PC業務遂行のための在学中からトータルパッケージを活用した 就労支援の事例について ○伊藤 英樹(静岡県立御殿場特別支援学校 教諭) 植松 隆洋・笹原 雄介(静岡県立御殿場特別支援学校) 1 学歴:中学 校特別支 援学 級、特別支 援学校高 等 はじめに 部卒業 日本の産業 界の構 造が変 化しており 、現在 「流 通・サービ ス」「 家政」 「福祉」に 関わる 産業が (2)就労先概要 増えてきている。これらの産業の中には、事務 サービスに 関わる 仕事が 多くある。 特別支 援学校 就労先: B市役所 の生徒の中 には、 実際に 事務サービ スに関 わる就 就労部署 :環境課 市内2カ所在る関連事務所を期間 業体験をし たり、 産業現 場等におけ る実習 (以下 (2∼3ヶ 月)ごと に配 属。 「現場実習 」とい う。) を体験した りして 、その 後就職して いる生 徒もい る。事務サ ービス にかか 業務内容 :廃棄物 管理 業務 わる業界で は、こ の種の キャリアト レーニ ングを 作業内容 積んだ人材を求めている 1) ① PC でのデー タ(数値 ・ 文字)入力 及び事 。また、民間企業で 務作業 就職したい という 本人・ 保護者のニ ーズの 高まり ② 最終処理場での受付業務及び廃棄物の解 を受けて、 進路学 習や職 業教育をど のよう に進め ていくかについては緊急の課題となっている 2) 体・分別作 業 。 雇用形態 :市臨時 職員 (6ヶ月毎 に契約更 新) 木村らは、 近年養護 学校 等における 「特別支 援 勤務時間 :8:15∼17:00(月∼金曜日の 勤務) 教育」では 、従来の 特殊 教育対象の 障害だけ では なく、「軽 度発達障 害」 を含めた障 害のある 児童 生徒の自立 や社会参 加に 向け、一人 一人の教 育的 3 在学中 の就労支 援 (現場実習 の経緯) A さ ん は 、 高 等 部 2 年 生 の 現 場 実 習 か ら PC業 務 ニーズに応 じた教育 や支 援が求めら れている とし 、 その一つの 方法とし て、 職場適応の ためのト ータ のある現場 実習を体 験し 、3年生に なるとPC業務 ルパッケー ジ(以下 「TP」という。 )の活用 につ のある事業 所での就 労を 強く希望す るように なっ いて検討し た 3) た。 。 本校でも重 度の障害 があ り、円滑に 作業に取 り (1)1年時の現 場実習 組めなかっ たり、コ ミュ ニケーショ ンに著し く課 初めての現 場実習で は、 3名の同級 生と3日 間 題があり、職場の人間関係を適切に構築できな のグループ 実習を行 った 。自動車部 品のバリ 取り かったりす る生徒た ちに 対して、就 職に向け て支 作業に取り 組んだ。 挨拶 や指示理解 、作業の 正確 援するため には、高 度な 理論と方法 が必要に なる さ、速さや 集中力に つい ては高い評 価を受け た。 という考え に基づき 、平 成19年度よりTPを導入し 反面、休憩 時にはど う過 ごしてよい のか分か らず 、 た 2) ただ立ちつ くし、仲 間の 様子を窺う 姿がみら れた 。 。 本報告では 、公的 機関に おける障害 者雇用 の促 休憩時の過 ごし方が 課題 となった。 進及び知的 障害者 の雇用 を検討した 結果、 雇用に 結びついた 軽度の 知的障 害のある生 徒のPC業務遂 (2)2年時の現 場実習 行のための 就労支 援につ いて、在学 中の現 場実習 イ 衣料品 の店舗内 作業 2年生に進 級し、1 回目 の現場実習 では、障 害 やTP活用等の事例 と就労 後の様子に ついて 報告す 者雇用を積 極的に推 進す る衣料品メ ーカーで の店 る。 舗内作業に 取り組ん だ。 衣服のハン ガー掛け 、サ 2 概要 (1)就労者プロ フィー ル イズタグ付 け、品出 し陳 列、値札貼 り等々様 々な 作業に取り 組んだ。10日 間の実習に おいても 、周 氏名:A さん 囲の従業員に積極的に関わることができず、コ 年齢:19歳 ミュニケー ション面 での 課題はあっ たが、雇 用の 障害種別 :知的障 害 可能性があ ると評価 を受 けた。 現場実習 や進路学 習を 進めると、 進路希望 が絞 障害程度: 療育手帳 B り込まれて きた。製 造業 や小売販売 等の業種 より -244- も、関心を 持ってい たPC業務を、実 習先や就 労希 こととした 。 望先として 強く希望 する ようになっ た。本校 職員 イ B市役 所での現 場実 習(1回目 ) 環境課廃 棄物管理 事務 所の関連施 設での実 習を による職場 開拓によ り、 衣料品メー カーの物 流会 社において 事務業務 の実 習が可能と なった。 行った。廃 棄物処分 所で は、ゴミ搬 入車両の 車番 ロ 号や重量等 の数値入 力を 行った。ま た、受付 の窓 2年生 時のPC業務で の現場実習 2年生で2 回目とな る現 場実習では 、下記の 事 口業務を担 当し、搬 入者 へ伝票記入 や搬入場 所に ついての説 明等も行 った 。また、ゴ ミの回収 業務 務作業を行 った。 ① ブランド別 の下げ札 を選 ぶ。 を行う職員 が回収後 に遂 行するPC入力作業も 試験 ② 店舗からの発注表から数値や文字を入力し、 的に代行し た。日時 、収 集場所、種 別、収集 量等 レイアウトチェック後プリントアウトする。 が記載され た手書き の一 覧表から定 型の入力 画面 ③ 下げ札を発注分の衣服に機械で糸付けをす に数値や文 字を入力 した 。 勤務態度 や指示理 解、 作業の正確 さなど高 く評 る。 入力する 数値や文 字数 が少ない下 げ札なら ば、 価された。 職員から 数値 入力でのTABキー、Enter 実習の1週 目は毎時 間246∼345枚の出来高で あっ キーを効果 的に活用 する ことの助言 を受け、 定型 た 。 実 習 後 半 に は 、 毎 時 間 500枚 ま で 伸 ば す こ と の入力画面 への入力 スピ ードが上が った。数 値入 ができた。 この作業 能率 は、一般パ ート採用 の従 力以外の作 業以外で も臨 機応変に業 務変更に 対応 業員とほぼ 同レベル であ ると評価を 受けた。 で き る か を 次 回 の 課 題 と し た 。 ま た 、 Word や 勤務態度 や礼儀正 しさ などが好評 であった 、一 Excel等 の 機 能 を よ り 理 解 し て 操 作 す る こ と も 課 方、前日ま でに習得 した 作業手順の 中で細部 を忘 題となった 。一方、 Aさ んに、定型 的あるい は専 れてしまい 、作業が 滞る 場面もみら れた。ま た、 門技能を必 要としな い難 易度の低い 業務を職 務の 生真面目な 性格で、 非常 に緊張しな がら作業 を進 中心に据え る等の職 務内 容の編成が 職場内で 行わ めている様 子が周囲 の者 からも感じ 取れるよ うで れた。職務再設計のための課題分析5)の実施が あった。 な さ れ た 。 Aさ ん の 状 況 に 合 わ せ た 職 務 の 実 施 方 実習後の自 己評価の 中で も、周りの 者との関 係 法や職務内 容の変更 によ り、安定し た作業遂 行が 性について の不安感 を抱 いているよ うであっ た。 可能となっ た。その こと により、事 務所内の 業務 作業における補完手段や補完行動、ストレスマ の効率化に も貢献す るこ ととなった 。 ネージメン ト、職場 での コミュニケ ーション の取 ロ り方などの 課題が挙 げら れた。 B市役 所での現 場実 習(2回目 ) 2回目の 実習では 、次 年度からの 雇用を想 定し その後、雇 用の可 能性が あると評価 を受け てい て、複数の 業務を試 験的 に行い、課 題を把握 する た下げ札作 成のPC業務が 社内業務再 編のた め消失 目的ととも に、課内 で業 務内容の調 整を図る こと することと なった 。その ため、卒業 後の就 労先の となった。 そのため 、事 務作業に加 えて、実 務作 変更を余儀 なくされ た。 業もあわせ て行った 。 ① 事務作業 (3)3年生時の 現場実 習 青木 4) ・ 苦情調査内 容の要約 入力 ・ ゴミ収集の データ入 力 によると、公的機関では事務など知的 障害者に不 適とされ てい た職域が比 較的多く 、生 ・ 環境測定値 データベ ース 入力 産や労務と いった職 域が 少ないか、 または外 部に ・ 業務計画表 の入力(word) 委託されて いること がし ばしばあり 、知的障 害者 ・ 地図への地 点記入と 照合 作業 に適した職 域の開発 や働 くための環 境の整備 が進 ・ コピー、印 刷、封入 等の 作業 ② 実務作業 んでこなか った理由 と考 えている。 ・ 不燃ゴミの 分別 Aさんが居 住するB 市で 知的障害者 の雇用に つ いて検討を 進めてい るこ とを知り、 検討の初 期段 ・ 廃棄物の回 収補助 階からPC業務につい ての 要望を出す ことがで きた 。 ・ 粗大ゴミの 解体作業 庁内での検 討を経て 、環 境課での雇 用を検討 する ・ 地下水の水 位測定 目的での現 場実習が 可能 となった。 実習先と のPC 幅広い内 容の作業 であ ったが、分 からぬこ とは 業務の内容 を検討す る中 で、数値入 力、文章 入力 周囲の職員 に質問し なが ら正確に遂 行した。 他の 等が就労の ための必 要条 件となった 。実習前 後に 職員とのコ ミュニケ ーシ ョンも取れ るように なり 、 校内での指 導場面で 、TPのOAワークをとおし て効 1回目にく らべ緊張 も幾 分解れたよ うで、明 るい 率的な訓練 や指導と とも にストレス ・疲労の セル 表情で作業 に取り組 んで いた。休憩 中はスト レッ フマネージ メント・ トレ ーニングを 継続的に 行う チをしたり 、お茶を 飲ん だりしなが ら過ごす こと -245- グについて 指導した 。 ができた。 ① 入力中と入 力後には 必ず 目視で見直 す。 4 ② 入力後にポ インティ ング しながら見 直す。 PC業務に対する 在学 中の指導 このような 対 応 をし た結 果 、 特 に2 回 目 の 現 場 実 習 (1)TPの活用 Aさ ん は 3 年 生 と な り 、 PC業 務 で の 就 労 を 強 く 以 降 は、目 視 、ポインティングもスムーズになった。数 希望するよ うになっ た。 また、現場 実習や就 労後 値 入 力 課 題 の時 間 短 縮 や、エラー発 生の頻 度 も低 下 の作業内容 を想定す ると 、2年生ま での経験 を踏 し た。補 完 行 動 を 身 につ け、作 業 遂 行 能 力 を 高 め て まえて、PC業務遂行 力を 高めること をねらい 、よ いると思 われる。実 習 中 も、画 面 上 のポインティングだ り効果的な 訓練・指 導が 必要となっ た。 けではなく、集 計 用 紙 に記 載 のされる数 字 と画 面 上 の TPでは、実 際の職場 に近 い作業を実 施してい く 数 字 とを確 認 しあう姿 が見 られるようになった。2 年 生 中で、作業 毎のエラ ー内 容、作業時 の疲労・ スト 時 の実 習 後 の評 価 の中 で「前 日 までに習 得 した作 業 レスの現れ 等、気づ くこ とができる ように支 援を 手 順 の中 で 細 部 を忘 れて し まい、作 業 が滞 る 場 面 が 受けること になる。 また 、作業上の 障害の現 れに みられた」という指 摘 を受 けた。手 順 を想 起 できず、作 対してどの ような適 用方 法があるの か、具体 的な 業が遅 れることに対して、手のひらサイズのメモ帳 の携 対処方法に ついて学 習す ることがで きる 6) 行 を 勧 めた。さ ら に、記 入 後 に 自 分 が読 み 返 し ても、 。 そこで、職 場で想 定され る作業内容 との類 似性 思 い出 しやすい長 さの語 句 で内 容 をまとめるように指 の高い、OAワーク の中の 数値入力を 選定し 、現場 導 した。作 業 場 面 でのメモを活 用 し、手 順 を遵 守 する 実習の事前 や事後 学習の 時期を中心 に、教 科学習 姿が見られるようになった。 (数学)の 中で継続 的に 取り組んだ 。 ハ ストレ ス・疲労 のセ ルフマネー ジメント Aさんは 、自分自 身の 疲労の状態 を判断で きに くく、適切な休憩の取り方が分からないようで 平均作業時間 数値入力 あった。現 場実習や 就労 後の状況も 鑑みて、 本人 30 が休憩方法 や場所を 選択 して自主的 に適切な 休憩 25 を取り、安 定した作 業遂 行ができる ことを目 指し 20 た。具体的 な方法は 、廊 下に出てス トレッチ 体操 レベル1 レベル2 秒 15 を行う。