【ページ公開⽇:2009年7⽉3⽇】 ・こちらのページに掲載している写真は全てイメージです。現地へ来訪される時期や、当⽇の天候等によって景観は異なります。 ・掲載の事実考証(料⾦、開催期間等含む)については公開⽇時点の情報となりますのでその後、変更されている可能性があります。あらかじめご了承くださ い。 名湯の⾥として全国的に知られている⿅児島の霧島。実はこの霧島は、幕末の⾰命児・坂本⿓⾺とその伴侶おりょうが、⽇本⼈初 のハネムーンに出かけた⼟地と⾔われている。⼆⼈の有名なエピソードとして知られているのは、かの有名な『寺⽥屋襲撃事件』 である。 薩⻑同盟の仲⽴ちをはたした翌々⽇の1866(慶応2)年1⽉23⽇、伏⾒の船宿に宿泊していた⿓⾺は百数⼗名の幕府⽅役⼈に取り 囲まれた。その様⼦を湯殿で⽬撃したおりょうは、裸のまま⾶び出しこの急を⿓⾺に知らせた。おかげで⿓⾺は⼿傷を負いながら も無事薩摩藩邸に保護されたという。この事件をきっかけに、⿓⾺とおりょうの関係は⼀気に深まった。 傷を負った⿓⾺に霧島での温泉治療をすすめたのは、⻄郷隆盛だった。そのいきさつを作家・司⾺遼太郎⽒は⼩説『⻯⾺がゆく』 のなかにこう書いている。 『…⼀⽅、⻯⾺は別のことを考えていた。新婚旅⾏である。この男は、勝からもそういう⻄洋⾵俗があるのをきいている。いっそ のこと、⾵雲をそとに、⿅児島、霧島、⾼千穂と、おりょうを連れて新婚旅⾏にまわるのも⼀興ではないか…』 こうして2⼈は⽇本初のハネムーンへと旅⽴った。 霧島の旅のなかで2⼈がもっとも⻑く逗留したのが、⼑傷によく効く といわれていた「塩浸温泉」だ。⿓⾺らが⼊浴したという⼩さな湯船 がいまも川縁に残されており、⿓⾺とおりょうの湯治碑が建てられて いる。ブーツ姿の有名な写真や⾼知桂浜の銅像と⽐べると、⼼なしか やさしい表情をしている湯治碑からは、新婚旅⾏を楽しんだ⿓⾺の気 分が伝わってくるようだ。 この旅の途中、⿓⾺は度々姉の⼄⼥に⼿紙を書いている。ことに塩浸 温泉から霧島神宮へと向かう途中⽴ち寄った「⽝飼滝」には感銘を受 けたらしく『…げに、この世の外かと思われるほどのめずらしきとこ ろなり。ここに10⽇ばかりも⽌まりあそび、⾕川の流れにてうおを つり、ピストルをもちて⿃をうつなど、実におもしろかり…』と、旅 を楽しんでいる様⼦を書き送っている。 現在、国道223号線沿いの妙⾒温泉から県道470号線に⼊り2kmほ ど進むと、⽝飼滝を⾒下ろせる展望公園が整備されている。ここから の眺めも素晴らしいが、脚⼒に⾃信のある⽅はぜひ、駐⾞場から遊歩 道を下り、神秘的なエメラルドグリーンの滝壺へ⽩い⽔煙をあげて落 ちる滝をご覧いただきたい。 上:⿓⾺が腕の⼑傷を癒すために⼊浴したと伝えられる塩浸温泉の湯 船。 いまも源泉が湧き続けている。 左下:塩浸温泉の⿓⾺とおりょうの湯治碑。⼊浴施設の跡地は、観光施 設として整備される予定。 右下:⽝飼滝。⾼さ約36m、幅約18m。 <ご注意> 平成21年7⽉10⽇(⾦)〜平成22年3⽉31⽇(⽇)の間、「旧牧園町塩浸温泉福祉の ⾥」リニューアル⼯事のため、「⿓⾺とおりょうの新婚旅⾏湯治碑」、「塩浸温泉の湯 船」のある同敷地内には⽴ち⼊ることができません。 詳細 » ⿅児島県霧島市公式ホームページ さらに⿓⾺とおりょうの⾜跡を追って、霧島神宮へ。霧島神宮は、アマテ ラスオオミカミの孫で、この地を治めるために⾼天原から⾼千穂峰に降り ⽴ったニニギノミコトを祀るために、6世紀に建てられたと伝えられてい る。参道の両脇に広がる巨樹の森を⾒て、⿓⾺とおりょうは何を感じただ ろうか…。 霧島神宮から⾼千穂峰へ向かう。⿓⾺とおりょうもこの登⼭コースを楽し んだそうだ。⼭頂には、⽇本の神話に登場する「天の逆鉾」が突き刺さっ ているが、何と⿓⾺はこれを引き抜いたらしい。 『逆鉾、荒⾦にてこしらへたものなり。この逆鉾は少し動かして⾒たれ ば、よく動くものなり。⼜あまりにも両⽅へ⿐が⾼く候まま、両⼈が両⽅ より⿐おさえて、エイヤと引き抜き候えば、わずか四五尺ばかりのものに て候間、またまたもとの通りおさめたり』(⿓⾺から⼄⼥への⼿紙より) そんな⿓⾺のいたずらのせい…、というわけではないだろうが、現在天の 逆鉾には囲いが張り巡らされ、遠くから仰ぎ⾒るだけとなっている。 ⿓⾺とおりょうのハネムーンから数えること143年。旅の途中、⿓⾺とお りょうの案内板を⾒つめる⽼若男⼥様々なカップルを⾒かけた。もしかし たら、この霧島にはカップルを惹き付ける何かがあるのかもしれない。ぜ ひ、⼤切な⼈と⼀緒に、⿓⾺とおりょうが仲睦まじく歩いた旅路を辿って いただきたい。 (取材協⼒:霧島市役所 商⼯観光部 観光課) 上:霧島神宮。参道の両側は、樹齢を経た古⽊が茂る森になって いる。 左下:社殿前庭の御神⽊(霧島メアサ)と呼ばれる⼤杉。 右下:⾼千穂峰⼭頂の「天の逆鉾」。奈良時代からすでに存在し ているという説もある。
© Copyright 2024 Paperzz