対対抗抗ででききるる配配送送シシスステテムムをを模模索索

ISSN 2185-9418
インタビュー:外資・大手通販企業と
対抗できる配送システムを模索
Jul
271
特集:通販物流システムのこれからの展望と課題
● 通販成長のカギを握る物流品質向上への対応
株式会社 日本流通産業新聞社
●「食」のSPAモデルと、
ICTの活用による
ロジスティクス効率化とお客様応対品質向上への挑戦
● ネット通販における物流システム 今後の展望
らでぃっしゅぼーや株式会社
株式会社 ムービング
MHジャーナル
271号(夏季号)
目次
2013.Jul
巻頭言 物流とモノづくりのMHソリューション革命
愛知学院大学大学院教授 博士
(経営学) 丹下
博文
氏 ………2
インタビュー ………………………………………………………………………………………4
外資・大手通販企業と対抗できる配送システムを模索
∼競合他社であっても
「配送」
では協力関係が築ける∼
株式会社 わかさ生活
特集
通販物流システムのこれからの展望と課題 ………………………………………1
1
寄稿文
●通販成長のカギを握る物流品質向上への対応……………………………………12
株式会社 日本流通産業新聞社 第2編集部部長 熊谷 岳雄 氏
●「食」のSPAモデルと、ICTの活用による ………………………………………18
ロジスティクス効率化とお客様応対品質向上への挑戦
らでぃっしゅぼーや株式会社 情報システム部 課長 鈴木 康信 氏
●ネット通販における物流システム 今後の展望…………………………………22
株式会社 ムービング 取締役企画部長 兼 グループ物流担当
原
誠一 氏
特別寄稿
●物流の効率化に係る国土交通省の取り組み………………………………………28
∼物流総合効率化法における制度改正について∼
国土交通省総合政策局物流政策課物流産業室
米国マテハン専門誌抄訳 Vol.59 ……………………………………………………………32
JMHSニュース …………………………………………………………………………………34
奥付 ………………………………………………………………………………………………36
Material Handling Journal No.
271
1
巻 頭 言
物流とモノづくりの
MHソリューション革命
愛知学院大学大学院教授
博士
(経営学)
丹下
2
1世紀の今日、物流やロジスティクス、さらにサ
博文
ハンの技術が必要不可欠でした。
プライチェーン・マネジメント(SCM)に対する関
それにもかかわらず、マテハンは従来あまり注目
心が急速に高まってきています。その背景には、①
されてこなかった嫌いがあります。その理由は、モ
インターネット通信販売市場の躍進にともなう物流
ノを運ぶ作業はそれほど高度化しなくても人海戦術
業務の高度化、②高齢者市場の拡大を背景とする日
などで何とかできると見られやすい側面があり、モ
用必需品の宅配、すなわち地域物流への需要増、③
ノの加工や組み立てなどのような作業と比べ、機械
2
0
1
1年3月1
1日に勃発した東日本大震災によりライ
化や自動化に取り組む認識が薄かったと指摘されて
フライン(生命線)としての物流の重要性が再認識
いるのです。ところが、今日の日本には米国の移民
された、などが挙げられます。
や中国の出稼ぎ労働者のような低賃金労働者がいな
2
この物流機能の一つに「マテリアル・ハンドリン
いため、安価な労働力に頼ることができず、逆に機
グ」
(略称は「MH」または「マテハン」
)
があり、中
械化や自動化が促進されて日本におけるマテハンの
長距離の物資の移動を表す「輸送」とは異なり、港
システムや技術は今日、世界トップクラス。実際、
や倉庫などの特定地域内における短距離の物資の移
日本には(株)ダイフクや村田機械(株)といった世界
動を取り扱う「運搬」、あるいは物資の積み卸しや仕
的に著名なマテハン企業が存在します。
分けなどを行う「荷役(にやく)」の作業を指して使
一方、マテハンは1970年代ころからシステム化、
われるのが通例です。このため日本では従来からマ
1980年代ころからIT(情報技術)化、1990年代こ
テハンは、主にトラック貨物輸送に焦点が当てられ
ろからグローバル化が進み、21世紀の2000年代に入
る物流活動のサポート的存在と捉えられる傾向が強
ってからは地球環境問題が深刻化しグリーン化が重
かったといえるでしょう。
要なテーマになってきました。この結果、マテハン
しかし、マテハンはモノづくりを支える重要な作
にも新しい観点が必要になってきたのです。その一
業や技術の一つで、
産業革命を契機とする大量生産・
つが、米国に見られるような企業経営におけるシス
大量販売を背景に製造業だけでなく流通業とも深く
テム化やIT化によって問題解決を図るソリューシ
関わってきた経緯があります。歴史的にも「ピラミ
ョン・ビジネスにマテハンが威力を発揮するのでは
ッド」や「万里の長城」といった世界遺産だけでな
ないかと考えられる点です。
く印刷機や飛行機などの多くの画期的な製造物も、
要するに、世界市場の激変により企業競争力の源
すべて物流機能の一つに含められるマテハンの作業
泉となる優れたマテハンのプレゼンスは今後、飛躍
や技術なくしては絶対に成し得かった人類の偉業と
的に向上するのではないかと予想され、「MH(マ
いって過言ではありません。また、近代物流への転
テハン)ソリューション革命」が起こるのではない
換点となったのが「モータリゼーション」
(車社会
かと推測されるわけです。日本のマテハン業界のさ
化)ですが、この自動車の製造工程にも優れたマテ
らなる成長と発展に期待がかかります。
MHジャーナル
平成2
5年7月
● 新刊のご案内 ●
多軸・複合
加工用CAM
金型および精密部品加工で活用が進む
多軸複合加工機は、
複雑な動作を制御す
る高度なCAMソフトの利用が必須であ
る。
そこで、多軸複合加工に特化したツー
ルパス作成法やプログラミング事例などを
要領良く紹介。
加工効率向上やトータルコ
スト低減に向けたCAM利用法を説く。
(目次)
第6章 コニコイドエンドミル工具の
第1章 多軸・複合加工とCAM
試作と活用
第2章 CAMシステムの構成
第3章 干渉回避の方法
第7章 非回転工具による6軸制御加工
第4章 高能率荒加工
第8章 旋削とフライスの複合加工
第5章 5軸制御加工の高速・高精度化
第9章 巧妙加工
著 著 者:
竹内 芳美 (たけうち よしみ)
中部大学工学部教授、大阪大学名誉教授
定価(税込)3,360円
発行所:日刊工業新聞社
発行
著者プロフィール
1948年8月 愛知県生まれ
1971年6月 東京大学工学部精密機械工学科卒業
1976年3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(工学博士)
1978年1月 九州工業大学助教授
1988年1月 電気通信大学教授
2002年6月 大阪大学大学院工学研究科教授
2011年9月 中部大学工学部教授、大阪大学名誉教授
著書に、メカトロニクスの基礎と応用(養賢堂)、超精密マイクロ
切削加工(日刊工業新聞社)などがある。
Material Handling Journal No.
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3
インタビュー
外資・大手通販企業と対抗できる配送システムを模索
∼競合他社であっても
「配送」
では協力関係が築ける∼
株式会社 わかさ生活
インターネットの普及で通信販売は大きく拡
大した。
に大きく事業を拡大させている。
京都市伏見区にある同社の物流センターで、
ここ数年、やや拡大が抑えられた傾向にあっ
たが、スマートフォンやタブレット端末の爆発
流通センター部長の和田知也様から通販業界の
展望や課題についてお話をいただいた。
的な普及で、事業規模の拡大を一段と加速する
勢いである。
そこで、ブルーベリーアイで知名度の高い通
販企業の株式会社わかさ生活様を取材した。同
社は、1
9
9
8年発足以来、商品品質の高さを武器
自動化への取り組み
酒井:貴社は、右肩上がりに事業を拡大させておられま
すが、物量の増加にはどのように対応されているのでし
聞き手:酒井
一氏/日本MH協会理事
本誌編集委員(島津エス・ディー株式会社
常務取締役)
(敬称略:編集担当:小川)
た。さまざまな検討の結果、機械化によるメリットが大
きいと判断し、郵便番号仕分け作業の部分を自動化させ
ることにしました。
通信販売はお客様に情報を伝える会報誌がとても重要
ょうか?
なツールです。それぞれのお客様に合わせたご案内がで
和田:当社は、社長の!谷が発足させて、まだ、1
5年の
きる機械を導入することで付加価値をつけようと考え、
若い会社です。小さいスケールからスタートしたことも
販促物をお客様に合わせて、選択丁合するフィーダーも
あって、物流センターではこれまで大部分が手作業でし
2
0
1
2年5月に稼働させました。さらに現在は商品自動
た。
投入機の稼動に向けて最終調整中です。
物量の大幅な増加に伴い、拠点の移転と拡大、そして
オーバーフローするところは一部の業務をアウトソーシ
多種多様な組み合わせがあるため、ここまでの導入し
ている企業はまだ少ないと思います。
ングすることで対応してきました。
現在は、物流センター業務を自社で行う企業方針のも
と、アウトソーシングしていた業務を吸収するため、オ
ートメーション化に取り組んでいます。
まず、2012年3月に郵便番号仕分けソーターを導入
しました。配送方法は「ゆうメール」がほとんどです。
ゆうメールは郵便番号区分が必要となり、この業務をア
ウトソーシングしておりました。手作業での仕分けは出
荷件数が増加するにしたがって、大きな負担となりまし
4
MH ジャーナル
平成2
5年7月
写真.
1:ブルーベリーアイを中心とした主力商品
外資・大手通販企業と対抗できる配送システムを模索
写真.
2:商品自動投入機
写真.
4:バーコードによる検品
酒井:通常の流通センターでは商品の形状に違いがある
と思いますが、貴社の流通センターではどのように対処
そして、ご購入いただいた商品や季節に合わせたご案
されるのですか。
内、おすすめの情報など、お客様に必要な情報を必要な
和田:基本的にはできるところから自動化に取り組んで
タイミングでお届けできるように選択丁合可能なフィー
います。生産性、スピード、コスト面を検討して順次自
ダーを導入しました。これまで、人の手でセットしてい
動化を進める計画です。
た販促物を4,
0
0
0件/時のスピードで梱包していけるよ
当社の出荷量の8割強がブルーベリーアイを中心とし
たサプリメントで、形状は商品によってやや大きさに違
いはありますが小型のアルミ袋のものが大半です。
うになりました。
また、検品強化のために、バーコードによる個人情報
をチェックする機能を入れて検品を強化しています。
ですから、まずこの部分を自動で行おうと考えて取り
また当社はお送りする梱包資材にもこだわりがあり、
組んでいます。大部分のルーチン化できる業務は機械で
箱の場合もあれば封筒の場合もあります。そのような形
自動化し、お客様一人ひとりのニーズに対応していくた
状の違いに対応できるように、一つのラインで箱仕様と
めの梱包は人の手で行い、よりお客様に真心込めた梱包
封筒仕様の2パターンに対応できるように設計していま
にしたいと考え、
オートメーション化を実施しています。
す。これには設備を作っていただいたベンダー企業様に
写真.
2)はブルーベリーアイを必要数量ラインに供給す
無理なお願いをさせていただきました。
る現在開発中の機械です。これが本格稼働すればさらな
る生産性向上が見込まれます。
写真.
