ジャパンナレッジを使ったレポート作成法

ジャパンナレッジを使ったレポート作成法
■情報世界における「豊饒のなかの貧困」
レポートを書 くという行 為 は、皆 さんがこれまで
経 験 した試 験 問 題 のように、知 識 の記 憶 力 を問
うものではありません。課 題を発 見し、問 いかけ、
みずからの言 葉 で解 決 策 を提 案 しなければなり
ません。
昨 今 、インターネット環 境 の発 展 に伴 い、情 報
や資 料 が容 易 に入 手 できる環 境 になってきまし
たが、レポート作 成 は以 前 と比 べると、また違 っ
た意味で難しくなっています。
おそらく、課 題 を前 にして皆 さんは最 初 次 のよ
うなとまどいを覚える方も多いのでしょう。
① 何から始めたらいいのかわからない。
② 調 べたい物 事 や事 柄 のイメ ージをうまく言 葉
(キーワード)にできない。
③ 資 料 や情 報 を探 すのに 、どのような手 がかり
があるかわからない。
④ 情 報 は得 たものの、テーマの絞 り込 みや課
題の設 定ができない。
こうした悩 みから脱 却 するには、確 かな情 報 源
をベースキャンプにして、それを縦 横 無 尽 に使 い
こなし頭 の整 理 をする必 要 があります。ベースキ
ャンプとなる情 報 源 は、ジャパンナレッジです。な
ぜならジャパンナレッジは、有 料 でしか入 手 でき
ない信 頼 性 のある情 報 、厳 選 された情 報 の宝 庫
だからです。では、ジャパンナレッジをレポー ト作
成 に どう役立てていけばいいのでしょうか。
ジャパンナレッジを使ったレポート作成法
■通 説を知る、関係を知る、テーマを絞る
レポート課 題 というのは、通 常 は漠 然 とした内
容 の場 合 が多 いです。むしろ自 分 でその中 から
より絞 った課 題 や問 題 を設 定 することになりま
す。
<課 題 >外 食 産 業 の領 域 で、各 自 がもっとも関
心のある問題を1つ取り 上げ、その現状と問題点、
今 後の対策を論ぜよ。
最 初 に意 識 すべきは、テーマとなる事 項 の概
要 や通 説 を押 さえること。調 査 対 象 の総 体 を摑
んでいなければ、テーマを絞 っていくうちに現 れる
個 々の問 題 点 の位 置 づけができないからです。
「いやすでに概 要 は知 っている」と豪 語 するひとも
いるかもしれませんが、知 っているという思 い込
みが実 は大 敵 です。確 認 の意 味 もこめて、ジャパ
ン ナレッジで「外食産業」を調査していきましょう。
1. 通 説を知 る
この場 合 、まず「基 本 検 索 」の画 面 で、検 索 窓
にキーワードを“外 食 産 業 ”と入 力 し検 索 します。
すると、辞 典 ・事 典 系 の「外 食 産 業 」の検 索 結 果
として、 《 が い し ょ く ‐ さ ん ぎ ょ う 【 外 食 産 業 】
( デ ジ タ ル 大 辞 泉 |見 出 し )》、
《 外 食 産 業( 日 本
大 百 科 全 書 ( ニ ッ ポ ニ カ )| 見 出 し )》、《 food
service industry【 外 食 産 業 】
( Encyclopedia of
Japan|見 出 し )》と、3つの項目がヒットします。 ジ
ャ パ ンナ レ ッジ +N、+NR なら 加 えて 、
《が い しょ く ‐
さ ん ぎょ う[グ ヮ イシ ョ クサ ン ゲフ ]
【 外 食 産業 】
(日
本 国 語大 辞 典|見 出し )》 の項 目 も出 て きま す 。
簡 潔 な語 意 の確 認 ならデジタル大 辞 泉 で十 分 。
しかし詳 細 については、百 科 事 典 『日 本 大 百 科
全 書 』の記 述 を参 照 しなければならないでしょう。
こ こ で 嬉 し い の は 、 外 食 産 業 の 英 訳 が “ food
service industry”であるとわかる点 です。日 本
の外 食 産 業 を扱 った英 語 文 献 を探 索 する際 、検
索 のキーワードに使えるからです。
さて、《外 食 産 業 (日 本 大 百 科 全 書 )》をクリッ