給 湯室に行 き、 お茶または コーヒー を煎 10 れて飲むこ ととした 。決 められた休 憩時間の 中で 、 5 自ら休憩方 法を選択 する こと、作業 を中断し 作業 0 5月 6月 9月 場所から離 れること で、 疲労の蓄積 による作 業へ 11月 の影響を軽 減するこ とに つながった 。 月 (2)PC業務遂行 上課題 となったこ とから 図1 Aさんの数 値 入 力の平 均 時 間 変 化 現場実習 先からの 要望 や、実習で の課題と なっ イ たことに基 づいて、OAワ ーク以外に もPC業務の向 OAワーク(数値 入力 ) Aさ ん の 数 値 入 力 ( レ ベ ル 1 、 レ ベ ル 2 ) の 1 上につなが る指導を 行っ た。また、 学校での 指導 課題におけ る平均 時間の 変化を図1 に示す 。実施 以外にも、 日々の家 庭学 習や長期の 休業中の 課題 時期は、3 年生進 級後の 5月、1回 目の現 場実習 としても取 り組んだ 。 事前期間の 6月、 2回目 の現場実習 事前期 間の9 イ ホーム ポジショ ンの 練習 月、2回目 の現場 実習終 了後の11月となる 。レベ 文書入力 の際の効 率化 を図るため 、ホーム ポジ ル1では、 5月は17.6秒であったが 、2回 の現場 ションを理 解し、将 来的 には、ブラ インドタ ッチ 実習を経て 、11月には13.4秒となっ た。ま た、レ でのキー操 作の練習 をし た。継続的 に家庭学 習で ベル2では 、5月 が25.0秒であった が、11月には 、 タイピング の所用時 間と ミスタイプ 数を記録 した 。 平均時間が22.4秒で数値 の入力作業 ができ るよう 図2に、A さんのタ ッチ タイピング の所用時 間と になった。 ミスタイプ数の推移を示した。初級レベルは、 ロ ホームポジ ションか ら横 方向の運指 が中心と なる 。 OAワークでの補 完行 動 Aさ ん が 数 値 入 力 に 取 り 組 む 中 で 、 行 ズ レ ( 前 文字入力と なるが、 入力 中と入力後 には必ず 目視 後の設問と 同じ答 えにな る)や見落 とし( 文字数 で見直す補 完行動を とり 、タイピン グスピー ドは が足りない 、ある いは多 い)などの エラー 内容が 短縮される ようにな った 。 目立った。 そこで 、現場 のPC業務でも活用 し易い 補完行動に ついて 、具体 的な内容と 行うタ イミン -246- 6 タッチタイピング所要時間とミスタイプ数 8 7 6 5 4 3 2 1 0 コミュニケーションや判 断 、文 字 や数 の理 解 が要 求 される職域に従 事する知 的 障 害 者は増 加しており、彼 所 要 時 間 らが職 務を遂 行するためのノウハウの蓄 積や普及 は確 ミス数 時間 実 に進 んでいる。公 的 機 関 での知 的 障 害 者 の雇 用 を 拡 大 するにあたっては、従 来 の発 想 にとらわれずに職 域を検 討する必 要がある 4) 。 A さ んも 、 2 回 の 現 場 実習をとお して、 雇用を 想定した複 数の業 務を試 7月 2 7 月 6日 27 7月 日 2 7 月 8日 29 7月 日 3 7 月 0日 31 8月 日 8月 1日 8月 2日 8月 3日 4日 ミ ス タ イ プ 数 70 60 50 40 30 20 10 0 まとめ 験的に行う ことに より、 学校、就労 先、家 庭が、 課題を共有 するこ とがで きた。また 、課内 で業務 日付 内容の調整 を図る と共に 、職員のA さんへ の関わ り方につい ても理 解を深 めることが できた 。Aさ 図2 Aさんのタッチタイピング所 用 時 間とミスタイプ数の推 移 んの就労定 着に必 要なナ チュラルサ ポート の形成 ロ が図られた と考えら れる 。 文書の 要約入力 練習 苦情処理 文章の要 約入 力は、環境 課でのPC業務 加賀ら 7) の言う、TPの活 用過程で用いられる支援 技 の中で比較 的大きな ウエ イトを占め ている。 寄せ 法 は、企 業 ニーズに対 応 可 能 な職 業 教 育 カリキュラム られる苦情 を定型の スペ ース(エク セルの表 )に 作 りにもつながることは、本 報 告 においても実 証 できた 要約入力す る。文章 要約 から要約文 入力の流 れを と言える。 授業や家庭 学習にお いて 練習をした 。 参考文献 表1 練 習 用 苦 情情 報 シート 通 し 番号 住所 1 日付 5月19日 電話番号 (****) **‐**** 1)全 国 特 別 支 援 学 校 知 的 障 害 教 育 校 長 会 キャリアトレーニ ング編 集 委 員 会 編 著 「キャリアトレーニング事 例 集 Ⅱ事 務サービス編」、ジアース教育 新 社(2009) ***市 ** 131−1 苦情内容 2) 植 松 隆 洋 ・ 伊 藤 英 樹 : 特 別 支 援 学 校 に お け るト ー タ ル パッケージの 活 用 に 関 す る 一 考 察 「 第 16回 職 業 リ ハビリ テ ーシ ョ ン 研 究 発 表 論 文 集 」 、p.138-141 、 障 害 者 職 業 店 先 にゴミを大 量に捨てられている。客 が買 い物をして店 先に捨てているようだ。 主 に缶 、ビン、菓 子 の袋 など。特 に土 曜 日 、日 曜 日 にゴミ がでることが多 い。 ゴミ箱を設 置するなどの対応 をしてほしい。 総 合センター(2008) 3) 木 村 彰 孝 ・ 大 石 文 男 : 養 護 学 校 に お け る ト ー タ ル パ ッ ケージの活 用 と展 望 ―特 別 支 援 教 育 における一 人 一 人 の教 育 的 ニーズに応 じた対 応 を目 指 して―「第 13回 職 業 リハビリテーション研 究 発 表 論 文 集」、p.208-211、障 害 者 表1のシ ート内の 情報 を表2へ入 力する。 苦情 職 業 総 合センター(2005) 内容につい ては要 点をま とめ、文字 数を考 慮して 4) 青 木 律 子 :自 治 体 における知 的 障 害 者 雇 用 の課 題 と実 要約し表2へ入力する。文章の要約力と共に、 践 例 「第 16回 職 業 リハビリテーション研 究 発 表 論 文 集 」、 ワードやエクセルの操作技能の向上にも有効で p.130-133、障 害 者 職 業 総 合 センター(2008) あった。 5) 障 害 者 職 業 総 合 センター 調 査 研 究 報 告 書 No.64「精 表2 練 習 用 要 約入 力 表 番号 日付 住所 電話番号 神 障 害 者 等を中 心とする職 業 リハビリテーション技 法に関 する総 合 的 研 究 」(活 用 編 )、p.45-46 障 害 者 職 業 総 合 苦情内容 センター(2004) 6) 障 害 者 職 業 総 合 センター 調 査 研 究 報 告 書 No.64「精 神 障 害 者 等を中 心とする職 業 リハビリテーション技 法に関 する総 合 的 研 究 」(最 終 報 告 書 )、p.16-17 障 害 者 職 業 5 就労後 の様子 総 合センター(2004) Aさんは、各々の職場での業務遂行状況やコ 7)加 賀 信 寛 、野 口 洋 平 、位 上 典 子 、小 松 まどか、村 山 奈 美 ミュニケー ション も良好 であると、 卒業後 の職場 子、葉 月 洋 子 、川 村 博 子 :トータルパッケージの多 様な活 定着指導の 巡回訪 問時に 担当職員か ら聞く ことが 用 の視 点 について「第16回 職 業リハビリテーション研 究 発 できた。特 に、PC業務で は、課内の 過去の 資料を 表 論 文 集 」 、 p.134-135 、 障 害 者 職 業 総 合 セ ン タ ー データベー ス化す る作業 が中心とな った。 資料と (2008) PC画面とを ポイン ティン グしながら 正確に データ を入力する ことを高 く評 価された。 -247- 知的障害者の卒業後の雇用環境の推移と現状 −事例の法的考察を踏まえて− ○横田 滋(元東京都立青鳥養護学校 教諭) 徳田 暁(横浜あかつき法律事務所) 1 2009年9月 知的障害をもつ人の雇 用は今益々深刻に 労働基準 監督署に申 立書を提 出。 (1)職 場で続 けて2度 転び怪 我をしたため退 職 勧 告を (2)T中学特殊学級卒業 生 の現状 受けているケースから 横田は1960年から22年間 、T中学校 特殊学級 の 【A子 女子45歳】 1980年3月 T中学 校特殊学級 卒業。 担 任 で あ っ た 。 そ の 間 118人 の 子 ど も を 教 え 、 12 1983年3月 都立F 養護学校高 等部卒業 。 人を普通学 級に戻し 、89人の子ども を卒業さ せた 。 1962年から1980年の18年間に卒業し た人たち の学 【職歴】 1983年4月 株式会 社K設備サ ービス入 社。 校卒業時の 状況と現 在の 状況を報告 する。 T市社会福 祉会館の 清掃 作業に 従事。 2008年 K設備 サービスか ら25年勤続優 良社員とし て表彰さ れる 。 2009年4月 K設備 サービスが T市社会 福祉 会館の入札に落ちたため、職 場がF市福 祉会館に かわ る。 【労災事故とその後の会社 の対応】 2009年4月9日 イ 学校卒業時の状況(1962年−1980年) (イ)学校 卒業時就 労者 68人 正規 67人 非正規 1人(市役所) (ロ)作業 所・通所 施設 12人 (ハ) 入所施設 5人 (ニ)家庭 4人 合計 89人 清 掃中 視覚障害者 用タイル の突 ※高校・高等部進学者は高校・高等部卒業 時の状況 ※学力と知能指数が伸び普通学級に行った 者 11名 は 数 に 入 っ て い な い が 、 全 員 正 規 就労してい る。 起に躓いて転び、右ひざと手 を怪我する。勤務終了後帰宅 し母親が病院に連れて行く。 全治一週間 の診断書 が出 る。 2009年6月28日 朝出勤 のため事業 所内の歩 道か ら建物の入り口に入るところ で転倒、顔面を負傷。母親が 外科病院に連れて行く。全治 二週間の診断書が出る。2回 とも労災の 適用とな る。 2009年7月 怪我も 治り出勤し ようとし たと ころ、会社から「2度も怪我 をしているので、『就労継続 可能』という医師の診断書を もらうよう に」と言 われ た。 2009年7月28日 ロ 現在の状況 正規就労 5人(男4人 女1人) 製造業3人 清掃1人 タクシー 運転手1人 非正規 11人 自営業 3人(建 具、 塗装、水道 、工事) 作業所・通 所施設 23人 入所施設 5人 結婚 19人(男5人 女14人) 死亡 10人(男4人 女 6人) 不明 2人(女2人 ) 知的障 害者を長年 診察して きた 精神科医の診察を受け『精神 卒業後正規 就労した67人 中、現在ま で正規就 労 遅滞はあるが検査の結果就労 しているの は5人に 過ぎ ない。しか も、その うち 継続に支障はない』との診断 の1人が現 在退職勧 告を 受けている 女性であ る。 書を会社に 提出する 。 2009年8月 2009年8月27日 両親が 会社に呼ば れ「2度 も続 ハ この20年間で卒業生の多くがクビを切られた け て 労災 事 故 を 起 して い る 。 会 1980年代の後半か ら、 卒業生の多 くが次々 と会 社 と して は 今 後 の 安全 が 保 障 で 社を辞めて いった。 会社 の倒産、合 併、地方 移転 き な い。 進 路 を 考 えて 欲 し い 」 等による退 社ばかり でな く「いじめ 」「いや がら といわれる 。 せ」による 「自己都 合退 職」が増え ていった 。退 法律事 務所に両親 と元担任 と一 職勧告→労 働基準監 督局 に相談→い じめ→退 社 緒に行き相 談する。 -248- 卒業年・ 学校 就 職者 正規 非 正規 ――――― ―――― ―― ――――― ―――― T中特殊学 級 1962年− 68人 67人 1人 1980年 ( 98.5% ) ――――― ―――― ―― ――――― ―――― 知的障害養 護学校高 等部 1994年 236人 143人 93人 退職願いを書いた卒業生たちの声 (イ)あんなに優し かった 課長さんが どうして こんなに冷 たくなっ たの (ロ)毎日がつらく てたま らない。も う我慢で き ない。 (ハ)前のような会 社はな いの (ニ)30回も面接を 受けた けどまだ決 まらない 。 ( 56.8% ) 1998年 ニ 2000年には43歳男子 の卒業生が労災事故で死 162人 70人 92人 ( 43.2% ) 亡する不幸な事故も 2000年 222人 2000年3月にはおむ つの クリーニン グ工場で 働 51人 171人 ( 23.0% ) 2004年 いていた43歳の男子 卒業 生Aが労働 災害で死 亡す 221人 23人 198人 ( 10.4% ) る、と言う 不幸な事 件が 起こってい る。