超高層ビルの時刻歴応答解析と 性能評価について 第4条 評価基準

Feb 5(Tue.) PM, 2007
超高層ビルの時刻歴応答解析と
性能評価について
菅野 忠(Sugano Tadashi)
舘野公一(Tateno Tomokazu) 第4条 評価基準
4.1 長期荷重に対する安全性
4.2 積雪荷重に対する安全性
4.3 風圧力に対する安全性
4.4 地震力に対する安全性
4.5 荷重の組合せ
4.6 長期荷重に対する使用性
4.7 外装材等の安全性
1
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4.1 長期荷重に対する安全性
(1)建築物の各部分の固定荷重及び積載荷重その他の実況に応じた荷重及び
外力(多雪区域における積雪荷重、土圧、温度変化に伴う荷重、材料の収縮等
に伴う荷重等)によって建築物の構造耐力上主要な部分に損傷が生じないこと
を確かめていること。
(2) 損傷が生じないことは、許容応力度等設計により確かめていること。コンクリー
ト系構造については、耐久性上有害なひび割れが生じないことを確かめている
こと。
長期荷重 に対して、長期許容応力度以内であることを確認
許容応力度設計とは・・・
力
力
Fc
破断
F
破断
2Fc/3
Fc/1.5
Fc/3
コンクリートの荷重変形曲線
変形
鉄筋・鉄骨の荷重変形曲線
長期許容応力度
短期許容応力度
1/3 Fc
2/3Fc
鉄骨
F/1.5
F
鉄筋
F/1.5
F
コンクリート
変形
2
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4.2 積雪荷重に対する安全性
(1)建築物に作用する積雪荷重について、平成12年建設省告示第1461号(以
下「告示」という。)第二号に定められた方法によって構造計算を行っていること。
(2)所定の荷重下で損傷を生じないことは、許容応力度等設計により確かめて
いること。
(3)所定の荷重下で倒壊・崩壊を生じないことは、各部に生じる力によって部材
の一部が塑性化する状態以内にとどまり、部分的にもメカニズム状態に到らな
いことを確認することにより確かめていること。
積雪荷重に対して、短期許容応力度以内であることを確認
4.3 風圧力に対する安全性
(1)建築物に作用する風圧力について、構造計算を行っていること。
(2)所定の荷重下で損傷を生じないことは、建築物の構造耐力上主要な部分が
許容変形以内であることを確かめていること。
(3)所定の荷重下で倒壊・崩壊を生じないことは、建築物の構造耐力上主要な
部分が弾性的な挙動を示す範囲以内にあることを確かめていること。
(4)高さが100m以上かつ高層部のアスペクト比(高さ/短辺見付け幅)が3以
上の建築物にあっては、上記(2)及び(3)において、直交方向の振動及びねじ
れ振動を適切に考慮していること。
風荷重 に対して、
レベル1の風に対して短期許容応力度以内であることを確認
レベル2の風に対して弾性範囲内であることを確認
直行方向、ねじれ振動の検討に問題ないことを確認
3
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4.4 地震力に対する安全性
4.4.2 応答解析に用いる建築物の
振動系モデルの設定
4.4.1 水平方向入力地震動の設定
告示波
サイト波
既往波
4.4.3 水平方向地震力に対する応答計算
運動方程式
[M ]{&y&} + [C ]{y&} + [K ]{y} = −[M ]{&y&0 }
4.4.4 評価判定クライテリア
超高層建物の設計用ベースシアー係数
べースシャー係数
0.4
S造
RC造 基準法×1.0
基準法×1.5
基準法×2.0
高層指針0.18/ 1 T
高層指針0.36/ 1 T
SRC造
0.3
最小2乗近似
S造 C B=0.30/ 1 T
SRC造 C B=0.20/ 1 T
RC造 C B=0.18/ 1 T
0.2
0.1
0
0
1
2
3
4
図-7 ベースシヤ-係数と1次固有周期
5
6
1次固有周期(s)
超高層建物の一次固有周期とベースシアー係数
4
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4.4 地震力に対する安全性
4.4.1 水平方向入力地震動の設定
(1) 告示波
3波以上を使用
(2) サイト波
(3) 既往波
3波以上を使用
Velocity
(cm/s)
4.4 地震力に対する安全性
4.4.1 水平方向入力地震動の設定l
(1) 告示波
a
0g
80
解放工学的基盤における加速度応答スペクトル(告示スペクトル)をもち、建設地表層地
Velocity
(cm/s)
盤による増幅を適切に考慮して作成した地震波(以下「告示波」という。)を設計用入力地
震動とする。
増幅後の告示スペクトル
80 cm/s
告示スペクトル
告示波
稀に発生する地震動
=極めて稀に発生する地震動の1/5
80 cm/s
10 cm/s
増幅
表層地盤
10 cm/s
増幅後の告示スペクトル
告示スペクトル
