整形外科過去問題集 - Hi-HO

整形外科学 過去問 1.頸椎の外傷で、追突事故の方が頸椎の骨傷がなくとも神経障害が起こり
やすい理由を述べよ。 頸椎は伸展すると上位頸椎の椎体後下縁と下位頸椎の椎弓とが接近し、脊
柱管は狭くなる。(動的脊柱管狭窄という)
追突では急速な過伸展が強制されるため骨傷がなくとも神経障害を起こし
やすい。(前屈では脱臼骨折で麻痺を発現する。)
2.人工関節の適応条件のうちで、変形性関節症と慢性関節リウマチとで最
も異なるものを挙げその理由を述べよ。 慢性関節リウマチでの適応年齢は変形性関節症より若くとも良い。
前者では、多数の関節が罹患しているために活動性が低く人工関節の耐用
年数が長いことが予想される。また、多数の関節の痛みや機能障害を改善す
る手段が他にないためでもある。
3.変形性脊椎症と脊椎骨粗鬆症とで異なる点を2つ挙げて説明せよ。 前者は骨量が多く硬く、容易には骨折を起こさないが、後者では逆で圧迫
骨折を起こしやすい。前者は椎間板が変性し不安定になりやすく、また、椎
間板の膨隆や骨棘形成、椎間関節の変性肥厚によって神経根や馬尾を圧迫し
て症状を出しやすい。
4.リーメンビューゲル装具は何の疾患の、どのくらいの年齢の患者に、何
の目的で使用されるかを述べよ。 乳児の先天性股関節脱臼の整復のために用いられる。
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5.肩のインピンジメント徴候とは何かを説明し、その徴候が見られる疾患
を3つ挙げよ。 肩甲骨を押さえ上肢を他動的に挙上(または屈曲内旋)することにより烏
口肩峰アーチと上腕骨大結節、腱板がぶつかり疼痛が誘発されること。
腱板断裂、肩峰下滑液包炎、石灰沈着性腱炎、上腕二頭筋長頭腱炎などで
みられる。
6.手舟状骨骨折の診断と病態の特徴、治療につき述べよ。 背屈位で手を突いて疼痛と運動制限が生じ、結節部やsnuff boxに腫脹と
圧痛がある。手関節のX線撮影(正側、回内外)で骨折線をみる。栄養血管の
走向から偽関節や中枢骨片壊死の危険性あり。
治療は、手掌∼前腕までのギブス固定、腸骨海綿骨移植術(Russe法)、
Herbert screw固定法など。
7.75歳の女性。誘因なく右膝関節の疼痛と腫脹を訴え来院した。 関節穿刺にて黄色の混濁した関節液を30㎖採取した。 考えられる疾患名を列挙し、それらの鑑別に有用な疾患固有の関節液検
査所見を1つずつ記せ。 ・偽痛風:偏光顕微鏡検査でピロリン酸カルシウム結晶を認める。
・慢性関節リウマチ:RA細胞、RA test(いずれでも良い)
・化膿性関節炎:培養陽性
8.足関節捻挫に対する冷却圧迫法(Thorndike)について述べよ。 患部にスポンジラバーを当て、弾力包帯を巻いて氷水中で30分間冷却す
る。
次いで氷水中より出して患部を拭き、乾いたスポンジラバーと弾力包帯に
かえる。さらに、24時間は患肢を挙上しておき、2日間は体重をかけない。
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9.骨幹端に生じやすい良性と悪性の原発性骨腫瘍をそれぞれ1つずつ挙 げ、そのうちの1つのX線所 見について記せ。
・良性腫瘍:非骨化性線維腫(他に骨軟骨腫、単発性骨嚢腫でも可)
・悪性腫瘍:骨肉腫
[骨肉腫のX線所見]
髄内の境界不鮮明な溶骨性、造骨性、または混合性病変と、骨皮質の破
壊、コドマン三角、スピク ラなどの骨膜反応
10.若い人の関節軟骨や椎間板が水分が多く、弾性に富む理由。
関節軟骨や椎間板の基質の固形成分は、コラゲン(タイプⅡ)とプロテオ
グリカンからなる。コラゲン線維は軟骨の弾力性に関係し、プロテオグリカ
ンは親水性が強い。
プロテオグリカンはほとんどが包水性大のコンドロイチン硫酸であるが、
加齢によってケラタン硫酸が増してくる。そのため若い人の方が水分が多
い。また、加齢によってコラゲン線維が長くなるため、若い人の方が弾性に
富む。
11.人工関節の問題点と適応される条件は?