3:販促物自動封入機
これからも早くて正確に商品を出荷できるようにオー
トメーション化に力を入れていきたいと考えています。
写真.
5:商品・販促物が封筒に入っていく様子
Material Handling Journal No.
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5
外資・大手通販企業と対抗できる配送システムを模索
通販企業の物流部門の役割
でも同業他社に比べて原価率は高い水準にあります。物
流コストの比重が高くなるわけですから、物流コストが
酒井:通販企業では、メーカーや卸業以上に物流部門の
会社の利益面に直結しますので責任の重いところです。
役割が重要になると思われますが、貴社の流通センター
先ほどお伝えした通り、郵便番号仕分けをすることに
はどのような役割を担っておられますか。
よって
「ゆうメール」
の料金を安くすることができます。
和田:もちろんメーカー様や卸業様の物流部門でも同じ
郵便番号仕分けソーターを導入して自動化を進めたこと
ようなことが言えると思っておりますが、マーケティン
によって、生産性の向上が図れました。もちろん大幅な
グ部門といかに息を合わせるかというところではないで
スピードアップも図れました。今、導入中の販促物・商
しょうか。
品自動投入機も手作業の部分を大幅に削減できますの
フルフィルメント(fulfillment)と言われる受注部門
などと連携することが重要と考えています。マーケティ
で、さらなる生産性向上を期待していますし、コスト削
減も実現できると思っています。
ング部門からは、次から次に色々な企画が出てきますの
マーケティングとの関連では、パワーアップ商品など
で、この活動にいかに呼応した体制をとるか、いかに実
を早く試してみたいというお客様に向けて、スピードと
現していくかというところが、流通センターとしては、
いう面でも当日出荷など新たな取り組みをしています。
もっとも重要な役割と考えています。
新商品や品質をより高めたパワーアップ商品がかなり
の頻度で出てきますので、どのタイミングでどの販促物
スピードは時代のニーズ
を同封するのか、ご注文の反響に合わせて出荷量を予測
酒井:通販業界では宅配を利用して翌日配送、最近では
して、商品や資材をどれだけ準備するかというところも
当日配送などスピードを競う方向にありますが貴社では
流通センターの役割です。
どのような取り組みをされていますか。
また、通信販売は店舗などとは違い、お客様のもとへ
和田:電話のみで注文をお受けしていた頃は、お届けま
商品をお送りしますので、配送費が大きな割合を占めま
で1週間ぐらいは当たり前でしたが、インターネットや
す。そこで、物流コストをいかに低減させるかというこ
特にスマホの普及で、手軽に通販を利用されるのが一般
とも大きな課題です。どの企業にも言えることですが、
的になってきて、また、宅配で翌日、場合によっては当
特に当社の場合、品質の高さが「強み」ですので、高品
日に届くという時代になってきました。配送スピードは
質な成分を惜しみなく使用するため、商品原価以外のコ
「時代のニーズ」になっていると思っています。
ストをいかに削減するかが重要になります。
当社の場合、商品形状や多数量の場合は宅配を利用し
当社はブルーベリー関連商品では高いシェアーを持っ
てもおりますが、大部分は「ゆうメール」を利用してお
ておりますので、北欧やその他の地域からの高品質なブ
ります。主力商品のブルーベリーアイは定価1,
6
8
0円で
ルーベリーの調達コストでは有利な面があります。それ
会員様には割引もしております。送料もお客様に負担し
ていただいておりませんので宅配を利用することはでき
ません。多くのお客様が「定期お届けコース」で購入い
ただいておりますので、お届け日に合わせて発送計画が
立て、配送リードタイムが5日∼7日かかる通常の「ゆ
うメール」でも対応ができます。
しかし、新規やその都度購入のお客様のご注文では一
日でも早くお届けする必要があります。また、「定期お
届けコース」の方からもぎりぎりまでご変更を承れるよ
写真.
6:郵便番号仕分けソーター
6
MH ジャーナル
平成2
5年7月
うにしなければなりません。
外資・大手通販企業と対抗できる配送システムを模索
ストの中で、少しでも早くお届けするというサービスを
行っていくことが自然とお客様に支持され、事業を拡大
させていくことになると考えております。
競合他社や新規参入企業様を直接意識しての活動では
ありませんが、取扱施設の拡大を進めています。特に全
国の眼科で取り扱っていただける活動を進めておりま
す。医薬品ではありませんし、もちろん健康保険が適用
されるわけでもありませんので、眼科様で、品質の高さ
写真.
7:インタビューに答える和田知也氏
を十分理解いただい上で、サプリメントとして取り扱っ
ていただいております。一般のお客様には、お医者様も
このため、配送コストは高くなりますが、日本郵便様
勧めるサプリメントとして、より高い品質をアピールで
と特別契約をして「ゆうメール」ではありますが速達郵
きればと考えております。
便程度のスピードで配送してくれる方法をとっていま
酒井:市販品と同様のものなのですか。
す。オプションとして休日配送やバーコードによる追跡
和田:少し仕様を変えております。容器は瓶になります。
サービスもできるようにしております。
物流センターの出荷作業においてもスピードアップを
現在は、全国約8
0医院以上の医療機関に取扱いいただ
いております。
進めております。当日の正午1
2時までにご注文いただけ
れば当日出荷するようにしております。関西圏では大部
分が翌日、あるいは翌々日にお届けできるようになりま
関東圏に拠点を検討
した。注文してすぐに届くというのはとても重要なこと
酒井:事業拡大されていく中で、物量の増加や配送コス
ですので、これからもスピードアップできるように体制
トの面で物流拠点展開をされる予定はありますか。
を見直し、当日出荷の受付時間をさらに拡大していきた
和田:取扱製品がチャック袋のように小型の形状です
いと考えています。
し、配送コストも「ゆうメール」ですので京都の物流セ
酒井:ドラッグストアなど店舗を主体とした企業も通販
ンターを拡充することで対応できると考えています。し
事業を拡大する傾向にありますが、このような面での対
かし、喫緊の課題として関東圏に拠点の設置を検討して
策はどのように対応されていますか。
おります。
和田:一般医薬品の通販解禁などでドラックストア様が
理由のひとつは BCP の点からです。3.
1
1東日本大震
通販事業を拡大することは当社にとっても他人事ではな
災の時に配送経路が遮断されて、東北以北にお住いのお
いと考えております。ただ、代表の!谷には、他社を押
客様に商品をお届けできなかった苦い経験があります。
しのけてまでと言う考え方はありません。品質の高い商
自然災害や不測の事故が起きても、お客様に安全かつ確
品をよりお求めやすい価格で、そして、限られた配送コ
実に商品をお届けするには関東圏にも物流拠点を設置す
る必要があると考えています。
もう一つの理由は、配送スピード対策です。当社独自
のフィールド調査では、同業他社に比べて、関西圏では
優位に立っていますが、関東圏では他社に後れを取って
いる状況になっています。
酒井:独自調査とはどのような調査ですか。
和田:詳しくはお見せできませんが、簡単に言えば同時
刻に注文して、同じ住所にどの順番に着くかということ
写真.
8:医療機関向けサプリメント
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7
外資・大手通販企業と対抗できる配送システムを模索
です。首都圏を中心とした関東圏は魅力的な市場ですの
で、関西圏と同様に優位に立ちたいですね。
どのような状況になっても、お客様にご注文いただい
た商品を安全確実にお届けすることや、配送スピードで
優位に立つことは事業拡大を目指す上で重要な部分のひ
とつだと思っております。流通センターとしてはできる
だけ早い段階で関東圏に拠点を持ちたいと考えていま
す。
写真.
9:取材風景
配送では競合他社との協力関係が必要
テムではライバル関係ですが、物流センターからお客様
酒井:最後になりますが、通販業界の物流システムで課
に届くまでの「配送」のところでは、協力関係が築けて
題になるようなところについては、どのようなところに
います。実際、JADMA の会合を通じて多くの物流セン
あると考えておられますか。
ターの見学会が実施されており、それぞれの工夫してい
和田:やはりインターネットの普及、特にスマホの爆発
ることを共有しております。今後は、巨大企業の新規参
的な普及で通販事業はますます拡大していくと思っており
入に対してより踏み込んだ企業連携ができるかが大きな
ます。
手軽に簡単にリーズナブルな価格で注文ができて、
課題になってきます。
注文した商品が素早く確実に届く、
支払いもクレジットカ
取扱商品が全カテゴリーに及ぶような外資・大手通販
ードやポイントで簡単に決済できるというところですね。
企業の動向を注視して、配送面での差別化に対抗してい
特に、
このような通販システムを経験された方、
システムに
く必要があるのではと思っております。5年とか1
0年の
慣れた方がどんどん増加していく、このようなことが通
スパンで考えていくことになりますね。
販事業拡大の根幹になって行くのではと思っています。
酒井:本日は大変お忙しい中、
日本 MH 協会会員企業な
流通センターの視点に限定しますと、配送分野で新た
らびに会員各位に今後の通販物流システムを提案する上
なビジネスモデルが生まれてくるように思います。
で、
とても貴重なお話をいただきありがとうございました。
アマゾン様や大手の通販事業者では、首都圏など配送
効率の良いところから自社配送を拡大してくるのではと
●株式会社 わかさ生活
想定しています。あるいは宅配事業者と新たな配送シス
会 社 名:株式会社 わかさ生活
本社所在地:〒6
0
0−8
0
0
8
京都市下京区四条烏丸長刀鉾町2
2
物流センター:〒6
1
2−83
7
9
京都市伏見区南寝小屋町5
創
業:19
9
8年4月2
3日
売 上 高:18
3億円(平成2
4年度)
資 本 金:1,
0
0
0万円
従 業 員 数:全従業員数:5
35名(20
1
3年4月現在)
事 業 内 容:1.サプリメント(ブルーベリーやカシ
ス等の果実、ルテイン及びローズ等
を素材としたもの)の研究開発、委
託製造及び販売
2.化粧品の開発及び販売
3.鍼灸・整骨・マッサージの提供
HP: http://www.wakasa.jp
テムを先行して実施していくというようなことになっ
て、圧倒的な量のパワーで、我々のような既存の通販事
業者が差別化されていく危惧を持っています。即日配送
というようなスピードの面や、あるいは配送コストで圧
倒的な差別化をされてしまうかもしれません。実際に送
料無料化の件ではアマゾン様につられて今やほとんどの
企業で当たり前のサービスとなっています。
酒井:通販業界として配送システムについて新たな動き
はあるのですか。
和田:日本通信販売協会(JADMA)を通じて物流部門
の責任者が集まり情報交換会を実施しています。
もちろん、マーケティングや商品力、自社の物流シス
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会社概要●
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9
講座のご案内
ご好評をいただいている当協会主催の講座「ロジスティクス・MH管理士講座」及び「ロジス
ティクス管理・オペレーション基礎講座」を本年も開催いたします。
両講座ともマテハン・ロジスティクス関係業務の次代を担う方々には最適の講座でございます。
是非この機会に多数の受講者派遣をお願いいたします。
ロジスティクス関連初級講座
第40期ロジスティクス・MH管理士講座
(平成25年10月22日(火)∼11月28日(木)の内10日間)
本講座は、物流センターにおけるコストの最適化、マテハン(MH)の最適化、見える化を組み込んだ最適な
MH設備と情報システムの構築企画技術を提案するスキルを養います。また人員のマネジメンから見た現場
運用のノウハウを習得し、物流センター企画構築のプロフェショナルを構成する我が国唯一の実践講座です。
本講座の特長&目的
このような方にお勧めします
荷主企業(仮想)のデータ(実際に基づく)による「ケース
スタディ」を通してロジスティクスの企画・構築力を習得!
