行わせるが、発達障害のある生徒はセルフモ ニタリングに課題があるので、担任による観察も合わせることで対象となる生徒を絞り込 んでいくといった意見が出された。 2.講座の実践【1年目】 社会福祉法人の職員を市民講師に迎え、週1回2時間続きの授業計12回を1サイクルと し、前期、後期と2サイクル行った。 (1)受講者の決定 前期の受講者は、メンタルヘルス面談で臨床発達心理士からみて受講効果が期待できると 考えられることに加え、第5希望までにライフ・スキル・トレーニングを選択した生徒6名 と、本人の希望があり、担任も向くと考える生徒2名のあわせて8名を受講者として決定し た。受講生徒の特徴は、人とコミュニケーションをとることが苦手、心配事があるとそれだ けで頭がいっぱいになる、一生懸命やろうと思っていてもなかなか続かないことがある、教 科によって授業がわからなくなることがあるなどであった。 後期の受講者は、前期と同様メンタルヘルス面談で臨床発達心理士からみて受講効果が期 待できると考えられることに加え第5希望までにライフ・スキル・トレーニングを選択した 生徒6名と、本人の希望があり、担任も向くと考える生徒1名のあわせて7名を受講者とし て決定した。受講生徒の特徴は人とコミュニケーションをとることが苦手、自身の感情のコ ントロールがうまくできずカッとなってしまう、おしゃべりがとまらないなどであった。 (2)講座内容と授業の様子 各教室の清掃用具入れの点検・清掃活動を活動の中心に据え、以下のような授業内容を行 った。 授業回数 第1回 第2回 授業内容 オリエンテーション 道具について 汚れ・ゴミについて 清掃用具入れ点検 テーブル拭き(タオル分類・絞り方) 清掃用具入れ点検(毛ガキで自在ほうきをきれいにする) 雑巾の確認(実際に机の上を拭く、タオルのたたみ方) - 15 -
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