[問題点]
①感染
②Loosening
③ソケットの磨耗、骨頭の損傷
④術後の脱臼
⑤関節周囲の骨化
[適応される条件]
①60歳以上で、痛みがある進行した関節症
②50歳以上の両側性の疼痛のある股関節症で、他に代わりの手術方法がな
いもの
③関節リウマチ(若年であっても適応を考慮しなければならないことがあ
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る)
④痛み、歩行機能、関節可動性の障害程度による。年齢は問わない。
夜間痛のあるもの、200∼300メートル以上歩けない例など。
12.痛風と偽痛風の原因、好発部位、好発年齢、性差、検査結果、治療の
相違点をふまえてそれぞれを わかりやすく説明せよ。
[痛風]
①原因:尿酸塩の結晶が関節液の中に析出
②好発部位:拇趾基関節、足関節、足部
③好発年齢:40、50歳代が初発のピーク
④性差:80∼90%が男性
⑤検査結果:結節内に尿酸ナトリウム結晶がみられる。(偏光顕微鏡で強
い負の複屈折性を示す)
⑥治療:発作時はコルヒチン、NSAIDs
中間期は尿酸利尿剤のbenzbromanone、尿酸酸性抑制剤の
allopurinol
[偽痛風]
①原因:ピロリン酸カルシウム結晶の軟骨、靱帯、腱、関節包などへの沈
着
②好発部位:膝、手関節、股関節
③好発年齢:特発性では加齢と関連
④性差:型によって異なる
⑤検査結果:関節液中にピロリン酸カルシウムの結晶(弱い正の複屈折性
を示す)
⑥治療:急性発作時には速やかに関節穿刺を行い関節内の結晶や白血球を
洗浄排出
13.17歳男性、3weeks前から膝関節周辺部の痛みが生じ、徐々に増悪
しつつある。局所は腫脹があり、圧痛も強い。X-p上では骨腫瘍が疑
われ、胸部X-pでは多発性のcoin-lesionが認められる。以上から疑
われる骨腫瘍名とその理由について述べよ。
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[疑われる腫瘍名]
骨肉腫
[その理由]
10代に好発する骨原発の疾患は軟骨芽細胞腫、骨軟骨腫、類骨腫、骨肉
腫、Ewing肉腫など様々 あるが、好発部位が長管骨の骨幹端(膝関節周
囲)であること、局所の腫脹、圧痛、また胸部X-pで 肺転移を起こす悪性
腫瘍ということから骨肉腫と考えられる。
14.colles骨折について、受傷機転、好発年齢、症状、治療、合併症に
ついて述べよ。
[受傷機転]
手掌を地面につくことで起こる。
[好発年齢]
高齢者、特に女性で50歳以上
[症状]
末梢端(関節より2㎝)の橈骨骨折、ときに粉砕骨折。末梢部の背側転
位。
外見はフォーク状変形を呈する。
[治療]
局所麻酔による徒手整復、手関節屈曲尺屈位のcasting
[合併症]
尺骨茎状突起骨折や、稀に舟状骨折を伴う。
15.脊柱管狭窄症による間欠性跛行や下肢神経症状が腰の前屈姿勢をとる
と軽快する理由を述べよ。
腰の前屈姿勢をとることにより、生理的な腰椎前弯が減少し、脊柱管の内
腔が広がるために圧迫が減少し症状が軽快する。
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16.(学校教育による加熱した発育期のスポーツ障害において)スポーツ
による障害を3つ挙げ、それを起こしやすいスポーツ、予防対策、治
療について述べよ。
①野球肘
・起こしやすいスポーツ:野球
・予防対策:骨端線が閉鎖するまでの年齢では、無理な投球を控える。
・治療:保存的治療、観血的治療
②ジャンパー膝
・起こしやすいスポーツ:バレー、バスケット
・予防対策:運動制限
・治療:鎮痛治療
③疲労骨折
・起こしやすいスポーツ:マラソン
・予防対策:発育期の過度な走行などの制限
・治療:安静。中足骨の疲労骨折は、中足アーチ支えによって治癒
17.正中神経と尺骨神経に生ずるentrapment neuropathyを各々1つ
ずつ挙げ、症状と治療について述べよ。
