人生の羅針盤 2010 年 11 月 豊かな人生を作る一言集 豊かな人生を作る一言集 [窮地に陥った時の鉄則] 傷ましいことが起きました。群馬県の小学 6 年生の女の子が首つり自殺をしました。原因は 学校でのいじめです。いじめは、学級参観日に参加したフィリピン人の母についての悪口から 始まりました。そして、一部の同級生から女の子への悪口が繰り返されるようになり、最後は クラス全員から無視されたようです。 このクラスは、2 学期以降、担任教諭も統制出来ない状態となり、事実上、学級崩壊の状態 にあったようです。この女の子は、席も孤立、一人で給食を食べていました。最後の学校生活 となった社会見学では、女の子が泣きながら行きたくないと訴えたのを、担任が無理やり参加 させたと言われています。そこで、 「こんなときだけ来るのか」と同級生に言われたことが取り 返しのつかない状態にしました。 学校でのいじめ、職場でのパワハラなど、日常的 にいる場で、 繰り返し言葉や態度で攻撃することは、 大変な威力があります。物理的な武器を一切、使わ ずに命を奪うほどの威力があります。なぜ、言葉や 態度による攻撃が、これほどの威力を持つことがで きるのでしょうか。 人間には、負の感情と正の感情があります。負の感情とは恐怖、不安、悲しみ、怒り、嫌な 思いなどです。一方、正の感情とは嬉しさ、楽しさ、快い思いなどです。負の感情と正の感情 は、感情という点では同じですが、働きや特性は少し違います。 人間の特性として、負の感情である恐怖、不安、怒り、嫌な思いなどは、なかなか頭から離 れません。 (物忘れがひどくなった筆者でさえも)忘れよう、ぬぐい去ろうとしても、足の裏に ついた米粒のように、こびり付いたままです。一方、正の感情である嬉しさ、楽しさ、快い思 いなどは、なぜか長続きしません。しかも、その嬉しさ、楽しさ、快い思いなどが(幸運にも) 持続すると、その感情は鈍化します。 また、負の感情と正の感情を同時に抱いているような場合には、一般には負の感情が優勢と なります。例えば、恐怖を感じている、楽しみにしている、この二つの感情が同居しているよ うな状況では、一般には、恐怖を感じている感情が心理的に優勢になります。 このように考えると、負の感情の扱いは、いかに難しいかがわかります。負の感情は、一旦、 湧き上がってしまうと簡単に抑え込むことはできません。 さらに、負の感情を繰り返し抱くような状況になれば、それは心の中で定着し、日常の心理 を支配するようになります。こうなると、心の中で負の感情が再生産、自己増殖する可能性が あります。これは、その人を心理的に追い込んでしまい、最悪の場合には人間の生命に手をか けるほどのエネルギーを生み出してしまいます。自殺、殺人などが起きても不思議はありませ ん。 山や海で遭難をした場合、自力での脱出を試みるより、体力の消耗を少なくして救助を待つ のが鉄則とされています。先日のチリ鉱山での落盤事故はその典型的な例です。 この鉄則は、精神的に遭難、つまり心理的に追い込まれた場合でも当てはまります。例えば、 自殺を考えるほど負の感情に支配された場合、自分独りで(頑張って)抜け出すことは、余程 のことがない限り不可能です。そんなことより、時間が解決する、いつか誰かが救いの手を差 し伸べてくれる。そういう人がこの世の中に必ずいると信じることです。そうすれば、いつか 窮地から脱することができます。 筆者は、自殺を考えるほどではありませんが、窮地に陥ったことは何回かあります。今にな って分かることですが、その時、頼りにできた人、救いの手を差し伸べてくれた人などの存在 があったからこそ、窮地から脱することができたと思います。 (今は、その方々に感謝していま す。 ) 女の子にとって、自殺に至るまでの間、クラス全員に無視され、本来、統制すべき教師が何 の救いにもならないとなれば、最後に頼る先は両親だったのでしょう。ところが、その両親も 共働きで、日中は家にはいません。最後の手段である登校拒否を行使しても、家の中では独り ぼっちだったのです。 女の子が首をつるために使ったのがマフラーでした。そのマフラーは、大好きなお母さんに 贈るために自分で編んでいたものです。そのマフラーを首に掛ける瞬間、女の子が考えたこと は何だったでしょう。 Copyright(C) Satoru Haga, 2010, All rights reserved. 技術・経営の戦略研究・トータルサポータ ティー・エム研究所 E-Mail:[email protected] 工学博士 中小企業診断士 社会保険労務士(登録予定) 代表 芳賀 知 URL:http://homepage3.nifty.com/s-haga
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