●3PL・ロジスティクスを担う物流リーダーの方々
短期間に貴社における物流推進リーダーの養成および提
案書作成のノウハウを習得!
●運用設計、設備・情報システム導入企画をする
グループ研修を通して企業・個人間のネットワーク形成
および実践的プレゼンテーション能力を習得!
●自社の物流システムの企画・立案をする方々
物流現場の運用に直結するWMS・改善ノウハウ・マテハ
ンを理解し、システム構築の手法を習得!
提言する方々
1
2
3
4
●企業の物流を担う管理者および物流責任者の方々
現場担当者の方々
●センター業務の改善を経営トップに提案、
●物流拡販のシステム提案を企画する方々
物流推進リーダー養成の実践講座
第7回ロジスティクス管理・オペレーション基礎講座
(平成25年11月14日(木)∼平成26年1月22日(水)の内9日間)
中央職業能力開発協会ビジネス・キャリア検定試験(公的資格)講座
ビジネス・キャリア検定試験は、仕事ができる人材(幅広い専門知識・能力を活用して、期待される成果や目
標を達成できる人材)に求められる実務能力を問う能力評価試験であり公的資格試験です。
■特 長
「物流センター」及び
「輸配送拠点」の現場見学があります。
1.
「ロジスティクス概論」及び
「建築の基礎知識」の特別講義を行います。
2.
“ロジスティクス管理3級”
と
“オペレーション3級”の講座を同時に受講できる
「パッケージ講座」
を基本とし、
3.
検定試験も同時に受験可能です。
(約300頁)
を提供。
より深く幅広い習得が可能です。
4.日本MH協会ならではの豊富な補助教材
5.終了後は日本MH協会が開講する物流リーダー養成講座“ロジスティクス・MH管理士講座”の受験資格が得
られ、受講料の割引を受けられます。
■このような方にお勧めします
★これからロジスティクス関係の業務に携われる方
★ロジスティクスの基礎知識を体系的に学習し、
さらにステップアップを目指す方
★ビジネス・キャリア検定試験の短期合格を目指される方
両講座とも詳細は日本MH協会ホームページでご確認ください。
http://www.jmhs.gr.jp/
1
0
MH ジャーナル
平成2
5年7月
特
集
通販物流システムのこれからの展望と課題
皆さんは通信販売(以下通販と略す)を利用さ
れたことがありますか?私自身はと言いますと、
実はこれが全く無いのです。
大を目論んでいる例も多々見られます。
こう書くと通販業界はバラ色の世界の様に受け
取れますが、市場規模拡大に伴い、既に熾烈な競
家電品であれ本であれ食材であれ、現物を自分
争が繰り広げられているのが実情であり、当然の
の目で直接確認し、その場で購入するという昔か
ことながら生き残るべく様々なコスト低減やサー
らのスタンスを変えずに来た私にしてみれば、通
ビス向上に向けた取り組みが実施されています。
販は全く別世界のお話であり、また、自身の業務
そこで今回の特集では「通販物流システムのこ
上の関わりとしても、たまたまほとんどのお客様
れからの展望と課題」と題し、通販業界の方々が
が、事業展開の一部分としての通販という位置付
実際に取り組んでいる内容にスポットを当て、3
けであったため、恥ずかしながら、せいぜい深夜
編の事例とインタビュー記事を紹介致します。
放送のテレビショッピングや、インターネットサ
イトの一部程度の認識しかありませんでした。
しかし実際の通販業界は、多種多様に亘って圧
倒的な拡がりを見せており、新規参入を果たした
事業者の中には、倍々ゲームの様に今後の規模拡
「リードタイム短縮」
「物流コスト低減」
「CS向
上」など、通販業界における事業存続へ向けた様々
な取り組み例が、会員各位の御参考になれば幸い
です。
(記
辛島
博之)
Material Handling Journal No.
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1
1
特 集
●通販物流システムのこれからの展望と課題●
通販成長のカギを握る物流品質向上への対応
株式会社 日本流通産業新聞社
第2編集部部長
熊谷 岳雄
社の合計売上高は5兆1
2
6
6億円。前年実績と比較可能
1.拡大が続く通販市場規模
な1
3
0社で算出した実質伸び率は5.
1%増で1
3期連続の
増収となっている。
●市場規模は8・5兆円に
通信販売市場が拡大を続けている。経済産業省が2
0
1
2
通販市場の裾野が広がっているのは、インターネット
年8月に発表した11年度の国内における消費者向け電子
の普及に伴いネット通販を利用する消費者が急拡大して
商取引(EC)市場は、前年度比8.
6%増の8兆5
0
0
0億円。
いるほか、食品メーカーなどを中心に、異業種企業によ
通信販売会社が加盟する業界団体、公益社団法人日本通
る通販市場への新規参入が増えているからだ。
信販売協会(JADMA)が1
2年8月に発表した1
1年度の
もちろん、各通販会社が消費者から信頼と信用を得る
通販市場規模は、推計で前年度比9.
0%増の5兆9
0
0億
ために、さまざまな努力を積み重ねてきたことはいうま
円となり、初の5兆円を突破した(図表.
1)
。
でもない。通販市場が急成長を始めた8
0年代前半は、通
弊社が無店舗販売市場向けに発行している専門紙『日
販といえば「安かろう、悪かろう」の代名詞とさえいわ
本流通産業新聞』が、1
3年1月に掲載した「通信販売・
れていた時代だった。そのようなイメージを払拭するた
通信教育、売上高ランキング調査」によると、上位2
5
0
めに、各通販会社は商品の品質向上、サービスの強化、
(億円)
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011 (年度)
出典:公益社団法人日本通信販売協会
図表.
1 通信販売市場規模の推移
(JADMA調査結果より)
1
2
MHジャーナル
平成2
5年7月
通販成長のカギを握る物流品質向上への対応
適正な広告表現、顧客対応などに努めてきた結果が、現
在の成長を支える土台となっている。
楽天が運営する国内最大のショッピングモール「楽天
市場」には、1
2年1
2月期段階で約4万店舗強が出店して
さらに、宅配便のサービス強化や通信手段の発達、決
いるが、新規に出店してくる店舗と同様、退店する店舗
済手段の拡充といったインフラの整備も市場の成長を後
も後を絶たないのが実情だ。楽天は毎年、販売実績のあ
押ししている。高齢化社会の到来といった時代の流れも
る店舗を表彰する「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」
起因しており、今後も通販市場はさらに成長すると予測
というアワードを開催しているが、過去に受賞した店舗
されている。
の中でも、その1∼2割はすでに倒産しているともいわ
だからこそ、メーカーを中心とした新規参入が相次い
れている。
でいるとともに、物流や決済、ネットサービスなどの通
販事業を支援する周辺の業種も、新たなビジネスチャン
スを狙って通販支援に乗り出す企業が増えている。
2.通販会社の収支構造
●原価率が低い化粧品、健康食品
●市場は拡大も厳しい企業業績
通販の特徴として、店舗がいらないだけに出店コスト
通販市場が拡大しているとはいえ、通販事業者個々の
がからないといった特徴が挙げられる。確かに、百貨店
業績は、それほど楽観視できる状況にあるわけではな
やスーパーなど他の小売業と比べると原価率や販管費率
い。千趣会やニッセン、セシールといった、一時は通販
などの数値はかなり異なっている。
業界の成長を牽引した大手カタログ通販会社は、9
0年代
実は通販事業者の中でも、取扱商品によって収益構造
の最盛期と比較すると売上高を大きく落としているのが
はかなり異なっており、上場している通販事業者の損益
実情だからだ。
計算書を見れば、およその収益構造は把握できると思わ
セシールは最盛期、年間2
0
0
0億円以上の売上高を達
れる。昨今、通販への新規参入が目立っているのは化粧
成していたが、直近となる1
3年3月期の売上高は5
6
0億
品や健康食品を取り扱う企業だ。化粧品や健康食品を取
円に減少。千趣会も9
8年3月期の売上高は1
8
6
9億円だ
り扱う利点は、商品原価を抑えることが可能で、売上総
ったが、12年12月期は1
4
5
7億円だ。ニッセンホールデ
利益のうちかなりのウェートを広告宣伝費などに充当で
ィングスの12年1
2月期は売上高が1
7
6
6億円で過去最高
きることが特徴といえる。
となっているが、これは前期に連結子会社化したギフト
通常、通販の商品原価率は平均して約5
0%とされて
販売などシャディ関連3社の売上高を含んでいるため
おり、残り5
0%の売上総利益のうち販管費が45%を占
だ。ニッセン単独の同期売上高は1
3
0
8億円で、過去最
めたとしても、売上高営業利益率は5%を確保するこ
高と比べると数百億円規模の減収にとどまっている。
とが可能となる。ただ通販の場合、一定の広告宣伝費を
カタログ通販大手の場合、取扱商品は衣料品から家
確保した上で販管費の中身をうまくコントロールしない
具、雑貨まで多岐にわたる。しかし近年、成長著しいユ
と、収支バランスは極端に悪化する。販管費の中でも重
ニクロやニトリ、しまむらといった専門店との競争が激
要な項目が広告宣伝費や販促費、物流費だ。
しく、さらにはアマゾンや楽天といったネット通販事業
者などにもシェアを奪われていると考えられている。
通販事業の場合、事業を継続する上で常に新しい顧客
を獲得し続けなければならない。なぜなら既存の顧客は
大手通販会社にとどまらず、通販事業者間における競
毎年確実に目減りしていくからだ。そのため広告宣伝費
争は年々熾烈を極めており、個々の業績を見ると優勝劣
をかけて常に新規顧客を獲得し、顧客数を補充し続けな
敗が鮮明で、生き残りを模索する通販会社も後を絶たな
ければならない。広告宣伝費を中心とした運営コストを
い。昨年11月、「日本直販」の冠名でテレビショッピン
いかに効率よく回すかが事業継続の鍵となる。物流コス
グを手掛けていた総通が倒産したことは、記憶に新しい
トも効率化を図りたい項目の一つとなっており、できる
出来事だろう。
だけ抑制したいというのが通販事業者の本音だ。
Material Handling Journal No.
271
1
3
通販成長のカギを握る物流品質向上への対応
3.負担が重い「広告宣伝費」
「物流費」
●「物流費削減」は47%
広告宣伝費で、全体の54%が広告宣伝費の削減に取り
組んでいることが判明した。
ネット通販事業者に最も負担に感じているコストを聞
通販会社にとって課題となっているのは、広告宣伝費
いたところ、「広告宣伝費」がトップで全体の3
5.
7%
と顧客数といっても過言ではない。JADMAが毎年、通
を占めている。以下、「商品原価」
(2
3.
8%)
、
「物流費」
販会社を対象に行っている「通信販売企業実態調査報告
(1
4.
3%)
、
「通販システム費」
(11.
9%)
、
「サイト制作・
書」によると、通販会社の課題となっているのは「売上
メンテナンス費」
(7.