[正中神経…手根管症候群]
解剖学的特徴:手根管とは屈筋支帯と手根管に囲まれ管腔を形成してい
る部分。内部には正中神経、長母指屈筋腱、浅指屈筋腱、深指屈筋腱が通
る。
症状:①正中神経の支配領域に痛みと感覚異常(痛みは夜間に強い)
②母指球筋萎縮
③母指対立運動障害
④母・示・中指先端部のしびれ
⑤猿手
診断:①Tinel's sign陽性…手関節屈側で正中神経を軽圧すると放散痛
がある
②Phalen test…手関節掌屈による知覚障害の増強
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治療:①軽症の場合…ステロイド剤の屈筋腱周囲への注入と背屈位の手
関節固定
②重症の場合…手根靱帯を切り、手根管を開放する
[尺骨神経…肘部管症候群]
解剖学的特徴:尺骨神経溝の部分は線維性筋膜で覆われていて、肘部管
というトンネルを形成しているため、絞扼性神経障害を生じやすい。
症状:①尺骨神経の支配領域の痛みと感覚異常
②骨間筋の萎縮
③小・薬指のしびれ
④鷲爪手
病態:①変形性関節症、外反変形、尺側手根屈筋の近位部の線維性バン
ドによる絞扼などによる尺骨神経不全麻痺
②摩擦性神経炎
治療:Osborne法…絞扼されている神経を開放
King法…内上顆を切除
Earmonth法…尺骨神経を前方に移動する方法
18.アキレス腱断裂患者の訴えの特徴、診断手技について述べよ。
[特徴]
爪先立ちなどはできないが、非加重時の底屈は可能なので注意を要す る。
[診断手技]
腹臥位で膝関節を直角にしたとき、正常にみられる軽度尖足位の保持が
できない。また、ふくらは ぎを握っても、これが伝達されず足関節底屈が
起こらない。
19.開放骨折の処置をその順を追って記せ。
⑴清浄化またはブラッシング(Cleansing or brushing)
創を清潔なガーゼで覆う。剃毛し、hibiten液で患肢を広くブラッシング
する。創をきれいにする
ため強い消毒液を使用してはいけない。
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⑵洗浄(Irrigation)
多量の生理的食塩水で洗浄する。洗浄中もう一度皮膚をhibiten液で清浄
化する。
⑶デブリドマン(debridement)…挫滅壊死組織切除、辺縁切除
①創の辺縁を幅2.5mm切除する。
②筋膜の緊張があれば皮膚に切開を加える。
③挫滅された筋は、新鮮な出血が見え、ちょっと触れて収縮するところま
で切除する。
④骨はときに小片を少しかじりとることがあっても、切除するようなこと
はない
⑷汚染除去(Decontaamination)
骨片についた汚い異物は除去し、骨の切除は可能な限り避ける。直達で
きるところで神経や腱が切れている場合は、できれば一時的に修復(縫合す
る)
⑸創閉鎖(Closure of wound)
皮膚が緊張し創の一次閉鎖のできないことが多い。可能な限り、局所の
皮膚の移動と遊離植皮で創 を閉鎖するようにする。受傷後8時間(golden
period)以上経っている場合、または創の汚染がひどく感染の危険のあると
きは閉鎖を避けるべきである。ガーゼを創に硬くパックし、創縁を3-0ワイ
ヤで緊張のない程度に縛っておき、後で閉鎖するか、植皮を行う。
20.偽関節の好発部位を2つ挙げ、その起こりやすい理由を述べよ。
[好発部位]
⑴脛骨骨幹部、特に下3分の1
⑵大腿骨頸部
⑶上腕骨骨幹部
⑷前腕骨
⑸手の舟状骨
[原因]
⑴骨の感染(化膿性骨髄炎)
⑵一つまたは二つの骨片の血流供給の障害
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⑶骨片の間に軟部組織の介入
⑷医原性
①不適当な固定:骨折部の回旋と剪断ストレスを許す
②完全に癒合するまで適当な固定をしない
③牽引をしすぎて骨片の間が開いてしまう
④思慮のない観血的整復
21.悪性骨腫瘍の治療で化学療法はなぜ重要か理由を述べよ。