洗濯 物が ※養護学校高等部の数字は都障害児学校教 職 員 組 合 の 進 路 実 態 調 査 か ら 1 ) 。 2005年 からは個人情報保護法に触れるというこ とで調査が 出来なく なる 。 シ ェ ー カ ー ( 洗 濯 物 を ほ ぐ す 直 径 1.6メ ー ト ル の 大型機械)に詰まって回転が停止した。Aが シェーカー 内に入っ て洗 濯物を取り 除いたと ころ シェーカー が自動的 に運 転を再開、 Aは頭蓋 骨骨 折等の重傷 を負い、 四日 後死亡。 ロ 就職先が中・小企業から大企業へ 卒業年 就 職者 大企業 中小企業 ――――― ―――― ―― ――――― ―――― T中学特殊 学級 1962年− 68人 1人 67人 1980年 養護学校高 等部 1994年 268人 75人 153人 事件後の民 事訴訟の 中で 清水建夫弁 護士によ る 調査の結果 、彼の工 場で の過酷な労 働の実態 が明 らかになっ た。 Aの当時の給料 2000年2月 基本給108,000円 +職能手当35,000円 +残業代 ◇残業代 2000年1月 38,812円 (85,617円支給すべ きと ころを大幅 に カットされ ていた) ※ 残業手当を 含め月18万円程度 ※ 当時の最低 賃金は137,850円(25日) であった。 つまり、 彼は 就職してか ら27年間、昇給はほ とん どなかった ことになる 。 ※ 当時の40歳―44歳中卒者の平 均給与 は月約422,000円であっ た。 ( 31.8% ) ( 66.0% ) 1999年 99人 97人 ( 48.3% ) ( 47.3% ) 2004年 221人 137人 72人 (62.0% ) ( 32.5% ) ハ 職種の変化 【T中学特殊学 級卒業生 1962-1980年卒】 卒業生89人中就職者68人 製造業52人(77.6%) 塗装業3人 、商店2 人、 養豚・建具 ・建設・ スー パー・清掃 各1 Aの父親は 心臓疾患 で倒 れ、寝たき りだった 。 母親は勤め をやめて 介護 に専念。生 活が苦し くな 【B特別支援学校高等 部 卒業生 2009年3月卒】 卒業生60人中就職 者30人 り、しかも 、自分の 結婚 の日も近づ いていた 。 製造業0 、調理補 助7 人、事務補 助7人、 清 彼は朝7時 半から夜 7時 半まで、ほ とんど毎 日 掃・クリー ニング5 人、 配送5人、 流通・販 売 12時間働き 続けてい たの である。 3人 (3)この20年で知的障害者 の雇用は激変 (4)厚労省の調査が示す知的障害者 雇用状況 激変 イ 正規雇用から非正規雇 用へ 1960年代から80年代初め までは学卒 の場合は 正 規雇用が原 則であっ た。 1980年代の後半から 新卒 者の中から も非正規 雇 用での就職 が出てき て、 90年代に急 増する。 205人 の実態 イ 知 的 障 害 者 は15人 に1人 しか常 用 労 働 者 になれ ない 厚労省の2008年6月1日 の調査で、 知的障害 の 常用労働者 は、わず か0.2%(41,767人)である。 知的障害者 の出現率 を3 %としても 、15人に1人 しか常用労 働者にな れな いことにな る 2 ) 。 -249- 詳細な事 情は定か では ないが、一 般論とし は、 ロ 知 的 障 害 をもつ常 用 労 働 者 は1979年 の7割 に激 労働者には 、就労請 求権 はなく、賃 金の支払 いが 減 継続されて いれば、 就業 規則の定め の有無に かか 27年前の1979年10月の労 働省就業実 態調査で は わらず、使 用者は自 宅待 機命令を発 すること がで 精神薄弱者 の常用労 働者 は0.29%だった。 きると解さ れている (ダ イハツ工業 事件・大 阪地 2006年7月1日の厚 労省 就業実態調 査では知 的 障 害 者 の 常 用 労 働 者 は 0.19% に 激 減 し て い る 3) 。 判 52年 3 月 24日 等 ・ 労 働 判 例 273・ 24) 。 し か し 、 このような 命令が、 当該 労働者に、 事実上、 多く ハ 本当の障害者雇 用率 は 雇用率制度の義務化 の不利益、 とりわけ 心理 的な圧力を 与えるこ とは (1976年)以後増えていない 否定できな いのであ り、 その理由や 期間によ って は、人事権 の濫用と して 違法性を帯 びること にな (年) (公 表 雇 用 率) ろう。 (本 当の雇 用 率) 本件事例で は、主治 医の 『就労継続 に支障は な (ダブルカウント) (ダブルカウントなし) 1961年 0.78% い』との診 断書も提 出さ れており、 不運にも 2度 1975年 1.36% の怪我が続 いたとい うこ とだけで、 自宅療養 が必 1992年 1.36% 1.08% 要であると か、障害 によ る業務耐性 の調査が 必要 1993年 1.41% 1.09% である等と は言えな いは ずである。 いずれに せよ 、 2000年 1.49% 1.10% 上記の事実 関係の限 りで は、解雇事 由がない 事は 2005年 1.49% 1.19% 明らかであ るところ 、K 社はA子に 知的障害 があ 2006年 1.44% 1.10% ることを承 知しなが ら25年以上の雇 用をし、 優良 2007年 1.46% 1.06% 社員として 表彰もし てい るのであっ て、会社 によ 2008年 1.59% 1.14% る退職勧奨 の時期と 近接 して自宅待 機命令が 発せ られたとい うことで 、仮 にA子の退 職や将来 の整 ※ダブルカウントにより見 かけ上 は増 加 理解雇を企 図しての 自宅 待機命令で あるとす れば ※1993年 重 度 知 的 障 害 者 ダブルカウント、身 体 障 害 ・知 的 問題であり 、違法と 考え ざるを得な い。 障 害 短 期 労 働 者 をカウント (2)企業就職後の定着状 況について ※2006年 精 神 障 害 が加 わる。精 神 障 害 短 期 も0.5に イ 卒業後10年間の状況 4) ※1961年 、1975年 は発 達 障 害 白 書 50年 史 から 、その他 は 厚 労 省 6・1調 査 から計 算 東京都社会 福祉協議 会及 び東京都知 的障害特 別 5) 支援学校就 業促進協 議会 が、平成15年3月か ら平 ニ ハローワ−クの「障害者の就職件数過去最 高」 成19年3月までの5 年間 の卒業生の 状況につ いて 、 が示すもの 東京都知的 障害特別 支援 学校高等部 進路指導 担当 「平成19年度、ハロ ーワ ークにおけ る障害者 の 者に対して 行った調 査に よれば、卒 業後5年 のう 就職件数過 去最高」 とい う厚労省発 表が昨年 あっ ち に 離 職 を し た 企 業 就 職 者 の 割 合 は 、 25.6 % と た 。 障 害 者 就 職 45,565 件 、 そ の う ち 知 的 障 害 は なっている 。また、 平成 10年3月か ら平成19年3 12,186件であった 6) 月までの過 去10年間に東 京都内知的 障害特別 支援 。 しかし、障 害者雇用 率は 上昇してい ない。有 業 学校高等部 を卒業し た卒 業生に対し て行った 調査 者数も増え ず、無業 者が 増加してい る。とす ると 、 によれば、 卒業時企 業就 職者の26.7%に離職 等の 障害者がた くさん会 社を 退職した、 というこ とに 経験があり 、その理 由と して「人間 関係がう まく なるのでは ないか。 いかなかっ た」が40.9%であるほか 、33.6%を占 40歳を超え て会社を 退職 した知的障 害をもつ 人 める「その 他」の中 には 「言葉のい じめ」「 どな たちは現在 、職安に いく ら通っても 、正規雇 用に られる。」 等、その きっ かけと見ら れる内容 のも つくことは 絶望的で ある 。週1−2 日のパー トさ のも多い 7 ) 。 えなかなか 紹介して もら えなくなっ ている現 状は 、 どうしたら 変えられ るの であろうか 。 ロ 長期恒常的な就職定 着状況調査の必要性 しかし、今 回、上記 以外 には、知的 障害者の 就 2 事例の法的考察を踏 まえた検討 職定着状況 を示す統 計資 料を見つけ ることが 出来 (1)A子さんの退職勧告について なかった。 この点、 本稿 1(2)ロによれ ば、T 冒 頭 の 1 ( 1) の 事 例 で は 、 A 子 さ ん は 、 2009 中学校で1962年∼1980年の間に卒業 後正規就 労し 年8月に勤 め先のK 社か ら暗に退職 を促され た後 、 た67人中、現在まで 正規 就労してい るのは5 人で 自宅待機を 命じられ てい るようであ る。 あるから、 長期的に は、 実に92.5%の就労者 が離 -250- 職等を強い られてい るこ とになる。 このよう な長 用契約では 、たとえ 恣意 的な理由で 更新され ず、 期 的 離 職 割 合 は 、 本 稿 1 ( 4) ニ に お け る 検 討 や 、 或いは解雇 されたと して も、これを 争うこと は難 平成18年度の新規採 用知 的障害者数 が370人であ しい。必然、雇用者からの不当な「いじめ」や るのに対し 、退職者 数は 135人であるとの 調査結 「いやがら せ」があ った としても、 泣き寝入 りを 7) 、ある 程度裏付け られよう 。そ 余儀なくさ れ、裁判 に発 展すること も無く、 そも して、この 原因の一 つと して、本稿 1(2)ハで そも、よほ どの事が ない 限り、顕在 化するこ とす 指摘したと おり、実 際に は、統計資 料のない 就職 ら少ないの である。 果からして も 後10年を経過した以 降に (体力の衰 えが見ら れる 本 稿 1 ( 3) イ に あ る よ う に 、 近 年 の 知 的 障 害 40歳を超え た頃から )、 雇用者によ る「いや がら 者の正規雇 用率は極 めて 低い。上記 の東京都 知的 せ」による 「自己都 合退 職」が増え ていくと いう 障害特別支 援学校高 等部 進路指導担 当者に対 する 状況がある とすれば 大き な問題であ ろう。と ころ 調査によれ ば、過去 5年 間の卒業時 企業就職 者の が、現状は 、何らの 長期 的かつ恒常 的な信憑 性の 13.2%しか正社員は おら ず、過去10年間の同 卒業 ある就職定 着状況調 査が なされてお らず、国 もそ 生に対する 調査にお いて も、就業経 験者の28.6% のようなデ ータを持 って いないため 、このこ とを しか正社員はいない7)。総務省統計局の労働力 検証しよう もなく、 対策 を講じよう もないの であ 調査によれ ば、非正 規雇 用の増大が 問題視さ れて る。 いる現状に おいても 、平 成20年度平均の全体 の非 正規雇用者 割合は34.1%であり、障 害者のそ れと (3)今後の課題について は比ぶるべ くもない ので ある。 イ 過去の裁判例 従って、障 害者を優 遇す るというこ とではな く、 さて、裁判 において は、 中程度の知 的障害等 が せめて障害 のない人 と同 様に非正規 雇用を減 らす あり、養護 学校卒業 後、 14年間勤務 した会社 で比 べきであり 、このよ うな 観点からの 障害者雇 用促 較的軽い補 助作業に 従事 していたが 、解雇さ れる 進法の改正 がなされ る必 要があるで あろう。 1ヶ月前に 、従来の 仕事 に加えて、 両端圧接 機の 作業を命じ られ、上 手く できなかっ たことを 理由 ハ 法律家を含めた関係 機関の総合的連携 に解雇され たという 事例 について、 整理解雇 の要 もう一つ 、より身 近な こととして は、知的 障害 件を満たさ ず、当該 解雇 は無効であ るとした もの のある人に とっては 、一 般の人より も増して 、弁 が あ る ( 前 橋 地 判 平 成 14 年 3 月 15 日 ・ 労 働 判 例 護士の存在 が遠く、 気軽 に相談でき る環境に ない 842・ 83) 。 す な わ ち 、 人 員 整 理 の 局 面 と な る と 、 ことが挙げられる。現行の制度を前提として、 特別の技能 を持たず 、技 術発達の見 込みも乏 しい ジョブコー チや特別 支援 学校教員に よるきめ 細か 心身障害者 が対象と され やすく、解 雇に向け たい い就労環境 の調整・ コミ ュニケーシ ョンサポ ート 、 やがらせ的 作業を押 しつ けられるこ とがある こと 福祉機関や 支援者、 家族 による生活 上の支援 に加 の一例であ る。