1%)
、
「顧客対応」
(2.
4%)と続いて
高の確保」
「新規顧客の獲得」
「利益の確保」がベスト3。
いる。
弊社がネット通販事業者向けに発行している専門紙
『日本ネット経済新聞』で昨年7月、ネット通販事業者
を対象に行った「EC事業者のコスト意識調査」による
その結果、コスト削減に取り組んでいる項目は「広告
宣伝費」
(5
4.
4%)
、
「商品原価」
(5
0.
0%)
、
「物流費」
(4
7.
7%)
の3項目が上位となっている。
と、ネット通販事業者が最も負担に感じているコストは
コスト意識調査
その他 4.
8%
顧客対応
2.
4%
サイト制作
7.
1%
60.0%
50.0%
40.0%
システム
1
1.
9%
広告宣伝
3
5.
7%
30.0%
20.0%
10.0%
物流
1
4.
3%
0.0%
広告
宣伝
商品原価 2
3.
8%
最も負担に感じる費用
商品
原価
物流 システム サイト
制作
顧客
対応
コスト削減に取り組んでいる項目
赤字 2.
3%
1
0
0
1万∼
5
0
0
0万円
1
1.
9%
1
0
0
0万円未満 2.
4%
収支トントン
1
6.
3%
2
0億円超
3
3.
3%
5
0
0
1万∼
1億円
1
1.
9%
利益が
出ている
5
1.
2%
5億∼1
0億円 9.
5%
現在の収益状況
1
4
MHジャーナル
1億∼
3億円
1
9.
0%
1
0億∼2
0億円
9.
5%
少し利益が
出ている
3
0.
2%
平成2
5年7月
代金 その他
回収
3億∼5億円
EC事業者の年商規模
通販成長のカギを握る物流品質向上への対応
●「送料無料」は9割が導入
価格に転嫁できないこともある。仕入れ商品を販売して
「コスト意識調査」と同時に実施した「EC物流実態
いたり、店頭商品と同じ商品を通販で取り扱うようなケ
調査」の結果によると、回答企業の90.
9%が「送料無
ースだ。このような通販事業者が配送料を価格に転嫁す
料」
(条件付きを含む)を実施している。送料無料を実施
ると、通販で紹介する商品の価格が他の小売より割高に
している企業の約9割は「売り上げが増加した」と回答
なってしまうからだ。
する一方、約4割は「利益が減少した」と答えるなど、
消費者に配送料を負担させるかは通販事業者の収益に影
●出荷業務の委託は45%
『日本ネット経済新聞』の調査によると、商品の出荷
響を与えていることは間違いないようだ。
「送料無料」
を実施する理由として最も多かったのは、
業務を外部に委託している通販事業者は回答企業の
「消費者にとって送料無料は当たり前になっており、導
4
5.
5%を占めている。出荷業務を物流会社に委託して
入せざるを得ない」という意見だった。アマゾンや楽天
いる通販事業者に対し、委託先への満足度を聞いたとこ
といった利用者の多いネット通販事業者が送料を無料に
ろ、「満足している」と回答したのは4
0.
0%、「普通」
していることから、大手通販事業者の物流サービスは業
は5
0.
0%、「不満」は1
0.
0%という結果だった。
界や消費者にとってスタンダード化する傾向にある。
「不満」と答えた企業の場合、その理由は委託先であ
JADMAの調査でも通販会社の送料負担は「一定金額
る物流会社の対応やコストが原因となるケースが圧倒的
以上の購入では無料」
(58.
2%)が最も多く、「すべて
だ。実際に商品を見せないで販売する通販の場合、一度
無料」は1
0.
4%、「すべて有料」は13.
5%、「会員は
の出荷ミスが原因となって消費者が離れていくことはか
無料」が8.
8%などとなっている。
なり多く見受けられる。また、消費者から返品や交換を
ただ、「送料無料」とはうたいながらも、実際には商
希望されることも日常茶飯事だ。このようなイレギュラ
品価格に配送料を転嫁したり、「送料無料」の代わりに
ー対応の場合、コストが割高になったり、あるいは受注
決済手数料を高めに設定したりするなど、通販事業者が
締め切り直後の注文は受け付けないなど、消費者や通販
全面的に配送料を負担していない事例も見受けられる。
事業者の事情に応じて物流会社が柔軟に対応してくれな
通販事業者が取り扱う商品によっては、配送料を商品
いようなケースが不満の要因となっている。
物流関連
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
外部委託
4
5.
5%
40.0%
30.0%
内製化
5
4.
5%
20.0%
10.0%
0.0%
佐川急便
ヤマト運輸
郵便事業
その他
利用している運送会社(複数回答)
商品出荷のアウトソーシング状況
Material Handling Journal No.
271
1
5
通販成長のカギを握る物流品質向上への対応
不満
1
0.
0%
満足
4
0.
0
あり
1
0.
0%
考え中
5.
0%
普通
5
0.
0%
なし
9.
1%
あり
9
0.
9%
なし
8
5.
0%
アウトソーシング先への満足度
なし
1
0.
0%
委託先変更の予定
変わらない
4
1.
9%
あり
9
0.
0%
送料無料による売上への貢献
送料無料の有無
増益
1
9.
4%
減益
3
8.
7%
送料無料による利益への貢献
4.より質の高い物流サービスを要求
●365日稼働や当日配達
先述したように、アマゾンなどの大手通販による物流
サービスがスタンダード化してくることは、中小の通販
対応。出荷業務や受託業務領域を広げるために、ネット
通販の受注業務を物流センター内で請け負ったり、深夜
の注文を午前1
0時までにまとめて、横持ちで大手配送会
社のセンターに持ち込み、当日配達に対応するようなケ
ースも出ている。
事業者にとっても同様のサービスレベルが求められるよ
一方、大手通販事業者の中には、配送料削減と物流サ
うになる。多くのネット通販事業者は売上高や物量が小
ービスの向上を目的に、全国各地に物流センターを分散
さく、そのような通販事業者が物流業務を委託するのも
して、最寄りのセンターから消費者宅に配送を委託する
中小の物流会社が中心となる。つまり、中小物流会社に
など、配送拠点の近距離化や梱包サイズの小型化によっ
とっても通販の仕事を請け負う上で、従来以上のサービ
てコスト削減を図るケースが見られる。
スレベルが求められているのだ。
化粧品通販のオルビスは昨年8月、埼玉・加須に物流
昨今は送料無料だけでなく、注文の当日に商品を配達
センターを開設し、関東にあった3拠点の物流施設を統
したり、土曜日の注文を日曜日に出荷したりするなど、
合した。同2月、兵庫に開設した物流センターとあわせ
消費者の要望に対応するため、配送リードタイムの短縮
て東西2拠点体制を構築。関西以西へのリードタイム短
化を希望する通販事業者は増加傾向にある。また、家具
縮とコスト削減につなげている。
などの大物商品では、消費者宅での据え付け・設置や不
要品の回収を要求することも増えている。
通販事業者が要求するサービスレベルに応えるため、
中小物流会社の中には物流センターを3
6
5日稼働させて
1
6
MHジャーナル
平成2
5年7月
東西両拠点とも、最新のピッキングシステムと倉庫シ
ステムを導入。出荷個数の拡大や出荷速度を速めること
で、午前7時までにネットで受けた注文は、午後6時以
降に商品を届ける当日配達を可能にした。
通販成長のカギを握る物流品質向上への対応
低1
0社以上のサポート経験がある②1社の受託先で月間
1万件以上の出荷に定期的に対応できる――などが理想
的だろう。月間1万件というのは月に2
0日間稼働したと
して、1日当たり5
0
0件の出荷に対応できる規模だ。
通販事業者が乗り換えてくるような物流会社も有効な
判断材料だ。通販物流を受託する物流会社間では競争が
激化しており、徐々にだが勝ち組と負け組が顕在化しつ
つあるからだ。勝ち組とは、受託する通販事業者の数を
増やしながら受託業務を拡大している物流会社だ。競争
「オルビス東日本流通センター」の外観
激化で新規荷主の獲得が困難な状況下、口コミや評判に
よって委託先を乗り換えるケースも目立っている。
●誤出荷率は0.
0
1%以下で
委託実績の次に注意するのは誤出荷率だ。物流委託の
際の標準値とされているのは誤出荷率が0.
0
1%以下と
いわれている。出荷スピードも大きな判断材料となる。
受注データの締めは何時で、締めた荷物はいつ出荷する
のかということだ。あとは在庫管理体制や作業内容の確
認となる。若干のコスト高となってもバーコードによる
在庫管理は当たり前で、とりわけアパレルや取扱商品が
刷新したマテハン機器
多岐にわたるロングテールを特徴とする通販事業者にと
っては欠かすことができない。
5.通販事業者による物流会社の選定基準
●通販物流の受託実績を確認
作業内容の確認で重要なのは、返品や交換、キャンセ
ルなどのイレギュラー業務に対応できるか否かだ。イレ
ギュラー対応や緊急な事案への対応次第では、前述した
通販会社が自前で物流センターを建設する事例は少な
ように委託先を切り替える原因となる。また、ネット通
く、一部の大手通販企業に限定される。つまり多くの通
販事業者が利用している業務管理システムとの連携やシ
販会社は、商品の入荷から保管・検品・出荷や在庫管理
ステムとの多様性も重要。昨今は、複数のモールや自社
を含め、物流会社に業務を委託しているのが実情だ。通
サイトといった多店舗展開を志向するネット通販事業者
販事業者個々の取扱商品や事業規模によって、委託する
が増えているからだ。
物流会社はさまざまだが、ここではネット通販事業者が
物流業務を委託する際の基本的な判断基準をいくつか取
り上げてみたい。
お問合せ先
物流費の負担を考慮すると、委託コストは大きな判断
材料となる。ただ、コストを重視して委託先を選定した
場合、取引が長続きしないケースが見受けられ、極端な
コスト低減はかえって不信感を持たれる。
やはりBtoCの通販物流は、多品種小ロットという特
性に対する独特のノウハウが求められる。それだけに、
過去の業務実績が委託先を選定する上で、まず重要なポ
株式会社 日本流通産業新聞社
第2編集部部長 熊谷岳雄
〒1
0
3−0
0
2
6
東京都中央区日本橋兜町1
1−1
1 ニッシンビル
TEL.
03−3661−5898
E‐mail:news@nb‐club.com
イントとなる。業務実績を判断する指標としては、①最
Material Handling Journal No.
