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いちごステーションだより
第 35 便
2010 年 12 月 16 日
【栽培ノート:2010 年 12 月】
<定植日:9 月 13 日~15 日>
[生育状況(2010 年 12 月 15 日現在)]
12 月 2 日:第 1 花房の収穫開始(写真 1)
[定期作業]
適宜収穫
11 月 29 日:電照開始
[防除]
11 月 16 日
ハダニ対策、うどんこ病予防の薬剤散布
12 月 7 日
ハダニ対策の薬剤散布
写真 1
今作も収穫が始まりました
【土着天敵を観察する:ハダニの天敵】
今年、栃木県ではハダニの多発が予測されており、誠和小金井工場
のハウスでもハダニ対策を例年よりもきつめに行っています。
ハダニの天敵といえば市販もされているチリカブリダニやミヤコカ
ブリダニが有名ですが、ほかにも土着の天敵が数多くいるのをご存知
でしょうか。今回はその中からハダニタマバエ(ハダニバエとも呼ば
れる)とハダニカブリケシハネカクシを紹介します。
写真 2、3 はハダニ発生の比較的初期から登場する天敵の一つ、ハダ
ニタマバエ類の幼虫と成虫です。以前アブラムシの天敵としてご紹介
写真 2 ハダニを捕食するハダニタマバ
したヒラタアブや、市販されているショクガタマバエの幼虫に良く似
エの幼虫
ていますが、体長 1.5mm ほどとはるかに小型で目立ちません。体の色
は半透明で、透けている内蔵の色が食べているハダニの種類によって
変わり、赤いハダニを食べれば赤くなります。幼虫は細くとがった方
が頭です。ハダニの捕獲法はシンプルで、葉の裏側を中心に歩き回り、
当たるを幸いと捕獲します。成熟幼虫の 1 日の食事量はハダニの成虫
なら 4 匹、卵なら最大 30 個ほどです。残念ながらこの虫の研究はあま
り進んでおらず日本に何種が生息しているのかもよくわかっていませ
んが、ハダニの発生のピークと同様に春と秋の 2 回発生のピークがあ
ります。比較的低温にも強いため九州ではハダニがいれば冬期でも捕
食活動を行うことが知られています。
写真 4 はハダニカブリケシハネカクシの幼虫です。
成虫は体長 1mm、
写真 3
ハダニタマバエの成虫
黒い胡麻粒のような甲虫で(写真 5)、いつもお尻を振り上げて歩き回
っている変わった虫です。成虫の動きは非常に素早く、危険を感じる
と跳ねて逃げるため観察しにくいですが、幼虫は大きさ 2mm ほどでハ
ダニのコロニーで容易に見つけることができます。非常によく似た仲
間に幼虫の頭部近くの斑点がないヒメハダニカブリケシハネカクシが
いますが、ハダニ天敵として区別する必要はありません。これらの昆
虫は非常に大食漢で、ヒメハダニカブリケシハネカクシ成虫の生存期
間におけるハダニ捕食数は卵のみなら 7500 個、ハダニ成虫のみなら
2000 匹にもなります。これに幼虫時代の捕食数 400 個を加えれば生涯
で実に約 8000 個もの卵を食べる計算になります。特に 3 齢幼虫はハダ
写真 4 ハダニカブリケシハネカクシの
幼虫
ニの成虫捕獲能力にも優れているため、幅広いステージのハダニを退
治することができます。またこれらの昆虫は 10m 以上離れた場所から
も正確にハダニの発生した植物を見分けて飛んでくる能力があります。
自然界でハダニ害によって植物が枯れることがないのはこういった昆
虫の働きと考えられています。一方で、非常に多くのハダニを必要と
するこの昆虫はハダニ発生の初期抑制に失敗した目印でもあります。
圃場内でお目にかからずに済むように、日々の管理をしていきたいも
のです。
写真 5 ハダニカブリケシハネカクシの成虫
参考文献:川野勝彦. 1969. ハダニバエの生活史. 昆虫. 37(2):pp.127-133
下田武志, 真梶徳純, 天野洋.
1993.
クズにおけるヒメハダニカブリケシハネカクシの発生消長とその発育
および産卵に及ぼすハダニ捕食数の影響. 日本応用動物昆虫学会誌. 37(2):pp.75-82
T. Shimoda and J. Takabayashi. 2001. Migration of specialist
distributed spider mites.
insect predators to exploit patchily
Population Ecology 43(1):pp.15-21
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