クしてみましょう。本 文 ページの右 側 最 上 段 には
目次があり、 市 場 規模 の 拡大 、大手 商業資 本 の参 入、
高 級 化と 多 様化 、「 中食 産業 」の 現 実化、の各項目
に分 け られ、各 目 次 に対 応 した解 説 記 述 があり
ます。
《外 食 産 業 》の目 次
(解説記 述)
記 述 を読 めば、市 場 規 模 の伸 び、フランチャイ
ズ・チェーンのあり方 、消 費 者 の健 康 志 向 ・安 全
志 向 、高 級 から格 安 までの外 食 の差 異 化 、中 食
(なかしょく)の登 場 など、多 くの基 礎 事 項 を学 べ
ます。文 末 には責 任 執 筆 者 の記 名 もあり、執 筆
者の推 薦する「参 考 文 献・音 響 映 像 資料」からは、
基 本 統 計 が 『外 食 産 業 統 計 資 料 集 』である こと
がわかります。
《 外 食 産 業 》の参 考 文 献 ・音 響 映 像 資 料
(関連項 目)
また「関連項目」欄も見てみましょう。外食産業
に関 連 して、「コンビニエンス・ストアやフランチャ
イズ・システムなどを知 るべき!」と指 示 してくれ
ますし、「美 味 しい惣 菜 や弁 当 を販 売 する「中 食 」
にコンビニエンス・ストアが関 係しているかも?」と
か、「フランチャイズ・システムが外 食 産 業 の推 進
役 を担 ったのか?」といった予 測 も可 能 です。関
連 項 目 の記 述 を参 照 すれば、あなたの認 識 はい
っそうの深まりを見せることでしょう。
《外 食 産 業 》の関 連 項 目
ジャパンナレッジを使ったレポート作成法
(関 連サイト)
ジャパンナレッジの特 長 は、ウェブ上 の信 頼 で
きるサイトの紹 介 とそのリンクがあることです。そ
れらは項目 執筆者の推 薦、編集スタッフに よる信
頼度調査を経た精選されたサイトです。
1.外食 総 研、2. 日本 厨 房工業 会 、3.日本フ ー ドサ ー
ビ ス 協会 … …
などを順 に点 検 していくと、外 食 産 業 の研 究 機
関 ・業 界 団 体 の存 在 がわかり、発 信 情 報 の内 容
から最 近 のトピックや必 須 情 報 を知 ることができ
ます。
10.フードビジネス総 合 研 究 所 のサイトを見 てみ
ましょう。トップページに、
「 国 立国 会 図書 館 HP『 外食 産 業に 関 する 主 要イ ン
タ ー ネッ ト 情報 源 』に民 間企 業 で唯 一 紹介 さ れて い
ます」
との宣 言 があります。信 頼 度 をアピールしている
のでしょう。ここから、国立国会図書館が「外食産
業 に関 する主 要 インターネット情 報 源 」を掲 載 す
る “調べ方案内”に到達できます。
この“調 べ方 案 内 ”は、インターネット情 報 源 に
とどまらず、 外 食 産 業 の基 礎 文 献 、主 要 調 査 ・レ
ポート類、主要専門雑誌・専門新聞など、網羅 的
に関 連 情 報 を集 めるために、各 種 情 報 源 を紹 介
したページです。国 立 国 会 図 書 館 の専 門 家 が作
成して公開している資料なので、外食産業のレポ
ートや卒 業 論 文 の作 成 を考 え ている人には、とて
も 便利な案内文献です。
2.関 係を知 る
ジャパンナレッジを使 いながら、もう1つ意 識 し
てもらいたいことがあります。それは、探 している
情 報 そ の も の の 発 見 で満 足 するのではなく、そ
の 情報と他の情報との関 係 の発 見です。
外 食 産 業 を「外 食 産 業 」という言 葉 のみに限 っ
て調 べるだけなら誰 にでもできます。むしろ、外 食
産 業 が他 の領 域 のどのような事 柄 と関 係 づけら
れるのか。その関 係 性 をあぶり出 すアプローチ・
手 だてがあれば、レポ ートの課 題 設 定 はとても容
易になってきます。
(「検索領 域」の使 い分け)
先 の例 では、ジャパンナレッジの「基 本 検 索 」を
紹介しました。これを 「全文検索」で検索すればど
うなるでしょうか?