しか し、 これまで本 稿で検討 して えて、まず は、例え ば、 多くの相談 が寄せら れる きた離職状 況からし て、 中に同様の いやがら せ的 就労支援セ ンター、 就労 支援事業者 の窓口に 弁護 な解雇があ るであろ うこ とは、容易 に想像で きる 士を配置す るなど、 法律 家を含めた 関係者相 互の にもかかわ らず、こ と知 的障害者の 解雇に関 して 総合的な連 携を強化 する ことが望ま しい。 は、他にめ ぼしい先 例は 見あたらな い。 参考文献 ロ 障害者雇用 促進法の問題 その理由と して考え られ ることは何 か。一つ は、 障害者雇用 促進法に おい て、短時間 労働の障 害者 に つ い て も 、 雇 用 義 務 算 定 の 基 礎 に 0.5カ ウ ン ト されること 、厚労省 によ る法の解釈 において 、非 正規雇用で ある期間 労働 者、ひいて は日雇い 労働 者であって も、一年 以上 継続して雇 用する見 込み があると言 いさえす れば 、「常用労 働者」と して 雇用義務算 定の基礎 にカ ウントされ る運用が され ていること が挙げら れよ う。障害が なくとも 非正 規雇用の増 大が問題 とさ れている中 、このよ うな 法及び解釈 下では、 「ま してや障害 のある者 であ れば尚更」 というこ とに なる。しか し、有期 の雇 -251- 1)東 京 都 障 害 児 学 校 教 職 員 組 合 「障 害 児 学 校 卒 業 生 の進 路 実 態 と課 題 」1991年 ―2004年 2)厚 生 労 働 省 「平 成 20年 6月 1日 現 在 の障 害 者 の雇 用 状 況 に ついて」 3)厚 生 労 働 省 「身 体 障 害 者 、知 的 障 害 者 及 び精 神 障 害 者 就 業 実 態 調 査 」1979年 2006年 4)日 本 精 神 薄 弱 者 福 祉 連 盟 「発 達 障 害 白 書 」日 本 文 化 科 学 社 5)労 働 省 、厚 生 労 働 省 「6月 1日 現 在 における障 害 者 の雇 用 状 況 」1992年 ―2008年 6)厚 生 労 働 省 「ハローワークにおける障 害 者 の就 職 件 数 過 去 最 高 に(平 成 19年 度 )」 7)東 京 都 社 会 福 祉 協 議 会 及 び東 京 都 知 的 障 害 特 別 支 援 学 校 就 業 促 進 協 議 会 「福 祉 、教 育 、労 働 の連 携 による知 的 障 害 者 の就 業 ・生 活 支 援 」平 成 20年 4月 8)総 務 省 統 計 局 「 雇 用 形 態 別 雇 用 者 数 ― 全 国 」 長 期 時 系 列 データ 学校と外部専門機関との連携 −支援主体の移行の取り組み− ○松尾 秀樹(佐世保工業高等専門学校一般科目 教授/特別支援教育コーディネーター) 鷹居 勝美(長崎障害者職業センター) 副島 悠紀・法澤 直子(長崎県発達障害者支援センター「しおさい」) 1 気づいてい なかった 。1 年次にクラ ス内でか らか はじめに 一般就労が 厳しいと 判断 される発達 障害の学 生 いやいじめ の問題が 発生 。クラス担 任や学生 相談 の場合、在 学中でき るだ け早期から 障害者職 業セ 室で対応。 地元の総 合病 院の精神科 を受診。 「自 ンターや発 達障害者 支援 センターな どの専門 の機 閉症」との 診断を受 ける 。いじめや からかい がな 関と連携を 取ってお く必 要があると 言われて いる 。 いように注 意を払う 。 本稿では、 高等教育 機関 (高等専門 学校)を 卒業 ロ 2年目 (2年生 ) 発達障害を 診ること がで きる医師が いるとい う したが、卒 業時には 就労 できなかっ た発達障 害の 学生の事例 を通し、 外部 の専門機関 と連携を 図り 、 ことで、地 元の別の 病院 を受診(筆 者引率) 。投 どのように 学校から 外部 の専門機関 へ支援主 体の 薬治療も開 始。担任 も主 治医に学校 での対応 につ 移行を行っ たかに関 して 報告を行う 。 いて相談に 行く。し かし 、本人も保 護者も受 診の 必要性をあ まり認め ず、 また経済的 な問題も あり 、 2 受診は継続 しなかっ た。 事例対象者と学 校で の支援の概 要 ハ (1) 対象 3年目 (3年生 ) 本校研究 生A。母 親と 妹の3人暮 らし。本 校入 からかい などがき っか けで、教室 内でイラ イラ 学直前に両 親は離別 。母 親は特に仕 事にはつ いて や癇癪を起 こすこと があ る。学外か らきても らっ いない。父 親より養 育費 はもらって いるが、 経済 ているスク ールカウ ンセ ラーによる カウンセ リン 的には厳し い状態。 生活 保護は受け ていない 。本 グ開始。母 親もスク ール カウンセラ ーと面談 。学 人が18歳になるまで は児 童扶養手当 を受給。 自宅 校側(筆者 )は、対 応に ついて、外 部専門機 関へ 通学。 の相談も行 う。長崎 県発 達障害者支 援センタ ーよ り、係長が 来校し、 本人 や母親と面 談。心理 担当 者 に よ る 知 能 検 査 等 も 受 け る ( I Q は 123で あ っ (2) 行動特性 発達のア ンバラン スが 見られ、幼 い面がか なり た)。 見受けられ る。身辺 のこ とはすべて 母親が行 って N病院を受診し(筆者、本人と母親引率)、 いるため、 日常生活 能力 が低いと考 えられる 。人 「アスペル ガー症候 群」 の診断を受 ける。「 アス の言うこと を字義通 りに 受け取った り、相手 の質 ペルガー症 候群」の 特性 など、医師 より本人 や母 問や指示を 勝手に解 釈し ていること がある。 相手 親に説明が ある。通 院の 距離などの 関係で、 投薬 との関係に 相応しい 言葉 の使い分け ができな い。 は地元の病 院で受け るの が良いであ ろう、と 助言 学校の教科 では、数 学な どは比較的 得意であ るが 、 を受けるが 、結局、 地元 の病院では 通院せず 。 体育や英語 は苦手で ある 。クイズ形 式で答え が出 実験のレ ポートが 出せ ない等でレ ポート提 出日 せるタイプ の問題は 得意 であるが、 実験のレ ポー に保健室に 来室した り、 学校を欠席 したり遅 刻し ト作成や記 述式の問 題な ど、頭の中 で全体像 を構 たりする傾 向が多く なっ てくる。実 験中にお ける 築しないと いけない 問題 形式は苦手 である。 携帯 クラスメー トとのト ラブ ルも目立っ てくる。 クラ やパソコン でのゲー ムに 没頭する傾 向がある 。勉 ス内で、イ ライラし たり 、髪の毛を かきむし った 強などで負 荷がかか ると イライラや 癇癪を起 こし 、 り、癇癪( 大声を出 す、 机や椅子を 倒す、床 に寝 自分でコン トロール する のが苦手で ある。多 動傾 て手足をバ タバタさ せる 、など)を 起こした りす 向もある。 ることがあ るため、 Aと 保護者に了 解を取り 、A を外した形 で、クラ スメ ートに本人 の特性を 担任 (3) 経緯 が説明する 。クラス メー トには刺激 をしない よう イ に伝える。 イライラ しそ うな時は保 健室に行 くた 1年目 (1年生 ) 地元の公 立中学校 を経 て本校に入 学。中学 校よ り本人の在 学中の様 子な どに関して 申し送り は特 めに教室か ら出やす い位 置(廊下側 の一番前 )に 座席を固定 する(以 後、 卒業まで) 。 成績不振で 、留年。 3年 次修了(高 卒資格) は になし。入 学時の保 健調 査票にも記 載は特に なし 。 保護者も本 人の特性 (発 達障害)に 関しては 全く 取得できる ので、高 卒資 格を取得し て退学す る方 -252- がよいので は、とい う担 任などの助 言もあっ たが 、 研究室を特 別に与え られ たこともあ り、総じ てイ 「もう一度 やり直し たい 」と留年し て3年次 をや ライラの頻 度や程度 は軽 くなる。ま た、イラ イラ り直すこと になる。 や癇癪を出 す場所も 、保 健室ではな く自宅の 方が ニ 多くなる。 4年目 (2度目 の3 年生) 学年当初 に、本人 を外 した形で本 人の特性 をク 就労に向 けての取 り組 みとして、 夏休みに 特別 ラスメート に説明を する 。クラスメ ート達が 、1 に 10 日 間 、 本 校 図 書 館 で 蔵 書 点 検 の イ ン タ ー ン つ年上とい うことで Aと 距離を置き 、からか い行 シップを実 施。意識 付け が充分では なかった ため 、 為なども減る。また、学業も、1年間の貯金が 「やらされ ている」 とい う意識もあ り、集中 力が あったので 、中の下 ぐら いの成績で ついてい けた 。 持続できな い、日に よっ て調子の波 がある、 等、 クラスメー トの中で 、実 験のレポー ト作成な どを 問題点が浮 かび上が って きた。 ボランティ アで手伝 って くれる学生 がいて、 保健 また、外 部の専門 家( 作業療法士 )に来て もら 室で修学支 援を実施 する (ボランテ ィアの学 生は い、5回ほ ど面談を して もらい、卒 業後のこ とを この年度修 了後進路 変更 をしたため に、その 後は 見据えて、 自己の特 性の 理解を深め たり、イ ライ ボランティ アの学生 によ る修学支援 は実施で きな ラのコント ロールが でき るよう負の 感情の処 理が かった)。 スクール カウ ンセラーに よるカウ ンセ できるよう にアプロ ーチ を試みても らった。 しか リングは継 続。 し、勉強の 負荷など で本 人の精神的 な状況が 良く ホ ないことも 多かった ので 、中断をし た。 5年目 (4年生 ) 時間割上、 実験の レポー トの提出日 と体育 のあ 進路につ いては、 担任 の指導で公 務員試験 の受 る曜日が重 なり(火 曜日 )、火曜日 にイライ ラな 験をした。 3つの公 務員 試験を受験 。1つ目 は、 ど調子が悪 くなるこ とが 多い。スク ールカウ ンセ 一次試験合 格したが 、二 次で不合格 。2つ目 は、 ラーによるカウンセリングは継続。11月に、 一次試験は 合格した が、 二次は本人 と家族の 意向 「高専での 特別支援 教育 推進事業」 という名 称で 、 で不受験。 3つ目は 、1 次試験不合 格。 文部科学省の大学改革推進事業「新たな社会的 クラスで 数名しか 合格 しない難易 度の高い 「技 ニーズに対 応した学 生支 援プログラ ム」(学 生支 術士」の一 次試験( 国家 試験)に合 格。しか し、 援GP)に 採択され る( 平成19年11月から平 成21 卒業研究の 内容は不 充分 であったの で、卒業 延期 年3月まで )。財政 的支 援を得られ たため、 本校 となり、論 文を書き 直し 、3月末に 卒業。そ の後 、 OBの教員 を雇用し 、実 験レポート の指導や 実験 研究生とし て本校に 残る 。 中のクラス メートと のト ラブル回避 のため、 実験 ト 7年目 (研究生 ) 本人が比 較的得意 とす る数学系の 講座と情 報系 の指導にも 入っても らう 。 学年末試験 の2ヶ 月程前 より、進級 に対す るプ の講座(ど ちらも専 攻科 1年生用授 業)を聴 講生 レッシャー や実験の レポ ートが上手 く書けな い、 として受講 。単位は もら えない。研 究室を特 別に 進路に対す る迷い、 など で、イライ ラや癇癪 が起 与えてもら うが、荷 物置 き程度とし て利用。 本校 こる頻度が 増える。 保健 室で、泣き わめいた り、 の授業と外 部の専門 機関 の支援の都 合がうま くつ 壁や机を叩 いたりな どの 行動が頻繁 に起こる よう かない場合 は外部の 専門 機関での支 援を優先 させ になる。学 年末試験 は、 頭を掻きむ しったり 、た るよう伝え る。O病 院の 受診は継続 している が、 め息をつい たりする 行為 で、他の学 生に迷惑 をか 平成21年9月より自 分1 人で通院す るように なる 。 けるため、 ほとんど の教 科で別室受 験。5年 には 週2日は学 校に来て いる が、残りの 日は外部 の専 何とか進級 。 門機関に通 っている 状態 。現在に至 る。 へ 6年目 (5年生 ) イライラ のコント ロー ルが上手く できない ため 、 (4) 変容 6年あま りの、A やA の母親との 関わりを 通じ O病院で受 診を開始 する (1ヶ月に 1度の割 合、 毎回筆者が 引率)。 主治 医より「ア スペルガ ー症 て、感じら れる変容 は以 下の通りで ある。 候群」の特 徴につい て、 Aと母親に 説明があ る。 ・1年生の 最初の頃 は、 話していて もこちら の質 投薬によっ てイライ ラの コントロー ルができ るよ 問に答えな かったり する ことがあっ たが、こ ちら うになる。 