悪性骨腫瘍では、治療として関節離断あるいは切断術などの根治手術を行
うが、手術に先立ち、あるいは手術後も化学療法を行う。目的は診断時すで
に存在する微少転移巣の撲滅と原発巣の縮小にある。特に転移巣に関して
は、悪性骨腫瘍の場合、いかに早期に根治手術を行っても、その時点では腫
瘍細胞はすでに体内に散布されているために化学療法はほぼ必須で、重要で
あると考えられる。
22.阻血性拘縮の発現機序を、その起こりやすい骨折を例にとって説明せ
よ。
[代表例]
肘部外傷、特に上腕骨顆上骨折(上腕動脈)
膝部外傷、特に膝関節脱臼や脛骨上部骨折(膝窩動脈)
特に小児の上腕骨顆上骨折で最も頻繁に発生する。
[定義]
阻血性拘縮(Volkmann拘縮):深部動脈の不完全閉鎖によって生ずる
筋・神経への血行障害で、筋組織が特に強く変性、壊死に陥り、線維組織に
よって置換され ることによって起こる筋原性の拘縮
[機序]
6時間以上動脈閉塞が続き、中程度の側副血行がある場合起こりうる。
・神経への障害:
15∼30分の阻血・伝導の遮断
6時間・軸索の変性
12時間・Waller変性
24時間・神経の不可逆性変化
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・筋への障害:
6時間の阻血・収縮性の障害
6∼8時間・筋線維の90%の変性
23.最近、転倒や軽い追突事故などによる比較的軽い中心性脊髄損傷が増
えている。この中心性脊髄損 傷の特徴、損傷の機序、起こりやすい
基礎的疾患について記せ。
[特徴]
外傷性の脊髄損傷は大部分は脊椎損傷に合併して発生する。ただし、骨
傷型との関係では、一般に 脱臼骨折に合併しやすい傾向にあるが、高度の
脱臼骨折に脊髄損傷が認められなかったり、逆に骨傷が明らかでない(無骨
傷)のに完全脊髄損傷を合併することもあり、両者の関係は明らかではな
い。
骨傷の存在しない脊髄損傷は頸椎部に多くみられる。
[損傷の機序]
①交通外傷
加速、減速、または側方からの衝突:むち打ち損傷
頸部の損傷:頸椎捻挫、外傷性頸部症候群
②スポーツで受ける損傷
フットボール、トランポリン、飛び込み
③その他
頭を打つ、転落、腕を強く引っ張る、頸椎の片側性の脱臼、職業および
姿勢
[起こりやすい基礎疾患]
①変性、加齢
②炎症:関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎
③腫瘍:新生物、転移巣
④先天性異常:先天性椎体癒合
⑤なで肩
24.脊椎管狭窄症による馬尾性間欠性跛行と閉塞性動脈硬化症による血管
性間欠跛行の症状の鑑別点を述べよ。
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馬尾性間欠性跛行は症状発現後、前屈位またはしゃがみ込んで数分間休憩
をとるとしびれが急速に消退するのに対し、血管性間欠性跛行では、休息時
の体位と関係なく、まっすぐ立って休んでも疼痛が軽快する。また、馬尾性
間欠性跛行ではたいていの患者に腱反射の障害が起こり、アキレス腱反射が
最も強く障害され、知覚障害があればL5とS1の支配領域が主である。また、
足背動脈の拍動は存在し、左右差がなく、この点からも動脈閉塞性疾患と鑑
別できる。
25.慢性関節リウマチの手指にみられる変形を2つ挙げ、その変形の特徴
と原因を記せ。
①ボタン穴変形
PIP関節屈曲、DIP関節過伸展位をとる変性で、指背腱膜の中節骨基部背
面への付着部、すなわちcentral slipが断裂し、両側のlateral bandsが掌
側に転位することによって生じる。
②swanneck変形
DIP関節の屈曲変形に、PIP関節の過伸展を同時に示しているものであ
る。指背腱膜の遠位端の末 節骨基部背側への付着部が断裂すると生じる。
26.外来患者の膝関節から黄色の混濁した液を採取した。念頭に置くべき
疾患、鑑別に行うべき検査を列挙せよ。
[急性化膿性関節炎]
