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2014年10月4日、東京グラフィックサービス工業会

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2014年8月9日
印刷総論
要旨
―印刷の歴史、アナログからデジタルへ―
(組版、製版、印刷、製本など)
国際印刷大学校
木下堯博
1, 印刷の源流
46億年前(推定)の地球の誕生から、地球上に現生人類(ホモサピエンス)が出現
したのは200万年前と言われている。
20万年前から農耕・牧畜による共同生活を営むようなり、人間同士のコミュニケー
ションが不可欠になってきた。
火を利用し、狩猟を行たり、農耕と牧畜などでの伝達手段として、言葉や絵を書き始
めた。約4万年前のラスコの壁画など絵や文字を書くようになり、洞窟内の壁画など
から古代人のコミュニケーションが目印、烙印、結縄、絵などから文字へ発展してい
った。各部族が言語を視覚的に定着させるには「書く」技術が必要となり、コミュニ
ケーションの第一歩ともなった。書くことは「Graphic」であり、Graphic Service は
印刷の源流とも言える。また、文字を含め目印、絵などは人間同士のコミュニケーシ
ョンが古くからおこなわれていて、この Graphic Communication も Multimedia
Communication へと今日、進展している。
2, 印刷の誕生
文字や絵を書くことは人類生存にとり、重要な因子であり、古代エジプトでのパピ
ルス(他に羊皮紙など)上での文章、円筒印章、古代中国での亀甲文字、古代メソポタ
ミアでは都市国家を形成し、鉄器を持ち、法典を編纂し、世界で初めての文字文明を
持っていた。エジプトのニネベには世界最古の粘土板図書館があり、ハムラビ法典な
ど編集された。人間のコミュニケーションの手段として、文字や絵が用いられ、
Graphic 技術が情報伝達の基本であった。
印刷の定義は「版その他の手段で紙その他の被印刷体に印象する技術行為」とされて
いるが、世界最古の印刷物として奈良の法隆寺に保存されている「百万塔陀羅尼経」
がある。称徳天皇により、百万枚印刷され、1枚ずつ小木塔に収められ、十大国分寺
に分納された。
(770年)この印刷について、木版か金属版かいずれによる印刷かに
ついて論争されている。日本印刷学会西部支部(大阪)では科学的調査を行なわれた。
一方、韓国の慶州仏国寺釈迦塔内に「無垢浄光大陀羅尼経」が発見され、時代推定
では751年とされている。中国の祭倫(サイリン)により104年に発明された製
紙技術は5世紀ごろに朝鮮、日本に導入され、15世紀にヨーロッパに伝播した。
(紙の千年の旅、東洋から西洋へ)。印刷の4版式(凸、平、凹、孔)のうち凸版方式
が早期に確立していった。
(教材3~5頁参照)
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3, グーテンベルグの活版印刷の発明
グーテンベルグによる活版印刷(金属活字)の発明(1440年)以前は東洋での
木版や金属活字(?)による印刷が隆盛を極めた。最古の金属活字による印刷物は
韓国の「直指身体要節」
(直指)
(1377年)といわれていて、2000年にユネスコ
Memory of the World に認定されている。グーテンベルグの発明よりも約 70 年も早
く、近代印刷が登場していた。また、海印寺には八万大蔵経(1011年初版、123
6年~1251年改版)が所蔵され、国難に対処するため八万枚以上の木版が長年に
わたり保管状況も良く保管されている。2012年10月には開版1000年記念祭
が行われ、参加した。しかし、グーテンベルグの印刷はヨーロッパ全土に広がった宗教
改革とともに、イギリスのカクストン、ベルギーのプランタンにより、強力に推進さ
れ、印刷工場は各地に設立され、従来までの書写による手工的方式から機械的方式に
急速に転換していった。ドイツのマインツにあるグーテンベルグ博物館には世界的な
印刷資料が展示あいてあり、グーテンベルグの「42行聖書」は、二重の金庫に厳重に
保管されている。この博物館に隣接して図書館があり、同地にあるマインツ大学書籍
研究所と共同して、世界的印刷史の権威ある「Gutenberg Jahr Buch」論文集を刊行し
ている。日本には天正少年使節団がポルトガルより、1591年グーテンベルグの印
刷機材一式を持ち込み、天草コレージョ(天草学林)で多くの教材制作、印刷し、キリ
スト教布教のため活動した。
4、日本の印刷技術の創始
日本では江戸時代までは木版印刷が主流であったが、オランダ通詞の本木昌造が
1868年にウイリアムガンブルの指導で、活字制作に成功し、企業化を目指した。