勉強のプ レッ シャーがか かって調 子が が聞いた質 問の意図 を取 り違えるこ とはある もの 良くないと きには、 今ま でにはなか った、ス クー の、相手の 質問には 答え ようとする 姿勢が身 につ ルカウンセ ラーに対 して イライラを ぶつける 、と いてきた。 いう行為も 出てきた りし た。しかし 、5年次 にな ・低学年の 頃は、ア ニメ のことなど を話し始 めた ると、履修 すべき教 科数 が減り卒業 研究の時 間が ら止まらな いことが 多か ったが、ア ニメの話 をす 増え、また 、卒業研 究を するために 1人で使 える ること自体 は減って きた 。 -253- ・苦手なと ころは事 前に 手助けをし てやると でき 職業センタ ー(以下 「職 業センター 」という 。) るようにな ってきた 。 にも、何度 か訪問し 、事 業への協力 依頼を行 い、 ・イライラ を起こす こと は少なくな り、また 、イ Aのような 学生がい るこ とを伝えて いた。 ライラしそ うな時で も、 自分で薬を 早めに飲 むこ とができる ようにな った 。そのため 、イライ ラを (2) 外部の専門家と の協 議 Aが高専 は卒業で きた ものの、就 労できな かっ 起こしたり 癇癪を起 こし たりした後 に起こる 自己 嫌悪の気持 ちを持つ こと も少なくな った。 たことや、 研究生で 残す ことになっ たことを 受け 、 ・母親には 、当初、 いじ められてい る、学校 は何 平成21年の3月末に 、本 校の特別支 援教育の アド も手助けをしてくれない、という被害者意識が バイザー( 外部の専 門家 )と「しお さい」の 担当 あったが、 それは解 消で きたと思わ れる。 者(副島) と、今後 の学 校の支援の 在り方や 外部 との連携の 取り方に つい て、協議を 行った。 「し おさい」が 今後本格 的に 支援を行う ことはで きる (5) 課題 Aの持っ ている特 性自 体の改善は なかなか 難し が、本人が センター まで 来る必要が あること 、地 い面があり 、以下の よう な点が課題 として残 った 。 元のサポー トステー ショ ンなどとも 連携を取 るこ ・進級や卒 業をさせ るこ となど目の 前の課題 に追 とが必要な のではな いか ということ など、助 言を われ、日常 生活能力 向上 や就労に対 する準備 をさ 受けた。 せることに 手が回ら なか った。 ・母親も、 学業成績 のみ に意識が行 き、Aの 特性 (3) フレッシュワー クや サポートス テーショ ン訪 の理解もま だ不充分 で、 本人を自立 させるこ とに 問 Aの就労 支援を行 って くれる可能 性のある 機関 気が回って いない。 ・発達のア ンバラン ス、 幼さは依然 残る。人 前で として、地元のフレッシュワークとサポートス のあくび、 爪かみ、 母親 の手を握っ て第三者 (筆 テーション を訪問し た( 筆者)。両 機関とも 発達 者)と話をする、など、相手との関係や年齢に 障害者を対象にしている機関ではないことはわ 合った行動 が取れな い。 かっていたが、Aの状況からして、サポートス ・自己の特性の理解がなかなか進まなかった。 テーション の方がよ り適 していると 判断され た。 「自分はア スペルガ ー症 候群ではな い」とか 「い 平成21年の4月のは じめ にAを連れ てサポー トス ろんなトラ ブルは自 分の せいではな い」「社 会が テーション を訪問し 、協 力を依頼し た。その 後、 悪い」と考 える傾向 があ る。また、 母親も含 め、 A本人だけ で2回ほ ど訪 問したよう であるが 、そ 支援を受け ることを 当然 と考えてい る面があ る。 れ以降は訪 問してい ない ようである 。 ・就労に対 する意識 ・意 欲が充分で はないよ うに (4) 長崎県発達障害 者支 援センター 「しおさ い」 思われる。 ・高専を卒 業したの だか ら仕事は何 とかある ので 外部の主 要な支援 機関 として考え ていた「 しお はないか、 と考えた り、 ハローワー クで仕事 を探 さい」を、 平成21年の4 月の上旬に Aを連れ て訪 したら一般 就労が可 能で ある、など と考えて いる 問した。「 しおさい 」は 、佐世保よ りJRで 約1 ところがある。資格取得(第三種電気主任技術 時間の距離 にあり、 本人 や保護者に 任せてお くと 、 者)にこだ わるが、 安全 性の面でも 、この資 格が 交通費のこ とを理由 に行 かない可能 性が高か った Aの適性に あってい ると は思えない 。 ので、その後2週連続で本人を車で引率した。 ・医療機関 での継続 受診 も含め、外 部の専門 機関 「しおさい 」側の指 導の おかげもあ り、4月 下旬 へ、自らか かること は期 待できない 。都合が 悪く からはAは 1人で通 所で きるように なり、そ の後 、 なると経済 的な理由 を出 す傾向があ るが、こ れは 、 毎週約1回 の割合で 、自 力で通って いる。 自分の特性 や一般就 労が 難しい現実 をちゃん と認 また、「 しおさい 」か らも、「職 業センタ ー」 識できてい ないこと が大 きく関係し ていると 思わ に連絡を取 ってもら い、 「職業セン ター」と も連 れる。 携を取るこ ととなっ た。 3 (5) 長崎障害者職業 セン ター 外部関係機関と の連 携 (1) 発達障害者 の就労支 援を 行ってくれ る機関と し 学生支援G P事業 の副産物 文部科学省 の学生 支援G Pに採択さ れたお かげ て、「職業 センター 」と の連携も必 須だと考 えた で、外部の 多くの専 門機 関と連携が 取れるよ うに が、地理的 には、「 しお さい」より 佐世保か らは なった。長 崎県発達 障害 者支援セン ター「し おさ さらに遠く 、長崎市 にあ るので、交 通費や通 所に い」(以下 「しおさ い」 という。) や長崎障 害者 要する時間 にAが難 色を 示すのでは ないかと いう -254- ことが懸念 された。 5月 中旬に、車 でAを引 率し で面接を受 ける予定 であ る。受け入 れが進め ば、 「職業セン ター」を 訪問 し、6月上 旬には、 JR Aの職場適 応を円滑 に進 めるために ジョブコ ーチ に一緒に乗 り「職業 セン ター」を訪 問した。 6月 支援を活用 すること を検 討してもら っている 。 中旬からは 、A1人 で訪 問できるよ うになっ たの を機に、一 対一の職 業評 価だけでな く、集団 場面 (3) 外部の支援者へ の移 行のプロセ スと顛末 筆者の支援 の比重を 外部 に移行する にあたっ て、 における対 人コミュ ニケ ーションの 取り方や 感情 面のコント ロールの 適応 状況、作業 特性など を把 ①Aの社会 的自立、 職業 的自立を促 進するた めの 握するため に「職業 準備 支援」を活 用し、支 援計 外部の支援 機関のネ ット ワークを構 築するこ と、 画を立てて もらった 。5 回程度設定 してもら った ②母親自身 に生活管 理面 の支援の主 体性を認 識さ が、交通費を理由に行かない、とは言い出さな せ、適切な 社会資源 を活 用できるよ うにする こと 、 かった。そ の後、8 月下 旬から9月 下旬まで 本格 ③A自身が 、適切に 社会 資源を活用 できるよ う橋 的に職業準 備支援の 「職 業準備講習 と自立支 援カ 渡しを行う とともに 、活 用のスキル を体得さ せる リキュラム 」を受講 する こととなり 、自力で 通う こと等をポ イントと して 取り組んで いる。い ずれ ことができ た。 にしても、 Aや母親 の障 害の受容が 進まなけ れば 、 構築したネ ットワー クが 意味をなさ なくなる こと 支援主体となっ た外 部の機関の 取り組み から「障害 受容」を 主眼 においたア プローチ を行 (1) 長 崎 県 発 達 障 害 者 支 援 セ ン タ ー 「 し お さ い、成果が みられつ つあ る。現時点 で、感情 面の 4 安定の支援 として医 療機 関、発達障 害につい ての い」 「しおさ い」では 、「 発達障害が あっても 社会 受容・自己 理解に関 して は「しおさ い」、職 業自 の中で生き ていける よう に」するた め、Aに 対し 立に関して は「職業 セン ター」とい う役割分 担で て、次のよ うなこと を主 眼に指導や 支援を行 って チーム支援 を展開し てい る。今後、 職業自立 を実 もらった。 現化させる には、ハ ロー ワークや障 害者就業 ・生 ・学校はいつまでも支援はできない、「しおさ 活支援セン ターとの 連携 も段階的に 検討する こと い」がこれ からはA が頼 るべき機関 であると い が必要だと 思われる 。 う認識を深 める ・何か大事 な判断を する ときの相談 相手は学 校の (4) 関係者間の情報 共有 Aの調子 が悪かっ たり する時には 、メール で関 担当者(筆 者)では なく 、母親であ ること ・「職業セ ンター」 に通 う必要性 係者間での 情報の共 有を タイムリー に図り、 支援 ・障害の受 容につい て や指導に生 かすよう に努 めている。 ・イライラ や負の感 情の コントロー ル ・就労の場 面でのマ ナー や就労に向 けての心 構え 5 まとめ 学内では、 Aに対す る筆 者の支援方 法につい て について は、「それ は、親の 責任 だろう」と か「やり 過ぎ ・集団の中 でのマナ ーに ついて 支援を継 続して行 って もらってい るおかげ で、 では」とい う批判も あっ た。しかし 、集中的 に外 Aは、自分 の特性の 理解 や障害の受 容もかな り進 部の専門機 関と連携 を図 り、支援を 受けるレ ール んでいる模 様である 。 を敷いてや らないと 、外 部の専門機 関の支援 から は一生縁遠 い状態に なっ てしまい、 結局は、 一家 共倒れにな るのでは ない か、という 思いが強 かっ (2) 長崎障害者職業 セン ター 「職業センター」では、「職業リハビリテー た。幸い、 「職業セ ンタ ー」の担当 者と「し おさ ション計画 」に沿っ て、 職業準備支 援を受講 する い」の担当 者に、と ても 熱心にAの 支援に乗 り出 中で、①自 分自身の 障害 特性や作業 特性の理 解、 してもらう ことがで き、 結果的に、 支援主体 が学 ②就職活動 時の障害 のオ ープン、ク ローズに つい 校から外部 の機関に 移行 できた。 今後の課 題として 、支 援者間のネ ットワー ク構 て(精神保 健福祉手 帳取 得も含め) 、③職場 での マナー、対 人コミュ ニケ ーションの スキルア ップ 、 築は整備さ れつつあ るが 、Aや母親 の社会資 源の ④就職活動 に必要な 知識 の付与など を中心に 支援 適切な活用 という点 では 、まだ弱く 、当面は 各支 を行っても らってい る。 援者からの 働きかけ と促 しが必要と 考えられ る。 結果的に、 本人、家 族が 「障害者枠 」でハロ ー ワークに求 職登録を する ことに同意 し(精神 保健 福祉手帳取 得も含め )、 9月下旬に 開催され る障 害者就職面 接会にて 、製 造、事務補 助などの 業種 -255- 障害者就業・生活支援センターと 障害者職業能力開発プロモート事業との連携の効果 ○富永 英伸(北九州障害者しごとサポートセンター 就業支援ワーカー) 松野 康広・園木 純子(北九州市保健福祉局 障害福祉部障害福祉課) 1 (1)障害者職業能 力開発 推進会議の開催 はじめに 北 九 州 の地 における障 害 者 就 業 ・生 活 支 援 セン 北 九 州 市 における 障 害 者 職 業 訓 練 に 関 連 する 諸 ターは、市 単 事 業 の障 害 者 就 労 支 援 センターと一 体 機 関 が参 集 し、プロモート事 業 の年 間 全 体 計 画 等 に 的に北 九 州 障害 者しごとサポートセンター(以 下「当セ ついて協 議 ・検 討 を行 う目 的 で会 議 を開 催 。年 2回 実 ンター」という。)として運 営 している。福 祉 、特 別 支 援 施した。 教 育 の実 施 主 体 である 政 令 指 定 都 市 の 行 政 資 源 を 有 効 活 用 して、障 害 者 の職 業 訓 練 受 講 の促 進 を図 り、 (2)障害者職業能 力開発 説明会の開催 障害 者の一般 企業への就 職を促進するために国が政 市 内 の 特 別 支 援 学 校 に おける 進 路 指 導 主 事 、 及 令 指 定 都 市 に委 託 する形 でプロモート事 業 が実 施 さ び生 徒 ・ 家 族 等 を 対 象 に 、卒 業 後 の 進 路 とし て 職 業 れている。 北 九 州 市 で は そ の事 業 が 当 セン ターに 再 訓練に対する理解を深めるために説明会を開催した。 