271
1
7
特 集
●通販物流システムのこれからの展望と課題●
「食」のSPAモデルと、ICTの活用による
ロジスティクス効率化とお客様応対品質向上への挑戦
らでぃっしゅぼーや株式会社
情報システム部
課長 鈴木 康信
らでぃっしゅぼーやの紹介
中部、大阪、九州と全国に7つの事業所・センターをも
ち、それぞれ車で半日程度のエリアを商圏としている。
らでぃっしゅぼーや!は
「持続可能
(サスティナブル)
週1回の配送時にカタログを配布し、次週分の注文書
な社会の実現」を理念に掲げ、1
9
7
7年からフリーマー
を受取るのが基本スタイルで、現時点ではこの受け取り
ケットなどの活動を行っていた環境NPOを母体とし
方式が7割となっている。
て、88年に誕生した。
また、
現在は
「らでぃっしゅぼーやオンラインストア」
社名の“ラディッシュ”とは、荒地でも育つ強い生命
としてインターネット通販(EC)を展開し、ネットス
力をもつ二十日大根を表し、その語源は物事の根源を意
ーパースタイルで、注文から最短3日後にお届けをして
味するラテン語
「Radix」
と
「ぼーや」
とは次の世代の子供
いる。
たちを意味しており、合わせて物事の根源である「いの
ち」を次世代によりよく伝えていくとの願いを込めた。
カタログ掲載の取扱商品は、野菜・果物・肉など農畜
産物・加工食品・日用品など毎週約1,
0
0
0アイテム、年
創業以来、低農薬・有機農産物、無添加食品など安全
間では7∼8,
0
0
0アイテムとなっている。
でおいしい食品や環境にやさしい日用品の提供を通じ
中でも主力商品になっているのは、野菜のセットボッ
て、消費者に豊かで上質な暮らしを提案するとともに、
クスで、組み合わせとサイズをいくつも用意している。
安全な商品流通の発展と環境保全型農業の拡大を志向。
1箱2,
5
0
0円が中心価格帯。このセットボックス方式
会員制戸別宅配ビジネスを大規模に開始したのは、当
は、工業製品と違い収穫量が事前確定せず、ロスの出や
社が日本初めてとなる。
すい農産物の在庫過不足を解消すると同時に、全国約
また、24年3月、!エヌ・ティ・ティ・ドコモ、!ロ
ーソンとの業務・資本提携を行い、様々なコラボで相互
のビジネス展開を計画している。ICT戦略展開はその1
つとなっている。
<食のSPAモデル>
無添加、有機農産物など「自然派宅配ビジネス」の市
場が600億円規模といわれる中、らでぃっしゅぼーやは
220億円のトップシェアを誇る。また、現在の会員は約
10万8,
000世帯となっている。
また、物流拠点として北海道、東北、首都圏、神奈川、
1
8
MHジャーナル
平成2
5年7月
図表.
1 ビジネスモデル
「食」
のSPAモデルと、ICTの活用によるロジスティクス効率化とお客様応対品質向上への挑戦
2,
100軒の契約生産者からの作付全量買取を可能にする
合理的な仕組みとして機能している。
これらの組み合わせを追求し、商品企画から生産、物
流、プロモーション、宅配までのバリューチェーンを一
貫した「食のSPA」モデルを目指す。
<クルーにコンシェルジュ>
らでぃっしゅぼーやの商品宅配を担うのが、全国3
0
0
名のらでぃっしゅクルー(配送スタッフ)
。
各地地元の中小運送事業者1
1社を配送代理店として、
7センターからの宅配業務を委託している。
図表.
2 独自の配送ネットワーク
らでぃっしゅぼーやがクルーに期待しているのは、単
なる“配送のお兄さん・お姉さん”だけではなく、サザ
通常は固定ルートではありますが、新規入会されたお
エさんに出てくるような“三河屋さんのサブちゃん”の
客様、住居を変更されたお客様などのルート調整はクル
ように、そろそろ醤油が切れるころだからいかがです
ーが地図片手に手作業で配送計画をつくっていました。
か、というワントゥーワンの提案営業も出来る御用聞
また、サービス向上といっても、仮にコミュニケーシ
き。さらにカタログにはない商品情報を伝えリコメンド
ョン強化として1軒5分長く対応すると3
0
0分∼350分
するなど、お客様のコンシェルジュなって欲しいと考え
いまよりも配送時間が長くなり、配送として成り立たな
てます。
くなってしまいます。
だから、委託先社員とはいえ積極的にクルー教育を実
施しています。
仕入産地での研修会では、同世代の生産者とクルー、
その解決手段として生まれたアイデアが、ドコモのス
マホと伊藤忠テクノソリューション(CTC)の仕組みを
つかったクルーを支援するシステムでした。
そしてらでぃっしゅぼーや社員が顔を合わせ、現場を見
て互いを理解しあうものになっています。
また、重点商品は、試食会を開催し、商品開発担当者
の説明・思いを伝えています。
検討をはじめたころは、クルーにPCかタブレットを
持たせれば、何か解決するじゃないかという単純な発想
でしかなく、誰に、何をどうする事がよいのかなど具体
案がなかなかだせないでいました。
こうした研修、説明会を通してクルーには、生産者、
商品開発者の「思い」を商品と一緒にお届けすると同時
に、顧客ニーズをフィードバックする貴重な役割を果た
している。
そんな中、出合ったのがCTC社の仕組みです。
・各種条件設定により配送単位に自動処理される配送
計画
・配送計画結果をスマホで受け配送案内(ナビゲーシ
ョン)
<クルーへの仕組みつくり>
日頃お客様に直接会っているのは、このクルーだけに
なります。
お届けに加え、お客様とのコミュニケーションを担う
ので業務負荷が年々大きくなってきていました。
クルーは1日に60∼70軒の配送をしています。
・管理端末上での動態管理
・運行日報などの配送実績管理
・会員様、商品案内(コミュニケーション)
といった機能があり、これをクルーに活用できれば業務
効率化やお客様とのコミュニケーションを高められると
考え導入を進めました。
Material Handling Journal No.
271
1
9
「食」のSPAモデルと、ICTの活用によるロジスティクス効率化とお客様応対品質向上への挑戦
②動態管理と配送案内(ナビゲーション)
ᵰᶍᶓᶒᶃ ᵮᶊᵿᶌᶌᶃᶐ ဒ᩿ỶἳὊἊ
ナビゲーションはGoogleMapナビを活用しています。
ᚘဒᐯѣ˺঺ἇὅἩἽίጛࣕ஖ởʻࢸỉἅὊἋኵỚ੭ả଺Мဇʖ‫ܭ‬ὸ
ἇὅἩἽἉἜἼỼỂỉЭ੩வˑᾉ
˺ಅՃૠᵛᵓʴ ᚧբέૠᵛᵐᵗˑίᵏʴ࠯‫ר‬ᵔˑὸ
ᵿᵘᴾਃ࢘ỺἼỴКỂỉஇᢘᚘምኽௐ
ᶀᵘᴾஇ‫ٻ‬ᆙ΁଺᧓Сᨂίஇ‫ٻ‬ᵕ଺᧓ὸỂỉஇᢘᚘምኽௐ
䠘a. ᢸᙜ䜶䝸䜰ู䠚
住所を読み込みナビゲーションを行います。
また、GPSが起動されているため、代理店、拠点セン
䠘b. ✌ാ᫬㛫ไ㝈䠚
༓ⴥ2
㒔ᚰ㒊
すᮾி
配送計画がスマホ上に展開され、現在位置とお届け先
ᢸᙜ䜶䝸䜰
ᢸᙜ䜶䝸䜰
ᢸᙜ䜶䝸䜰
ターでは、クルーが現在どの位置にいるのかが把握で
き、急な商品の回収要望などお客様対応にも活かすこと
༓ⴥ1
ᢸᙜ䜶䝸䜰
が出来るようになりました。
ᕝᓮ
ᢸᙜ䜶䝸䜰
③配送実績
䈜⏬㠃䜲䝯䞊䝆䛿ᐇ㝿䛾⏬㠃䛸␗䛺䜛ሙྜ䛜䛤䛦䛔䜎䛩
0
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配送したお客様応対結果を入力することで、配送実績
にも反映され「運行日報」が自動生成されます。
図表.
3
今までは、クルーが配送終了後に運行実績や提出資料
を作成していましたが、この作業が軽減されました。
また、この配送実績情報は、配送途中でも動態管理機
ᵰᶍᶓᶒᶃ ᵮᶊᵿᶌᶌᶃᶐ ဒ᩿ỶἳὊἊ
能を通して参照が出来るため、お客様からの配送予定時
ᚘဒᄩᛐᾉ ᵫᵟᵫᵱίἋἰὊἚἧỻὅὸ
ᇢ஛Ểỉᵏଐỉʖ‫ܭ‬ᄩᛐ
ἜἥἄὊἉἹὅ
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間に対する問合せにも応対にも注目することが出来るよ
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ἋἘὊἑἋ୼ૼ
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うになりました。
‫ڼ᧏׋ע‬
④コミュニケーション
お客様の属性情報や配送注意情報が参照可能になりま
す。
ᚧբέ˰৑ẦỤỉ
いままでは、クルーの頭の中やメモにしかなかった情
ἜἥἄὊἉἹὅ᧏‫ڼ‬
䈜⏬㠃䜲䝯䞊䝆䛿ᐇ㝿䛾⏬㠃䛸␗䛺䜛ሙྜ䛜䛤䛦䛔䜎䛩
Copyright © 2009-2012 ITOCHU Techno-Soluons Corporaon
1
報だったので、代走、クルー変更をすると引継ぎが難し
く、
結果、
お客様へご迷惑をお掛けする事もありました。
図表.
4
また、お届け時にお客様から契約内容など聞かれても
情報がないため、一度拠点センターに連絡をとり確認後
にお答えすることになり、お客様をお待たせすることも
①配送計画
ありました。
これまでは配送計画は、クルー任せで、どんな順序で
このような場面を想定し、必要な情報を参照出来るよ
何時頃にお客様宅にうかがうのかは暗黙の了解事項とな
うにしました。まだまだ情報は足りていませんが、お客
っていました。
(だいたい、いつもの時間通りならばOK)
様応対に活用をはじめています。
また、配車マンが居ないため、クルーが自分で地図を
ひろげ、お客様宅をプロットし、ルートを考える配送準
備が負担となっていました。
しかし、仕組み導入により、都度最適な配送計画を自
動生成され、また、その配送計画結果を配送代理店、拠
点センター担当者が共有でき、本日のお客様宅へのルー
トや配送予定時間も事前に分かるようになりました。
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0
MHジャーナル
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また、導入を検討する中で副産物的な効果も期待でき
ることが分かりました。
それは、
クルーの教育期間を短縮できるということです。
配送代理店では、新人を「クルー」として独り立ちさ
せるまでの教育に約2ヶ月必要でした。
業務を大きく分けると「商品積込み業務」
「会員様応
対業務」
「配送業務」
です。
「食」
のSPAモデルと、ICTの活用によるロジスティクス効率化とお客様応対品質向上への挑戦
我々は、会員様の笑顔、生産者の笑顔、それを橋渡し
するクルーを初めとするスタッフの笑顔を見るため、心
のこもった仕組みつくりを進めていきたいと思います。
■らでぃっしゅぼーや株式会社の会社概要
事業開始:1
9
8
8/5/1
7
資 本 金:8億6,
9
2
1万9千円
本
社:〒1
6
3−1
4
1
6
東京都新宿区西新宿3−2
0−2
東京オペラシティビル
代 表 者:井手明子
代表取締役社長
従業員数:従業員2
4
5名 パート・アルバイト16
4名
(2
0
1
3年2月末)
その中の「配送業務」では、配送計画自動生成や配
送(ナビ)案内、動態管理を通して教育期間短縮、独り
年
商:2
2
0億円(2
0
1
2年2月末)
立ち後のフォローが可能となりました。
拠
点:北海道センター
また、「お客様応対」も以前よりは、参照情報が増え
東北センター
たため安心して配送にコミュニケーションに向かう事が
首都圏センター
できるようになりました。
神奈川センター
今後、より一層 I C T 活用を進めていきますが、大切
なことは「使う人への思いやり」が入っていない I C T
活用は、使われない、利用されない結果となります。
中部センター
大阪センター
九州センター
(計7拠点)
Material Handling Journal No.