0.5s
0.5s
1.0s
1.0s
5.0s
Period(s)
2E0
告示スペクトル
5.0s
E0 E0
解放工学的地盤
Vs=400m/s
Period(s)
5
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4.4 地震力に対する安全性
4.4.1 水平方向入力地震動の設定
(2) サイト波
建設地周辺における活断層分布、断層破壊モデル、過去の地震活動、地盤構造等に
基づいて、建設地における模擬地震波(以下「サイト波」という。)
サイト波
増幅
震源
表層地盤
工学的基盤
伝播
地震基盤
4.4 地震力に対する安全性
4.4.1 水平方向入力地震動の設定
(3) 既往波
過去における代表的な観測地震波のうち、建設地及び建築物の特性を考慮して適切に
選択した3波以上について、その最大速度振幅を25cm/sec、50cm/secとして作成した地
震波を、それぞれ稀に発生する地震動、極めて稀に発生する地震動とする。
ELCENTRO-NS
TAFT-EW
HACHINOHE-NS
6
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4.4 地震力に対する安全性
4.4.2 応答解析に用いる建築物の振動系モデルの設定
(1)建築物の振動系モデルは、建築物の構造方法、振動性状によって建築物の各部分
に生じる力及び変形を適切に把握できるように設定されていること。
(2)建築物と地盤の動的相互作用が建築物の振動性状に与える影響が大きいと推定さ
れる基礎構造を有している場合には、その影響を適切に考慮できる振動系モデルが設定
されていること。
モデル化
4.4 地震力に対する安全性
4.4.2 応答解析に用いる建築物の振動系モデルの設定
(3)振動系モデルの復元力特性及び減衰特性は、建築物の構造方法及び振動性状を適
切に反映したものであること。
(4)層としての復元力特性を設定する場合には、地震力の各階についての分布を適切に
仮定し、各部材の弾塑性復元力特性を適切に考慮した上で行った静的弾塑性解析の結果
に基づく方法又はそれに準ずる方法によって行われていること。
地震応答解析に用いる運動方程式
[M ]{&y&} + [C ]{y&} + [K ]{y} = −[M ]{&y&0 }
加速度
速度
変位
地震波
質量 M
建物の用途に応じて適切に設定
減衰 C
例:鉄筋コンクリート造建物 h1=0.03%、鉄骨造建物 h1=0.02%
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4.4 地震力に対する安全性
4.4.2 応答解析に用いる建築物の振動系モデルの設定
剛性 K
EI
GA
GA
※ 全部材をモデル化して
的解析する精算解析もある
幅が大きい建物
細長い建物
20,000
3F
15,000
5F
10F
15F
10,000
5,000
δ
0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
鉄筋コンクリート造
弾塑性解析結果
鉄骨造
復元力特性
4.4 地震力に対する安全性
4.4.4 評価判定クライテリア
(1) 損傷限界 稀な地震動に対して
① 層間変形角 1/200 以下
② 許容応力度以内
(2) 倒壊、崩壊限界 極めて稀な地震動に対して
① 層間変形角 1/100以下
② 層の塑性率 2.0以下
③ 部材の塑性率 4.0以下
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4.4 地震力に対する安全性
4.4.4 評価判定クライテリア
(1) 損傷限界 稀な地震動に対して
① 層間変形角 1/200以下
1/200 rad
階
階
17
16
15
14
δ
13
12
11
10
H
9
EL CENTRO
TAFT
HACHINOHE
変形角1/200
8
7
6
5
4
3
2
1
0.000 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006
層間変形角 = δ/H
(X方向)
rad
層間変形角
4.4 地震力に対する安全性
4.4.4 評価判定クライテリア
(1) 損傷限界 稀な地震動に対して
② 許容応力度以内
建築物の構造耐力上主要な部分に生
じる応力が短期許容応力度以内である
か、又は地震後に有害なひび割れ又は
ひずみが残留しないことを確かめること。
階
階
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
EL CENTRO
TAFT
4
HACHINOHE
3
許容応力度限
2
1
0
10,000
20,000
30,000
(X方向)
40,000
kN
せん断力
9
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4.4 地震力に対する安全性
4.4.4 評価判定クライテリア
(2) 倒壊、崩壊限界 極めて稀な地震動に対して