政府の指導もあり、急速に全国へ広がり、日本の近代化に貢献した。
1870年(明治3年)日刊紙である「横浜毎日新聞」が本木活字により創刊され、
用紙は和紙でなく、洋紙が用いられ、現在の新聞の形態であった。その後、明治4年萬
國新聞(和装)
、明治6年長崎新聞(和装)、明治5年東京日日新聞(一枚刷り)、明治
7年読売新聞(一枚刷り)
、1877年(明治10年)に発行された「筑紫新聞」が本
木昌造の活字を用いて印刷刊行された。活字は明朝体で4号の大きさであった。
この筑紫新聞の印刷に関しては大串誠寿氏により、研究報告が九州大学で行われた。
一方、江戸の版木師
木村嘉平は1847年(弘化4年)薩摩藩主島津斉彬の命によ
り、島津藩中で用いる欧文書籍の刊行に着手した。欧文活字を制作した。
蘭訳英文書「Engeleshe Spraak Kunst」の開版が目的であった。父型を作り、パンチ
母型から無電解メッキにより、銅箔を作り、母型とした。これに金属を溶かし、鋳造し、
活字とした。ようやく完成したが、1858年(安政5年)島津斉彬が他界したため、
この事業は中止となった。
江戸から明治にかけて、これら先駆者は木版から金属活字制作は民衆の知識欲に対す
る要望を受け継ぎ、チャレンジし、文明開化の一翼を担った。
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5、平版印刷の始まり
1798年ドイツ人のアロイス・ゼネフェルダーが偶然の機会に平版印刷方式を発
見した。石版石はドイツのゾレンフォヘン地方に多く、これを用い、水と油が反発す
る原理を応用した。
石販はリトと呼ばれ、石版印刷はリトグラフイー、リソグラフィーとなり、その後金
属板に代わり、亜鉛からアルミ金属板を用いるようになってきた。
1868年(慶応4年)マルコ・ドロ神父はプチジャン神父とともにキリスト教布
教のため長崎に来日し、宗教本の石版印刷を開始した。
大浦天主堂に石販印刷機をとりつけ、石販印刷で「聖教初学要理」を印刷したが、
一部、木版印刷で布教書をまとめた。また、一枚刷りの教会カレンダーも印刷し、日
本初の石版印刷物となった。
長崎県外海町にはマルコ・ドロ記念館が設置されていて、当時の様子が確認できる。
その後、石版印刷から金属板(亜鉛板、アルミ板)に代わり、印刷方式も直接紙に印刷
する方式から間接方式つまり、一旦、ゴムブランケット胴に印刷し、その後、紙に印
刷するオフセット印刷が隆盛をきわめている。
ゼネフェルダーが石販印刷を発明して、70年後に、ドロ神父により伝来し、多数の
宗教書を印刷したが、その後、長崎の大浦天主堂から横浜に移り、1873年(明治
6年)まで石版印刷で宗教書の印刷を継続した。
1840年宇田川祐庵は石販印刷技法の翻訳を行った。また、1860年ドイツ連邦
のプロシアが通商条約締結のため来日した際、手引き石版印刷機と石版石一式を徳川
家に献上している。
下岡蓮杖は1866年から石販印刷を研究し、1870年には松田敦朝がロンドンか
ら石版印刷機など購入し、日本橋に銅版・石版印刷所を開設した。
明治初期の石版印刷の導入や平版印刷技術は相互に交流したとの文献は見当たらず、
それぞれ独自に発展していった。
6、凹版及ぶ孔版印刷のあゆみ
凹版印刷は彫刻技法により、凹刻し、インキを凹部に入れて、印刷する方式である。
彫刻凹版やエッチングは画家により、継承されてきたか、1879年オーストリアの
カール・クリッチにより写真製版のグラビア方式が発明され、現在に至っている。
グラビア印刷は紙以外に合成樹脂フイルムに印刷され、印刷インキは有機溶媒から
環境問題から水性インキに変化してきた。
凹版は彫刻される凹部の深さにより、濃淡が決定され、化学的腐食から電子彫刻法へ
進展してきた。
孔版印刷は1905年イギリス人サムエル・シモンズが絹の紗を用いた印刷法で
インキが通過する部分(画像部)、インキが通過しない部分(非画像部)として、画像
形成させる。謄写版印刷(ガリ版)が代表的であったが、現在は高精度の機械がある。
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7、アナログからデジタルへ
製版方式には①手工的方法、②機械的方法、③化学的方法、④写真的方向(写真製版
とも呼ばれている。
)
、⑤電子的方法(電子製版)と進展し、アナログ方式から徐々に
デジタル方式に変化してきた。
また、印刷機械もグーテンベルグ時代はぶどう搾り機からヒントを得た平圧式の印刷
機械であったが、円圧式、輪転式へと印刷速度が高速化となってきた。
現在、輪転方式が中心になっていて、特に平版印刷では間接印刷方式(オフセット方
式)が用いられている。版面の画像を一度、ゴムブランケットに印刷し、更に紙面に