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2
1
特 集
●通販物流システムのこれからの展望と課題●
ネット通販における物流システム
今後の展望
株式会社 ムービング
取締役企画部長 兼 グループ物流担当
原
1.ネット通販ビジネス 最近の動向
誠 一
められると思います。
こうしたネット通販市場の今後の動向を踏まえ、想定
昨年後半から、業界、一般紙を問わず、ネット通販ビ
される荷主ニーズ、3PL事業に求められる物流基盤を
ジネスに関する話題が盛り上がっていますが、これはス
整理し、具体的な対応策について、現在、検討している
マートフォンの急速な普及拡大により、より身近でユー
取り組みを紹介させて頂きます。
ザビリティが高まったり、コンテンツの内容が充実した
り、ポイントも含めたプロモーションの進化など、複合
要因が重なり合った相乗効果が、ここにきて一気にマー
ケットの中身に変化を促していることを示しています。
2.ムービングの事業展開
まず、弊社事業概要を簡単に紹介させて頂きます。
一方で、物流事業者側を見ても、翌日、当日配送を標
弊社ムービングは、丸井グループの小売の物流部門と
準装備とする為、宅配出荷ハブの拠点集約、大型化の投
して、調達、流通加工、店舗供給、館内物流を車両ネッ
資・建設が活発化、また今後の成長分野としてファッシ
トワークと構内業務を中心に請け負っています。
ョン系サイトの再編統合など、ビジネスサイドの動きに
も大きな変化が起こっています。
こうした動きの背景には、消費者の買い方がリアル店
一方でファッション関連の構内業務受託をBtoB中心
に外販事業として、丸井事業と併せて、関東3拠点、関
西1拠点で展開しております。
舗とネット、WEBサイトを使い分けて自分なりの買い
また、昨年4月より、丸井のネット通販事業の構内業
方を楽しむ、“OtoO”が本格化していることを意味し
務をアウトソーシングからグループ内製化に切り替え、
ていると思います。
外販事業についてもEC関連の荷主が拡大しております。
いずれにせよ、この様な動きはさらに加速、拡大され
直近では、小売事業で重点戦略に掲げている、プライ
ることが予想され、物流企業にとって、BtoCの意味す
ベートブランドの物流支援を、SCM視点で改善を進め
る多品種、多頻度少量の物の流れに対応したビジネスモ
ています。
デルの中で、収益力をいかに確保するかが大きな命題に
なるということです。
PBについては調達加工、通過物流、店舗在庫補充な
ど、全ての機能のサポート業務を行っていますが、仕入
ネット通販ビジネスを展開する供給サイドも多様化し
販売計画から納品計画まで、荷主である丸井側の生産担
ており、楽天に代表される大型モール、または提携型の
当者やバイヤーと正確な情報を共有することが基本だと
集合モール、アマゾンに代表される在庫集中管理型、カ
考えています。
テゴリー専業の自社サイトなど、業容拡大の過程で販売
チャネルを複数展開する企業も少なくありません。
当然、サイトごとに購買パワー、プロモーション時期
が異なり、物量変動の組み合わせは複雑化し、BtoBで
培ったノウハウに加え、より柔軟なオペレーションが求
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MHジャーナル
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半年先の生産計画を事前に確認することで、計画的に
ストックレイアウトやマテハン購入の準備が出来、また
週間単位の納品物量を把握することで、効率的なレイバ
ースケジュールを組むことが出来ます。
3PL企業は全てこのプロセスを物流波動に対応する
ネット通販における物流システム 今後の展望
ため、精度を高める努力を行っていると思いますが、特
だけでは、お客様の買い方の変化に対応出来ず、リアル
にファッション関連商材は海外生産が中心で、製造・調
とネット、また各々で複数チャネルを展開するなど、様
達工程は変動要素が多く、大変ご苦労されていると思い
変わりする環境の中で、在庫効率化に対する荷主ニーズ
ます。
が高まっています。
グループ企業であっても、この基本的な業務工程の共
これは、同一商品を現在は物理的、システム的にも分
有が定型化されておらず、標準化と可視化をこの半年進
散管理している状態を、出来る限り集約化し、オペレー
めてきましたが、根底は物流でボトルネックを発生させ
ションについても標準化することを要望されています。
ないという目的を共有し、イコールパートナーシップを
従来、3PLに求められる品質はスピード、正確性、
築くことだと考えています。
最近のWMSには入荷予定情報の管理を標準機能とし
ているものが多いですが、特に外販事業では荷主担当者
コストでしたが、今後はこの様な、荷主の利益貢献につ
ながる提案が競争力を高める重要なファクターになると
考えています。
の方から“協業”という理解を得て、業務スケジュール
に沿って、情報を頂けるかにかかっています。そのため
に、物流事業者は正確・スピード・コストの品質全般を
高める努力を日々積み重ね、荷主企業との信頼関係を築
くことが前提だと思います。
3.BtoCビジネスと荷主ニーズ
一昨年の震災以降、低迷の続いた消費環境も、政権交
図表.
1 ネット通販物流
今後の荷主ニーズ
代による経済・財政施策の方向転換で、薄日が差してき
たかの様に報道されていますが、先を見ると消費税率ア
ップも来年に控え、弊社取扱商品の中心、アパレル関連
先行する形で、昨年秋より、丸井のPBについて、店
商材は競争激化に加え、ファッション関連の消費マイン
舗在庫、ネット在庫の保管を一元化し、システム管理も
ドは年々冷え込んでおり、決して楽観視出来る状況にあ
連携、店舗補充、ネット受注のデータに基づいて、必要
りません。
数を各々に出荷するオペレーションに変更しました。開
簡単に商品が売れない時代、メーカーが最優先するこ
発導入の一番のきっかけは、セール期の販売機会ロスで
とは消化率を1%でも高められるかだと思います。耐
したが、特に短期間で売り切るバーゲン時期は売れ行き
久消費財が数年サイクル、食品日用品がデイリーサイク
に応じた在庫の振り分けが、事実上困難だった為、大き
ルと例えるなら、
ファッション関連分野の商材は販売仕入
な成果に繋がっています。
計画を3ヶ月、
半年、
1年の組み合わせで捉えています。
現在、外部事業についても、複数サイトからの受注情
また、付加価値としてのファッショントレンドや天候
報、あるいは店舗からの補充情報をインターフェースも
など、想定される変動要因も予測しがたく、このサイク
含めて一元管理するプラットフォームを構築し、同様な
ルの中で一点でも多く消化することが、最終利益に直結
仕組みの導入を検討しています。
する為、在庫の配分調整に大変な労力、またシステム投
資をこれまでは行ってきたと思います。
弊社の小売事業でも、2
0
0
0年中盤より、単品管理の
4.内製化ネット通販物流のシステム改善
リアルタイム化を始め、売上在庫管理のBI導入や、店
前述の通り、昨年春よりネット通販の構内業務を内製
舗配分オペレーションの仕組みを開発するなど、店頭販
化しましたが、構内作業の基盤となるWMSとネットの
売のシステム基盤を整備してきました。
受注エンジン、商流基幹システムの連携は必要最低限で
しかし、ここに来て、リアル店舗での消化促進を語る
スタートしました。
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3
ネット通販における物流システム 今後の展望
現在、ネット通販のフルフィルメントの視点で入口か
上述した改修の基本要件は、現場の作業効率を向上
ら出口まで、構内作業のオペレーションを見直し、より
し、出荷スピードを上げて売上貢献することが主目的で
効率的なシステムサポートを今秋より導入の予定です。
すが、カットしたプロセス工程に投じている人時の一部
を値札と現物を付け合せる商品チェックにあて、誤出荷
(1)物流と商流 入荷検品の二重プロセスカット
・丸井の入荷検品時データをネット通販のWMSとシ
防止を強化するなど、生産性と品質の両面をバランス良
く向上していきたいと考えています。
ステム連携し、商流(支払)と構内入庫数(物流)
また、追加要件として、ピッキング効率の向上策を検
の計上処理を一本化、納品に加え、返品時も同様に
討中です。WMSの標準機能に最短動線の指示や、推奨
処理、出入両方で効率化
ロケがありますが、ファッション物流企業らしい機能強
(2)サイトアップの短縮
化を考えています。
・従来、入荷検品、棚付後にピッキングを行っていた
現在、3層でフリーロケーションによるピッキング、
撮影・採寸該当商品をWMSの過去実績を参照し、
ピック後はマテハン制御による荷合わせを自動で行い、
入荷検品時にシステム判断でピッキング
出荷レーンまでコンベヤ搬送を行っています。よって効
(3)1伝票複数梱包の検品効率化
・カタログ通販専業からスタートした事業形態に多
い、ターンアラウンド伝票の納品処理を梱包貼付の
率化の余地は単品ピックの時間短縮に残されおり、ポイ
ントはフリーロケーションの利点を活かした販売実績の
経験測の活用です。
個口/発注ナンバーを仕入システムとWMSで連携
現在もブランド・アイテムのカテゴリー区分けによる
管理、どの梱包から検品しても可能とし、入荷荷降
大分類でロケレイアウトを組んでいますが、もう一歩踏
し時の個口合わせを廃止
み込み、
シーズンやカラーサイズごとのピッキング頻度=販
(4)買上明細/ピッキングリストのA4化
売実績に連動した最適なロケ付けの実現が最終型です。
・カタログ専業時代より使用していたA3プレプリン
例えば、ファッションアイテムはシーズンの月間週単
トの買上明細/ピッキングリスト一体の用紙をA4
位で売れ行きは大きく左右されますが、ロケーションの
化し、コスト削減と梱包封入時等の作業効率をア
列で考えると、最前列から最後列まで場所によっては数
ップ
十メートルの距離があるにもかかわらず、あまり考慮さ
(5)インフラ増強とコンプライアンスの強化
れていません。
・今後の業容拡大を踏まえ、WMSサーバーの仮想化
また、定番品のカラー販売実績は圧倒的にベーシック
による能力増強と倉庫内からグループシステム会社
カラーが中心ですが、ロケの段管理では必ずしもピッキ
のデータセンターへ移管し、運行監視、ネットワー
ングのゴールデンライン=中段にはロケ付け指定してい
クの自社管理により、個人情報保護等、セキュリテ
ないのが実情です。
ィレベルを強化
昨年末、シューズの未稼働在庫の調査を実施しました
が、一定期間、受注実績の無い商品は9割方が端サイズ
でしたが、殆どロケ中段に格納されていました。
小売店頭の商売では、ジャストタイミングで売れる商
品をお客様に訴求する為、什器のレイアウトを変更し、
陳列する順番を替えるなど、きめ細かく対応しています。
物流倉庫においても、同様の考え方を導入し、先ずは
経験測で出来ることからルール化し、システム判断が出
来るところまで精度アップをしたいと考えています。
先ずは現状分析として出荷頻度・ボリュームとロケー
ションの関係を定量的にスコアリングして生産性視点で
ネット通販倉庫
2
4
MHジャーナル
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5年7月
分析することからスタートしていきます。
ネット通販における物流システム 今後の展望
6.マテハン機器を通したネット通販物流の
業務改善
まず、前提として、単一カテゴリー、アイテムを取り
扱う荷主様の物流倉庫であれば、オペレーションごと
に、入荷、仕分、検品、入庫、出庫等に最適なレイアウ
トとマテハンによる自動化等による効率化、生産性向上
に効果が高いかと思います。
ここでお話するのは、BtoCの中でも、多品種が年間
を通じて入れ替わるケースを想定、物流業者としてのニ
図表.
