7 鋼 材 試 験 鋼材試験は、素材については鉄筋コンクリート用棒鋼(JIS G 3112)の引張・曲げ試験、一 般構造用圧延鋼材(JIS G 3101)等の引張試験、継手については、鉄筋コンクリート用棒鋼ガ ス圧接継手(JIS Z 3120)、機械式継手、溶接継手等の引張試験を行っている。 また、河川の護岸工事等に使用される亜鉛めっき鉄線じゃかご、かごマット等については、引張試 験、めっき付着量試験を行っている。 鉄筋コンクリート用棒鋼はJIS規格適合品が使用されているが、素材については現場に入った材 料からランダムサンプリングにより採取した材料による機械的性質の確認、継手についてはガス圧接 や溶接等の技量確認を目的としている。 本章では、平成23年度に行ったこれらの試験のうち、代表的な鉄筋コンクリート用棒鋼と鉄筋コ ンクリート用棒鋼ガス圧接継手の引張試験結果について報告する。 7・1 試験本数 平成23年度の引張試験本数を表―1に示す。 表―1 平成23年度の引張試験本数(JIS G 3112 鉄筋コンクリート用棒鋼) 試験材料 記号 試験本数 (本) 割合 計 (本) 割合 合計 (本) 素材 圧接材 機械継手 SD295A SD345 SD345 SD390 233 1,495 706 29 3 30 13% 87% 96% 4% 9% 91% 1,728 735 69% 30% SD295A SD345 33 1% 2,496 その他、一般構造用圧延鋼材が12本、フレア溶接継手が90本、鉄線が133本であった。 素材、圧接材、機械継手の呼び名別試験本数を図-1~図-3に示す。 400 350 SD295A 300 SD345 250 ( 本 数 200 本 ) 150 100 50 0 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 D51 呼び名 図-1 素材の呼び名別試験本数 300 250 SD345 SD390 200 ( 本 数 150 本 ) 100 50 0 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 D51 呼び名 図-2 圧接材の呼び名別試験本数 20 SD295A 15 SD345 ( 本 数 10 本 ) 5 0 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 呼び名 図-3 機械継手の呼び名別試験本数 D41 D51 7・2 鉄筋コンクリート用異形棒鋼 (1) 単位質量試験結果 単位質量許容差は、鉄筋の単位質量(1 メートル当りの標準質量)に長さを乗じて求めた計算 質量と、計量による実測質量との差を計算質量で除して百分率で表したものである。 単位質量試験結果を表-2および図-4に示す。 表―2 単位質量許容差 呼び名 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 D51 計 記号 SD295A SD345 SD295A SD345 SD295A SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD295A SD345 本数 45 16 128 304 60 303 259 229 156 78 87 33 12 6 12 233 1495 規格値 ±6.0%以内 ±5.0%以内 ±4.0%以内 MAX (%) -1.8 1.6 -2.7 -1.8 0.0 -1.3 -0.7 -1.0 -0.6 -1.3 -1.2 -0.7 -1.9 -1.9 1.0 MIN (%) -5.4 -4.4 -5.6 -5.7 -4.5 -4.4 -4.5 -4.9 -4.6 -3.3 -3.8 -3.6 -2.8 -1.8 -1.2 平均 (%) -4.4 -2.5 -5.6 -4.2 -3.2 -3.3 -3.4 -3.8 -3.6 -2.6 -2.8 -2.2 -2.2 -1.6 -0.5 σ (%) 0.9 2.0 0.5 0.7 1.1 0.7 0.8 0.6 0.7 0.5 0.6 0.8 0.3 0.1 0.9 単位質量許容差は、SD295A、SD345ともすべて規格内であった。 単位質量許容差平均値は、各呼び名とも下限規格値寄りのマイナス側となっている。 図-4 単位質量許容差平均値 (2)降伏点、引張強さ、伸びの試験結果 1)降伏点、引張強さの試験結果 降伏点、引張強さの試験結果を表―3および図-5、図-6に示す。 表―3 降伏点、引張強さの試験結果 降伏点 (N/mm 2 ) 呼び名 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 D51 計 記号 本数 SD295A SD345 SD295A SD345 SD295A SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD295A SD345 45 16 128 304 60 303 259 229 156 78 87 33 12 6 12 233 1495 規格値 MAX 386 410 387 419 405 411 409 421 401 420 399 406 394 403 399 引張強さ (N/mm 2 ) SD295A :295以上 規格値 SD345 :345~440 MIN 平均 327 359 363 385 324 354 356 385 331 357 350 381 361 386 363 385 355 382 367 389 351 382 373 388 375 386 398 401 378 391 σ 13.0 15.0 11.7 12.4 15.2 13.2 9.0 10.3 9.0 10.9 9.7 12.2 8.0 1.9 8.1 MAX 536 586 536 640 594 609 616 657 601 606 602 596 579 590 586 SD295A :440~600 SD345 :490以上 MIN 平均 474 509 528 558 466 502 516 566 481 519 512 565 536 571 538 572 518 569 545 578 550 573 551 574 570 573 580 585 555 573 σ 12.0 19.4 16.5 16.6 21.7 21.6 17.7 17.1 13.5 15.1 11.9 13.1 3.6 4.5 11.8 降伏点及び引張強さの試験結果は、SD295A、 SD345ともすべて規格内であった。 