委 託 され、事 業 展 開 をすることになったこ とでどのよう 年 間 3 回 実 施 し 、地 域 における就 職 支 援 機 関 と就 職 な効果があったかを検証したい。 支 援 内 容 、企 業 の雇 用 管 理 と求 められる職 業 能 力 、 求 めら れる職 業 能 力 を 開 発 ・ 向 上 するための職 業 訓 2 練 と学 校 教 育 との連 携 、学 校 教 育 から就 職 への円 滑 事業の趣旨 福 祉から雇 用・就 業への流 れが強 化される中で、障 害 者 の職 業 的 自 立 を支 援 するためには、障 害 者 の生 な移 行 を支 援 するための職 業 訓 練 の実 施 状 況 などを 内容とした。 支援 者 側から地域で行われている職業 訓 練や制度 活 基 盤のある地 域レベルにおいて、教育、福 祉、医 療、 保 健 等の支 援 から職 業 訓 練へのアクセスを容 易にし、 等 の説 明 と障 害 者 雇 用 をしている事 業 主 から 企 業 の 企 業 及 び障 害 者 のニーズや障 害 者 の一 人 一 人 の態 求 める人 物 についての講 演 を実 施 し、46名 の参 加 が 様に対 応した職 業 訓 練を推 進することが求められてい あった。 る。政 令 指 定 都 市 は、独 自 施 策 を 含 めて、障 害 者 に 対 する福 祉 等 の施 策 を展 開 し ており、障 害 者 の職 業 訓 練 ニ ーズの喚 起 等 、職 業 訓 練 から 雇 用 ・ 就 業 への 流れの形成について有効な行政環境を備えている。 このため、①教 育 ・ 福 祉 ・ 医 療 ・ 保 健 機 関 、労 働 関 係 機 関 等 が一 体 となった 障 害 者 職 業 能 力 開 発 推 進 基 盤 の形 成 、②障 害 者 、その家 族 、支 援 機 関 及 び企 業 等 に対 する職 業 訓 練 の周 知 ・広 報 機 能 等 の強 化 、 ③都 道 府 県 と連 携 した障 害 者 の態 様 に応 じた多 様 な 委 託 訓 練 (以 下 「委 託 訓 練 事 業 」という。)、の効 果 的 な 推 進 を 図 る ため 、 障 害 者 職 業 能 力 開 発 プ ロ モー ト 事業を政令指定都市において実施する。 障 害 者 職 業 能力 開 発 説 明 会 の様 子 なお、北 九 州 市 では、障 害 者 職 業 能 力 開 発 プロ モート事業を『障害 者職 業 訓練 促進 事業』(以下「プロ (3)障害者職業能 力開発 見学会の開催 モート事業」という。)との名称で実施している。 職 業 訓 練 現 場 等 の 見 学 を 行 うこ とで、職 業 訓 練 に 3 対 する 理 解 を 深 める 目 的 で実 施 。 対 象 とし て市 内 特 北九州市における実施方法 北 九 州 市 では、障 害 者 職 業 能 力 開 発 プロモーター 別 支 援 学 校 高 等 部 の 生 徒 、 及 び保 護 者 、 進 路 指 導 を雇用した上で、当センターに担当 職 員(障 害 者 職 業 主 事 を考 え 、年 2 回 実 施 。 実 際 に障 害 者 雇 用 を行 っ 訓 練 促 進 員)を2名 配 置し、一 体 的 に業 務を進 めてい ている企 業3社 と福 岡 障 害 者 職 業 能 力 開 発 校 の見 学 る。 を実施し、69名の参加があった。 -256- る者 に対 して受 講 勧 奨 するとともに、関 係 機 関 の了 解 を得 て、受 講 希 望 者 に関 する情 報 を障 害 者 職 業 コー ディネーター、委託訓練拠 点校等に提供した。 4 実施スケジュール 先 述 のとおり、各 取 り 組 み に対 して、( 図 1 で) 障 害 者職業能力 開発推進 会議 で了承の上、実施した。 実 施 事 業 (日 時 ) 障 害 者 職 業 能力 開 発 見 学 会 の様 子 概要等 第 1回 障 害 者 場 所 :ウェルとばた 職業能力開発推進会議 対 象 :障 害 者 団 体 代 表 、経 済 団 体 代 表 、 (平 成 20年 9月 30日 ) 障 害 者 就 職 機 関 など 内 容 :プロモート事 業 概 要 説 明 等 (4)障害者職業能 力開発 体験会の開催 職 業 訓 練 現 場 を実 際 に体 験 することで、職 業 訓 練 に対する理解を深める目的 で開催。対象として市内特 第 1回 障 害 者 場 所 :こども文 化 会 館 職業能力開発説明会 対 象 :特 別 支 援 学 校 の進 路 指 導 主 事 、 (平 成 20年 11月 26日 ) 及 び生 徒 ・家 族 など 内 容 :職 業 訓 練 に関 する説 明 会 等 別 支 援 学 校 の高 等 部 生 徒 (7名 実 施 )で、市 内 3箇 所 第 2回 障 害 者 場 所 :北 九 州 市 立 八 幡 特 別 支 援 学 校 の事 業 所で3日 間 実 施した。なお、体 験 期 間について 職業能力開発説明会 対 象 :特 別 支 援 学 校 の進 路 指 導 主 事 、 は、障 害 者 職 業 訓 練 促 進 員 が1ヵ所 ずつ付 添 い、支 (平 成 20年 11月 27日 ) 及 び生 徒 ・家 族 など 内 容 :職 業 訓 練 に関 する説 明 会 等 援にあたった。 第 3回 障 害 者 場 所 :北 九 州 市 立 小 倉 南 特 別 支 援 学 校 職業能力開発説明会 対象:特別 支 援 学校の進路 指 導主 事、及 (平 成 20年 11月 28日 ) び生 徒 ・家 族 など 内 容 :職 業 訓 練 に関 する説 明 会 等 第 1回 障 害 者 場 所 : ㈱ サ ン ア クア ト ー トー 、 日 本 資 源 流 通 職業能力開発見学会 ㈱福 岡 障 害 者 職 業 能 力 開 発 校 、 (平 成 20年 12月 18日 ) ㈲化 成 フロンティアサービス 対 象 :特 別 支 援 学 校 の生 徒 、職 員 など 内 容 :障 害 者 の働 く現 場 等 の見 学 障 害 者 職 業 能力 開 発 体 験 会 の様 子 (5)障害者職業能 力開発 セミナーの開催 職 業 技 能 等 の習 得 により職 業 自 立 を図 ることと、職 業訓練に対する理解を深める目的で開催した。 市 内 の就 労 移 行 支 援 事 業 等 のサービ ス利 用 者 で 就 職を希 望している方を対 象に各 事業 所へ訪 問し、5 箇 所 開 催 。なお、職 業 訓 練 現 場 等 見 学 会 も1回 実 施 し、合わせて64名の参加があった。 障 害 者 職 業 能力 開 発セミナーの様 子 (6)職業能力開発 相談の実施・委託先機関の開拓 第 1回 障 害 者 場 所 :㈲化 成 フロンティアサービス、 職業能力開発体験会 日 明 リサイクル工 房 (平 成 21年 1月 28日 ∼ 対 象 :特 別 支 援 学 校 の生 徒 など 平 成 21年 1月 30日 ) 内 容 :障 害 者 の働 く現 場 等 の体 験 第 2回 障 害 者 場 所 :本 城 リサイクル工 房 職業能力開発体験会 対 象 :特 別 支 援 学 校 の生 徒 など (平 成 21年 2月 4日 ∼ 内 容 :障 害 者 の働 く現 場 等 の体 験 平 成 21年 2月 6日 ) 第 1回 障 害 者 場 所 :春 ヶ丘 学 園 職 業 能 力 開 発 セミナー 対 象 :就 労 移 行 支 援 等 のサービス利 用 者 (平 成 21年 2月 19日 ) 内 容 :職 業 訓 練 に関 する説 明 会 等 第 2回 障 害 者 場 所 :戸 畑 障 害 者 地 域 活 動 センター 職 業 能 力 開 発 セミナー 対 象 :就 労 移 行 支 援 等 のサービス利 用 者 (平 成 21年 2月 20日 ) 内 容 :職 業 訓 練 に関 する説 明 会 等 第 3回 障 害 者 場 所 :創 造 館 クリエイティブハウス 職 業 能 力 開 発 セミナー 対 象 :就 労 移 行 支 援 等 のサービス利 用 者 (平 成 21年 2月 24日 ) 内 容 :職 業 訓 練 に関 する説 明 会 等 第 4回 障 害 者 場 所 :ラベンダー雇 用 支 援 センター 職 業 能 力 開 発 セミナー 対 象 :就 労 移 行 支 援 等 のサービス利 用 者 (平 成 21年 2月 24日 ) 内 容 :職 業 訓 練 に関 する説 明 会 等 第 5回 障 害 者 場 所 :浅 野 社 会 復 帰 センター 職 業 能 力 開 発 セミナー 対 象 :就 労 移 行 支 援 等 のサービス利 用 者 (平 成 21年 2月 26日 ) 内 容 :職 業 訓 練 に関 する説 明 会 等 障害者職業能力 場 所 :日 本 資 源 流 通 ㈱ 開 発 セミナー見 学 会 対 象 :就 労 移 行 支 援 等 のサービス利 用 者 (平 成 21年 3月 24日 ) 内 容 :障 害 者 の働 く現 場 等 の見 学 第 2回 障 害 者 場 所 :ウェルとばた 職業能力開発推進会議 対 象 :障 害 者 団 体 代 表 、経 済 団 体 代 表 、 (平 成 21年 3月 26日 ) 障 害 者 就 職 機 関 など 委 託 訓 練 受 講 生 の募 集 や特 別 支 援 学 校 、福 祉 施 設 等 を訪 問 し 、委 託 訓 練 の受 講 により就 職 が見 込 め -257- 内 容 :プロモート事 業 報 告 等 図1 プロモート事 業のスケジュール 5 (4)本人の特性 実施効果等 障 害 受 容 をしておらず、これにより、自 分 自 身 は障 (1)事業の効果① 今 回 のプロモート事 業 で行 う障 害 者 職 業 能 力 開 発 害 者ではない、別であるという、特 別な意識・思いが見 説 明 会 (以 下 「説 明 会 」という。)、障 害 者 職 業 能 力 開 られた。また、場 の雰 囲 気 を考 えない唐 突 な要 求 をし 発 見 学 会 (以 下 「見 学 会 」という。)、障 害 者 職 業 能 力 たり、見たままの言動・行動 等が見受けられた。理解や 開 発 体 験 会 (以 下 「体 験 会 」という。)、障 害 者 職 業 能 判 断 力 は高 いが、良 好 な人 間 関 係 を築 ける部 分 につ 力 開 発 セミナー(以 下「セミナー」という。)を通じて、参 いては、まだまだ支援・配慮のいる方であった。 加 した保 護 者 から 訓 練 校 等 の存 在 がわかり、具 体 的 にとりたい資格があった等、参加して有意 義だったとい う意 見 に加 え、障 害 者 自 身 の能 力 開 発 の必 要 性 を感 じたという声が寄せられた。また、今後もより多くの企業 情 報 を提 供 し てほしいとの要 望 もある等 、参 加 者 から の強い関心があることがわかった。 さらに、この説 明 会 を通 じて、北 九 州 の地 で行 われ ている障 害 者 就 労 支 援 や 職 業 訓 練 等 の仕 組 みがわ かり、当 セン ターの存 在 を 知 った保 護 者 から 、登 録 し 支 援 の希 望 まであがる効 果 もあり、実 際 に支 援 に至 っ たケースもあった。 本 人の実 習 中の様 子 見学 会に関して当 初計 画 では、20名程 度の見学 希 望 者 を想 定 して、特 別 支 援 学 校 に案 内 をしたところ、 (5)事業所の特徴 70名 近 くの参 加 希 望 があり、計 画 を変 更 し、全 員 を見 実 習を行 った企 業 は、北 九 州の関 門 海 峡 を臨 む観 学 会 に参 加 いただくことにした。また、保 護 者 の中 から 光 施 設 に、指 定 管 理 者 制 度 で委 託 をうけて業 務 を も参 加 したいとの要 望 も寄 せられた。障 害 者 が実 際 に 行 っている事 業 所 だった。仕 事 の内 容 は、そこの観 光 働 く現 場 を見 てみたいという希 望 は生 徒 、保 護 者 とも 施設を清掃するものであった。 に強いものであることが、改めて認識させられた。 この事業所自 体では、本社 (東京)での障害者 雇用 また、体 験 会 の募 集 定 員 4名 に対 し、9名 の応 募 が はあったが、北 九 州の営 業 所では初めての試みであり、 あり、学校側より多くの生徒を体験会に参加させたいこ 担 当 者 や現 場 で働 く従 業 員 にとって、障 害 の特 性 の と、また期 間 も3日 間 は実 施 してほしいとの要 望 があっ 理 解 ・啓 発 等 や業 務 の指 導 方 法 など本 人 支 援 はもち たことから、当 初 計 画より多 い7名の生 徒に3日間の職 ろ ん、 事 業 主 支 援 も 手 厚 く す る 必 要 が あ る 事 業 所 で 場体験をしてもらうことになった。 あった。 