そこで、「全 文 検 索 」のボタンをクリックして確 か
めてみましょう。ただし、ジャパンナレッジは膨 大
な情 報をもったデータベースなので、ワンルックの
対 象 事 典 ・辞 書 は、日 本 大 百 科 全 書 、情 報 ・知
識 imidas、現 代 用 語 の基 礎 知 識 の3つに絞 り、
“外食産業”を全文検索します。
《ア イ スクリ ー ム》《 イオ ン (株 )》《イ ト ーヨ ー カ
堂 (株 )》《 魚 市 場 》《 鶏 肉 》《 米 》《 食 育 》《 エ コ ・ ク
ッ キ ング 》
《食 品 トレ ー サビ リ ティ ー》
《スモール ポ
ー シ ョン 》
《中 食 》… などと、多くの項目に“外食産
業”が含まれ ていることが確認できます。
《鶏肉》はなぜ外食 産 業と関 係があるのか。クリ
ックすると、
「 外 食産 業 、と く にフ ァ ース ト フー ド やフ ィ ンガ ー
フ ー ド(た とえ ば フラ イ ドチ キ ン な ど )の 食 材と し
て 大 量に 利 用さ れ( 中略 )外 食 産業 で の鶏 肉 消費 は
鶏 肉 全消 費 量の 6 割 を占 める 」
と あります。ここから、外 食 産 業 を特 定 食 材 の観
点からテーマ設定することも可能でしょう。
また、 《食 品 トレーサビリティー[消 費 者 保 護 ・
救 済 制 度 ] (情 報 ・知 識 imidas)》もヒントになり
ます。
「 生 産 、加 工及 び 流通 の 特定 の 一つ ま たは 複 数の 段
階 を 通じ て 、食 品 の移 動 を把 握 でき る こと 」
とあるのが重 要 で、「トレーサビリティ構 築 に向 け
た外 食 産 業 ガイドライン」も存 在 し、外 食 産 業 とト
レーサビリティの視 角 でレポートを切 り込 むことが
可能です。
《中食[食生活の新傾向]【cooked dishes】 (情
報・知識 imidas)》も注目したい項目です。
「 家 庭の 外 で調 理 され 、家庭 内 で食 べ るも の を中 食
( な かし ょ く)と いう 。代表 的 なも の が弁 当 類、総
菜 類 であ る。」
「 近 年の コ ンビ ニ エン ス・ス ト アの 弁 当・総 菜 の売
り 上 げの 伸 びに 従 い 、外 食の 伸 び悩 み の原 因 とさ れ
て い る 。技 術的 に は 、保 存料 と して 表 示の 必 要な 添
加 物 の使 用 は避 け る傾 向 があ り 」
と 解 説があります。外 食 と中 食の関 係、背 景にあ
る消費者の健康志向などが読み取れます。
このように関 連 する事 項 間 の関 係 マ ッ プ を作
りあげながら頭 を整 理 する。こうしたプロセスを経
たあとに、NII 論文情報ナビゲータ「CiNii」や朝日
「聞 蔵 」などの新 聞 記 事 データベースを検 索 すれ
ば、ヒットした論 文 のタイトルや新 聞 記 事 の リード
文 を見 ても、自 然 と参 照 すべき優 先 順 位 や内 容
の 類推ができ、認識を深めることがます。
3.テーマを絞る
ここでまで見てきた結果 を踏まえ、さらにテーマ
を絞 ってみましょう。ここでは、外 食 産 業 のトレー
ジャパンナレッジを使ったレポート作成法
サビリティに関 してレポートの構 想 を練 ることとし
ます。ジャパンナレッジで“トレーサビリティ”を検
索 し、『日 本 大 百 科 全 書 』の《トレーサビリティ》の
項 目 を見 てみると、関 連 サイト欄 に「トレーサビリ
ティ関 係 」(農 林 水 産 省 )があり、主 要 管 轄 官 庁
は農 林 水 産 省 だとわかります。「トレーサビリティ
関 係 」のページから「外 食 産 業 」の項 を見 てみる
と、「トレーサビリティ構 築 に向 けた外 食 産 業 ガイ
ドライン」が全 文 公 開 されています。このガイドラ
