内外各市場の動向と見通しについて

みずほ投信投資顧問
臨時マーケットレポート
お客さま用
2007 年 8 月 10 日
内外各市場の動向と見通しについて
【海外市場について】
○ 昨日の海外市場の概況
昨 9 日、欧州の大手銀行の一角が、サブプライムローン(信用力の低い個人を対象にした住宅
ローン)に関連した傘下のファンドについて、投資家からの設定・解約等を受け付けない旨の
発表を行いました。このことがきっかけとなり、先にアメリカにおいて警戒されたサブプライムロ
ーン問題の影響が、欧州の金融機関にまで波及したとの見方が広がり、欧州の主要な株式市
場は、総じて 2%前後の下落となりました。
米国の株式市場では、欧州株式市場の地合いを引き継いでほぼ全面安の展開で始まり、従
来あまり報道されていなかった米国大手証券会社傘下のヘッジファンドでも運用が悪化してい
ると一部で報じられたことで信用リスク懸念が拡大し、ダウ工業株 30 種平均指数や SP500 種指
数といった主要な株価指数は 1 日で 3%近く下落しました。
同時に、Libor に代表される短期金融市場で金利が急上昇し、欧州中央銀行(ECB)と米連邦
準備理事会(FRB)が大規模な資金供給オペを実施しました。
また、金利の低い円で資金を調達して、株式などのリスクの高い資産へ投資を行っていた投資
家がリスク回避の姿勢を一層強め、ポジション解消の動きを加速させたため、外国為替市場に
おきましても円高が進み、円に対してドルは約 1.5%、ユーロは約 2.5%、ポンドは約 2.3%下落
しました。(東京三菱 UFJ 銀行発表の対顧客電信相場仲値の 8 月 9 日と 10 日との比較)
一方で、グローバル REIT 市場は、S&P REIT 指数が前日とほぼ同水準、社債市場では、残存
期間 7∼10 年の投資適格社債の対国債利回り格差が約 2bp の拡大と、影響は限定的なもの
に止まりました。
○ 今後の見通し
サブプライムローン問題を契機とした信用不安の拡大を防止するために、ECB や FRB が直ち
に大規模な緊急資金供給を行ったことは、前向きに評価すべきと考えます。
市場では、信用不安の拡大を背景とした弱気心理が今後も折に触れて再燃する可能性も否
定しきれず、当面の各国の金融各市場は上下に大きく振られやすい地合いが継続するものと
予想します。
しかしながら、7 月 27 日付けの弊社レポートでもお伝えしたように、世界経済のファンダメンタル
ズ、良好な企業収益見通し等の投資環境に大きな変化はなく、サブプライムローン問題の
影響を徐々に織り込みながらも、中長期的な上昇トレンドは今後も継続するものと考え
ます。
本資料は、投資家の皆様に情報提供を行う目的で、みずほ投信投資顧問(以下、当社と言います)が作成
したものです。本資料の作成にあたり当社は、情報の正確性等について細心の注意を払っておりますが、
その正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載した当社の意見等は、本資料の作成日
現在のものであり、今後予告無しに変更されることがあります。また、本資料に記載した当社の意見等は、
将来の株価等の動きを保証するものではありません。
(ご参考:MSCI コクサイ指数(現地通貨建て)の推移 2005 年 7 月 29 日∼2007 年 8 月 10 日)
1,450
1,400
1,350
1,300
1,250
1,200
1,150
1,100
1,050
05/7/29
06/1/29
06/ 7/29
(出所:
※
07/1/29
07/7/29
Bloomberg よりみずほ投信投資顧問が作成)
MSCIコクサイ指数:モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社が算出・公表して
いる国際的な株価指数(インデックス)
本資料は、投資家の皆様に情報提供を行う目的で、みずほ投信投資顧問(以下、当社と言います)が作成
したものです。本資料の作成にあたり当社は、情報の正確性等について細心の注意を払っておりますが、
その正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載した当社の意見等は、本資料の作成日
現在のものであり、今後予告無しに変更されることがあります。また、本資料に記載した当社の意見等は、
将来の株価等の動きを保証するものではありません。
