新ヒラリ ズム 6の 23 心 ( 魂 ) ある 陽羅 義光 〈心〉を ウィ キペデ ィアで 調べて みる と こうある 。 【心は非 常に 多義的 ・抽象 的な 概念で あ り文脈に 応じ て多様 な意味 をも つ言葉で あり 、人間 や生き 物の 精神的 な 作用や、 それ のもと になる もの などを指 し、 感情、 意志、 知識 、思い や り、情な どを 含みつ つ指し てい る】 いやは や曖 昧模糊 として 、よく 解ら な い。 本来〈 心〉 とは、 よく解 らない 語で は ある。 だいた い〈心〉と いう ものが、人間の ど の部分に ある のかが 解らな い。 頭(脳 )なの か、胸( 心臓)なの か、血 管( 血)なのか 、性器 なのか 、 あるいは DN Aなの か。 田宮虎 彦は 〈心〉 を連発 する 作家だ が 、本人は どう 考えて いたの か、 一応引用 して みるが 、よく 解らな い。 【心のど こか にきざ みこま れてい た『 足 摺岬』】 【心に淋 しさ をかみ しめな がら『 落城 』】 【心の中 にほ のかな 灯をも やしつ づけ た 『絵本 』】 【心の中 にひ としく 並べて 『菊坂 』】 【心の中 の淋 しさ『 童話 』】 こんな 具合 だ。 〈心〉は 〈愛 〉など と同様 に、 曖昧模 糊 としてい るか ら、そ ういう 語は 本当は使 わな い方が 賢明な のだ。 「心に淋 しさ をかみ しめな がら」 より も 、 「淋しさ をか みしめ ながら 」のほ うが 、 文章的に もす っきり してい る。 田宮虎 彦は 、それ でもた しかに 、〈 心 〉に思い 入れ がある のだ。 〈心〉で なく てはな らぬも のがあ るの だ 。 それは なん だろう 。 やはり よく 解らな い。 仮定だ が、〈心 〉を信 じてい たのか も しれない 。 あるい は、〈心 〉の存 在を信 じたい の かもしれ ない 。 となる と、〈心 〉は〈 魂〉と いうも の かもしれ ない 。 〈魂〉を 、こ んどは 、 『広辞苑 』で 引いて みる。 【動物の 肉体 に宿っ て心の はた らきを つ かさどる と考 えられ るもの 。古 来多く肉 体を 離れて も存在 すると した 】 こ こ で いう 「動物 」とは 、「 人間」 で あっても よい 。 つまり 、 〈心〉と〈魂〉は同 義語 ではな くとも、切 っても 切れな い関 係 というこ とで ある。 よって〈心 〉を 連発 する作 家は 、 〈 魂〉の 存在を信 じて いる作 家であ り、 かなり古 いタ イプの 作家と いうこ とに な る。 けれど も、 それで は新し いタ イプが 上 等で正解 かと いうと 、いず れは 古いタイ プに なるわ けで、 百年 (千年 で もよい) サイ クルで 考えれ ば、 古いとか 新し いとか は、大 きな問 題で は なくなる はず だ。 現代科 学の 専門家 は、 〈魂〉な んて いう と、空々 しく感 じるも のな のだ ろうが、 現代 科学で も〈魂 〉の存 在を 完 全に否定 はで きてい ない。 一般人 はな おさら で。秋 川雅史 が〈 魂 〉の不滅 を朗 々と歌 う、 『千の風 にな って』 が大ヒ ット したの も肯け る。 【わたし のお 墓の前 で泣か ないで くだ さ い そこに わた しはい ません 死んで なん か いません 千の風 に千 の風に なって 】 云々と いう あの歌 だ。 人間を「個 」とか んがえ れば 、肉体 の 死滅によ って 、 〈 心〉も〈魂 〉も 死滅する が、人間 を「DN A」と考 えれ ば、 〈心〉も〈魂〉も、人 類が 死 滅するま では 、生き ている ことに なる 。 この発 想が 当たっ ている かどう かは 解 らない。 だが作 家 た るもの 、折角 〈心 〉を使 う なら、少 なく とも「 そこま で」 考えて、 使う べきで あろう 。 【おれは 人間 の魂の 側につ くだけ で、 あ とは右に も左 にもつ かない 】 このブ コウ スキー の言葉 は、 「そこ まで 」考えて( もし 考えて ないな ら 体感的に )使 われた もので ある。 やはり 「そ こまで 」考え て使 われた 、 畠山拓の 『魂 につい て』と いう 作品から 引用 。 【臨終の 時、 義姉は 言った 。 「開けて くれ 」 家の者 は、 いよい よ時が きたな と、 悟 った。 私が幼 い頃 、育っ た家は 藁葺き 屋根 だ った。 天井は 高か ったし 、一 階建て だっ たが 、屋根裏に 通じ る階段 があっ た。 屋根裏 は暗 かった が、面 白かっ た。 煙の煤 で、 黒く光 ってい た。 人の魂 は体 から抜 けると 、煙の よう に 、上に昇 るの だ。 義姉が 「開 けてく れ」と 言っ たのは 、 魂の通り 道が 欲しい という 事だ った。 幼いこ ども が何も 知らず に、階 段を 登 って、屋 根裏 の窓を 開ける 。 義姉は 事切 れた】 〈人間滅 亡教 〉の天 才深沢 七郎み たい に 、 【人間は 死ん で霊魂 が残る なんて でた ら めだ。 天国と か地 獄なん てもの はある わけ が ない】 という ふう に断言 してし まえ ばそれ で すむが、 そう いう人 でもそ れこ そ〈心〉 の隅 に、死 後の〈 魂〉 を( 信 じ ないまで も) 夢想し たりし てい るものだ 。 もうひ とつ、最 後に 、 〈魂〉を 歌った、作者不詳 の一 篇の詩 の(現存 す る一部分 のみ )を紹 介する 。 タイト ルは たしか 、 『魂の方 程式 』 だった とお もうが 、正確 には憶 えて い ない。 「魂」という 語が はいっ ていて 、珍し い と感じて いた 。 詩のほ うも 、うろ 覚えだ が、そ う大 き くはちが って いない はずだ 。 【きのう も太 陽がの ぼり 太陽が きえ て きょう も空 気が透 明にな り 空気が 白濁 して あした も森 がさわ ぎはじ め 森がお とな しくな って おそら く人 間の魂 の芯の 芯には どうし よう もない 哀しみ があっ て それは 神仏 でも本 当は救 えぬ どうし よう もない 哀しみ であっ て 本能的 に人 間は宇 宙の その真 実を 解って いて だから どう しても 魂の問 題 には触 れた がらな いので あって かわり に太 陽や空 気や森 が 厳しい ほど 美しく 発言し てくれ て 人間は それ でも気 づかぬ ふりで 神仏 に祈っ て あるい は魂 の芯の 芯をや わらか く 包みこ む何 ものか に祈っ て その何 もの かの正 体はわ からぬ が わから ない なりに わかっ ていて 照れの ため か手を 合わさ ないの に どこか 見え ない次 元で手 を合わ せて い て】
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