被災地ではない被災地周辺地域の方のための 震災ストレスケア ― ストレス緩和のための 5 つのアドバイス ― 2011/03/25 著者:奥田 弘美 精神科医(医学博士・精神保健指定医) 情報提供:株式会社チーム医療 震災ストレスケア・アドバイス 東日本大震災の被災者の方々の様子が伝わるにつれ、多くの人々が何らかの不安 や緊張状態にあるのではないかと思います。私自身も、今までにあまり経験したこ とがないような体調不良を感じています。 このような症状は、「地震酔い」といい大きな地震の後に余震が続いて気分が悪 くなったり、地震が起きていないのにめまいやふらつきを感じたりするのだそうで す。このような状態の時には、それなりに注意が必要です。 どのようなことに気をつければいいのかを、精神科医の奥田弘美先生に「被災地 ではない被災地周辺地域の方のための震災ストレスケア」を5つのアドバイスとし てまとめていただきました。皆様の健康管理にお役立て下さい。 梅本 和比己(チーム医療 代表取締役) 「被災地ではない被災地周辺地域の方のための震災ストレスケア」 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)という大変な大地震が起きてしま いました。まずは被災された皆さまには謹んでお見舞い申し上げます。 さて今日、至急書きたいと思ったテーマが、「被災地周辺地域の方のため の震災ストレスケア」についてです。 私は新宿から電車で 40 分ばかりの東京都下に在住し、神奈川県や東京都 下のクリニックで外来をしていますが、震災以降、患者さんを見ていて強く 感じていることがあります。 それは、被災地ではないけれど、被災地周辺の住民も少なからずハイ・ス トレスの状態になっているということです。 もちろん被災地の方ほどのストレスでありませんが、被災地の方が超高ス トレスのレッドカード状態だとすると、被災地周辺の住民は、まさにイエロ ーカード状態のストレスを抱えています。 2 震災ストレスケア・アドバイス まずは度重なる余震が続くため、神経が休まらず不眠、地震酔いなどの自 律神経の乱れが起こっている人が少なくありません。 原発事故も解決の見通しがたっていないため放射能に関しても、不安を抱 えている毎日です。 また地震発生後、ちょうど 1 週間が経過しましたが、この 1 週間の間で、 被災地周辺の生活は激変。 たとえば、私の住んでいる首都圏では、計画停電が行われており、一般家 庭ではかつてない節電生活を余儀なくされています。また鉄道ダイヤも非常 に不規則で、混雑もひどく、通勤するのも普段の何倍も気疲れしてしまいま す。ガソリンや食料も足らなくて、ガソリン渋滞やスーパー行列に並ばなけ ればならない始末。 このような非日常が続いているため、本来ならかなりストレスを感じてい るはずなのですが、「被災地の方に比べたら、これしきの不便なんて我慢し なければ」と自分自身を叱咤激励しながら被災地周辺の人は必死で頑張って いる状態です。 寒くても暖房をできるだけ我慢したり、食器洗い機など便利な電気器具を 使わないようにして家事に普段より体力を使ったり。会社で災害対応の特別 体制がしかれ、普段より残業をこなしている方も目立ちます。 自分にストレスサインが出ていても気付かない、または我慢して無理を重 ねているために徐々に心身が弱りかけている人が増えているように思いま す。 普段より、睡眠が浅くなり夜中に何度も目覚める、肩や首のコリがひど い、血圧がなんとなく上がっている、イライラしたり、涙もろくなったり、 興奮しがち、便秘、下痢、腹痛などおなかの調子が乱れている、ドキドキ しやすい、なんとなく息苦しい、などのストレスサインは出ていませんか? 実は私自身、この 1 週間の間にイライラ、腹痛、肩こり、眠りにくいな ど、ストレス症状が出ていることに気づき今日、驚いた次第なのです。 3 震災ストレスケア・アドバイス そこで、少しでも被災地周辺の方々のストレス緩和に役立てていただきた いと心身のストレスケア・アドバイスをまとめさせていただきました。 被災地周辺の首都圏、東北、信越地域は、被災地を支えるためにも、日本 の経済活動を維持するためにも、へばるわけには、まいりません。 ぜひご自身や周りの方のストレスケアに役立てていただけたら幸いです。 2011/03/19 奥田 弘美(医学博士・精神保健指定医) 4 震災ストレスケア・アドバイス ①睡眠をできるだけたっぷりとる とにかく心と体の疲れをとるためには、睡眠が不可 欠です。 最低 6 時間は眠りましょう。 もし不安で何時間も寝付けない、何度も夜なかに目 覚めてしまうといった睡眠に異常が出ている人は、早 めに精神科医に相談して軽い睡眠薬を処方してもら いましょう。 余震がくると怖いから、といってうつ病などで不眠 がある方の中にも、処方されている睡眠薬を飲まない ようにして、さらに不眠を悪化させている人がいま す。 