[参考事項] 新技術名:アキノノゲシ 由来の抗白髪物質(平成 年) ( ) 15

[参考事項]
新技術名:アキノノゲシ (Lactuca indica )由来の抗白髪物質(平成 15 年)
機関名
担当者
総合食品研究所 生物機能部門 生物機能第2担当
畠 恵司
[要約]
キク科植物である アキノノゲシ (Lactuca indica )メタノールエキスより、メラニン細胞に対す
る メラニン色素産生促進物質を単離し、構造解析した結果、 lupeol ( 1), lupenyl acetate (2),
lupenylpalmitate (3) だった。
[ねらい]
高齢社会を迎えた我が国では、それに伴う各種疾患が問題となっている。それら疾患に対す
る食材の有用性を解明するために、我々は種々の高齢疾患予防因子の探索研究を行ってきた。
本研究では、加齢に伴う外的な疾患である白髪予防を目的に、メラニン細胞の活性化因子
を天然より単離した。そこで、本研究ではキク科植物、アキノノゲシより、メラニン産生
促進物質を単離し、事業化に向けた基礎的データの集積を行った。
[技術の内容・特徴]
アキノノゲシ全草より水 (DW)、熱水 (Boiled DW: BDW)、メタノール (MeOH)、酢酸エチ
ル (EtOAc) を調製し、メラニン細胞である B16 2F2 細胞のメラニン色素産生に対する影響を検
討した (図 1)。アキノノゲシエキス、特に MeOH および EtOAc エキスは 100 mg/ml の濃度
で、未処理の区の 10 倍前後のメラニン色素産生を促進した。また、我々が先に報告した蒲公英
根 (タンポポ根生薬)と比較しても、アキノノゲシの MeOH ならびに EtOAc エキスは高い活性
を示した。そこで、アキノノゲシメタノールエキスより、 B16 2F2 細胞のメラニン産生促進活
性を指標に、活性物質の単離ならびに構造解析を行った結果、ルパン型トリテルペンである
lupeol (1)、 lupenyl acetate (2)、 lupenyl palmitate (3)の 3 種類の化合物であった (図 2)。
これら、化合物のうち、 1 ならび 2 に関しては以前にメラニン産生促進物質として報告した化
合物である 1)。そこで、1-3 の B16 2F2 細胞のメラニン産生に対する影響を検討した。 1 およ
び 2 は 10 µM の濃度で 72 時間培養した B162F2 細胞は未処理に比べて、メラニン細胞の色
素産生能を 9.2 倍及び 10.3 倍に亢進した。一方、 3 は 1 や 2 と比較では、弱い活性であっ
たが 30 µM 添加により、8.4 倍のメラニン産生を促進した。現在、これら基礎的なデータをふ
まえ、アキノノゲシエキスの抗白髪剤への展開を検討している 2) 。
[普及対象範囲]
本研究は㈱坂本バイオとの共同研究における成果であり、特許出願中である。今後、アキノノ
ゲシを材料とし、化粧品や健康食品素材として多方面での展開が期待される。
[普及・参考上の留意事項]
本研究の一部は文部科学省 科学研究費補助金 (15780090) 、インテリジェントコスモス学術
振興財団「自然科学研究に対する助成事業」ならびに (財 )あきた産業機構 平成 14 年度「テク
ノ共同開発助成金」によるものである。
[具体的なデータ等]
図 1. ア キ ノ ノ ゲ シ エ キ ス の メ ラ ニ ン 色 素 産 生 促 進 能
アキノノゲシならびに蒲公英根 (タンポポ根生薬 )各種エキスを 100 µ g/ml の 濃 度 で B16 2F2 細胞に添
加 し 、 72 時間後に生細胞数ならびにメラニン含量を測定した。陽性対象には 10 µM lupeol (1 )を 用 い
た。
図 2.
アキノノゲシ由来メラニン色素産生促進物質の化学構造
図 3.
化 合 物 1-3 の B162F2 細 胞 メ ラ ニ ン 色 素 産 生 に 対 す る 影 響
B16 2F2 細胞を種々の濃度の化合物 1 -3 とともに培養し、 72 時間後に生細胞数ならびにメラニン含量を
測定した。
[発表文献等]
1) Hata K. Hori K. Takahashi S., J . Nat . Prod ., 65 , 645-648 (2002)
2) 畠 恵 司 , 堀 一 之 , 向山 俊 之 , 坂 本 賢 二 , 高 橋 砂 織 , Natural Medicines, 57 , 238-241 (2003)