実 際 に、体 験 した生 徒 からは、「仕 事 の大 変 さや楽 しさが分かった」、「勉 強になり良い経 験になった」等 の (6)職場実習の詳細 感想が寄せられた。 上 記 事 業 所 に職 場 実 習 を依 頼 。制 度 は障 害 者 職 今 回の体 験 会 により、参 加 した生 徒 が将 来、当 セン ターの支 援を必 要とした場 合には、今 回の体 験を踏 ま 業 能 力 開 発 校の委 託 訓 練 事 業の実 践 能 力 習 得 訓 練 コースを利用しての実施となった。 えた、より希望に沿った支援が可能になると思われる。 昨 年度については、委 託 訓 練事 業について福 岡 県 では、特 別 支 援 学 校 生 徒 の枠 として試 行 的 に1 枠 実 (2)事業の効果② 施 するようにとの通 知 があった点 と、本 人 の職 業 能 力 上 記の効 果に加えて、さらに説 明会 で当 センターの 存 在 がわかった保 護 者 から、登 録 の希 望 まであがり、 からすると短 時 間 での作 業 習 得 は困 難 だろうとの関 係 者の協議のもと、この制度を利用することになった。 職 場 実 習 か ら トラ イ アル 雇 用 まで つながっ たケ ースも 実 習 期 間 については、1ヵ月 ほど行 い、その後 トライ あった。以下、その事例を紹介したい。 アル雇用につながった。 (3)本人プロフィール (7)トライアル雇用後の課題 特 別 支援 学 校 在 学 中の生 徒。女 性。18歳。知 的 障 委 託 訓 練 事 業 を 用 い ての 職 場 実 習 期 間 中 は 、 問 害B2 自 閉 傾 向。本 人・家 族 としては、一 般 企 業 への 題 が目 立 たなかったが、本 人 が特 別 支 援 学 校 在 学 中 就 労 希 望 が強 かったが、特 別 支 援 学 校 とし ての就 労 にトライアル雇 用 ではあるが、就 職 を決 めて、それから 支援の方 針として、就職は時期 尚早ではないかとの見 卒 業 したことの自 信 から、若 干 の緊 張 感 が欠 けていた 解で卒業 後は就労 継続 支 援A型の事業 所にお願いし ことも背 景 として考 えられ、特 に、以 下 のような課 題 が ようと検討していた。 顕著となってきた。 -258- まずは、観 光 施 設 のため、多 くの来 訪 者 ( 観 光 客 ) 拡がらなかったことも課題の一つとして捉えている。 が来 て、見 学 している中 を割 って清 掃 して苦 情 になっ これら課 題 を踏 まえつつ、今 年 度 もこの事 業 を通 じ たこと、冗 談 と本 気 の区 別 がつかないこと、重 たいもの て、将来、就 職を目指す方 の選択肢として幅が広がれ を動 かそうとはしないこと、作 業 スピードが遅 いこと、時 ばと願う。 間ばかり気にしていて仕事 が出来ていないなどの課 題 が浮 き彫 りになり、一 時 はトライアル雇 用 で満 了 し、常 引用・参考文献 用雇用に移行できないかもしれないところまで陥った。 北 九 州 市 障 害 者 職 業 能 力 開 発 プロモート事 業 実 施 要 領 (2008年4月1日) (8)支援の立て直し 平 成 20年 度 障 害 者 職 業 訓 練 促 進 事 業 報 告 書 (2009年 3 課 題 は何 であるか、どこの目 標 まで達 成 すれば、合 格 とする か、 明 確 なゴ ール と期 限 を 設 定 し 、 厚 み ある 支 援 を実 施 した。具 体 的 には、支 援 者 の訪 問 回 数 を 増 やし 、業 務 内 容 の把 握 や見 直 し 、作 業 の明 確 化 、 本人と従 業員との接し方または流し方、本人の不適 応 な行 動の部 分 については、来 所によるフィードバックを し、改 善 を図 った。加 えて、家 族 や関 係 者 にも協 力 を 仰 ぎ、当 センターだけではなく、関 係 者 も巻 き込 んだ、 一体的な支援を試みた。 結 果 、トライアル雇 用 期 間 、終 了 間 際 には、課 題 と なる部 分 の軽 減 が図 られ、なんとか合 格 点 を達 成 、採 用となり、現在も継続して、就労は続いている。 6 考察 上 記 の委 託 訓 練 事 業 を用 いた取 り組 みが、プロ モート事 業 の中 の説 明 会 に参 加 し ていただいた保 護 者 及 び本 人 に職 場 実 習 という形 で提 案 でき、さらに、 採 用まで至ったことは、この事 業の意 義や有 意 性の証 明 となるのではないだろうか。このことは内 外 問 わず大 きな反響を呼ぶ結果となった。 また、北 九 州 市 障 害 福 祉 課で雇 用した障 害 者 職 業 訓 練促 進 員を2名、当センターに配 置することで、マン パワーが増 え、機 動 力 が増 した点 や特 別 支 援 学 校 の 進 路 担 当 者会 議に参 加できるようになった点、障 害 者 職 業 能 力 開 発 校 との連 携 強 化 にもつながっている効 果 が生 まれている。さら に、当 セン ターには北 九 州 教 育 委 員 会 から教 員 の社 会 体 験 研 修 として、特 別 支 援 学 校の教 諭もいることから、そのあたりの相 乗 効 果も生 まれたかと考えられる。 7 まとめと今後の課題 昨年より、当センターでは、プロモート事業の再委託 を受 け、実 施 した説 明 会 ・見 学 会 ・体 験 会 では、予 想 に反して、多くの希 望 者の応 募があった。当センターと しては、職 業 訓 練 等 に対 する潜 在 的 なニーズがあると 感 じている。特 に、障 害 者 職 業 訓 練 現 場 の体 験 会 の 募 集 に対して、もっと多 くの生 徒 に対して、体 験させた いとの要望もいただいた。 体 験 枠 に制 限もあり、断らざるを得なくなった事 態 も 起こった。また、委託訓 練 委託先 機関の開拓について も、実 践 能 力 習 得 訓 練 コースの協 力 事 業 所 以 外 には -259- 月15日) 重度視覚障害者のためのプログラミング環境の開発と その職業的活用の可能性 ○長岡 英司(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター 教授) 宮城 愛美・福永 克己(筑波技術大学) 1 背景 と目的 それに先 立って、筆 者らはJava言 語に注 目していた。 パーソナル・コンピュータ(以 下 「PC」という。)やイン 同 言 語 は、CやC++などの利 点 を引 き継 ぎ、同 時 にそ ターネットの活 用 は、視 覚 障 害 者 に新 たな多 くの可 能 れらの難 点のいくつかが解 消された、比 較 的 理 解 しや 性 をもたらした 1) 。その結 果 、教 育 や職 業 をはじめとす すく使 い易 い言 語 である。そして、注 目 の最 大 の理 由 る様 々な場 面 で 生 活 の質 的 向 上 が実 現 し ている。だ は、Javaの開発環境JDK(Java Development Kit)が、 が、重 度 の視 覚 障 害 者 がそれらの利 用 法 の開 発 や利 旧 来 のコマンドライ ン 方 式 を採 っているこ とであった。 用 環 境 の改 善 に主 体 的 に取 り組 むのは難 しい。その キーボ ード からのコマンド の入 力 で、すべての操 作 が 理 由 の一 つに、視 覚 を用 いないで汎 用 的 なプログラミ できるJDKは、視 覚 障 害 者 による利 用に適している。し ングを行う方法が整っていないことがある。こうした状況 かし、操 作 場 面 での画 面 表 示の音 声 化や点 字 化 を既 の改 善 を目 的 に、筆 者 ら はメインストリーミング言 語 で 存 のスクリーンリーダで行 うことができず、新 たなソフト のプログラミングを、触 覚 や聴 覚 を介 して行 えるように ウェアの開発が必要なことが明らかになった。 する支 援 ソフトウェアを開 発 した。また、プログラミング の学 習 に用 いる点 字 資 料 の製 作 など、その利 用 を進 (2) 開発の方向性 めるための環境の整備を図 るとともに、それらを職業場 面で活用する可能性を探 る取り組みを始めた。 そこで、Java言 語 のコンパイラとインタプリタへのアク セスを可 能にする支 援ソフトウェアの開 発に着 手した。 1980年 代 から90年 代 中 盤 にかけての時 期 には、全 その開発に際しては、次のような方針を立てた。 盲 者 などの 重 度 の 視 覚 障 害 者 も 汎 用 コン ピュータや (イ) 画面表示は原則として点字と音声の両方で DOS PC上 で幾 つかの汎 用 言 語 を使 ってプログラミン 出力する グを行 うことができた。それによって、情 報 処 理 分 野 が (ロ) 点字は、情報処理用 記号で、ディスプレイ 新たな職 域となったほか、障 害を補 償するためのソフト 端末に実時間で出力する ウェアを視 覚 障 害 者 が自 らの手 で開 発 して、大 きな成 (ハ) 音声化には、既存のスクリーンリーダの機 果 が 得 ら れ た 。 と こ ろ が 、 1990 年 代 半 ば 以 後 、 能を活用する Windowsの普 及 でGUI(Graphical User Interface)化 (ニ) ソースコードの入力や編集を円滑かつ確実 が進 展 したのに伴 って、視 覚 を使わずに利 用 できる開 に行えるようにするための機能を具備する 発 環 境 がほとんどなくなった。同 時 に、ユーザ・イン タ (ホ) その他、プログラミング作業の能率と確実 フェースの作 成 が難 し くなったこ となどもあって、重 度 性を向上させる機能を検討し具備する の視 覚 障 害 者 による実 用 的 なプログラミングは行 われ ソフトウェアの開 発 と更 新 の実 務 は、当 初 より、山 本 なくなった。しかしながら、ソフトウェア開 発 に関 する知 卓氏(2005年当時、電気通信大学学生)が担当した。 識や技能の習得は重 度の視覚障害 者にとって就労 機 会の確 保や拡 大に有 用と考えられる 2) 。それゆえ、プロ (3) Java用支援ソフ トの 完成 グラミングの可 能 性 の復 活 は、就 労 支 援 の一 環 として も意義があるといえる。 2006 年 度 中 に 、 Java プ ロ グ ラ ミ ン グ 用 の 支 援 ソ フ ト ウェアが開発され、重度の視覚障害 者による試用実 験 で、その基 本 的 な機 能 の有 効 性 を確 認 することができ 2 プログラミング 支援 ソフトウェ アの開発 た。 重 度 の視 覚 障 害 者 によるプログラミングを可 能 にす るための支 援 ソフトウェアの開 発 を、2005 年 度 に開 始 (4) C#への移行 した。 (1) Java言語への注 目 Java言 語で開 発されたアプリケーションは、基 本ソフ トに非 依 存 な中 間 言 語 コード形 式 であり、実 行 にはイ -260- ンタプリタを介 さなければならない。そのために、アプリ (2) 代替コマンドプ ロン プト AiB Terminal ケーションのアクセシビリティの確 保 が煩 雑 になるなど コマンドライン方 式 での対 話(コマンド等 のキー入 力 の難 点 がある。そこ で、対 象 言 語 を、新 たにメイ ンスト と実 行 結 果 等 の確 認 )を点 字 ディスプレイ出 力 と音 声 リーム言 語 になりつつあったC#に変 更 することとした。 読 み上 げを介 し て行 え るようにする。入 力 ウイン ド ウと 同言語を選定した理由は次のとおりである。 出 力 ウインド ウとを有 し 、操 作 の流 れに従 って自 動 的 (イ) コマンドライン方式の開 発環境が整ってい にフォーカスが移 動 する。コンソールへの新 たな出 力 る があると、出 力 ウインドウ上 でフォーカスがその内 容 の (ロ) Windowsを主たるプラットフォームとする 先 頭の直 前に置かれるようになっており、点 字ディスプ 言語であることから、そこでのアクセシビリ レイ端末で、すぐにそれを読み始めることができる。 ティの確保が図りやすい (ハ) Javaと同じオブジェクト指向言語であり、 (3) コンパイル補助 用フ ロントプロ セッサ _csc 文法上の類似点が多い C#のコン パイ ラcscを起 動 するとともに、AiB Editを 2007年 度 には、C#に対 応 するためのソフトウェアの 改修が主に行われた。 連 動 させる。cscと同 様 にコマンドラインで操 作 すると、 コンパイルを開始し、エラーが検出された場合は、その 一 覧 表 示のウインドウが開 く。