① 層間変形角 1/100以下
階
階
階
階
17
EL CENTRO
TAFT
HACHINOHE
変形角1/100
16
15
1/100 rad
17
16
15
14
14
13
13
12
12
11
11
10
10
9
9
8
8
7
7
6
6
5
5
4
4
3
3
2
2
1
0.000
EL CENTRO
TAFT
HACHINOHE
1
0.003
0.005
0.008
0.010
0.013
0
rad
(X方向)
20,000
層間変形角
40,000
60,000
kN
せん断力
(X方向)
4.4 地震力に対する安全性
4.4.4 評価判定クライテリア
(2) 倒壊、崩壊限界 極めて稀な地震動に対して
② 層の塑性率μ=2.0以下
③ 部材の塑性率μ= 4.0以下
塑性率とは
せん断力 (kN)
せん断力 (kN)
20,000
μ=1.78
(1.78RNB)
3F
5F
(1.65RNH)
μ=1.65
15,000
10F
15F
(1.76RNA)
μ=1.76
10,000
δy
(1.09RNH)
μ=1.09
δ
層間変形 (cm)
5,000
μ= δ/δy
0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
層間変形 (cm)
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4.4 地震力に対する安全性
4.4.3 水平方向地震力に対する応答計算
(1)建築物の各応答値は、入力地震動を受ける振動系モデルについての運動方程式を
適切な方法によって解くことにより求めていること。
(2)建築物の平面直交主軸2方向のそれぞれに地震動が加わった場合の応答を別途
に求めていること。また、2方向同時に地震動が加わった場合の応答又は主軸に対して
45度方向に地震動が加わった場合の応答の影響を適切な方法によって評価しているこ
と。
(3)上下方向の地震動の影響を水平方向地震動との同時性の関係を考慮して、また建
築物の規模及び形態を考慮して適切に評価していること。
(4)平面的に長大な寸法をもつ建築物等、入力地震動の位相差の影響を受けるおそれ
のある規模及び形態をもつ建築物に対しては、その影響を適切な方法によって考慮して
いること。
(5)鉛直方向の荷重に対する水平方向変形の影響を適切に考慮していること。
4.5 荷重の組合せ
積雪荷重、風圧力、又は地震力に対する安全性を検討する場合には 4.1に
規定する荷重及び外力との組合せを適切に考慮していること。
4.6 長期荷重に対する使用性
構造耐力上主要な部分である構造部材が、4.1に規定する実況に応じた荷
重及び外力による変形又は振動によって、建築物の使用上の支障が生じない
ことを令第82条第四号に定める方法又はこれに準ずる方法により確かめてい
ること。
長期荷重に対するたわみが1/250以下であることを確認
(RCの場合はクリープ係数8(はり)、16(床)を考慮)
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4.7 外装材等の安全性等
屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁が、風圧並びに地震その他の振
動及び衝撃に対して構造耐力上安全であることが、次のイ及びロの方法によ
り確かめられていること。
イ.告示第三号イに定めた暴風及び稀に発生する地震動に対しては損傷を生
じず、告示第三号ロに定めた暴風及び極めて稀に発生する地震動に対しては
脱落しないことを、4.3及び4.4に定める方法による構造計算に用いた応答
値に基づき確かめていること。
ロ.平成12年建設省告示第1458号に定める方法に基づき、風圧に対する構造
耐力上の安全性を確かめていること。
地震時の層間変形に対して帳壁が脱落しないことの確認
風に対してガラスが破壊しないことの確認
まとめ
4.1 長期荷重に対する安全性
長期荷重 に対して、長期許容応力度以内であることを確認
4.2 積雪荷重に対する安全性
積雪荷重に対して、短期許容応力度以内であることを確認
4.3 風圧力に対する安全性
レベル1の風に対して短期許容応力度以内であることを確認
レベル2の風に対して弾性範囲内であることを確認
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まとめ
4.4 地震力に対する安全性
(1) 損傷限界 稀な地震動に対して
① 層間変形角 1/200 以下
② 許容応力度以内
(2) 倒壊、崩壊限界 極めて稀な地震動に対して
① 層間変形角 1/100以下
② 層の塑性率 2.0以下
③ 部材の塑性率 4.0以下
4.6 長期荷重に対する使用性
長期荷重に対するたわみが1/250以下であることを確認
4.7 外装材等の安全性
地震時の層間変形に対して帳壁が脱落しないことの確認
風に対してガラスが破壊しないことの確認
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