2 ピッキング効率改善に向けたロケーション管理のポイント
5.BtoC物流の基盤作り
ーズについて述べたいと思います。
(1)ロケーション収納効率の向上と可変性
・アパレルのTシャツ1枚と生活雑貨の小物1点では
多頻度少量のBtoC物流の収益性を語る上で、前述の
収納スペースが異なり、またピッキング時の効率を
構内作業の効率化に加え、荷主企業との業務ルールやシ
考えると収納形態も工夫が必要です。全ての商品で
ステム連携も大きな要因だと考えています。
個別対応は出来ませんが、ある程度のカテゴリーご
小売店頭ビジネスを例に取ると、川上から川下まで、
とに最適な収納ツールを用意する、または可変対応
ある程度、規格、ルール、通信インフラが標準化された
出来るツールがあれば、スペース効率も高まり、作
SCMの基盤がありますが、残念ながら、ネットビジネ
業性も大きく改善出来ると考えています。例えば。
スはソースマーキング、商品マスターなど、基本項目に
小売グループの物流企業らしく、売場収納用の什器
ついても統一基準はありません。
パーツを活用するなど、現在研究中です。
横断的な産業団体はありませんので、今後もこの状況
から改善は見込まれないと想定し、物流事業主が主体的
に標準化対応を進めることが不可欠です。
複数アイテムを取り扱うサイトなら、当然納入業者も
複数あり、例えば仕入伝票の統一や、最低限、伝票記入
(2)ロケーションの高所・高度利用
・前述の通り、ネット通販はロングテール型商売でも
あり、売切り型のセール商材で無い限り、稼動率は
千差万別です。よって低稼働の商品の高所収納を検
討すべきだと考えています。
の必須項目のルール徹底など、入口の整理だけでも、ス
パレット型収納ではフォークを活用したスペース
ケジュール管理を事前に詳細まで詰められ、構内作業を
活用など、様々な機器がありますが、ごく簡易・小
円滑にスタートする為には大きな効果につながります。
規模で人の運用で出来る収納機器は、特に女性のパ
また、標準化されたEDIの代替として、インターネッ
ート比率の高い職場であることを考えると、安全性
トを活用したWEB・EDIによるエクセルレベルのデー
と収納省力化の両面で大変有効です。
タ交換・変換等、簡易なパッケージソフトも販売されて
BtoC物流業務の収益性は作業生産性に加え、こうし
いるので、少額のイニシャル投資で導入も可能になって
たスペース利用の現場の小さな改善効率化の積み重ねも
います。
大変重要で、物流事業者が単独で考えるということでな
こうしたバックヤード部分の生産性は構内作業に比
べ、投資対効果が図りづらいと思われがちですが、複数
く、機器メーカーの皆さんと共同で今後、具体化を検討
したいと思います。
荷主で共通の基盤をご利用頂くなど、導入のハードルを
下げることと、事務作業の標準化までトータルで考える
べきだと思います。
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ネット通販における物流システム 今後の展望
7.現場生産性の向上とマルチスタッフ化
参画意識の高まりと言った、副次効果も生まれてい
ます。
最後に、人時生産性の改善について、現在の取り組み
をご紹介します。
冒頭でお話した通り、ネット通販市場は成長スピード
ネット通販物流の構内作業を分別すると、まずシーズ
の鈍化はあると思われますが、まだ着実に拡大するマー
ンごとの商品入替え時に納品検品、入庫のピークが先行
ケットです。一方で配送無料化や返品フリーなど、物流
し、その後、ピッキング、出荷物量が増加、一定期間後、
事業者から見ると、収益を確保する為のハードルは高ま
返送品の処理、取引先への返品業務など、時系列でオペ
る方向にあります。
レーション担当ごとの作業ボリュームが推移していき
こうした大きな流れの中、中期的にシステムやマテハ
ンといった「インフラ」
、「オペレーション」
、
「人材」
、
ます。
この波動に対応する為、従来はアルバイトの担当は専
業制でしたが、複数の業務について基本スキル習得の為
この3項目について、改革を着実に進め、新たな事業ニ
ーズに対応していきたいと思います。
の業務基準書を整備、昨年、1年間かけてスキルアップ
を推進してきました。現在では7割のアルバイトが複数
の業務を兼任出来るまで、マルチスタッフ化が進み、作
業物量に応じたシフト制を敷き、最低人員で作業残を発
生することなく、構内業務の運営を行っています。
取り組みの過程でわかったこととして、定量的な効果
はもちろんですが、現場で働くアルバイトの方からも、
“同一作業より気分転換になる”
、
“忙しい担当を応援す
ることで、やりがいを感じる”など、モチベーションや
2
6
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お問合せ先
株式会社 ムービング
取締役企画部長 兼 グループ物流担当
原 誠一
〒3
3
5−0
0
3
2
埼玉県戸田市美女木東2丁目5番地1号
戸田総合物流センター3号館6階
TEL.
0
4
8−2
3
3−1
0
0
0 FAX.
0
4
8−2
3
3−1
0
0
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Material Handling Journal No.
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特別寄稿
物流の効率化に係る国土交通省の取り組み
∼物流総合効率化法における制度改正について∼
国土交通省総合政策局物流政策課物流産業室
ますとともに、皆様におかれましては、是非、新しくな
1.はじめに
りました物効法各種制度のご活用をご検討いただきたい
マテハン業界の皆様におかれましては、平素より国土
と存じます。
交通行政の推進に多大なるご理解とご協力を賜りまして
誠にありがとうございます。この場をお借りして篤く御
礼を申し上げます。
2.物効法とは
流通業務の総合化及び効率化に関する法律
(以下、
「物
物効法とは、流通業務(輸送・荷捌き・保管・流通加
効法」といいます。
)
は、平成1
7年の制定以降、平成2
4年
工等)を総合的かつ効率的に実施する事業者に対する支
3月末までに187件の総合効率化計画が認定され、流通
援措置を講ずることにより、我が国産業の国際競争力の
業務(保管・荷さばき・保管・流通業務)の総合化及び
強化や多様化する消費者ニーズへの対応を図るととも
効率化が図られた倉庫(特定流通業務施設)が年々増加
に、物流分野における地球温暖化対策を図ろうとするも
しております。一方、平成2
3年3月に発生した東日本大
ので、具体的には高速道路のインターチェンジ、港湾等
震災では、流通業務施設内の保管貨物の荷崩れの発生や
の物資の流通を結節する機能を有する社会資本等の近傍
通信インフラの損傷等により流通業務施設の機能に低下
に立地し、自動ラックや情報処理システム等の設備を備
を生じ、地域の産業や経済の復旧に対して重大な影響を
えた特定流通業務施設を中核として、流通業務を総合的
与えたことから、個々の事業者の実施する流通業務施設
かつ効率的に行う「総合効率化計画」について、国が認
に係る防災対策の強化の重要性が認識されました。
定をし、認定された計画についての支援措置を定めた法
この度、本件制度改正につきましてご説明をさせてい
ただく機会を頂戴いたしましたことにつき感謝申し上げ
2
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MHジャーナル
平成2
5年7月
律となっております。
物流の効率化に係る国土交通省の取り組み
3.平成2
5年度における制度改正
また、平成2
5年度税制改正要望において、近年の通販
やeコマースの発展を背景とした、少量多品種出荷や一
昨今、先述のような災害経験を踏まえ、我が国の経済
般消費者向けの配送の増加に対応するため、選択的設備
社会を支える基盤である総合効率化が図られた流通業務
要件に搬出貨物表示装置(デジタルピッキングシステ
の中核となる特定流通業務施設において、防災対策の強
ム、デジタルアソートシステム等)を追加、併せて認定
化を図ることが喫緊の課題となり、併せて、円滑な支援
設備要件の活用実態に適合した見直しを行い、垂直型連
物資物流(被災地に支援物資を届けるための流通業務。
)
続運搬装置の駆動方式については、これまで4隅のチェ
を確保するためには、民間の流通業務施設を積極的に活
ーンのみであったものに加え、ワイヤーロープによる駆
用することが重要であると認識され、特に、特定流通業
動方式を追加しています。
務施設については、地方自治体が行う支援物資の保管へ
の活用が期待されているところとなりました。
今回の税制改正要望では、財務当局より税制の利用実
績が少ないとの指摘がなされました。国土交通省と致し
以上を踏まえ、総合効率化計画の認定要件として、特
ましては、今後、物効法の総合効率化計画の認定件数を
定流通業務施設が備えるべき設備に、地震発生時におけ
増加させ、引き続き、総合化及び効率された特定流通業
る流通業務の早期再開及び当該災害による保管貨物への
務施設を普及させていくこととしております。
被害の防止を可能とする設備を追加することとする制度
改正が行われました。
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物流の効率化に係る国土交通省の取り組み
きるこうした優遇措置の存在をご紹介いただき、積極的
4.むすび
に総合効率化事業を推進して参りたいと考えておりま
物効法認定施設に対しましては、事業許可等の一括取
す。皆様のご協力を賜りますようお願いを申しあげると
得、国税・地方税の税制特例、市街化調整区域における
ともに、最寄りの地方運輸局への働きかけをお誘いくだ
開発許可等についての配慮、中小企業者等に対する支援
さいますようお願い申し上げます。
など、様々な特例措置を設けております。新しく倉庫の
建築や購入をお考えの皆様におかれましては、物効法認
定取得につき、お近くの国交省地方運輸局物流課へお気
軽にご相談いただきますようお願い申し上げます。
物効法認定や税制特例を受けていただくためには設備
要件を満たしていただく必要がございます。各メーカー
の皆様にとりましてはビジネスチャンスに繋がるもので
はないでしょうか。
今後、新たな施設整備をお考えのお客様をお持ちの皆
様におかれましては、多くの関係者がメリットを享受で
3
0
MHジャーナル
平成2
5年7月
○物流総合効率化法、国土交通省ホームページ
http : //www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/butsuryu
05300.html
○物流事業関連主要税制の概要、
国土交通省ホームページ
http : //www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/butsuryu
04700.html
物流の効率化に係る国土交通省の取り組み
お問合せ先
国土交通省 総合政策局 物流政策課 物流産業室
〒100
‐
8918 東京都千代田区霞が関2−1−2
TEL:03−5253−8
1
1
1(内線2
5−3
3
1)
TEL:03−5253−8
3
0
2(直通)
FAX:03−5253−1
5
5
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1
連★載
米国マテハン専門誌抄訳
vol.59 (2012.11∼2013.4)
米国の Modern Materials Handling 誌の内容を会員に海外情報として紹介すべく、近着の記事中か
ら選択抄訳と解説を掲載しています。全文記事については、インターネット上でmmh.comをクリック
して原文を読むことができます。
2
0
1
2年1
1月号
○ピッキングオーダーの優先度による順番選択
産業用道具、工具などを各ユーザー工場へ配送する
MSCインダストリアルサプライ社、ジョーンズタウ
ン配送センター(ペンシルベニア州)では、インター
ネット注文に伴い、倍増したオーダーに対処するため、
帳票によるピッキングから、ペーパーレスピッキング
のシステムに変更した。
同様のシステムを同社のジョージア、インディアナ、
ネバダの各州のDCにも応用した。
ピッキングはオーダーのキューの中から優先度の高
い順に選択できるシステムとなっている。優先順は出
荷時刻、緊急割り込みオーダーかどうか、DC全体あ
るいは特定のピッキングエリア間での稼働バランスを
みて決められる。1オーダーは同時に各エリアでピッ
キングが行われ、出荷集積場に荷を集結する。
その他MH機器としては高速ベルトコンベヤ、ソー
ター、電光表示によるピッキング・集荷・梱包指示、
携帯コンピュータ/バーコードスキャナーである。
ピッキングのサイクルタイムが縮小したことによっ
て午後8時までのオーダー受付で同日出荷・翌日配送
が可能となった。
2
0
1
2年1
2月号
○狭小通路ラックとピッキングフォークにより
2
8%容量増加
米国3
0州とカナダに合計1
0
0施設を持つ3PL、ケン
コー社では、シャッタノーガDC(テネシー州)にお
いてアイテム数にして2,
0
0
0から3
2,
0
0
0、扱う部品数
にして4
2,
0
0
0から3
0
0万以上の増加を要求されていた。
この要求に対して同社がとった対策は、最も伝統的
なMHテクノロジーを活用した。即ち、保有スペース
を稼ぐため、既存の9.
