放射能汚染対策と福島の農業再生に関する要望書

3
農林水産省生産局長
松島浩通様
放射能汚染対策と福島の農業再生に関する要望書
2014 年 11 月 28 日
NPO法人福島県有機農業ネットワーク理事長 菅野正寿
東日本大震災原発事故から 4 年目の収穫の秋を迎えました。未だに 13 万人が
県内外に避難をしている異常な状態は続いています。耕したくても耕せない農
家にしっかりと寄り添い、生業と生きがいを取り戻す支援が求められています。
とりわけ自然の循環と生態系を守り、健康な作物と健康な家畜を育んできた有
機農家への打撃は深刻です。汚染された土壌、農産物、山林、河川の実態調査
の支援を求めます。
産直提携の 30~50%の消費者がもどっていない状況のなか、
新たな販売促進と交流事業支援が必要です。
福島県の玄米全量全袋検査の結果、99・99%が 10 ㏃/㎏以下、野菜類において
も耕して作付した農産物は不検出という復興への光りも見えてきました。
大学研究者と有機農家の共同による実態調査のなかで、多様な微生物の多い有
機的な土壌ほど放射性セシウムを吸着固定化することも検証されてきました。
放射能に汚染されたからこそ、環境保全型の有機農業による農業の再生を推進
していくことが大切であると福島から訴えます。しかも家族農業、集落営農な
ど地域コミュニティを守る支援こそ求められています。
次世代の子どもたちや青年が希望を持って耕すことのできる、地域資源を活か
した加工や再生可能エネルギーにより地域に働く場と産業を育成する対策と支
援を求めます。
農林水産省、大学研究者、農家との共同による放射能汚染対策と農業の再生の
ための要望をいたします。
1、 汚染された農地(田畑)の1筆ごとの土壌と空間の汚染の実態調査を国が
責任を持って実施をし、農家と共有すること。また、山林、農道、河川
の50mメッシュの調査も実施すること。
2、 地形も土壌も把握している農家住民参加型で国、県、研究者が共に汚染
対策と検証をすすめ情報の共有化をすすめること。
3、 住宅除染と合わせて農地に隣接する山林の伐採(最低 20m)と汚染の低減
対策、さらに植林までが国と電力会社の責任において実施をすること
4、 農地、林地で作業をする農家の健康調査を定期的、長期的に実施をする
こと。特に40歳以下の農業青年の健康調査を早急に行うこと。
5、 農地、山林は汚染物質による実害であるとの認識に立ち、面積あたりの
損害賠償を支払うこと。
6、 永年作物の特産品(原木しいたけ、梅、栗、柿、桑、ゆずなど)においては
改植に要する損害賠償と支援を実施すること。
7、 避難を余儀なくされている農家の代替え農地の確保につとめ、生きがい
と意欲の向上を図る支援を実施すること。
8、 環境保全型の有機農業のさらなる推進を図り、所得保障、価格補償の体
制を整備すること。
9、 福島県産お断りという状況のなか、加工施設(及び農家レストラン、農家
民宿など)に対する支援制度をすすめ、食文化の継承を推進する。また有
機農家への販路拡大、交流事業支援を求める。
10、家族農業、集落営農、兼業農家など多様な小規模農家によって地域コミ
ュニティが守られてきた地域支援と地場産業への対策をすすめること。