【国内株式市場について】
本日の国内株式市場は、東証株価指数(TOPIX)で前日比 49.88 ポイント(▲2.96%)下落し、
1,633.93 ポイントとなりました。サブプライム向け住宅ローンに端を発した金融市場の動揺が世
界的な信用収縮に発展する懸念を背景に、前日の米国株式市場がNYダウで 387 ドルの急落
を演じたことが直接の原因と見られます。本日は日本以外のアジア諸国の株式相場も急落し
ており、世界同時株安の様相を呈しております。8 月 9 日の東証 1 部の売買代金が 5 兆円を
越え過去最高になるなど、ヘッジファンド等のポジション解消の動きが実際に起こっている模
様です。ただし、各国金融当局の対応も一歩踏み込んだものになってきており、8 月 9 日には
欧州中央銀行(ECB)が市場に約 15 兆円の緊急資金供給を実施、それを受けて米連邦準備
理事会(FRB)、日銀も豊富な流動性供給を実施し、市場動揺を抑制する協調行動を採ってい
ます。
今後の市場を展望する上で、サブプライム向け住宅ローンの株式市場に与える影響を整理す
ると、以下の3つの経路にまとめて考えることが出来ます。
① 経路1=個人消費への影響:借り手のB/S悪化から個人消費に悪影響を与える経路
です。サブプライム変動金利ローン残高が住宅ローン残高に占めるウェイトは残高ベー
スで住宅ローン全体の 10%程度で、サブプライムローンを利用している低所得者層の個
人消費に占める割合はごく僅かです。変動(非固定)金利ローンの金利上昇リスクにつ
いても顕在化するまでには時間的猶予があります。
② 経路2=金融システムへの影響:貸し手の不良債権問題から信用システム不安に至る
経路です。商業銀行の貸し出しに占めるサブプライム住宅ローンのウェイトは2%程度に
とどまり、金融機関の経営面では米商業銀行、S&Lともに不良債権比率はかつて金融
機関の信用問題が発生した時に比べ極めて低い水準にあります。これらの点から金融
システム不安に陥る可能性は現状低いと考えられます。
③ 経路3=リスクマネーの収縮:バーナンキFRB議長が議会証言で「サブプライム向け信
用市場の金融商品に関連した損失は、約 500 億ドルから 1,000 億ドルに上るとの試算も
ある」と発言。市場でもCDO(資産担保証券)の運営主体の損失、ヘッジファンドの運用
成績悪化等が表面化しつつあるなど先行きが見極めにくい状況です。
上記の経路の内、現在の株式相場に大きな影響を与えているのは経路3のリスクマネーの収
縮であり、ヘッジファンド等複数の運用主体を巻き込んだ負の連鎖は、全体像が見えにくいだ
けに不安感が増幅されています。また、リスクマネーの収縮により国際金融市場での企業の債
券発行に急ブレーキがかかっているとの指摘もあり、この状況が長く続くと企業の経営、企業
業績、各国経済にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
今後を予測する上では、市場への流動性供給、利下げなどの当局の対応が最も重要と思わ
れます。その点で、9 日からの一連の動きは投資家に安心感を与える効果が期待できると考え
ます。当局は事態の早期終息に向けて動き出したと判断します。
現状の米国経済につきましては、発表されている景気指標は比較的堅調です。国内景気につ
いても 2007 年前半を中心とした中弛み局面を秋口には脱出する見通しが大勢となっています。
本資料は、投資家の皆様に情報提供を行う目的で、みずほ投信投資顧問(以下、当社と言います)が作成
したものです。本資料の作成にあたり当社は、情報の正確性等について細心の注意を払っておりますが、
その正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載した当社の意見等は、本資料の作成日
現在のものであり、今後予告無しに変更されることがあります。また、本資料に記載した当社の意見等は、
将来の株価等の動きを保証するものではありません。
家計部門は雇用・所得環境を中心に改善傾向にあり、天候要因や税制改正などによる下押し
圧力を除いた個人消費の基調は底堅く推移するとみています。また、設備投資に対する企業
の積極姿勢は変わらず、早晩のデフレ脱却が視野に入るなか、設備投資主導の景気回復が
持続し、2007 年度後半からは国内景気は再び拡大基調に戻るとみています。企業収益につ
いては、第 1 四半期の決算は全産業ベースで前年同期比 2 桁の増益を達成するなど概ね良