関節の穿刺液の検査…WBC 、多形核白血球の比率が高い、ムチン沈降
が不良
関節液の塗沫染色 or 培養…黄色ブドウ球菌の同定
抗生物質に対する感受性検査
[結核性関節炎]
ツベルクリン反応(+)
関節の穿刺液の検査…結核菌の同定
髄膜のbiopsy
[慢性関節リウマチ]
血液検査…α2、γグロブリンの増加、アルブミンの減少、リウマトイド
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因子(+)
27.骨折や脱臼はその発生部位によって血管や神経の損傷を合併すること
がある。骨折の部位とそれに 合併しやすい血管や神経の組み合わせ
を、2組記せ。
・上腕骨顆上骨折➡上腕動脈、橈骨神経
・肩関節脱臼➡腋窩動脈、腋窩神経
28.骨粗鬆症で発生しやすい骨折の部位を2カ所挙げ、その手術目的につ
いて50字で記せ。
脊椎、大腿骨頸部
29.手術的治療の適応になりやすい脊椎転移癌を2つ挙げ、その手術目的
について50字で記せ。
・乳癌、甲状腺癌による脊椎転移癌
癌の転移巣の発育が遅いので、手術的治療を施すと予後が良いため。
30.腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱菅狭窄症では腰椎前屈位で症状が改善
し後屈位で悪化することがし ばしばみられるが、その機序を50字で
説明せよ。
・腰椎椎間板にかかる力について
①脊椎が直立しているときは圧迫力はまっすぐ椎間板をよぎる。
②脊柱が垂直面からはずれると圧迫力は剪力になる。
31.屈筋腱損傷で治療可能な部位は何と呼ばれているか。
また、その理由を解剖学的特徴に基づいて50字で説明せよ。
no man's land(PIP関節から手掌中央皮線の間)
腱の一時的縫合を行うと、腱鞘と癒着し、指の機能不全が非常に起こりや
すいためである。
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32.骨肉腫の化学療法の目的を箇条書きにせよ。
診断時すでに存在する肺微小転移巣の撲滅と原発巣の縮小
33.脊柱側弯症の変形程度をどのような指標で表すか図示せよ。
Cobb法による計測:最大に傾斜した椎体の上下縁のなす角度を測る。
34.半月板損傷に特徴的な症状、徒手検査、確定診断に参考となる放射線
学的検査、治療法について100字で記せ。
[症状]
痛み、嵌頓 locking(膝を完全に伸ばせなくなる)、
関節血腫 hemarthrosis(急性期に著明)、膝くずれ giving way
大腿四頭筋の萎縮(慢性例で常にみられる)
catching(なんとなく膝をつかまれているようでスムーズに動かない)
[徒手検査]
疼痛誘発テスト
①圧迫…Bohler徴候
②伸展…Jones&Fisher徴候(ワトソン&ジョーンズテスト)
③回旋…Apleyテスト
Click誘発テスト
McMurrayテスト
[放射線学的検査]
Double contrast horizontal beam method
断裂部分に造影剤が流入する。
[治療法]
初回のエピソード➡膝の固定による保存的療法
再発性のエピソード➡大腿四頭筋の強固訓練が重要
小さいflap断裂やバケツ柄状断裂があるとき➡部分的meniscotomyの
使用
外科的治療は症状がひどい場合のみ施行されるが稀である。
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35.変形性膝関節症へのステロイド剤の関節内注入を頻繁に行うことの弊
害を述べよ。
①ステロイド剤は軟骨代謝に対して異化的作用を持ち、長期的には軟骨の変
性を助長し、逆の効果を持 つ。
②頻回の注射は感染の機会をそれだけ多くすることになる。いったん感染を
起こすと、ステロイドの作 用も相まって、感染を増悪させる危険性があ
る。
③関節内注入用のステロイド剤には徐放性の懸濁液になっているものがあ
る。