降伏点平均値は、SD295Aが350~360N/㎜ 2、SD345が390~400N/ ㎜ 2 であった。 引張強さ平均値は、SD295Aが500~520N/㎜ 2、SD345が560~580 N/㎜ 2 であった。 500 SD345 480 460 規格値 345~440 440 420 400 降伏点 2 N/mm 380 最大 360 最小 平均 340 320 300 280 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 D51 呼び名 図-5 降伏点の範囲 700 SD345 680 660 640 620 600 引張強さ N/mm2 580 最大 560 最小 平均 540 520 規格値 490以上 500 480 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 呼び名 図-6 引張強さの範囲 D35 D38 D41 D51 2)伸びの試験結果 伸びの試験結果を表―4および図7に示す。 表―4 伸びの試験結果 呼び名 記号 伸び (%) 本数 規格値 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 D51 SD295A SD345 SD295A SD345 SD295A SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 SD345 計 45 16 128 304 60 303 259 229 156 78 87 33 12 6 12 233 1495 16以上 19以上 17以上 15以上 MAX 33 28 32 30 31 31 29 28 31 31 30 29 28 25 25 MIN 24 23 24 18 20 19 20 19 20 22 21 21 21 21 17 平均 28 26 27 25 27 26 24 24 27 26 26 26 25 23 20 σ 1.9 1.7 1.7 1.6 2.4 1.9 1.7 1.7 1.9 2.0 2.0 1.6 2.3 2.0 2.5 伸びの試験結果は、SD295A、SD345ともすべて規格内であった。 伸び平均値は、SD295Aが27~28%、SD345が20~27%であった。 40 38 SD345 36 34 32 30 28 伸び% 26 最大 24 平均 22 最小 20 18 16 14 規格値 12 10 D10 D13 D16 D19 D22 D25 D29 D32 呼び名 図-7 伸びの範囲 D35 D38 D41 D51 7・3 鉄筋コンクリート用棒鋼ガス圧接継手 (1) 圧接部径比 圧接部径比は、圧接部のふくらみの直径と公称直径(鉄筋の標準直径)の比である。 圧接部径比の試験結果を表―5および図-8に示す。 表―5 圧接部径比の試験結果 圧接部径比 (圧接部径/公称直径) 呼び名 記号 本数 規格値:公称直径の1.4倍以上 MAX MIN 平均 σ D16 SD345 8 1.94 1.75 1.85 0.08 D19 SD345 109 2.00 1.62 1.80 0.08 D22 SD345 209 1.94 1.60 1.76 0.06 D25 SD345 246 1.93 1.53 1.71 0.06 SD345 82 1.84 1.60 1.75 0.06 SD390 8 1.87 1.64 1.75 0.10 SD345 26 1.90 1.58 1.71 0.09 SD390 21 1.74 1.61 1.67 0.04 D29 D32 D35 SD345 D38 SD345 15 1.78 1.63 1.69 0.05 D41 SD345 3 1.71 1.67 1.69 0.02 D51 SD345 8 1.70 1.58 1.64 0.04 SD345 706 SD390 29 計 圧接部径比は、SD345、SD390ともすべて規格内であった。 圧接部径比平均値は、1.64~1,85であり、呼び名が大きいほど小さい傾向がみられた。 2.20 SD345 2.10 2.00 圧接部径比 1.90 1.80 最大 1.70 最小 平均 1.60 1.50 規格値:1.4以上 1.40 1.30 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 呼び名 図-8 圧接部径比の範囲 D38 D41 D51 (2)引張強さの試験結果を表―6および図-9に示す。 