Kohnan Wind Orchestra 港南吹奏楽団通信 しおかぜ 発行者 第6号 港南吹奏楽団理事長・常任指揮者 玉 谷 敏 弘 2008年11月16日(日)発行 伝説の人 「山口百恵(やまぐちももえ)」は,中学校2年生のときにオーディション番組『スター誕生!』を受けて準優勝。 中3の4月に歌手としてデビューして,すでに同じオーディションで合格を果たしていた「森昌子(もりまさこ)」, 「桜田淳子(さくらだじゅんこ)」とともに『花の中3トリオ』と呼ばれた。しかし,デビュー曲がスタッフの期待ほど売 れなかったため2曲目はイメチェンを図り,「青い果実」という大胆な歌詞を歌わせた。これから「青い性」路線が 始まった。(「青い性」という言葉についてはご自分でお調べ下さい。) 15歳の高校1年のときに歌った5曲目シングル「ひと夏の経験」が大ヒット。年端のいかない少女が性行為を 連想させるような際どい内容を歌うという,この「青い性」路線で百恵は世の中の絶大な人気を獲得することにな った。歌詞の内容は際どかったが,辺見マリや夏木マリ,山本リンダなどの「大人のセクシー」路線の歌手と違 い,百恵は年齢が低くビジュアル面では純朴な少女というイメージだったため,歌とビジュアルのギャップやそこ に存在する背徳感(いけないことしてる感じ)が,当時の他の歌手たちにない「独特な人気」を生んだ。これは百 恵の才能や素質だけではなく,所属事務所やレコード会社による周到なイメージ戦略の勝利だろう。歌詞を少 し紹介すると, <青い果実> ♪あなたが望むなら 私 何をされてもいいわ いけない娘だと 噂されてもいい ・・・ <ひと夏の経験> ♪あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ 小さな胸の奥にしまった大切なものをあげるわ 愛する人にささげるため守ってきたのよ 汚れてもいい 泣いてもいい 愛は尊いわ ・・・ 今時はこの程度,どうってことないのかも知れないが,1974年当時は衝撃的。「中学生にこんなこと歌わせて いいのか!」と批判もあったようだ。あの人気少女漫画「ちびまる子ちゃん」のエピソードのひとつに,まる子が百 恵の「ひと夏の経験」を歌ってお母さんに怒られるシーンがある。怒られたまる子は,次に「青い果実」を歌おうと するが,同じくお母さんに「その歌もやめなさい!」と注意される。当時の良識からすればそうだろう。でも,売れ れば勝ち。(歌わされていた百恵自身はどう思っていたかはわからないが。)戦略だけでなく,実際に歌も上手 いうえに映画やドラマの主演も務めた百恵は演技も非常に上手く,その人気は絶大なものになった。 その後,「横須賀ストーリー」でツッパリ・ロックバンド系作品を格好良く歌いきる新しい路線を開拓した。今で いうところの「エロかっこいい」路線だ。17歳∼19歳頃の百恵はこの路線で売れた。「イミテイション・ゴールド」 や「プレイバックPart2」はそういうヒット曲。そういう路線で売れている中で,たまにふっと全く違う歌を歌ったりし た。それが「秋桜(こすもす)」であり,「いい日旅立ち」である。 「秋桜」はさだまさしが作詞・作曲した歌。百恵には本当は日本女性的な面があるのではないかと思い作られ た歌だが,歌っている百恵はまだ10代。さだに電話で「(歌詞の内容が)ピンとこないでしょう?」と聞かれて,素 直に「はい」と答えた。さだは「いつか,それがわかる日が来るといいね」と言ったが,百恵が結婚して引退するラ スト・コンサートの日,百恵は「さださんがおっしゃったようにこの歌の意味がようやくわかるときがやってきまし た。ありがとうございました」というメッセージを送ったそうだ。この曲の歌詞を紹介。 <秋桜> ひ ♪淡紅の秋桜が 秋の日の 何気ない陽だまりに揺れている この頃涙もろくなった母が 庭先でひとつ咳をする 縁側でアルバムを開いては 私の幼い日の思い出を 何度も同じ話繰り返す ひとりごとみたいに小さな声で こんな小春日和(こはるびより)の穏やかな日は あなたの優しさが浸みてくる あした嫁ぐ私に 苦労はしても笑い話に時が変えるよ 心配いらないと笑った あれこれと思い出をたどったら いつの日も一人ではなかったと 今さらながらわがままな私に 唇噛んでいます 明日への荷造りに手を借りて しばらくは楽し気にいたけれど 突然涙こぼし「元気で」と 何度も何度も繰り返す母 「ありがとう」の言葉をかみしめながら 生きてみます私なりに こんな小春日和の穏やかな日は もう少しあなたの子供でいさせて下さい 未婚女性だらけの当楽団(なんと,平均年齢18.2歳!)。みんな,歌詞の意味がわかる日がそのうちにやっ てくるだろう。百恵は21歳という若さで芸能界をあっという間に完全引退。引退してすぐに俳優・三浦友和と結 婚した。そして,完全引退当日。歌った歌は「いい日旅立ち」である。そして,「百恵」は伝説になる。 かっこよすぎ。
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