懸濁性物質は一種の結晶性形態のため、いわゆる結晶誘発性関節炎を惹起
することがある。
36.慢性関節リウマチの診断基準を述べよ。(7項目)
①朝のこわばり、少なくとも1時間(≧6週)
②3つ以上の関節の腫脹
③手関節またはMCP関節またはPIP関節の腫脹(≧6週)
④対称性腫脹
⑤手のX線変化
⑥皮下結節
⑦リウマトイド因子
以上7項目のうち4項目以上あればRAと診断
37.運動麻痺を部位によって4つに分類し、その麻痺を起こす神経の障害
部位とそれに該当する疾患を 2つずつ記せ。
・四肢麻痺…頸髄…頚髄損傷、頚髄腫瘍、頸椎後縦靭帯骨化症
・対麻痺…胸髄…黄色靭帯骨化症、脊椎カリエス、脊髄動静脈奇形
・片麻痺…内包…脳内出血、脳梗塞
・単麻痺…末梢神経(神経根)…腕神経叢引抜き損傷、腰椎椎間板ヘルニア
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38.手根管症候群の診断と治療についてのべよ。
[診断]
正中神経領域(母指∼環指橈側1/2)の痛みとしびれ、母指球筋の萎縮
があり、指巧緻運動障害と 腫脹感、上肢脱力を伴う。手根管部の叩打によ
り放散痛が生じ、掌屈テストが陽性。ほかにEMG、
NCVが異常。
[治療]
保存的療法では副腎皮質ホルモンの屈筋腱鞘内注入とcock up splint。
手術は手根靱帯切離(手根管開放術)
39.アキレス腱断裂を疑わせる所見についてのべよ。
①後ろから蹴られたような、後ろからボールをぶつけられたような衝撃を受
けたこと。
②断裂部の陥凹を触知する。
③Thompson-simmons squeeze test
健側で下腿三頭筋をつかむと足関節底屈が誘発されるが、完全断裂では消
失する。
40.頸椎のX線写真を斜位で撮影する目的は何か。また、どのようになっ
て見え、そして何を障害する か。変形性脊椎症の病態に関連づけて
記述せよ。
頸椎の斜位像撮影の主な目的は椎間孔の観察である。椎間孔の形は耳介に
似る。変形性脊椎症では、ルシュカ関節や椎間関節、主として前者の変性に
より増殖性変化が起こり、骨棘形成のため椎間孔は前後から狭窄される。そ
の結果、この孔を通る神経根が圧迫され、頸椎症性神経根症が発現する。
41.反復性肩関節脱臼の反復しやすくなっている理由を述べよ。
通常は反復性肩関節脱臼に先行して外傷性肩関節脱臼が存在する。この
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際、骨頭には陥凹骨折であるHill-sachs損傷や関節窩縁の前下部の損傷であ
るBankart損傷が発生する。保存療法ではこの損傷は修復されがたいため、
脱臼しやすい特異な肢位になると、比較的軽度な外力で脱臼するようにな
る。
42.肘内障の徒手整復の仕方を略述せよ。
肘内障は肘が伸展、内旋で発現する。その整復は術者の一方の手で肘を握
り、その親指を患者の橈骨小頭におく。他の手で患者の手首を挟むようにし
て握り、肘を伸展し牽引しながら外旋し、親指で橈骨小頭を押しつつ肘を曲
げると整復される。
43.バケツ柄状断裂とは何かを説明し、そのときの特徴的症状の出現する
機序を説明せよ。
バケツ柄状断裂は膝半月板の損傷の一つの形態であり、断裂部がちょうど
バケツの柄のように遊離したものである。ひざを曲げたときにバケツ柄の部
分が関節の中央部へ移動し、伸展時にそれが大腿骨と脛骨の関節面との間に
挟まった後に本来の部位に戻ると弾発現象を起こす。挟まったままだと、膝
は伸びずロッキングの状態になる。
44.神経縫合術についてのべよ。
切断された神経の断端同士を引き寄せて縫合する方法で、縫合糸をかける
部位により、
①外神経鞘縫合
②外神経鞘・神経束縫合
③神経束縫合
に分類される。なお、神経腫を形成していれば、切除して両端を縫合し、挫
滅された神経断端は鋭利なメスで切って新鮮化した後に縫合する。
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