睡眠導入剤と呼ばれるマイスリーやアモバンなら 寝入りをよくするだけなので、夜中に万が一のことが おこっても、ちゃんと目覚められるので安心だと思い ます。 医師に相談して、軽いタイプの睡眠剤に変えてもら って、せめて数時間はしっかり眠りましょう。 Copyrightⓒ2011 Hiromi Okuda,Team Iryo Inc. 5 震災ストレスケア・アドバイス ②ふだんよりタンパク質、ビタミン、ミネラルをたっぷりとる 心身の疲労をとるためには、タンパク質とビタミ ン、ミネラルが不可欠です。 ストレス状態が高まっている今は、特に注意して、 アミノ酸が豊富な肉、魚、卵などの動物性タンパク質 をふだんよりしっかり摂取しましょう。 首都圏では、卵や魚が手に入りにくくなっています が、比較的、肉類の流通は支障がないようです。 野菜といっしょに冷しゃぶサラダや、鍋料理、肉野 菜炒めなどで、積極的に食べましょう。 食材が十分手に入らない場合は、ビタミン C やビ タミン B 群、マルチミネラル、プロテインパウダー などのサプリメントも補助的に活用するとよいと思 います。 Copyrightⓒ2011 Hiromi Okuda,Team Iryo Inc. 6 震災ストレスケア・アドバイス ③不要不急の用事は、作らない、参加しない 社会ストレスが高まって、緊張状態が高い毎日です ので、休日にはゆったり家でリラックスすることが大 切です。 張りつめていた神経をゆるめておかないと週明け からの仕事に差し障ってきます。 不要不急の PTA 活動、コミュニティー活動、サー クル活動、ミーティングなどは、できる限り延期した り、簡略化しましょう。 にわかに募金活動など新しい仕事を作る団体もあ りますが、今はスーパーやコンビニなどで、どこでも 募金箱が置いてあります。 それが休息を犠牲にしてまでする活動かどうか冷 静に判断することが必要です。 またストレスサインが出ている人は、体調が悪いか ら、と素直に口にして誘われても参加しない勇気を持 ってください。 Copyrightⓒ2011 Hiromi Okuda,Team Iryo Inc. 7 震災ストレスケア・アドバイス ④地震情報に ひどい不安や動悸を感じるときは テレビやラジオ、ネットニュースから離れてみる 地震速報などのエリアメールがたびたび入り余震 も繰り返し発生、原発も目を離せない状態なので、ふ だんより頻繁にラジオやテレビ、ネットでニュースを チェックしている。しかしそのたびに不安が高まっ て、ドキドキしたり眠れなくなる・・という人も増え ています。 そんな方は、しばらく情報収集は家族や友人にまか せて、テレビやラジオから離れてみましょう。 今は根拠のない不安をあおる風評も多々流れてい ます。不安状態がひどいときは、信頼できる家族や友 人にお願いして、 「これだけは重要」というものだけ、 伝えてもらいましょう。 Copyrightⓒ2011 Hiromi Okuda,Team Iryo Inc. 8 震災ストレスケア・アドバイス ⑤カフェイン類、アルコールは控えめにして 牛乳や豆乳、ハーブティーを ふだんより不安な社会情勢のために、交感神経(自 律神経のひとつ)が過緊張になっています。 そんなときに、さらに交感神経の緊張を加速して、 頭痛や肩こり、動悸、不安を引き起こしやすくなるコ ーヒー、紅茶、緑茶、栄養ドリンクなどのカフェイン 類はできるだけ控えましょう。 代わりに神経の緊張をとるアミノ酸やカルシウム が含まれている牛乳や豆乳、リラックス効果の高いハ ーブティーなどがおすすめです。 また自律神経バランスを崩すアルコールを摂取す ると、余計に心身の調子を乱してしまいます。 眠れないから、不安だからとアルコールに頼るのは やめましょう。 Copyrightⓒ2011 Hiromi Okuda,Team Iryo Inc. 9 震災ストレスケア・アドバイス 著者:奥田 弘美 おくだひろみ メディカル&ライフサポートコーチ研究会代表 精神科医(医学博士・精神保健指定医) 作家(日本ペンクラブ会員) ●ブログ http://medical-life.jugem.jp/ ●http://medical-life.info(メディカル&ライフサポートコーチ研究会) ●http://fullcourse.org(フルコースウーマン倶楽部) 情報提供:株式会社チーム医療 ●代表取締役 梅本 和比己 ●所在地:東京都豊島区南大塚 2-42-1 ●電 話:03‐3945‐0771(代表) ●WEB:http://www.iryo.co.jp ※本文は、奥田弘美先生のブログ http://medical-life.jugem.jp/ (2011.3.19 付)から、著者の許諾を得て掲載させていただきました。 10
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