2006 年 11 月号 人生の羅針盤 豊かな人生を作る一言集 豊かな人生を作る一言集 [いじめ問題で思い出す穏やかだった熱血先生] 最近の新聞、テレビなどの報道で、学校のいじめ問題が今までになくクローズアップされています。小 学生や中学生が次々と自ら命を絶ってしまうという、大変、痛ましい状況が報じられています。本来、前 途洋々たる未来が広がっているはずの子供たちの中に、明日にでも自ら命を絶つかもしれないという追い 詰められた学校生活を送っている子が少なくないということは、とても悲しい状況です。ただでさえ、少 子化問題を抱えている日本としても重大な問題です。 それに対して、一部の教師、校長、教育委員会の人達の、ひとごとのような、しかも何とか責任逃れを しようともがいている姿も、残念ながら目に入ってしまいます。ある校長は「いじめがあったかどうか確 認できていない。」「自殺の原因がいじめと思われる行為と関連あるか確認できていない。」 (この人達は、 「確認」という言葉が好きなのでしょうか)などと堂々とコメントしています。現場の責任者というのは、 何に対して責任をとるのでしょうか。そして、人間の命が失われているのに、何と言う感覚なのかと疑っ てしまいます。こんな人たちに日本の未来を担う子供達を預けているとは悲しくなります。 (どこかの組織 にも、同じような人達がいますが・・・)原因がなければ、問題は起きません。自殺の原因は学校以外に はありません。当然のことですが、学校以外でこの問題を解決できる場はありません。 いじめ問題が報じられるたびに、思い出すことがあります。 筆者の小学生時代のことです。ある時に、男の先生がクラス担任として新たに赴任してきました。おだ やかで真面目な印象の先生でした。それまでは、女の先生だったので、授業などの雰囲気が少し変わりま した。そのとき、クラスには少し目立つ女の子がいました。見た目も可愛らしく(人によって見方は違う かもしれませんが)、当時では珍しくクラッシックバレーを習っていました。先生が新しいクラスに慣れて きた頃です。クラスの中で、先生は、その女の子をひいきしているというようなうわさが出始めました。 まもなく、このうわさはクラスの中に何となく浸透していきました。 (後で考えると、先生がその女の子を ひいきしていたという客観的事実はなかったと思います。うわさとは恐いものです。 )そして、少しずつ、 クラスの中の様子が変わってきました。簡単に言うと、誰かが始めたわけでもないのですが、何となく、 その女の子に誰も話しかけなくなりました。そして、その女の子に話しかけられても、誰も返事をしなく なったのです。つまり、クラスのほとんどの子がその女の子を無視するようになったのです。まさしく、 いじめと呼べる状況になってしまったのです。 女の子も、今まで経験したことのないような大変な状況におかれている ことを感じました。しばらく、悩んだとは思いますが、その女の子は勇気 を出して、先生に相談に行きました。 先生は、それまで気が付いていなかったようで、大変、驚いたようです。 すぐに、クラス全員の前で話をしました。女の子からこのような話を聞い たが、みんな仲良くしてほしいと、淡々と、しかし、毅然として話をしま した。そのとき、隣に立っていた女の子は、先生が話しをしている間中、 泣いていました。 もともと、クラスの生徒達には、それほどの悪意はなかったのでしょう。その後は、氷が暖かい空気に 触れて溶けていくかのように、クラスの様子は少しずつ、何ごともなかったように、以前の様子に戻りま した。先生も、口にチャックをしたように、その後一切、この件についてふれることはありませんでした。 わずか 1∼2 ヶ月ほどの出来事でした。 -1- 当時の可愛らしかった女の子(今は、その面影も・・・?)は、最近では、先頭になって同級会の幹事 を行ったりしています。 当時の先生は、クラスの生徒達からすれば、ちょうど父親の年代であり、落ち着いた温厚な人柄の持ち 主でした。生徒に対して、怒ったり、大きな声を出したりすることは、一度もありませんでした。そんな 先生でしたが、学校の行事でピクニックに行ったとき、腕白盛りの男の子数人が先生に飛びかかったのを、 次々と投げ飛ばしている光景を見たことがあります。(先生は、若い頃、柔道をやっていたそうです。 ) 筆者も個人的には、この先生に大変、お世話になりました。生徒に対する愛情がひしひしと伝わってく るような先生でした。いろいろな相談などで、自宅にも何回か来て頂いたこともあります。最も感謝して いる先生の一人です。残念ながら、今は故人となってしまいました。もう相談することはできません。 Copyright (C) Satoru Haga 2006, All right reserved. 技術・経営の戦略研究・トータルサポータ ティー・エム研究所 E-Mail:[email protected] 工学博士 中小企業診断士 社会保険労務士(登録予定) 代表 芳賀 知 URL:http://homepage3.nifty.com/s-haga -2-
© Copyright 2024 Paperzz