「香港」という「地域」を観る

「香港」という「地域」を観る
谷垣真理子
(大学院総合文化研究科 地域文化研究専攻)
今日の授業の目標
「香港」という「地域」をより深く理解し
てもらう
„ 「地域文化研究」という学問分野を
知ってもらう
„ 「東アジア共同体」について少し考え
てもらう
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1.地域文化研究とは?
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「地域」という文脈のなかで、さまざまな事
象をおいてみて、そこから読み解く
→文学作品であっても、純粋なテキスト分析
だけを行うわけではない
「地域」の特性を描き出す
「地域」とは自らが設定する
→自分の興味関心に沿って「線引き」をする
2.日本における香港「像」
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買い物天国
グルメ
国際都市
「中(華)」と「西(洋)」との交流
中国へのゲートウェー
香港の言語
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公用語
書きことば:中国語、英語
話しことば:広東語
我是日本人/我係日本人
你来香港嗎?/你嚟唔嚟香港呀?
誰が「香港人」か
「香港人」とは?
→香港生まれ/香港育ち/血統
→制度的には「香港永住権」を有する者
・香港生まれの中国公民
・香港に連続して7年以上居住する中国公民
・香港永住権所有者の子女で香港以外で生
まれた中国籍者
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3.「香港」という「地域」
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中華帝国の一部
李鄭屋の後漢時代の遺跡
唐宋代:海上交通の要衝
海のシルクロード:外洋船が通過
広東省の一部
イギリス割譲時は広東省新安県の
一部
英領植民地としての歴史:戦前
三条約の形成
南京条約(1842):香港島
北京条約(1860):九龍半島の先端部
新界租借条約(1898)
九龍半島の基底部、99年間の租借
日本統治下の香港:
蒋介石支援ルート
ブラッククリスマス、軍票
英領植民地としての歴史:戦後
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中華人民共和国の成立:香港への大量
の移民、香港に定住
香港生まれの香港育ちの戦後世代台頭
1967年 :香港暴動
1978年 :中国の改革・開放政策始動
1980年代:香港返還問題の浮上
1982年 :中英交渉開始
中国回帰、中国との再統合
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1984年の中英共同声明
「一国二制度」方式
「主権回収」
「特区設立」:特別行政区
「港人治港」:高度の自治
「制度不変」
「繁栄保持」
返還後の香港特別行政区
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香港ドルは返還後も流通(人民元は外
貨)
法律はコモンロー
外交と国防は中央政府が担当(人民解
放軍は香港駐留)
行政長官は選挙で選出
行政会議(内閣に相当)と立法会(国
会に相当)
4.香港における「政治」の出現
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行政的民意吸収型政治
諮問委員会の設置
民間の有力者を登用
←コミュニティーリーダーとして
実績を評価、もしくは将来性に期待
システム内に吸収されたエリートが的確に住
民の不満を伝達しうるかが重要
→「制度疲労」すると社会運動など増加
返還問題と香港の民主化
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1980年代の返還問題浮上以降
上からの民主化
区議会選挙の始まり
中国側から「港人治港」の提起
香港生まれの香港育ちの戦後世代
→民主化で中国の人治に対抗
(中国共産党との対抗)
民主化の実験室
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香港での普通選挙の全面的実施
2017年から行政長官選挙
2020年から立法会選挙
→「管理された民主化」としての経験
の蓄積
「ポスト80世代」の台頭
→「中国共産党との対抗」というイデ
オロギーからの離脱?
5.東アジア共同体
「東アジア共同体」と「大東亜共栄圏」
・大東亜共栄圏:
1930年代終わりから40年代にかけて
日本で「東アジア」地域の拡大
「日本・中国・朝鮮」+「南方」(東南アジア)
・東アジア共同体:1991年にマレーシアのマ
ハティール首相が東アジア経済グループ
(EAEC)を提唱(東南アジアからの提唱)
東アジア共同体形成の問題点
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東アジア共同体形成の問題点?
1)共同体のメンバーシップが不確定
ASEAN+3、ASEAN+6、APEC
2)「東アジア」の範囲の未確定
地理的空間が確定=共同体形成か?
3)東アジア共同体の特質は?
アジア太平洋地域における民間航空の空路図(1988年)ABC
International, ABC Air Travel Atlas,1988(平野健一郎「東アジアにお
ける人の移動」『東アジア共同体の構築』岩波書店、2007年、138頁)
アジア太平洋地域における民間航空の空路図(2004年)ABC
International, ABC Air Travel Atlas,2004(平野健一郎「東アジアにお
ける人の移動」『東アジア共同体の構築』岩波書店、2007年、139頁)
東アジア共同体の顕在化
人の移動
航空網の整備
„ ネットワークから共同体へ→社会的・文化的実態
は存在するのか?
cf. マンガとアニメ、韓流
„ 「越境する」人々
東京山手線のなかの韓国・中国
ある広東省出身のディアスポラ家族
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