猫におけるベラプロストナトリウム投与量と効果の検討

演 題 番 号:
演 題 名:猫におけるベラプロストナトリウム投与量と効果の検討
発表者氏名:○竹中雅彦 1)2) 高島一昭 2) 車谷 元 3) 井田亘隆 3) 山根義久 2)4)
発表者所属:1)竹中動物病院(広島県)2)鳥取県動物臨床医学研究所 3)東レ医薬研究所 4)東京農工大学
はじめに:PGI2のアナログであるベラプロストナトリウム(以下 BPS)は腎不全の増悪因子をその薬理作用より
抑制し腎機能の低下を抑制させる可能性がある。しかし猫において BPS 投与の影響や投与量を検討した報告はな
い。そこで我々はまず臨床症状及び血行動態に変動を及ぼさず連続投与可能な投与量とその効果について検討した。
材料および方法:①供試猫:臨床的及び血液検査にて異常が見られない 3∼6 歳の雄 4 匹雌4匹の日本猫を用い
た。②投与方法:投与量により 4 群(Ⅰ群 10、Ⅱ群 30、Ⅲ群 70、Ⅳ群 100μg/kg/BID 各 8 匹)とコントロール
群(4 匹)に分けた。各群は同一の猫を用い 12 時間間隔で 7 日間投与し休薬期間を2 週間設け段階的に増量した。
③臨床症状の観察:有害事項の観察を投与前、0.5.1.2.3 時間経過時および 7 日間観察した。④血圧および心拍数
測定:オシロメトリック法により BPS 投与前、0.5.1.2.3 時間時の収縮期圧、拡張期圧、心拍数を各 5 回測定し最大値と
最小値を排除し 3 回の測定値を採用した。⑤血液検査:CBC、血液化学検査、電解質を試験前と終了後に測定した。
成績及び考察:①臨床症状でⅠⅡ群では有害事項は認められなかった。Ⅲ群で 3/8 例にⅣ群では全例に下痢、嘔吐
などの有害事項が出現した。②血圧は 70μg/kg 以上の用量で収縮期圧、拡張期圧ともに低下する傾向が認められ
た。しかし統計学的な有意差は認められなかった。心拍数は 30μg/kg 以上の投与量で増加しコントロール群との
間に有意差が認められた。③血液検査では各群において血液性状に影響を与えなかった。血液化学検査におい
て BUN,Cre,AST,ALT 値はいずれも BPS の投与により低下する傾向を認め特に Cre 値は用量依存性に低下し 30
μg/kg 以上の投与で有意であった。AST,ALT 値は 70μg/kg 以上の投与時に明らかな低下傾向が認められた。以上
の結果から臨床所見、血行動態所見から健康猫において臨床症状が安定し血行動態に影響を及ぼさず連続投与が可
能な BPS の最大投与範囲は 30∼50μg/kg 程度であると推定された。また今回の猫を用いた BPS 投与試験から
腎機能の改善を示唆する結果が得られた。