点 字ディスプレイ端 末 上 (5) フィールドテス トに よる改良 でエラーメッセージの一つを選択すると、AiB Editが起 2008年度には、点 字使 用 者によるC#の学習に本支 援ソフトウェアを用い、問 題 点 等を洗い出して、機 能の 動 してソースコードの当 該 エラー発 生 箇 所 にフォーカ スが置かれ、同時にその部分が点字表示される。 改 良と向 上 を図った。また、それまでのWindows XPに 加えてVistaにも対応できるよう版を更新した。 3 プログ ラミング 支援 ソフトウェ ア AiB Tools の概要 重 度の視 覚 障 害 者 によるC#プログラミングを可 能に する支 援 ソフトウェアは「AiB Tools - the accessible programming tools in braille」と名付けられた。本ソフ トウェアは、3種のアプリケーションからなる(図1)。その いずれもが、点 字 ディスプレイ端 末 への出 力 機 能 を持 つとともに、各スクリーンリーダで読み上 げがなされるよ 図1 AiB Tools の操 作 画面 う設計されている。点 字への変換と点字ディスプレイ端 末 の 制 御 にはニ ュー・ ブ レ イ ル・ システム 株 式 会 社 の NBSエンジンを用いており、点 字は完 全な情 報 処 理 用 4 学習支 援体制の 整備 重 度 の視 覚 障 害 者 によるC#プログラミングを普 及 さ 記号で出 力される。また、点字ディスプレイ端 末のカー せるには、AiB Toolsのような支 援ソフトウェアの供 給 と ソルスイッチが各場面で有効である。 本 ソ フトウェアは、開 発 者 のWeb ページから 無 償 で ともに、スキルの習 得 に関 する支 援 が必 要 である。ここ ダウンロードできる 。ただし、NBSエンジンについては では、そ の実 例 とし て点 字 版 学 習 資 料 の製 作 と 課 題 別途の購入が必要である。 集の試作について記す。 (1) テキストエディ タ AiB Edit (1) 点字版学習資料 の製 作 3) テキストの編 集 に必 要 な基 本 的 な機 能 に加 え、コン 筑 波 技 術 大 学 情 報 ・ 理 数 点 訳 ネットワークは、文 パイ ラ と連 携 する機 能 、フ ォーカスの現 在 位 置 ( 行 番 部 科 学 省 の 特 別 教 育 研 究 経 費 に よる 教 材 整 備 プ ロ 号 やメソッド名 )を読 み上 げる機 能 、プログラムの構 造 ジェクトの一 環 で、2006年 に開 設 された。同 ネットは、 の概 要 を表 示 する機 能 (アウトライン機 能 )などを備 え 不 足 が著 しい情 報 系 と理 数 系 の点 字 図 書 を製 作 する ている。 ための組 織 であり、2008年 度 末 までに42タイトルの図 書を点訳した。その中にはプログラミング関係の図 書 も -261- 含 まれており、C#の学 習 に有 用 なものが3タイトルある ・課題に対するAの回答(プログラム)の評価 (表1)。いずれも原 本 のすべての内 容 が点 字 化 され、 ・サンプル・プログラムを用 いての新規事項の学習 プログラムのサンプルなども情 報 処 理 用 点 字で正 確に ・新規学習事項に関連するプログラミングの実習 4) である。4月 末 までに18回 の学 習 を行 い、オブジェクト 表1 C#関 連の点 字 版 学 習 書 指 向 の考 え方 を含 め、C#プログラミングに関 する基 礎 記されている 。 的な知識とスキルを一通り習得した。 ・ 『 猫 で も 分 か る C#プ ロ グ ラ ミ ン グ 』 ( ソ フ ト バ ン ク ク リ エ イ テ ィ ブ ) 全 13巻 1,066頁 表3 Aのプロフィール ・『プログラミング C#』 ( オ ラ イ リ ー ・ ジ ャ パ ン ) 全 34巻 2,692頁 C#学 習 開 始 時 の 年 齢 : 22歳 ・ 『 プ ロ グ ラ ミ ン グ .NET Framework』 ( 日 経 B P ソ フ ト プ レ ス ) 全 40巻 視 覚 障 害 の 状 況 : 全 盲 ( 14歳 で 失 明 ) 3,124頁 点字使用歴:失明後から使用(約7年) PC使 用 歴 : 中 学 1 年 時 か ら 使 用 (2) 課題集の試作 PCへ の ア ク セ ス 手 段 : ス ク リ ー ン リ ー ダ ( 点 字 デ ィ ス プ レ プログラミングのスキルの習 得 には実 習 が欠 かせな イも一部使用) い。そこで、AiB Toolsを用いて実習を行えるようにする プログラミング経験:約2年半(主にC言語) ために課 題 集 を試 作 した。その最 初 の10回 分 の課 題 のタイ トルを、表 2に示 す。各 回 の課 題 は、3 ∼5 題 の (2) 就労継続のため の活 用 プログラム作 成 問 題 からなり、タイトルに関 連 する基 本 的な事項の確実な習得を目標としている。 ソ フト ウェア 会 社 で の19 年 余 の 勤 務 経 験 を 持 つ 全 盲 のBは、職 務 環 境 の変 化 に対 応 するためにC#での プログラミングのスキルを習 得 することになった。Bのプ 表2 C#プログラミング課 題 課 題 1 : コ ン ソ ー ル 出 力 (1) 課題2:データ型と変数の型 課題3:コンソール入力 課 題 4 : 制 御 文 (1) 課 題 5 : 制 御 文 (2) 課題6:配列 課 題 7 : ク ラ ス (1) 課 題 8 : ク ラ ス (2) 課題9:クラスの継承 課 題 10: デ リ ゲ ー ト ロフィールを表 4に示 す。Bには、C言 語 でのソフトウェ ア開発の業務経験がある。 表4 Bのプロフィール C#学 習 開 始 時 の 年 齢 : 39歳 視覚障害の状況:全盲(4歳で失明) 点 字 使 用 歴 : 小 学 1 年 生 か ら ( 約 33年 ) 5 プ ロ グ ラ ミ ン グ 歴 : 職 業 訓 練 1 年 + 勤 務 先 で の 業 務 19年 活用の 事例 これまでの職務内容:ダム制御プログラムの更新、公営競 AiB Toolsの活 用 は始 まってまだ間もない。ここでは 技用業務ソフトの開発、新入社員に対するプログラミン 二つの事例を紹介する。 グ教育など (1) 就職準備のため の活 用 使 用 OS: Unix、 Windows 情 報 分 野 での就 職 を目 指 す全 盲 の大 学 生 Aが、 PCへ の ア ク セ ス 手 段 : ス ク リ ー ン リ ー ダ 、 点 字 デ ィ ス プ レ 2008 年 10 月 か ら 2009 年 4 月 ま で の 間 、 AiB Tools を イ端末、点字プリンタ 使 っ て C# で の プ ロ グ ラ ミ ン グ を 学 習 し た 。 A の プ ロ フィールを表3に示 す。学 習 開 始 時 、Aは情 報 系 学 科 の3学 年 に在 籍 しており、C言 語 などでのプログラミン グの経 験 を有 していた。テキスト処 理 やゲームのソフト を開 発 するなど、プログラミングのスキルは比 較 的 高 く、 就 職 後 の 可 能 性 を 考 慮 し てオブ ジェクト 指 向 言 語 に 慣れておくために、この学習を始めた。 Aによる学 習 は、概ね週に2時間 程 度、前 述の点 字 版 学 習 資 料 と課 題 集 を用 いて、筆 者 らが指 導 する形 で行われた。 毎回の内容は、 C# プログラ ミ ン グの学 習 は 、前 述 の 点 字 版 学 習 資 料 で の 自 習 か ら 始 ま っ た 。 そ の 直 後 の 2009 年 4 月 に AiB Toolsの使用 法を直接 に指導し、以 後、前述の課 題 とその回 答 や問 い合 わせを筆 者 とメールでやり取 り する方 法 で学 習 が進 めら れた。オブジェクト指 向 の概 念 に慣 れるのに苦 労 があったものの、基 本 的 なスキル は一通り習得できた。 今 後 さらにスキルの向 上 を図 る予 定 であるが、その 職業的な用途として、Bは、ソフトウェア(組み込み型や -262- 内 的 処 理 型 )の開 発 実 務 や、社 員 に対 するプログラミ 障 害 補 償 にプログラミングのスキルを活 用 する可 能 性 ングの指 導 、社 内 のプログラミング支 援 体 制 の構 築 な を具体化することも肝要である。 どを考えている。 (2) 利用事例の創出 6 考察 上 記 (1)と並 行 し て、そ れを具 現 化 し た好 事 例 を 生 これらの事 例 から、重 度の視 覚 障 害 者のためのプロ み出すことが重要である。 グラミング環 境 が、基 盤 部 分 のみではあるが、一 定 程 度、実 現できたと考えられる。事 例を通じて把 握できた (3) 利用支援体制の 整備 いくつかの事項について略述する。 プログラミングのスキルを習 得 する学 習 モデルの構 (1) 点字ディスプレ イ出 力の有用性 築 、学 習 資 料 や参 照 資 料 の整 備 、プログラミングの学 AiB Toolsでは、音 声 出 力 と点 字 ディスプレイ 出 力 の両 方 を使 用 できる。慣 れた作 業 や簡 潔 なソースコー 習や実務の支援ができる人材の確保などの、基盤作 り も重要な課題といえる。 ドの編 集 では、音 声 出 力 のみでの作 業 が主 になる。し かし、プログラムの実行結 果や複雑なソースコードの確 8 おわり に 認 には点 字 ディスプレイ出 力 が使 用 されており、とくに AiB Toolsが重 度 の視 覚 障 害 者 用 のプログラミング 書 式 や文 字 種 、記 号 などの仔 細 な確 認 には有 効 であ 支 援 ソフトウェアとして基 本 的 に有 用 であることは確 認 る。また、ソースコードの編 集時に、点字ディスプレイ端 できた。し かし 、 職 業 的 な 側 面 では 、そ の 程 度 がま だ 末 のカーソ ルスイ ッチで、直 接 当 該 箇 所 にフォーカス 明らかになっていない。職 業場面での有用性を確 実 な を移せるのがたいへん便利との評価があった。 ものにするための多 面 的な取り組 みが今 後 必 要 といえ る。プログラミング環 境 の活 用 が重 度 の視 覚 障 害 者 の (2) 資料の利便性 職 業 的 可 能 性 を拡 大 する一 助 となるよう、願 う次 第 で プログラミングの学 習や開 発 実 務 では、資 料 の利 用 ある。 が不 可 欠 である。点 字 版 学 習 資 料 は、ソースコードな どを確 実 に読 み取 れるという利 点 がある反 面 、大 部 な 文献等 ために利 用しにくいとの評 価もあった。また、ネット上 に 1)渡 辺 哲 也 ・宮 城 愛 美 ・南 谷 和 範・長 岡 英 司 :視 覚 障 害 者 ある膨 大 な参 考 資 料 へのアクセスが容 易 でないことも のパソ コン 利 用 状 況 調 査 2007 、「 電 子 情 報 通 信 学 会 技 問題とされた。 術 研 究 報 告Vol.108 No.67」、pp.7-12、電 子 情 報 通 信 学 会(2008) (3) 職業場面での具 体的 な用途の必 要性 2)長 岡 英 司 :重 度 視 覚 障 害 者 のソフトウェア開 発 技 能 の職 AiB Toolsは、職 業 的 な用 途 がまだ明 確 でない。前 業 的 有 用 性 、「職 業 リハビリテーションNo.16」、pp43-51、 述 の事 例 のBは、この支 援 ソフトウェアを使 ってデータ ベースやWebを対象とするアプリケーションの開発がで 日 本 職 業リハビリテーション学 会(2003) 3)AiB Toolsのダウンロード用 ページ: きれば、そのスキルは職 業 的 に有 用 なものになると考 えている。また、そのための一 つの条 件 として、デバッ http://www.sgry.jp/aibtools/index.html 4)筑 波 技 術 大 学 情 報 ・ 理 数 点 訳 ネット ワークのWebペー グツールの整 備 を挙 げている。職 業 的 な用 途 が具 体 ジ:http://www.ntut-braille-net.org 化 すれば、事 例 のAの場 合 のような就 職 準 備 学 習 で 謝辞 の本ソフトウェアの利用が意義を増すことになる。 ソフトウェア開 発 者 の山 本 卓 氏 に心 より感 謝 申 し上 7 げます。 今後の 課題 この種 のソフトウェアが職 業 的 に有 用 なものに育 つ には、そのための取り組みが欠かせない。 (1) 具体的な用途の 開発 ソフトウェア開 発 などの職 業 場 面 での実 用 のモデル を構 築 することが、まずは必 要 である。また、就 労 上 の -263-
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