インを読んで、外食関連企業が具体策をどのよう
に実践しているのか。今度は政府の資料ではなく、
各 企 業 の実 践 例 を 企 業 の広 報 や 学 会 ・協 会 の
調 査 研 究 文 献 から得 るなど、展 開 方 向 は数 限 り
なくありますが、こうしてテーマの輪 郭や内 容を理
解していくのです。
4000 字 程 度 のレポートであれば、これで一 応
の アウトラインは組めるでしょう。
タ イ ト ル: 外 食 産 業 にお け る 食 品 トレ ー サ ビ リ ティ
の 構 築 と意 義
1. 外 食産 業 の食 品 トレ ー サビ リ ティ と は何 か
2 . ト レー サ ビリ テ ィの シ ステ ム と技 術
3. 各 企業 の 実践 例 と類 型 化
4. 消 費者 サ イド に おけ る 今後 の 課題 と 展望
そして各 章 ごとに、基 礎 事 項 調 査 で得 たキー
ワードで文 献 を探 し、さらに情 報 を集 めます。そ
の過 程 で章 立 ての 順 序 を入 れかえたり、組 み直
しをします。しかしそれができるのは、最 初 に概
要 ・通 説 を知 り、頭 の中 で関 係 マップを作 ってい
るからなのです。
ここまで述 べてきた作 業 プロセスは、例 えば皆
さんが星 座 を見 るのと同 じやり方 だと言 えます。
星 雲 状 に広 がる宇 宙 に「切 れ目 」を入 れて、これ
はオリオン座 、これはさそり座 としています。同 様
にしてここでは、星 雲 状 に広 がる情 報 ・知 識 の宇
宙 から、自 分 な りの視 点 と方 法 で「切 れ目 」を入
れ 、独 自 の星 座 にして取 り出 しているのです。そ
のヒントを与 えてくれるツールが、 ジャパンナレッ
ジです。
4.実 際にレポートを書 いてみる
いよいよ仮 の章 立 てに従 って、レポートを作 成
する作 業 になります。各 章 について、より詳 しい
調 査 を 実 施 し、 得 ら れ た 情 報 ・ 知 識 を批 判 的 に
参 照 しながら、自 分 の考 えを固 めて言 葉にして い
き ます。
調 べながら考 え、考 えながら調 べる。そして頭
を整理しながら記述する。この繰り返しです。
その際 、とても大 切 なことがあります。それは、
参 考 にしたり、引 用 したりした文 献 や情 報 の出 所
をきちんと書 いて示 すこと。すなわち、参 考 文 献
を 列 挙 する、引 用 文 献 の注 をつける、ということ
です。つまり、何 を根 拠 に自 分 はこう考 えたのか、
その典拠となる文献・情報を示すことは最低限の
ルールなのです。
その理 由は、あなたが何 も参 照せずひとりよが
り の考 えでレポートを書 いたわけではないことを
示 すため、レポートを読 んだ人 があなたの考 えた
道 筋 を再 検 証 するため、また先 人 の研 究 や報 告
へ の敬意を表するため、などに必要だから です。
他 人 の研 究 や報 告 を参 考 にし、それを引 用 す
るのがいけないのではなく、黙 って断 りもなく利 用
することがルール違反なのです。
その点をよく理解しておいてください。
※ジャパンナレッジには「引 用 元 自 動 挿 入 」という機
能 があります。これは、20 文 字 以 上 の文 をコピーした
とき、ペーストされ たテキストに、ジャパンナレッジのど
のコンテンツから、いつ引 用 したのかを、文 末 に自 動
的 に挿 入 する機 能 のことです(『会 社 四 季 報 』は除 く)。
これらの機 能 を上 手 に使 い、適 切 な引 用 を心 がける
ようにしましょう。
レポート実例
提出日:2008年7月31日
科目名:「現代産業と政策」(担当:吉森)
●●大学政策学部
2008年度生4023番
山本 義則
外食産業における食品トレーサビリティの構築と意義
1.外食産業と食品のトレーサビリティ
2.トレーサビリティのシステムと技術