6m高さの倉庫天井に対して半
分以上のスペースに狭小通路用ピッキングラックと有
線誘導方式の3方向ピッキングフォークの組み合わせ
を導入し、2
8%のスペースを稼いだ。
3
2
MHジャーナル
平成2
5年7月
同時に帳票ベースのピッキングからWMSのソフト、
ハンドヘルドバーコードスキャナを採用し、ピッキン
グ効率と精度を求めた。その結果、取扱いアイテム数
3
5,
0
0
0を達成した。
2
0
1
3年1月号
○ブランド衣料の高速ピッキング
世界の有名ブランドの衣料、家具をインターネット
販売するギルト社シェファードビルDC(ケンタッキ
ー州)では、足回りの早い商品に対してキバ社のモー
ビルロボットを採用し、ピッキングを行っている。
モービルロボットによりピッキングすべき商品が収
納されたポッドと呼ばれる棚をピッキング員まで運び
(Good-to-person)
、ピッキング員が目的の商品をピッ
キングするシステムである。オーダーを受けて3
0分以
内に出荷トラック荷台に載せるというのが同社のモッ
トーである。
同社はこのシステムを、取り扱う商品の内、入荷後
3日以内に出荷するものに適用し、それは全商品の
8
0%に該当する。
残り2
0%の商品は主にメザニン構造の棚でピッキン
グが行われる。ピッキングした商品は構内専用のプラ
スチック通箱に入れ、コンベヤ搬送され、仕分け・梱
包し出荷される。梱包段階で2段階のチェックを行い、
間違いのない完璧な配送を保証している。
2
0
1
3年2月号
○投下型
(ボン・ベイ)
ソーターによる高速化
ティーン向けアパレルブランドのウェット・シール
社フットヒルDC(カリフォルニア州)では、SDI・イ
ンダストリーズ社製ボン・ベイソーター(爆撃機爆弾
格納・投下型ソーター)を採用し、省スペース及び高
速化を図っている。
同社及び系列のアーデンB社の合計5
5
4店舗への配
送では9
0%以上の入荷品は保管することなく、直接配
送出荷の形態をとっている。このスピード配送に3台
のボン・ベイソーターが効力を発している。同社では
2台のソーターを上下に重ねて配置し、3台目のソー
ター上にも4台目を配置する計画である。
ボン・ベイソーターとは爆撃機が格納庫から爆弾を
落とすように、ソータトレイの下側に位置する箱、ケ
ースに対して仕分け指示に従い、決められた位置でト
レイのシャッターを開くことによってトレイ上の商品
を落とすソーターである。同社ではこのソーターを出
荷箱への仕分けに使用している。ソーターへのピッキ
ングは入荷した商品
箱がソーターへの仕
分け場にコンベヤ搬
送され、そこで画面
表示に従って、作業
員がソータトレイに
商品を置くことで行
われる。同社のソー
ターは1ポジション
に2個のトレイを備
えたもので、1ソー
ター当り1
0.
0
0
0個/h
の能力である。
2
0
1
3年3月号
○システム化に隠れた小さな自動化(7例)
(1)モービルワークステーション
ディスプレイ付コンピュータ、バーコードスキャ
ナ、ラベル用プリンタ、荷全体形状・寸法の電子
式測定器を備えたピッキングカートによりピッキ
ング作業の効率化、正確さを図る。
(2)取扱物の大きさ、形、重量を測定する装置
この技術はピッキングするグループ分けにも利用
される。パッケージの最適化を図り、梱包コスト
を抑える効果がある。
(3)マニュア ルMHと自動化MHとの ベ ストミックス
人手を介する工程の回数、動きを減らし、効率化
する。それも1
5∼2
0のワークステーション全体で
考えることが肝要である。
(4)ピッキング、荷揃えにおけるスリム化
包装、ラベリングをピッキングの中央に位置する
ことでピッキング作業の歩行距離が小さくなる。
包装箱サイズを系列化し種類を少なくする。グラ
ビティコンベヤを使用して流れ作業にて、合同し
て荷揃えを行う。
(5)最適サイズのパッケージ箱の自動製作
最近、システムロジスティック社とシールドエア
社からピッキング品の寸法、重量データから最適
サイズの段ボール箱を自動製作する装置(写真)
がでてきている。DC内の効率化と輸送コストの
削減に寄与するものとしている。
(6)出荷ドックを軽視しないこと
ドックはDCの最後の砦であるので、ドックにい
たる以前の工程で定めた設計事項が、幅、高さな
どのドックの現状と合致しているか、見落としが
ないようにすること。
(7)出荷パレットあるいはトレーラ内での荷の積込
みの半自動化
コンベヤ先端にリフト機能を持ったパワープラッ
トホームを付け、荷を積込み高さまで上げて、作
業員の持ち上げ作業をなくし、横にスライドさせ
るだけの作業としたもの。これにより1人6
5
0ケ
ース/hまで積込み可能となる。
2
0
1
3年4月号
○フォークリフトの運行システム
芝、庭用品を販売するスコッツ・ミラクル−グロ社
メアリーズビルDC(オハイオ州)では、1∼5月の
ピーク時には1日9,
1
5
0パレットの入出荷を行う。一
時保管・出荷の担い手は2
6
0台のフォークリフト編隊
である。そのためフォークリフトの運用プログラムソ
フト(トヨタ社製)を導入し、フォークリフト全体の
運用効率を高めている。
プログラムは次の3点の特徴を備える。
・フォークリフトの稼働時間と生産性を重視
・フォークリフト技術の応用展開
・サプライチェンコストの適正化と低減
同DCではフルパレットで保管・出荷を行うので生
産性は運送するパレット数に係ってくる。ソフトとと
もに、生産性を高めるため2パレット同時に扱うアタ
ッチメントとフォークリストを導入した。ソフトは各
フォークリフトのメンテナンス工程を作成し、メンテ
ナンス内容、部品実績を記録するものとなっている。
同DCでは第1、3シフトでパレット保管、第2シフ
トで保管場所からパレットをピッキングし、トレーラ
に積込む体制としている。
Material Handling Journal No.
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3
3
JMHS ニュース
第57回通常総会 報告
第57回通常総会が5月21日(火)
、日比谷松本楼にて、
役員・会員過半数の出席をもって開催された。
当日は規約第21条及び第1
2条により本総会の議長を小
山会長に務めていただき、挨拶後早速議事に入った。
第1号議案 平成24年度事業報告並びに収支決算報告の
件
第2号議案 平成25年度事業計画案及び収支予算案審議
の件
第3号議案 役員任期満了に伴う改選案審議の件
について審議され、いずれも満場一致で可決された。
総会終了後、国土交通省総合政策局物流産業課課長補
佐青木郁夫氏をお招きして、「物流総合効率化法の活用
促進について」をテーマに特別講演会を行いました。
その後懇親会に入り、小山会長挨拶の後、小林副会長
による乾杯の音頭で開宴し、盛況の内に終了した。
国土交通省
青木課長補佐の講演
総会の模様
小林副会長による乾杯の挨拶
MH協会会員専用ページ開設のお知らせ
6月3日より、協会ホームページ上に新たに会員専用ページを開設し、協会活動報告及び会員相互の情報交換を
活発化できるようにしました。
会員の方には、会員専用ページの利用方法及びIDとパスワードをすでにご連絡しております。
是非ご活用ください。
日本MH協会事務局
3
4
MH ジャーナル
平成2
5年7月
JMHS ニュース
日本MH協会
平成25年度活動方針
昨年わが国は、復旧・復興という大きな課題に直面する一方、依然回復しない消費の低迷や雇用の深刻化など、
企業のみならず社会全体が先行きへの不透明感から抜け出せない年であった。
本年は、
安定した政権運営のもとで、
本格的な震災復旧・復興事業の加速化と共に、新政権の掲げる経済再生と成長戦略を官民一体となって迅速に実行
していくことが求められている。
MH分野においても消費電力の抑制や省エネへの対応を図る一方、企業の社会的責任の向上を図り、社会のニー
ズに対応したより高度なMH技術の開発や生産・物流の改善への取組みが一層求められている。
また、協会運営組織を見直し、会員組織並びに事業活動の強化を図る一方、兄弟団体の公益社団法人日本包装技
術協会との連携を中心に据え、MH・物流関連団体との情報交換・交流を一層推進強化する。
上述の内容を踏まえて、本年度も協会会員の“ためになるMH”諸活動を展開する。
1.協会事業活動の強化推進
会員サービス事業として根強いニーズがある「見学会」、ユーザーとメーカーとの情報交流を目的とした「MH
フォーラム」、各種セミナー、研修会など協会事業活動を「もうかるMH」の視点から見直し、より会員の「ため
になるMH」諸活動を構築する。
2.MH人材育成事業の推進
中央職業能力開発協会・厚生労働省の公的資格として認知される同協会認定講座「ロジスティクス管理・オペレ
ーション基礎講座」並びに我が国唯一の提案書作成型実践講座である「MH技術管理士講座」の広報活動を強化し、
参加者拡大を図り、企業の役に立つ人材を育成する。
3.関連展示会の参展によるMH技術の普及推進
今秋開催されるJPIの「PACK SHOW2
0
1
3」並びに来秋開催される「TOKYO PACK2
0
1
4」への協会団体参展を企
画し、MHのユーザーに対し「もうかるMH」・「ためになるMH」を提案する。
4.内外のMH関連団体との交流連携強化並びに協会活動のグローバル化推進
内外の友好団体とのMH・物流領域での交流提携を強化し、併せて海外物流諸団体からの訪日団受入れ、視察団
の派遣等を中心に海外交流を強化し、我が国のMH物流産業のグローバル化の推進に寄与する。
Material Handling Journal No.
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