平成18年度国際的な視野、識見を有する中核的教員を育成するための海外派遣研修 □ B8-11Y団 平成18年11月16日~12月1日 派遣国 スペイン □ 伊勢崎市立殖蓮第二小学校 田島 昇 太田市立強戸小学校 小林 あやみ 1 はじめに イベリア半島の4/5をしめるスペイン。古くからヨーロッパとアフリカの架け橋として様 々な民族が行き交い文化が融合した地である。1986年にEUに統合し民主化の一途にある バルセロナオリンピックを契機として高度経済成長の最中である。1992年の教育改革を受 けて17の自治州が、独自の教育施策を行っている。今回バルセロナとマドリッドの二都市を 訪問した。スペインの主な教育の特色について報告したい。 2 スペインの教育事情 フランコの独裁政権から民主化になり教育に視点があたるようになってほぼ10年。EU諸 国への教育内容や制度への適合化に向けて、1992年教育改革「ROE」を実施した。主な 特徴は下記の通りである。 1 義務教育期間を8年から10年に移行 2 8才から外国語(英語かフランス語)の必修 3 宗教の自由選択制の導入 4 中等教育より明確な教育的分化(コース制化)や職能化(専門学科化) 5 一クラスの少人数化(初等教育40人から25人へ) これをうけ、スペインの教育の大きな特徴を述べたい。 (1)学校の教育制度について 家庭での役割や学校での役割が明確化しており学校や教師は学習指導に力を注ぐことが可能 である。又、家庭においても昼には皆、家にもどり一緒に昼食をとり家族の絆を深める。初等 義務教育の低学年においては日に4回の送り迎えも家族の仕事である。義務教育の年限を10 年に移行したことや少人数教育、義務教育の留年制度においても基礎教育の充実を図ることが 重視されている。又、学校の運営システムも校長、教務、事務、生徒代表、PTA代表、市職 員、地域住民からなる「学校評議会」制度を取り入れ校長、教務、事務の3人がスタッフを組 み学校経営についての方針を学校評議会にかけ、承認されると4年間その学校の運営を任され 特色ある学校運営が行われている。教師は一度採用されると同一校に終身雇用となる。 (2)職業教育の充実 義務の中等 学校においても職業学科が取り入れられ、 後期の中 等教 育において も普通中等学校と中級職業教育 学校と2 つの コースに分 かれ教育的分化が進められ職能 化されて いる 。自分の特 技や趣味を生かし学校教育の中 で将来の 職業 選択が可能 である。早い段階からいろいろ な選択肢 が用 意され社会 参加への道がひらかれている。 生きる力 は生 きていく力 とおきかえられるであろう。日 本におい ても 今、進路教 育の意義が叫ばれている所でも ある。 3 終わりに スペインの風土や気質にも関係していると思うが義務教育費や医療費が無料という社会保障 制度が充実している分、今を十分に楽しんでいる様子が見受けられた。又、高度経済成長にと もなう移民の増加も学校教育の中で大きな課題となっているようである。外国語の必修や宗教 の導入などヨーロッパ大陸と隣接する国ならではである。教育内容の充実や系統的、発展的な 指導、個に応じた指導、地域や児童の実態に応じた指導方法など両国とも同じ課題をかかえて いる。日本では教師の人事評価制度も導入されたが、近い将来スペインにおいても教師の意識 改革や質の向上問われるであろう。 今回の視察を通して、子ども達一人ひとりの個性を生かしより人間らしく生きる生き方、人 としてどう生きるのか、生き方の教育をなげかけられた気がする。もう一度自分自身に問いか けていきたい。 -1-
© Copyright 2024 Paperzz