3.各企業の実践例と効果の現状
《外食産業(日本大百
4.今度の課題と展望
科全書)》の要約
はじめに
第二次世界大戦後、日本の外食産業はめざましく発展し、より多様化・高級化の方向に推移し
ながら成熟期を迎えようとしている。1990年代末からは、消費者の健康志向の高まりとともに、
外食産業界でも有機食品に代表される安全食材の導入やハサップ(Hazard Analysis and Critical
Control Point)という食品衛生管理システムの構築も進められてきた。
これに加えて昨今、食品偽装や BSE 問題など「食の安全」に関する報道が加熱するなかで、ト
レーサビリティということばがよく聞かれるようになってきた。外食産業の世界においても例外では
なく、トレーサビリティに関する様々な試行や取り組みが見られている。このレポートは、外食産業
における食品トレーサビリティの意義、経営への影響および可能性について、政府系の資料や民
間企業の実践報告を通じて考えるものである。
『トレーサビリティ構築に向けた外食産業
1.外食産業と食品のトレーサビリティ
ガイドライン』を要約
外食産業の重要課題の1つは、食品トレーサビリティであると言ってよい。はじめに「トレーサビ
リティ構築に向けた外食産業ガイドライン」(2004.3)によって、その定義を確認しておこう。
生産、処理・加工、流通・販売等の食品供給行程(フードチェーン)の各段階における食品とそ
の情報を追跡するのがトレーサビリティ。また各段階で仕入先や販売先など、流通経路や所在に
関する記録情報によって追跡と遡及を可能にする仕組みをトレーサビリティシステムという。すな
わち、生産流通履歴情報を把握するためのシステムである。
管轄の農林水産省の行政指導や関係団体の研究も進んでおり、食品の品目別指針のなかで
重要なのが、いま挙げた「トレーサビリティ構築に向けた外食産業ガイドライン」(2004.3)」と「生産
情報公表 JAS 規格」である。この2つを軸に基本的事項とこれまでの経緯を整理してみたい。
(中略)
3.各企業の実践例と効果の現状
では、実際に企業はどのような対策をとっているのか。その実践がどのように企業の経営や収
益につながっているのか。ここからは具体的に企業の実践例をみてみたい。先の「トレーサビリテ
ィ構築に向けた外食産業ガイドライン」を作成した「外食産業トレーサビリティ導入ガイドライン策
定委員会」の委員を務めた(株)モスフードサービス、またファミリーレストラン・ロイヤルホストを中
心に事業を展開するロイヤルグループの実践例を分析する。
3.1 (株)モスフードサービス
モスバーガーでお馴染みの(株)モスフードサービス(以下、モス)は、これまで「食の安全」やトレ
ーサビリティに意識的な企業である。店頭の黒板に生鮮野菜の生産者の顔写真パネルを展示し
たり、生産地名を黒板に書き込んだりしていることはよく知られているところだ。
モスの強みは、何といっても原材料の調達先との間で在庫や販売情報などを共有する生産管理
システム「Mos-Nile」を開発したことである。契約農家が野菜の生産過程で使用した栄養素や除
草剤に関する情報も「Mos-Nile」で管理され、消費者の「食の安全」意識に答える仕組みが整備さ
れているわけである。
消費者の健康志向にあわせて、1997年から農薬や科学肥料に極力たよらない方法で生産さ
れた野菜を利用している。農家や生産者団体と直接契約を結び、生産過程で使用した栄養素や
除草剤などの生産履歴情報をモス本部で管理し、基準外の薬剤などが利用されていないかチェッ
クする。システムで管理するため、どの店舗にどの農家で生産した野菜が納入されているかがす
ぐにわかる。そして店舗ごとに、届けられた野菜の原産地情報をシステムから引き出し、リストにし
てプリントアウトしたものを使って店舗の黒板に開示されることになる。
食の安全と担保するために、モスと生産者が共同で行うリスクマネジメントだといわれるが、顧