印刷する方式でオフセット輪転機(オフ輪と呼ばれている。)が新聞やチラシ広告の大
量印刷に用いられている。
(教材29頁参照)
これに用いられる印刷インキは①顔料+②ベヒクル(油、樹脂、溶剤など)+③補助剤
から構成されていて、インキを紙面上に転移するための運搬の役割がある。
このインキは空気中の酸素により乾燥する酸化重合型や紫外線を照射して強制的に乾
燥させる紫外線硬化型インキがある。インキの色は顔料の種類により、決定されるが
墨インキ(K)は顔料にカーボンブラックを利用している。その他、イエロー(Y)、
マゲンタ(M)
、シアン(C)インキがあり、この三原色インキと墨インキで色再現を
させる。この色再現を適切に行うためにジャパンカラー認証制度がある。
海外ではヨーロッパでPSO,アメリカ、中国でG7などの認証方式があり、各国で
ISOを中心とした色再現システムが進展している。
一方、印刷用紙はパルプ(木材の繊維)に填料(白土、タルク、炭酸カルシウム)など
を加え、抄紙機で製紙を行う。
印刷適性を向上させるため抄紙された紙の表面にカオリン、炭酸カルシウムなどでコ
ーティングし、平面平滑度や白色度を高め、アート紙やコート紙として高級美術印刷
に用いられている。
(教材50頁参照)
一方、コピー方式には電子写真方式の機材が登場し、インキはトナー(粉末)で
電荷を与え、紙面の反対電荷に付着し、加熱により融着し、画像形成する。
デジタル信号から直接、紙面に画像形成させるので、版は不要となり、迅速な印刷が可
能となる。更に、インクジェット方式でノズルからインクを噴射する方式で、シールラ
ベル印刷にも幅広く利用し、一枚ずつ異なる印刷(バリアブル印刷)が可能となる。
(教材94頁参照)
8、電子書籍
2014年7月2日から東京ビックサイトで Book Fair が開催され、新しい電子書
籍のあり方が提示された。スマホの台頭により、紙面の印刷から液晶画面で読み、情報
を交流する時代となり、電子書籍が急増している。会期中にアメリカの商業美術印刷
が昨年度の出荷額より、減少したとの報告があり、アナログからデジタルへの転換は
急速に進展していることが伺える。
4
9、地球環境と印刷
印刷産業は多くの電力を使用しているが、排気ガス、排水など地球環境に優しい産
業として、成長しなければならない。オフセット印刷でVOCの発生個所は印刷機上、
製本接着剤などで、特に洗浄作業で最大7,500ppmCと排出される。
これらを防止するため印刷機上に吸引フードを設置し、VOCを分解し、クリーンな
空気を工場内外に排出する。
また、洗浄液や廃液は工場内に留め、廃棄業者に依頼するか、全工場の排水を一括管理
し、浄化装置での処理で、クリーンな水として排水することが大切である。
印刷工場内ではVOCの他、騒音、微粒子浮遊、静電気、照明、害虫などの諸問題が内
在している。工場勤務者が全員協力し合って、環境改善に努力していくことが必要で
ある。印刷産業が装置産業として進展し、ロボットなどによる自動運転が可能になっ
ても、その都度、問題点を改善し、環境対応に迅速に取り組み、明るい職場づくりが必
要である。
10、まとめ
GDPと印刷出荷額、人口と印刷出荷額とは比例関係にあったが、近年、若干落ち込
みが見受けられる。
実質GDPは2006年512兆円から2015年(推定)554兆円とみられるが、
印刷出荷額は2006年7兆円から2015年5.6兆円(推定)と減少傾向にある。
その比は1.33%から1.01%となり、今後は人口減少もそれに追い打ちをかける
ようになるかも知れない。
これに対応し、印刷産業を活性化するためには、新しい技術開発、IT活用による印刷
付加価値の向上、ロジステックスなど各企業で取り組むべき課題は多い。
社内教育も総売り上げに対し約1%程度計上し、社員教育と企画開発など積極的に推
進し、特許出願などで、企業のイメージアップを計ることが大切であろう。また、新技
術、新商品などの開発とグローバル展開が必要であり、海外での活躍できる基盤づく
りを行うことが将来への展望となろう。
追記)本木昌造顕彰会は1875年9月3日に没したことにより、墓所の長崎市大光
寺で、毎年9月3日、印刷技術を全国に広め、近代印刷文化の創始者として、活躍され
た故人をしのび、法要を行っている。また、印刷教育研究 No.29 で「印刷産業におけ
るインターンシップ」に関する論文が2014年7月に刊行されたので印刷図書館や
URLでご参照下さい。
(2014年7月10日、他PPT約100枚)
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国際印刷大学校
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