好で、中間期に向けて上方修正が予想されます。この好調な企業収益を背景に企業のキャッ
シュフローは潤沢であり、最適な資本構成を追求すべく、自社株買い、配当増を通じた株主還
元の積極化が期待できます。
このような状況の中、国内株式市場については、海外株式市場が落ち着きを取り戻すまでは、
短期的には乱高下する局面も想定されますが、中長期的には、堅調な企業収益や株主重視
型経営の進展が国内株式市場を底支えし、徐々に下値を切り上げる展開を予想しています。
(ご参考:東証株価指数(TOPIX)の推移 2007 年 4 月 27 日∼2007 年 8 月 10 日)
(出所:QUICK)
本資料は、投資家の皆様に情報提供を行う目的で、みずほ投信投資顧問(以下、当社と言います)が作成
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その正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載した当社の意見等は、本資料の作成日
現在のものであり、今後予告無しに変更されることがあります。また、本資料に記載した当社の意見等は、
将来の株価等の動きを保証するものではありません。
【J−REIT市場について】
東証 REIT 指数は、株式市場と同様に、前日比 4.3%下落の 2,115.51 ポイントとなりました。
REIT 市場の下落要因としては、世界的な信用収縮懸念を背景とした、①米サブプライムロー
ン問題に端を発した連想売り(REIT は、不動産証券化商品)や、 ②株価下落等による損失を
穴埋めするため、外国人投資家を中心とした損益確定売り
などと推測されます。
短期的には、世界的なリスクマネー収縮の動きを受け、国内外の株式市場や海外 REIT 市場
の動向に引きずられる展開が続く可能性はあります。
しかし、①東証 REIT 指数は、既に直近高値からの下落率は 23%(7/27 終値ベース)にも達し、
過去の調整局面での下落率が 10∼15%程度であったことから判断すると、相当程度の調整が
進んでいると言えること、②不動産市場の回復感は著しく、(賃貸料、物件価格の上昇)、
J-REIT の配当は増加が期待できる段階にあること、③世界的にクレジットリスクに対する意識
が高まるなか、金利上昇懸念が一服すれば、安定的な収益が期待できる J-REIT の再評価に
繋がる可能性があること
などが挙げられます。このため、市場は徐々に落ち着きを取り戻す
ものと判断します。
また、中長期的には堅調な展開に戻るものと想定しています。その理由は、以下の 3 点です。
第一に、相対的な配当利回りの高さです。10 日現在の J-REIT の市場平均利回りは 3.2%程度
と、長期金利の約 1.8%に比べても高い利回り水準を維持しています。
第二に、J-REIT の業績を支える不動産市況の回復感が著しいことです。7 月末の東京都心 5
区のオフィスビル空室率は 2.80%、坪当たりの平均賃料は 20,896 円(前年同月比 12.35%増)
と、空室率が低下する回復局面から、賃貸料が上昇基調となる好況局面に移行しています。
今後は賃貸料の上昇により、J-REIT の配当金の増加が期待できる段階に入りつつあると言え
ます。
第三に、J-REIT 市場の認知度向上と良好な需給環境続くと見られる点です。投資信託や金
融機関からの資金流入は続くと見られるうえ、J-REIT 市場の規模拡大に伴い年金資金等の参
入も期待できると考えています。
(ご参考:東証REIT指数の推移 2005 年 3 月 31 日∼2007 年 8 月 10 日)
2,750
2,500
2,250
2,000
1,750
1,500
1,250
05/03
05/09
06/03
06/09
07/03
(出所:Bloomberg よりみずほ投信投資顧問が作成)
以上
本資料は、投資家の皆様に情報提供を行う目的で、みずほ投信投資顧問(以下、当社と言います)が作成
したものです。本資料の作成にあたり当社は、情報の正確性等について細心の注意を払っておりますが、
その正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載した当社の意見等は、本資料の作成日
現在のものであり、今後予告無しに変更されることがあります。また、本資料に記載した当社の意見等は、
将来の株価等の動きを保証するものではありません。