客に情報を開示することで、生産者を含むモスのサプライチェーン全体で「食の安全」意識が高ま
り、予防を促進する効果があるとしている。
(以下、レポート本文は後略)
《日経情報ストラテジーの「業務革新ビフォー・アフター:SCM で勝つ! モ
スフードサービス 情報共有で取引先の在庫2割削減 トレーサビリティ
で食の安全確保」vol.15,no.4 を要約引用
【参考文献】
1. 外食産業 .日本大百科全書.ジャパンナレッジ.(オンラインデータベース),
入手先<ジャパンナレッジ,http://na.jkn21.com/>,(参照 2008-06-28)
2. 食品トレーサビリティー[消費者保護・救済制度] .情報・知識 imidas.ジャパンナレッジ.
(オンラインデータベース),
入手先<http://na.jkn21.com/>,(参照 2008-06-28)
3. トレーサビリティ .日本大百科全書.ジャパンナレッジ.(オンラインデータベース),
入手先 <http://na.jkn21.com/>,(参照 2008-06-28)
4. トレーサビリティ関係 .農林水産省(オンライン),
入手先<http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trace/index.html>,(参照 2008-06-28)
5.外食産業トレーサビリティ導入ガイドライン策定委員会. トレーサビリティ構築に向けた外食産
業ガイドライン(2004.3) .農林水産省.(オンライン),
入手先<http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trace/pdf/gaisyoku_guideline.pdf>,(参照
2008-07-04)
6.業務革新ビフォー・アフター:SCM で勝つ! モスフードサービス 情報共有で取引先の在庫2割
削減 トレーサビリティで食の安全確保.日経情報ストラテジー.vol.15,no.4, 2006.5, p.264-267
7.城島孝寿.特集:食の安全性,ロイヤルグループの食の安全性,原産地表示・地産地消で新
展開.Quarterly 外食産業研究.vol.2006,no.2,2006.2,p. 23-28
8.梅沢昌太郎編.トレーサビリティ:食の安心と安全の社会システム.白桃書房, 2004.247p.
【補説】 論文/レポート中に文章を引用するときの書き方
文中赤で表示された引用部分は、『トレーサビリティ構築に向けた外食産業ガイドライン』を
要約したものだが、文献中の文章をそのまま引用することもある。これには①短い引用文の
場合、②長い引用文の場合、でそれぞれ記述方法が異なる。
①短い引用文の場合 : 「 」を使って本文の一部を引用
はじめに『トレーサビリティ構築に向けた外食産業ガイドライン』(2004.3)によって、その定
義を確認しておきたい。
食品の「生産、処理・加工、流通・販売のフードチェーンの各段階」における「食品とその情
報」を追跡するのが、トレーサビリティ。そして「食品とその流通した経路及び所在等を記録し
た情報」を追跡できる仕組みが、トレーサビリティシステムなのである。
②長い引用分の場合 : 前後に空白行を入れ、2∼4文字分字下げして引用
はじめに『トレーサビリティ構築に向けた外食産業ガイドライン』(2004.3)によって定義的記
述を確認すると、
トレーサビリティは、「生産、処理・加工、流通・販売のフードチェーンの各段階で食品と
その情報を追跡し、遡及できること」と定義され、トレーサビリティシステムは、生産、処
理・加工、流通・販売等の各段階で、食品の仕入先、販売先などの記録を取り、保管し、
識別番号等を用いて食品とその結びつきを確保することによって、食品とその流通した
経路及び所在等を記録した情報の追跡と遡及を可能とする仕組みである。
となっている。