表―6 引張強さの試験結果 引張強さ(N/mm 2) 呼び名 記号 本数 規格値 MAX 規格外 SD345 :490以上 、SD390 :560以上 MIN 平均 σ 本数 圧接面破断 (%) 本数 (%) D16 SD345 8 529 528 528 0.5 0 0 0 0 D19 SD345 109 600 537 565 15.3 0 0 0 0 D22 SD345 209 616 529 573 15.8 0 0 0 D25 SD345 246 622 537 570 13.6 0 0 1 SD345 82 588 550 565 6.0 0 0 0 0 SD390 8 631 620 625 4.7 0 0 0 0 SD345 26 603 550 567 18.6 0 0 0 0 SD390 21 642 627 637 3.6 0 0 0 0 D29 D32 0 0.41 D35 SD345 D38 SD345 15 591 564 579 8.9 0 0 0 0 D41 SD345 3 554 550 551 2.3 0 0 0 0 D51 SD345 8 572 567 570 1.8 0 0 0 SD345 706 0 0 1 SD390 29 0 0 0 計 0 0.14 0 引張強さは、SD345、SD390ともすべて規格内であった。 圧接面破断(SD345、D25)が1本あったが、引張強さは545N/㎜ 2 で規格値 (490N/㎜ 2 以上)を満足した。 引張強さ平均値は、SD345が530~580N/㎜ 2、SD390が620~630 N/㎜ 2 であった。 700 SD345 680 660 640 620 600 580 引張強さ 560 N/mm2 540 最大 最小 520 規格値:490以上 500 480 460 440 420 400 D16 D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 呼び名 図-9 引張強さの範囲(SD345) D41 D51 平均 7・4 まとめ 1. 試験本数 1) 平成23年度の引張試験本数は2,496本で,素材と圧接材の割合は,素材69%,圧 接材30%、機械継手1%であった。 2) 素材の種類記号別割合は,SD295Aが13%、SD345が87%であった。 3) 圧接材の種類記号別割合は,SD345が96%、SD390が4%であった。 4) 機械継手の種類記号別割合は,SD295Aが9%、SD345が91%であった。 2. 異形棒鋼の引張試験について 1) 単位質量 単位質量許容差はすべて規格内であった。 また、単位質量許容差は、下限規格値寄りのマイナス側の傾向となっている。 2) 降伏点 降伏点はすべて規格内であった。 降伏点平均値は、SD295Aが350~360N/㎜ 2、SD345が390~400N/ ㎜ 2 であった 3) 引張強さ 引張強さはすべて規格内であった。 引張強さ平均値は、SD295Aが500~520N/㎜ 2、SD345が560~580 N/㎜ 2 であった 3. 圧接材の引張試験について 圧接部径比および引張強さはすべて規格値内であった。 圧接面破断は、1本(D25、SD345:引張強さは規格値を満足)で、圧接材全体に 占める割合は0.14%であった。 7・5 あとがき 平成23年度の鋼材試験結果について、鉄筋コンクリート用異形棒鋼と圧接材の結果をまと めたが、素材については単位許容差、降伏点、引張強さともにすべてJIS規格値を満足した。 圧接材については、圧接部径比、引張強さともにすべてJIS規格値を満足した。 過去 10 年間の鉄筋コンクリート用異形棒鋼の引張試験結果について 試験数の多い呼び名 D13、D22 について、過去 10 年間の単位質量、降伏点、引張強さ、伸び、及び 圧接材 D22 の圧接部径比、引張強さの試験結果について報告する。 (1)鉄筋コンクリート用異形棒鋼 単位質量、降伏点、引張強さ、伸びの試験結果平均値を図―1~図―4に示す。 D13、D22(SD345) 0.0 単位質量許容差平均値 % -1.0 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 -2.0 -3.0 -4.0 -5.0 -6.0 D13( ±6%以内) -7.0 D22( ±5%以内) -8.0 年 度 図-1 単位質量許容差平均値 D13、D22(SD345) 降伏点平均値 N/mm 2 460 440 D13 420 D22 400 380 360 340 320 300 H14 H15 H16 H17 H18 H19 年 度 H20 H21 H22 H23 図-2 降伏点平均値 引張強さ平均値 N/mm2 引張強さ D13、D22(SD345) 650 630 610 590 570 550 530 510 490 470 450 D13 D22 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 年 度 図-3 引張強さ平均値 伸び平均値 % 伸び D13、D22(SD345) 30 28 26 24 22 20 18 16 14 12 10 D13 D22 H14 H15 H16 H17 H18 H19 年 度 H20 H21 H22 H23 図-4 伸び平均値 単位質量許容差、降伏点、引張強さ、伸びの平均値は、過去 10 年間においてほぼ一定の値とな っている。 (2)圧接材の圧接部径比、引張強さ 圧接部径比、引張強さの平均値を図―5、図―6に示す。 D22(SD345) 2.6 圧接部径比平均値 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 年 度 図-5 圧接部径比平均値 引張強さ平均値 N/mm2 D22(SD345) 650 630 610 590 570 550 530 510 490 470 450 H14 H15 H16 H17 H18 H19 年 度 H20 H21 H22 H23 図-6 引張強さ平均値 圧接材の圧接部径比、引張強さの平均値は、過去 10 年間においてほぼ一定の値と なっている。 (3)まとめ 鉄筋コンクリート用異形棒鋼の単位質量許容差、降伏点、引張強さ、伸び、また圧 接材の圧接部径比、引張強さについて、過去 10 年間の試験結果に変化・傾向は見られず、同様の 品質性状を示している。
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